SDMの設定
この章では、ML シリーズ カードに組み込まれている Switching Database Manager(SDM; スイッチング データベース マネージャ)について説明します。
この章の内容は次のとおりです。
• 「SDM の概要」
• 「SDM 領域」
• 「SDM の設定」
SDM の概要
ML シリーズ カードでは、転送エンジンおよび Ternary CAM (TCAM)を使用して、高速転送を実現しています。高速転送情報は、TCAM に保持されます。SDM は、TCAM に保持されているスイッチング情報を管理するソフトウェア サブシステムです。
SDM は、TCAM 内のスイッチング情報をアプリケーション固有の領域に編成し、これらのアプリケーション領域のサイズを設定します。SDM によって完全一致および最長一致のアドレス検索が可能となるため、高速転送が実現します。SDM は、アプリケーション固有のスイッチング情報を複数の領域に分割することにより、TCAM のスペースを管理します。
TCAM は、転送される各パケットに関連付けられたロケーション インデックスを識別して転送エンジンに伝えます。転送エンジンでは、このロケーション インデックスを使用して、各転送パケットに関連付けられた情報を取得します。
SDM 領域
SDM は、TCAM のスペースを複数のアプリケーション固有の領域に分割し、個々のアプリケーション制御層と連動してスイッチング情報を保存します。SDM は、次の種類の領域で構成されています。
• 完全一致領域 ― 完全一致領域は、IP 隣接など、複数のアプリケーション領域のエントリで構成されます。
• 最長一致領域 ― 各最長一致領域は、マスク長に基づいて降順に編成されたレイヤ 3 アドレス エントリの複数のバケットまたはグループで構成されます。バケット内のすべてのエントリは、同じマスク値とキー サイズを共有します。バケットは、近接バケットからアドレス エントリを借用することにより、サイズを動的に変更できます。アプリケーション領域全体のサイズは決まっていますが、この設定は変更できます。
• 重み付け完全一致領域 ― 重み付け完全一致領域は、重み付けまたはプライオリティが割り当てられた完全一致エントリで構成されます。たとえば、Quality of Service(QoS; サービス品質)では、複数の完全一致エントリが存在する場合がありますが、他のエントリよりもプライオリティの高いエントリがあります。重み付けは、複数のエントリが一致するときに 1 つのエントリを選択するために使用します。
TCAM のスペースは 65,536 のエントリで構成されます。各エントリは 64 ビット幅です。SDM は TCAM のスペースを管理する役割を担うため、ユーザ設定に基づいて、TCAM のスペース全体に各アプリケーション領域の SDM パーティションを作成します。すべてのアプリケーション領域の最大サイズは決まっていますが、各アプリケーション領域の最大サイズを変更できます。
表15-1 に、TCAM の各アプリケーション領域のデフォルト パーティションを示します。
表15-1 TCAM のアプリケーション領域のデフォルト パーティション
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IP Adjacency |
完全一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
IP Prefix |
最長一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
QoS Classifiers |
重み付け完全一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
IP VRF Prefix |
最長プレフィックス一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
IP Multicast |
最長プレフィックス一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
MAC Addr |
最長プレフィックス一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
Access List |
重み付け完全一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
SDM の設定
ここでは、SDM の設定に必要なコマンドについて説明します。SDM 領域のサイズを設定するコマンドも含まれています。ここで説明するコマンドは、スイッチング ソフトウェア固有のコマンドです。
SDM 領域の設定
TCAM のスペースは 65,536 のエントリで構成されます。各エントリは 64 ビット幅です。SDM は TCAM のスペースを管理する役割を担うため、ユーザ設定に基づいて、TCAM のスペース全体に各アプリケーション領域の SDM パーティションを作成します。パーティション設定の変更は、次回のシステム再起動時に有効になります。
SDM のアプリケーション領域のサイズは、64 ビット エントリの数で表します。すべてのアプリケーション領域を合計したサイズは、64 ビット TCAM エントリ換算で計算します。このサイズは、TCAM の総サイズである 65,536 バイトを超えてはなりません。
各アプリケーション領域の SDM の最大サイズを設定するには、グローバル コンフィギュレーション モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
Router(config)#
sdm size
region-name
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サイズを設定するアプリケーション領域の名前を指定します。サイズは、1 KB(1024)エントリの倍数、またはエントリの絶対数で指定します。 |
ステップ 2 |
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イネーブル EXEC モードに戻ります。 |
例15-1 に、この設定の一例を示します。
例15-1 IP-Prefix 領域を 2 KB エントリに制限する場合
Router # configure terminal
Router(config)# sdm size ip-prefix k-entries 2
使用できる TCAM エントリの数を表示するには、グローバル コンフィギュレーション モードから show sdm size コマンドを入力します。
Active Switching Database Region Maximum Sizes :
IP Adjacency : 65536 64-bit entries
IP Prefix : 2048 64-bit entries
QoS Classifiers : 65536 64-bit entries
IP VRF Prefix : 65536 64-bit entries
IP Multicast : 65536 64-bit entries
MAC Addr : 65536 64-bit entries
Access List : 65536 64-bit entries
TCAM のACLのサイズ設定
Access Control List(ACL; アクセス制御リスト)のデフォルトの最大サイズは、65,536 の 64 ビット エントリです。 表15-2 に示すように、 sdm access-list コマンドを使用して、ACL に使用する TCAM のスペースを制限できます。
表15-2 ACL に使用する TCAM サイズの割り当て
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sdm access-list
number-entries
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サイズを設定するアプリケーション領域の名前を指定します。サイズは、エントリの絶対数で指定します。 |
例15-2 に、この設定の一例を示します。
例15-2 TCAM の ACL 領域として 8,192 エントリを設定する場合
Router# configure terminal
Router(config)# sdm access-list 8192