目次
ISATAP は、基礎となる IPv4 ネットワークを IPv6 の NBMA リンク層として使用する、自動オーバーレイ トンネリング メカニズムです。
機能情報の確認
ご使用のソフトウェア リリースでは、このモジュールで説明されるすべての機能がサポートされているとは限りません。 最新の注意事項と機能情報については、プラットフォームおよびソフトウェア リリースのバグ検索ツールとリリース ノートを参照してください。 このモジュールに記載されている機能の詳細を検索し、各機能がサポートされているリリースのリストを確認する場合は、このモジュールの最後にある機能情報の表を参照してください。
プラットフォームのサポートおよびシスコ ソフトウェア イメージのサポートに関する情報を検索するには、Cisco Feature Navigator を使用します。 Cisco Feature Navigator にアクセスするには、www.cisco.com/go/cfn に移動します。 Cisco.com のアカウントは必要ありません。
IPv6 用の ISATAP トンネル サポートに関する情報
オーバーレイ トンネル for IPv6
オーバーレイ トンネリングでは、IPv4 パケット内で IPv6 パケットをカプセル化して、IPv4 インフラストラクチャ(コア ネットワークまたは以下の図)へ伝送します オーバーレイ トンネルを使用することで、孤立した IPv6 ネットワークと通信できます。このとき、孤立した複数の IPv6 ネットワーク間にある IPv4 インフラストラクチャをアップグレードする必要はありません。 オーバーレイ トンネルは、境界デバイス間、または境界デバイスとホスト間に設定できますが、両方のエンドポイントが IPv4 プロトコル スタックと IPv6 プロトコル スタックの両方をサポートしている必要があります。 IPv6 では、次のタイプのオーバーレイ トンネリング メカニズムをサポートしています。
-
手動
-
総称ルーティング カプセル化(GRE)
-
IPv4 互換
-
6to4
-
Intrasite Automatic Tunnel Addressing Protocol(ISATAP)
図 1. オーバーレイ トンネル
 (注) |
オーバーレイ トンネルにより、インターフェイスの最大伝送単位(MTU)が 20 オクテット減少します(ただし、基本 IPv4 パケット ヘッダーにオプション フィールドが含まれていないことを前提とします)。 オーバーレイ トンネルを使用するネットワークは、トラブルシューティングが困難です。 したがって、独立した IPv6 ネットワークに接続するオーバーレイ トンネルは、最終的な IPv6 ネットワーク アーキテクチャと見なしてはいけません。 オーバーレイ トンネルの使用は、IPv4 と IPv6 の両方のプロトコル スタック、または IPv6 プロトコル スタックだけをサポートするネットワークへの移行方法と見なす必要があります。
|
以下の表は、IPv4 ネットワーク上での IPv6 パケットの伝送にどのトンネル タイプを設定すればよいかを決定する場合に役立ちます。
表 1 IPv4 ネットワーク上で IPv6 パケットを伝送するトンネル タイプの推奨される使用方法
トンネリング タイプ |
推奨される使用方法 |
使用方法 |
手動 |
サイト内またはサイト間で使用可能な、単純なポイントツーポイント トンネル |
IPv6 パケットだけを伝送できます。 |
GRE および IPv4 互換 |
サイト内またはサイト間で使用可能な、単純なポイントツーポイント トンネル |
IPv6、コネクションレス型ネットワーク サービス(CLNS)、およびその他の多数のタイプのパケットを伝送できます。 |
IPv4- 互換機 |
ポイントツーマルチポイント トンネル |
::/96 プレフィックスを使用します。 このトンネル タイプの使用は推奨しません。 |
6to4 |
独立した IPv6 サイトへの接続に使用可能なポイントツーマルチポイント トンネル |
サイトでは、2002::/16 プレフィックスからのアドレスを使用します。 |
6RD |
IPv6 サービスは、IPv4 に IPv6 のカプセル化を使用することで IPv4 ネットワーク上のユーザに提供されます。 |
プレフィックスは、SP 自身のアドレス ブロックから割り当てることができます。 |
ISATAP |
サイト内のシステムへの接続に使用可能なポイントツーマルチポイント トンネル |
サイトでは、任意の IPv6 ユニキャスト アドレスを使用できます。 |
個々のトンネル タイプについて、このマニュアルで詳しく説明しています。 実装する特定のトンネル タイプに関する情報を確認および理解することを推奨します。 必要なトンネル タイプに精通している場合は、以下の表で、有用と思われるトンネル設定パラメータの概要を参照してください。
表 2 トンネリング タイプ別のトンネル設定パラメータ
トンネリング タイプ |
トンネル設定パラメータ |
トンネル モード |
トンネルの送信元 |
トンネルの宛先 |
インターフェイス プレフィックスまたはアドレス |
手動 |
ipv6ip |
IPv4 アドレス、または IPv4 が設定されたインターフェイスへの参照。 |
IPv4 アドレス。 |
IPv6 アドレス。 |
GRE/IPv4 |
gre ip |
IPv4 アドレス。 |
IPv6 アドレス。 |
IPv4- 互換機 |
ipv6ip auto-tunnel |
不要。 これらはすべて、ポイントツーマルチポイントのトンネリング タイプです。 IPv4 宛先アドレスは、パケット単位で、IPv6 宛先から計算されます。 |
不要。 インターフェイス アドレスは、::tunnel-source/96 として生成されます。 |
6to4 |
ipv6ip 6to4 |
IPv6 アドレス。 プレフィックスは、トンネル送信元の IPv4 アドレスを埋め込む必要があります。 |
6RD |
ipv6ip 6rd |
IPv6 アドレス。 |
ISATAP |
ipv6ip isatap |
変更された eui-64 形式での IPv6 プレフィックス。 IPv6 アドレスは、プレフィックスおよびトンネル送信元 IPv4 アドレスから生成されます。 |
ISATAP トンネル
ISATAP は、基礎となる IPv4 ネットワークを IPv6 の NBMA リンク層として使用する、自動オーバーレイ トンネリング メカニズムです。 ISATAP は、ネイティブの IPv6 インフラストラクチャがまだ使用可能になっていない(スパース IPv6 ホストがテスト用に展開されている場合などの)サイト内の IPv6 パケットを転送することを目的として設計されています。 ISATAP トンネルを使用すると、サイト内の個々の IPv4 または IPv6 デュアル スタック ホストは、基本的には IPv4 インフラストラクチャを使用して IPv6 ネットワークを作成することで、同じ仮想リンク上のこうした他のホストと通信できます。
ISATAP ルータは、標準のルータ アドバタイズメント ネットワーク設定サポートを ISATAP サイトに提供します。 この機能によって、クライアントは、ギガビット イーサネットまたはファスト イーサネットに接続されている場合と同様に、クライアント自身を自動的に設定できます。 また、サイト外の接続を提供するように設定することもできます。 ISATAP では、リンク ローカルまたはグローバル(6to4 プレフィックスを含む)な任意のユニキャスト IPv6 プレフィックス(/64)で構成される、適切に定義された IPv6 アドレス形式を使用します。これにより、IPv6 ルーティングをローカルに、またはインターネット上で実行できます。 IPv4 アドレスは、IPv6 アドレスの最後の 32 ビットに符号化され、自動 IPv6-in-IPv4 トンネリングを可能にします。
ISATAP トンネリング メカニズムは他の自動トンネリング メカニズム(IPv6 6to4 トンネリングなど)と同様ですが、ISATAP はサイト間ではなく、サイト内の IPv6 パケットを転送するよう設計されています。
ISATAP では、64 ビットの IPv6 プレフィックスおよび 64 ビットのインターフェイス ID が含まれているユニキャスト アドレスを使用します。 インターフェイス ID は、アドレスが IPv6 ISATAP アドレスであることを示すために最初の 32 ビットに値 000:5EFE が含まれる、変更された EUI-64 形式で作成されます。 次の表に、ISATAP アドレス形式を示します。
表 3 IPv6 ISATAP のアドレス形式
64 ビット |
32 ビット |
32 ビット |
リンク ローカルまたはグローバル IPv6 ユニキャスト プレフィックス |
0000:5EFE |
ISATAP リンクの IPv4 アドレス |
上記の表に示すように、ISATAP アドレスは、IPv6 プレフィックスと ISATAP インターフェイス ID で構成されます。 インターフェイス ID には、基礎となる IPv4 リンクの IPv4 アドレスが含まれています。 次の例では、プレフィックスが 2001:DB8:1234:5678::/64 で、埋め込まれた IPv4 アドレスが 10.173.129.8 である場合、実際の ISATAP アドレスがどのようになるかを示します。 ISATAP アドレスでは、IPv4 アドレスは 16 進数の 0AAD:8108 として表現されます。
2001:DB8:1234:5678:0000:5EFE:0AAD:8108
IPv6 用の ISATAP トンネル サポートの設定方法
ISATAP トンネルの設定
はじめる前に
ISATAP トンネルの設定で使用される tunnel source コマンドは、設定済みの IPv4 アドレスを持つインターフェイスをポイントする必要があります。 アドバタイズされた ISATAP IPv6 アドレスおよび(1 つまたは複数の)プレフィックスは、ネイティブ IPv6 インターフェイス用として設定されます。 IPv6 トンネル インターフェイスは、インターフェイス ID 内の最後の 32 ビットが IPv4 トンネル送信元アドレスを使用して作成されているため、変更された EUI-64 アドレスを使用して設定されている必要があります。
手順の概要
1. enable
2. configure terminal
3. interface tunnel tunnel-number
4. ipv6 address {ipv6-address / prefix-length | prefix-name sub-bits/prefix-length
5. no ipv6 nd ra suppress
6. tunnel source {ip-address| interface-type interface-number}
7. tunnel mode ipv6ip [6rd | 6to4 | auto-tunnel | isatap
手順の詳細
|
コマンドまたはアクション |
目的 |
ステップ 1 |
enable
例:
|
特権 EXEC モードをイネーブルにします。
|
ステップ 2 |
configure terminal
例:
Router# configure terminal
|
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
interface tunnel tunnel-number
例:
Router(config)# interface tunnel 1
|
トンネル インターフェイスおよび番号を指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 4 |
ipv6 address {ipv6-address / prefix-length | prefix-name sub-bits/prefix-length
例:
Router(config-if)# ipv6 address 2001:DB8:6301::/64 eui-64
|
インターフェイスに割り当てられた IPv6 アドレスを指定し、インターフェイスでの IPv6 処理をイネーブルにします。 |
ステップ 5 |
no ipv6 nd ra suppress
例:
Router(config-if)# no ipv6 nd ra suppress
|
IPv6 ルータ アドバタイズメントの送信は、トンネル インターフェイス上ではデフォルトでディセーブルになっています。 このコマンドによって、IPv6 ルータ アドバタイズメントの送信が再度イネーブルになり、クライアントの自動設定が可能になります。 |
ステップ 6 |
tunnel source {ip-address| interface-type interface-number}
例:
Router(config-if)# tunnel source gigabitethernet 1/0/1
|
トンネル インターフェイスの送信元インターフェイスのタイプおよび番号を指定します。
(注) |
tunnel source コマンドで指定したインターフェイスのタイプおよび番号は、IPv4 アドレスを使用して設定する必要があります。 |
|
ステップ 7 |
tunnel mode ipv6ip [6rd | 6to4 | auto-tunnel | isatap
例:
Router(config-if)# tunnel mode ipv6ip isatap
|
ISATAP アドレスを使用する IPv6 オーバーレイ トンネルを指定します。
- auto-tunnel キーワードは、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータではサポートされません。
|
IPv6 に対する ISATAP トンネル サポートの設定例
例:ISATAP トンネルの設定
次に、ギガビット イーサネット インターフェイス 0/0/0 で定義されるトンネル送信元および ISATAP トンネルの設定に使用される tunnel mode コマンドの例を示します。 クライアントの自動設定を可能にするために、ルータ アドバタイズメントがイネーブルになっています。
ipv6 unicast-routing
interface tunnel 1
tunnel source Gigabitethernet 0/0/0
tunnel mode ipv6ip isatap
ipv6 address 2001:DB8::/64 eui-64
no ipv6 nd ra suppress
exit
その他の関連資料
標準および RFC
標準/RFC |
タイトル |
IPv6 に関する RFC |
『IPv6 RFCs』 |
シスコのテクニカル サポート
説明 |
リンク |
シスコのサポートおよびドキュメンテーション Web サイトでは、ダウンロード可能なマニュアル、ソフトウェア、ツールなどのオンライン リソースを提供しています。 これらのリソースは、ソフトウェアをインストールして設定したり、シスコの製品やテクノロジーに関する技術的問題を解決したりするために使用してください。 この Web サイト上のツールにアクセスする際は、Cisco.com のログイン ID およびパスワードが必要です。 |
http://www.cisco.com/cisco/web/support/index.html |
IPv6 に対する ISATAP トンネル サポートの機能情報
次の表に、このモジュールで説明した機能に関するリリース情報を示します。 この表は、ソフトウェア リリース トレインで各機能のサポートが導入されたときのソフトウェア リリースだけを示しています。 その機能は、特に断りがない限り、それ以降の一連のソフトウェア リリースでもサポートされます。
プラットフォームのサポートおよびシスコ ソフトウェア イメージのサポートに関する情報を検索するには、Cisco Feature Navigator を使用します。 Cisco Feature Navigator にアクセスするには、www.cisco.com/go/cfn に移動します。 Cisco.com のアカウントは必要ありません。
表 4 IPv6 に対する ISATAP トンネル サポートの機能情報
機能名 |
リリース |
機能情報 |
IPv6 用の ISATAP トンネル サポート |
Cisco IOS XE Release 2.1 |
ISATAP は、基礎となる IPv4 ネットワークを IPv6 の NBMA リンク層として使用する、自動オーバーレイ トンネリング メカニズムです。 ipv6 nd ra suppress、tunnel mode ipv6ip、tunnel source の各コマンドが導入または変更されました。 |