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Cisco MDS 9000 ファミリのIP ストレージ(IPS)サービスは、オープン規格の IP ベース テクノロジーを使用することによって、ファイバ チャネル SAN の到達距離を延長します。スイッチは Fibre Channel over IP(FCIP)を使用して、別々の SAN アイランドを接続できます。
(注) FCIP は、MDS 9222i スイッチ、MSM-18/4 モジュール、MDS 9216i スイッチ、MPS-14/2 モジュール、16 ポート ストレージ サービス ノード(SSN-16)、および MDS 9200 シリーズ ディレクトリの IPS モジュールでサポートされています。
Fibre Channel over IP プロトコル(FCIP)は、地理的に分散したファイバ チャネル ストレージ エリア ネットワーク(SAN)(SAN アイランド)を IP ローカル エリア ネットワーク(LAN)、メトロポリタン エリア ネットワーク(MAN)、およびワイドエリア ネットワーク(WAN)を介して透過的に接続するトンネリング プロトコルです。スイッチは Fibre Channel over IP(FCIP)を使用して、別々の SAN アイランドを接続できます(図 2-1 を参照)。
図 2-1 FCIP によって接続されたファイバ チャネル SAN
FCIP はネットワーク層トランスポートとして TCP を使用します。TCP ヘッダーに DF ビットが設定されます。
(注) FCIP プロトコルの詳細については、http://www.ietf.org にアクセスして IP ストレージに関する IETF 規格を参照してください。さらに、http://www.t11.org にアクセスして、スイッチ バックボーン接続に関するファイバ チャネル規格を参照してください(FC-BB-2 を参照)。
• 「イーサネット ポートチャネルおよびファイバ チャネル ポートチャネル」
• 「ピア」
• 「E ポート」
IPS モジュールまたは MPS-14/2 モジュールで FCIP を設定するには、次の概念について基礎知識が必要です。
図 2-2 に、ファイバ チャネル スイッチ間リンク(ISL)およびシスコの拡張 ISL(EISL)に関する FCIP の内部モデルを示します。
FCIP 仮想 E(VE)ポートは、ファイバ チャネルではなく FCIP を介して転送される点を除き、標準ファイバ チャネル E ポートとまったく同様に機能します。唯一の要件は、VE ポートの他端を別の VE ポートにすることです。
仮想 ISL は FCIP リンクを介して確立され、ファイバ チャネル トラフィックを転送します。対応する各仮想 ISL は、両端に E ポートまたは TE ポートが接続されたファイバ チャネル ISL と似ています(図 2-2 を参照)。
詳細については、「B ポートの設定」を参照してください。
FCIP リンクは、2 つの FCIP リンク エンドポイントを結ぶ 1 つまたは複数の TCP 接続で構成されます。各リンクはカプセル化されたファイバ チャネル フレームを伝達します。
FCIP リンクが起動すると、FCIP リンクの両端の VE ポートは仮想ファイバ チャネル(E)ISL を作成し、E ポート プロトコルを開始して(E)ISL を起動します。
デフォルトでは、どの Cisco MDS 9000 ファミリ スイッチの FCIP 機能も、FCIP リンクごとに TCP 接続を 2 つ作成します。
• もう一方の接続はファイバ チャネル制御フレーム、つまりスイッチ/スイッチ プロトコル フレーム(すべてクラス F)専用です。これにより、すべての制御フレームの遅延が軽減されます。
IPS モジュールまたは MPS-14/2 モジュールで FCIP をイネーブルにするには、FCIP プロファイルおよび FCIP インターフェイス(インターフェイス FCIP)を設定する必要があります。
2 つのピア間に FCIP リンクが確立されます。VE ポート初期化動作は、通常の E ポートと同じです。この動作はリンクが FCIP であるか、または純粋なファイバ チャネルであるかに関係なく、E ポート検出プロセス(ELP、ESC)に基づいて決まります。
FCIP リンクが確立されると、すべてのスイッチ間通信(ドメイン管理、ゾーン、VSAN など)で、VE ポートの動作が E ポートの動作と同じになります。ファイバ チャネル レイヤでは、VE および E ポートの動作はすべて同じです。
FCIP リンクのエンドポイントを 2 つ作成すると、2 つの IPS モジュールまたは MPS-14/2 モジュール間に FCIP リンクが確立されます。FCIP リンクを作成するには、FCIP インターフェイスにプロファイルを割り当て、ピア情報を設定します。ピア IP スイッチ情報によって、そのピア スイッチへの FCIP リンクが開始(作成)されます(図 2-3 を参照)。
図 2-3 各ギガビット イーサネット インターフェイスへのプロファイルの割り当て
FCIP プロファイルには、ローカル IP アドレスおよび TCP パラメータに関する情報が含まれます。プロファイルで定義される情報は、次のとおりです。
• ローカル接続ポイント(IP アドレスおよび TCP ポート番号)
• このプロファイルを使用するすべての FCIP リンクの基礎となる TCP 接続の動作
FCIP リンクが終端するギガビット イーサネット ポートは、FCIP プロファイルのローカル IP アドレスによって決まります(図 2-4 を参照)。
FCIP プロファイルを作成するには、ギガビット イーサネット インターフェイスまたはサブインターフェイスのローカル IP アドレスを FCIP プロファイルに割り当てる必要があります。インターフェイスには IPv4 または IPv6 のアドレスを割り当てることができます。図 2-5 に設定例を示します。
図 2-5 各ギガビット イーサネット インターフェイスへのプロファイルの割り当て
FCIP インターフェイスは FCIP リンクおよび VE ポート インターフェイスのローカル エンドポイントです。すべての FCIP および E ポート パラメータは、FCIP インターフェイスに対するコンテキスト内で設定されます。
• FCIP プロファイル:FCIP リンクを開始するギガビット イーサネット ポートを判別し、TCP 接続動作を定義します。
FCIP 設定で使用できるハイ アベイラビリティ ソリューションは、次のとおりです。
• 「FSPF」
• 「VRRP」
図 2-6 に、ポートチャネルベースのロード バランシング設定例を示します。この設定を実行するには、SAN アイランドごとに 2 つの IP アドレスが必要です。このソリューションにより、リンク障害が解決されます。
ファイバ チャネル ポートチャネル ソリューションは、次の特性によって他のソリューションから区別されます。
• バンドル全体が 1 つの論理(E)ISL リンクになります。
図 2-7 に、FPSF ベースのロード バランシング設定例を示します。この設定では、SAN アイランドごとに 2 つの IP アドレスが必要です。この設定により、IP および FCIP リンクの障害が解決されます。
FSPF ソリューションは、次の特性によって他のソリューションから区別されます。
• 各 FCIP リンクは、それぞれ異なる(E)ISL です。
図 2-8 に、V仮想ルータ冗長プロトコル(VRRP)ベースのハイ アベイラビリティ FCIP 設定例を示します。この設定では、VRRP を使用してハイ アベイラビリティを確保する必要があるアイランドのイーサネット スイッチに対して、少なくとも 2 つの物理ギガビット イーサネット ポートを接続する必要があります。
VRRP ソリューションは、次の特性によってその他のソリューションから区別されます。
• アクティブ VRRP ポートに障害が発生すると、スタンバイ VRRP ポートが VRRP IP アドレスを引き継ぎます。
図 2-9 に、イーサネット PortChannel ベースのハイ アベイラビリティ FCIP の例を示します。このソリューションは、各ギガビット イーサネット リンク障害によって引き起こされる問題を解決します。
図 2-9 イーサネット ポートチャネルベースのハイ アベイラビリティ
イーサネット ポートチャネル ソリューションは、次の特性によってその他のソリューションから区別されます。
• ギガビット イーサネット リンク レベルの冗長性により、ギガビット イーサネット リンクの 1 つに障害が発生した場合も、透過的なフェールオーバーが実現します。
• イーサネット ポートチャネル上の 2 つのギガビット イーサネット ポートが、論理的な 1 つのギガビット イーサネット リンクのように表示されます。
イーサネット ポートチャネルは、Cisco MDS 9000 ファミリ スイッチのギガビット イーサネット ポートと、それに接続しているイーサネット スイッチ間にリンクの冗長性をもたらします。ファイバ チャネル ポートチャネルも、ファイバ チャネルスイッチ間に(E)ISL リンクの冗長性をもたらします。FCIP は(E)ISL リンクであり、ファイバ チャネル ポートチャネルにかぎって適用されます。FCIP レベルの下で、FCIP リンクはイーサネット ポートチャネルの上で動作するか、または 1 つのギガビット イーサネット ポート上で動作できます。リンクはファイバ チャネル レイヤに対して完全に透過的です。
イーサネット PortChannel の制約により、1 つのイーサネット PortChannel 内で組み合わせて使用できる IPS ポートは、連続する 2 つのポート(ポート 1 ~ 2 や 3 ~ 4)です(詳細については「IP ストレージの設定」を参照してください)。この制約を受けるのは、イーサネット ポートチャネルにかぎられます。(FCIP リンクを組み込むことのできる)ファイバ チャネル ポートチャネルの場合、互換性チェックに合格するかぎり、ファイバ チャネル ポートチャネルで結合できる(E)ISL リンクに関して制約はありません。ファイバ チャネル ポートチャネルに組み込むことのできるファイバ チャネル ポートの最大数は 16 です(図 2-10 を参照)。
図 2-10 ファイバ チャネルおよびイーサネット レベルのポートチャネル
ファイバ チャネル ポートチャネルを設定するには、『Interfaces Configuration Guide, Cisco DCNM for SAN』を参照してください。
イーサネット ポートチャネルを設定するには、『High Availability and Redundancy Configuration Guide,Cisco DCNM for SAN』を参照してください。
FCIP の基本設定では、ローカル IP アドレスを使用して FCIP プロファイルを設定します。FCIP プロファイルの設定の一部として、ローカル IP アドレスおよびローカル ポート以外に、その他の TCP パラメータを指定できます。
すべての FCIP および E ポート パラメータは、FCIP インターフェイスに対するコンテキスト内で設定されます。FCIP リンクを作成するには、FCIP インターフェイスにプロファイルを割り当て、ピア情報を設定します。ピア IP スイッチ情報によって、そのピア スイッチへの FCIP リンクが開始(作成)されます。FCIP の基本設定では、ピア IP アドレスを使用してピア情報を設定します。ピアとの FCIP リンクを確立するには、ピア IP アドレス オプションを使用できます。このオプションは、FCIP リンクの両端を設定します。IP アドレスとともに、ピア TCP ポートを使用することもできます。
ピアとの FCIP リンクを確立するには、ピア IP アドレス オプションを使用できます。このオプションは、FCIP リンクの両端を設定します。IP アドレスとともに、ピア TCP ポートを使用することもできます。
通常、E ポートはファイバ チャネル スイッチと相互接続します。一方、シスコ製 PA-FC-1G ファイバ チャネル ポート アダプタ、SN 5428-2 ストレージ ルータなど、一部の SAN エクステンダ デバイスは、地理的に分散したファブリックを接続するためのブリッジ ポート モデルを実装しています。このモデルは、T11 Standard FC-BB-2 に記載されているとおりに B ポートを使用します。図 2-11 は、IP ネットワークによる一般的な SAN 拡張を表しています。
図 2-11 FCIP B ポートおよびファイバ チャネル E ポート
B ポートは、ローカル E ポートからリモート E ポートにファイバ チャネル トラフィックをブリッジします。主要スイッチの選定、ドメイン ID の割り当て、およびファイバ チャネル Fabric Shortest Path First(FSPF)ルーティングなど、ファブリック関連アクティビティには関与しません。たとえば、SAN エクステンダに入るクラス F トラフィックは、B ポートと相互作用しません。このトラフィックは WAN インターフェイスを介して透過的に伝播(ブリッジ)され、その後、リモート B ポートから送信されます。このブリッジにより、両方の E ポートでクラス F 情報が交換され、最終的に、ファブリック統合およびルーティングなどの通常の ISL 動作が実行されます。
B ポート SAN エクステンダ間の FCIP リンクでは、E ポート間の FCIP リンクと同じ情報が交換されないため、互換性がありません。このことは、FC-BB-2 で次のように表現されています。 VE ポートでは FCIP リンクを使用して仮想 ISL を確立しますが、B ポートでは B アクセス ISL を使用します 。
IPS モジュールおよび MPS-14/2 モジュールは、ギガビット イーサネット インターフェイス上で B アクセス ISL プロトコルを実装して、B ポート SAN エクステンダ デバイスから接続された FCIP リンクをサポートします。対応する仮想 B ポートと仮想 E ポートは内部的に接続されているため、エンドツーエンドの E ポート接続要件が満たされています(図 2-12 を参照)。
IPS モジュールおよび MPS-14/2 モジュールの B ポート機能を使用すると、リモート B ポート SAN エクステンダは Cisco MDS 9000 ファミリ スイッチと直接通信できるため、ローカル ブリッジ デバイスが不要になります。
Quality of Service(QoS)パラメータでは、すべての IP パケットをマーク付けする DiffServ コード ポイント(DSCP)値を指定します(タイプ オブ サービス:IP ヘッダーの TOS フィールド)。
• 制御 DSCP 値は、制御 TCP 接続のすべての FCIP フレームに適用されます。
• データ DSCP 値は、データ接続のすべての FCIP フレームに適用されます。
FCIP リンクの TCP 接続が 1 つだけの場合は、その接続のすべてのパケットにデータ DSCP 値が適用されます。
• FCIP インターフェイスは任意の VSAN のメンバーにすることができます。
• 隣接スイッチからのゾーン データベースのインポートとエクスポート
• FCIP インターフェイスは任意の VSAN のメンバーにすることができます。
『 Fabric Configuration Guide,Cisco DCNM for SAN 』を参照してください。
『Interfaces Configuration Guide,Cisco DCNM for SAN』を参照してください。
– 複数の FCIP リンクを 1 つのファイバ チャネル ポートチャネルにバンドルできます。
– FCIP リンクおよびファイバ チャネル リンクを 1 つのポートチャネルには結合できません。
『Security Configuration Guide,Cisco DCNM for SAN』を参照してください。
『Fabric Configuration Guide, Cisco DCNM for SAN』を参照してください。
『System Management Configuration Guide, Cisco DCNM for SAN』を参照してください。
• 隣接スイッチからのゾーン データベースのインポートとエクスポート
『System Management Configuration Guide, Cisco DCNM for SAN』を参照してください。
FCIP 書き込みアクセラレーション機能によって、FCIP を使用して WAN 上でストレージ トラフィックをルーティングする場合のアプリケーション書き込みパフォーマンスを大幅に改善できます。FCIP 書き込みアクセラレーションがイネーブルの場合、書き込み処理に関する WAN 遅延の影響を最小限に抑えることによって、WAN スループットが最大化されます。
(注) 書き込みアクセラレーション機能はデフォルトでディセーブルであり、FCIP リンクの両側でイネーブルにする必要があります。FCIP トンネルの片側だけでイネーブルにした場合、書き込みアクセラレーション機能は処理時にオフになります。
(注) IBM ピアツーピア リモート コピー(PPRC)は、FCIP 書き込みアクセラレーションではサポートされません。
書き込みアクセラレーションを使用しないで WRITE コマンド(図 2-13 を参照)を実行する場合は、Round-Trip Transfer(RTT)が 2 つ必要ですが、書き込みアクセラレーションを使用して WRITE コマンドを実行する場合に必要な RTT は 1 つだけです。最大サイズの Transfer Ready が FCIP リンクのホスト側からホストに戻されたあとで、WRITE コマンドがターゲットに到達します。これにより、ホストは FCIP リンク上で WRITE コマンドおよび Transfer Ready を長時間待機しなくても、書き込みデータ送信を開始できます。また、FCIP リンクを経由して交換する場合には複数の Transfer Ready が必要ですが、これによる遅延もなくなります。
ヒント チャネル モードをアクティブに設定したダイナミック ポートチャネルに FCIP トンネルが含まれている場合、複数の FCIP トンネルに対して FCIP 書き込みアクセラレーションをイネーブルにできます。発信側とターゲット ポート間に重みの等しい、複数の非ポートチャネル ISL が存在している場合、FCIP 書き込みアクセラレーションは機能しません。このような設定では、SCSI 検出に失敗したり、WRITE または READ 処理が失敗したりすることがあります。
ヒント 書き込みアクセラレーションが設定された FCIP インターフェイス上では、タイムスタンプ制御をイネーブルにしないでください。
(注) FCIP 環境における複数の FSPF 等コスト パスにわたって書き込みアクセラレーションを使用することはできません。ネイティブ ファイバ チャネル書き込みアクセラレーションは、ポートチャネルで使用できます。チャネル モードがアクティブに設定されたポートチャネル、またはポートチャネル プロトコル(PCP)で構成されたポート チャネルでも、FCIP 書き込みアクセラレーションを使用できます。
FCIP 書き込みアクセラレーション機能によって、FCIP を使用して WAN 上でストレージ トラフィックをルーティングする場合のアプリケーション書き込みパフォーマンスを大幅に改善できます。FCIP 書き込みアクセラレーションがイネーブルの場合、書き込み処理に関する WAN 遅延の影響を最小限に抑えることによって、WAN スループットが最大化されます。書き込みアクセラレーション機能はデフォルトでディセーブルであり、FCIP リンクの両側でイネーブルにする必要があります。テープはユーザ データを順番に格納して検索するストレージ デバイスです。Cisco MDS NX-OS は、テープ書き込みアクセラレーションと読み取りアクセラレーションの両方を提供します。
テープ デバイスにアクセスするアプリケーションでは通常、未処理状態になる SCSI WRITE または READ 動作は 1 つだけです。このシングル コマンド プロセスにより、長距離 WAN リンク上で FCIP トンネルを使用する場合は、テープ アクセラレーション機能の利点が制限されます。ホストがテープ ドライブから正常なステータス応答を受信しないかぎり、各 SCSI WRITE または READ 処理が完了しないため、バックアップ、アーカイブ、および復元のパフォーマンスが低下します。FCIP テープ アクセラレーション機能は、この問題の解消に有効です。この機能はホストとテープ ドライバ間で、WAN リンクを介して送信されるデータ ストリーミングを高速化することにより、テープのバックアップ、アーカイブ、および復元処理を改善します。
書き込み処理に関するテープ アクセラレーションの例では、バックアップ サーバ(図 2-14 を参照)がテープ ライブラリのドライブに書き込み処理を発行します。ローカル Cisco MDS スイッチはリモート テープ ドライブのプロキシとして動作することにより、Transfer Ready を代行し、ホストにデータ送信の開始を伝えます。すべてのデータを受信してから、ローカル Cisco MDS スイッチは SCSI WRITE 処理の正常完了を代行して通知します。この応答により、ホストは次の SCSI WRITE 処理を開始できます。このプロキシ方式を使用すると、プロキシを使用しないでデータを送信する場合に比べて、同じ期間内に FCIP トンネルを介して多くのデータを送信できます。プロキシ方式により、WAN リンクのパフォーマンスが向上します。
図 2-14 FCIP リンクのテープ アクセラレーション(書き込み処理の場合)
FCIP トンネルのテープ側にあるもう片方の Cisco MDS スイッチでは、受信したコマンドおよびデータをバッファに格納します。その後、テープ ドライブからの Transfer Ready を待ち受けてデータを転送することにより、テープ ドライブのバックアップ サーバとして機能します。
(注) 制御 LUN またはメディア チェンジャが LUN 0 として、テープ ドライブがその他の LUN としてエクスポートされるテープ ライブラリ環境において、リンクのアップ/ダウンが短時間で繰り返されるような状況(FCIP リンク、Server/Tape Port リンク)では、テープ アクセラレーションでテープ セッションが検出されず、これらのセッションが高速化されない可能性があります。リンクをイネーブルにする前に数分間、FCIP リンクをディセーブルにする必要があります。これは、テープ ドライブが直接 FC 接続されているか、LUN 0 としてエクスポートされたテープ環境には適用されません。
Cisco NX-OS は、WAN 上の TCP/IP によって、リモート テープ ドライブに確実にデータを配信します。プロキシに頼らずにエンドツーエンドで WRITE FILEMARKS 処理を完了させることによって、書き込みデータの完全性が維持されます。WRITE FILEMARKS 処理は、テープ ライブラリ データとバッファ データの同期を通知します。テープ メディア エラーがエラー処理のためにバックアップ サーバに戻されると、Cisco NX-OS ソフトウェアが自動的にテープ ビジー エラーを再試行します。
読み取り処理に関するテープ アクセラレーションの例では、リストア サーバ(図 2-15 を参照)がテープ ライブラリのドライブに読み取り処理を発行します。復元プロセスでは、テープ側のリモート Cisco MDS スイッチは、ホストからさらに SCSI 読み取り処理が要求されることを予測して、テープ ドライブに SCSI 読み取り処理を独自に送信します。先取りの読み取りデータはローカル Cisco MDS スイッチでキャッシュに格納されます。ホストから SCSI 読み取り処理を受信したローカル Cisco MDS スイッチは、キャッシュのデータを送信します。この方式を使用すると、テープに読み取りアクセラレーションを使用しないでデータを送信する場合に比べて、同じ期間内に FCIP トンネルを介して多くのデータを送信できます。その結果、WAN リンク上でのテープ読み取りパフォーマンスが向上します。
図 2-15 FCIP リンクのテープ アクセラレーション(読み取り処理の場合)
Cisco NX-OS は、WAN 上の TCP/IP によって、復元アプリケーションに確実にデータを配信します。読み取り処理中のテープ メディア エラーは、エラー処理のためにリストア サーバに戻されますが、それ以外のエラーは Cisco NX-OS ソフトウェアで回復されます。
(注) FCIP テープ アクセラレーション機能はデフォルトでディセーブルであり、FCIP リンクの両側でイネーブルにする必要があります。FCIP トンネルの片側だけでイネーブルにした場合、テープ アクセラレーション機能は処理時にオフになります。
ヒント FCIP ポートがポートチャネルに属す場合、または発信側ポートとターゲット ポートの間に複数のパスが存在する場合、FCIP テープ アクセラレーションは機能しません。このような設定では、SCSI 検出に失敗したり、読み書き処理が中断されたりすることがあります。
(注) FCIP トンネルに対してテープ アクセラレーション機能をイネーブルにすると、トンネルが再初期化され、書き込みおよび読み取りアクセラレーション機能も自動的にイネーブルになります。
書き込みのテープ アクセラレーションでは、リモート Cisco MDS スイッチで一定量のデータがバッファに格納されたあとで、Transfer Ready の代行によってではなく、ローカル Cisco MDS スイッチによって、ホストからの書き込み処理がフロー制御されます。書き込み処理が完了し、一部のデータ バッファが解放されると、ローカル Cisco MDS スイッチがプロキシ処理を再開します。同様に、読み取りのテープ アクセラレーションでは、ローカル Cisco MDS スイッチで一定量のデータがバッファに格納されたあとで、さらに読み取りを発行するのではなく、リモート Cisco MDS スイッチによって、テープ ドライブへの読み取り処理がフロー制御されます。書き込み処理が完了し、一部のデータ バッファが解放されると、リモート Cisco MDS スイッチが読み取りの発行を再開します。
デフォルトのフロー制御バッファリングでは、 automatic オプションを使用します。このオプションでは、WAN 遅延およびテープ速度を考慮して、最適なパフォーマンスが確保されます。ユーザ側でフロー制御バッファ サイズを指定することもできます(最大バッファ サイズは 12 MB)。
ヒント フロー制御バッファリングには、デフォルト オプションの使用を推奨します。
ヒント テープ アクセラレーションが設定された FCIP インターフェイス上では、タイムスタンプ制御をイネーブルにしないでください。
(注) FCIP トンネルの片側が Cisco MDS SAN OS リリース 3.0(1) 以降および NX-OS リリース 4.x を実行し、もう一方の側が Cisco MDS SAN OS リリース 2.x を実行している場合、テープ アクセラレーションをイネーブルにすると、FCIP トンネルはテープ書き込みアクセラレーションだけを実行しますが、テープ読み取りアクセラレーションは実行しません。
(注) Cisco MDS NX-OS リリース 4.2(1) では、FCIP テープ アクセラレーション機能は、MDS スイッチ間の FCIP バックツーバック接続でサポートされていません。
テープ ライブラリが論理ユニット(LU)マッピングを行い、FCIP テープ アクセラレーションがイネーブルの場合は、ターゲット ポートからアクセスできる各物理テープ ドライブに、固有の論理ユニット番号(LUN)を割り当てる必要があります。
図 2-16 に、単一ターゲット ポートからスイッチ 2 に接続されたテープ ドライブを示します。テープ ライブラリが LUN マッピングを行う場合は、4 つすべてのテープ ドライブに固有の LUN を割り当てる必要があります。
表 2-1 および 表 2-2 に示したマッピングの場合、ホスト 1 はドライブ 1 およびドライブ 2 に、ホスト 2 はドライブ 3 およびドライブ 4 にアクセスできます。
表 2-1 に、有効なテープ ライブラリ LUN マッピングを示します。
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表 2-2 に、無効なテープ ライブラリ LUN マッピングを示します。
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次に、1 つのテープ ポートを介して、複数のホストでテープ ドライブを共有する場合の設定例を示します。この例では、ホスト 1 がドライブ 1 およびドライブ 2 にアクセスでき、ホスト 2 がドライブ 2、ドライブ 3、およびドライブ 4 にアクセスできます。 表 2-3 に、この設定で有効な LUN マッピングを示します。
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FCIP 圧縮機能を使用すると、FCIP リンク上でこの機能がイネーブルの場合に、そのリンク上で IP パケットを圧縮できます。デフォルトでは、FCIP 圧縮はディセーブルです。イネーブルの場合、ソフトウェアはデフォルトで auto モードを使用します(モードが指定されていない場合)。
(注) auto モード(デフォルト)では、カード タイプおよびリンクの帯域幅(FCIP プロファイルの TCP パラメータに設定されているリンクの帯域幅)に基づいて適切な圧縮方式が選択されます。
表 2-4 に、それぞれのカードで使用されるモードを示します。
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(注) SAN-OS リリース 3.3(1) 以降および NX-OS リリース 4.x では、MDS 9222i スイッチおよび MSM-18/4 モジュールのすべての圧縮オプションはハードウェア圧縮を意味します。リリース 4.2(1) より、自動圧縮およびモード 2 圧縮だけが MDS 9222i スイッチ、MSM-18/4 モジュール、および SSN-16 モジュールでサポートされています。
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(注) Cisco MDS 9216i および 9222i スイッチは、IP 圧縮機能もサポートします。統合型スーパーバイザ モジュールには、MPS-14/2 モジュールと同じハードウェア コンポーネントが搭載されています。
ヒント Cisco SAN OS リリース 1.x から Cisco SAN OS リリース 2.0(1b) 以降または NX-OS リリース 4.x にアップグレードする場合、アップグレードする前に圧縮をディセーブルにして、アップグレードが完了してから必要な圧縮モードをイネーブルにすることを推奨します。
FCIP リンクの両側で Cisco SAN OS リリース 2.0(1b) 以降および NX-OS リリース 4.x が使用されていて、FCIP トンネルの一方の側で圧縮をイネーブルにする場合には、必ずリンクのもう一方の側でも圧縮をイネーブルにします。
表 2-6 に、FCIP パラメータのデフォルト設定を示します。
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• 「Cisco Transport Controller の起動」
(注) Cisco MDS SAN-OS リリース 2.0 以降および NX-OS リリース 4.x は、既存のファブリックの一部ではないスイッチにログインするための追加のログイン プロントがあります。
DCNM-SAN を使用して FCIP リンクを作成したり、管理したりするには、FCIP Wizard を使用します。必要とする Cisco MDS 9000 ファミリ スイッチに IP サービス モジュールが搭載されていること、およびこれらのスイッチのギガビット イーサネット インターフェイスが接続されていることを確認してから、その接続性を確認します。FCIP Wizard を使用して FCIP リンクを作成するには、次の手順に従います。
• (任意)FCIP 書き込みアクセラレーションまたは FCIP 圧縮をイネーブルにします。
FCIP Wizard を使用して FCIP リンクを作成する手順は、次のとおりです。
ステップ 1 DCNM-SAN ツールバーで [FCIP Wizard] アイコンをクリックします(図 2-17 を参照)。
ステップ 2 FCIP リンクのエンドポイントとして動作するスイッチを選択し、[Next] をクリックします。
ステップ 3 FCIP リンクを形成するスイッチごとに、ギガビット イーサネット ポートを選択します。
ステップ 4 両方のギガビット イーサネット ポートが MPS-14/2 モジュールに含まれている場合は、[Enforce IPSEC Security] チェックボックスをオンにして、[IKE Auth Key] を設定します。IPsec および IKE の詳細については、『Security Configuration Guide, Cisco DCNM for SAN』を参照してください。
2300 というジャンボ サイズのフレームを使用するために、[Use Large MTU Size (Jumbo Frames)] オプションを選択します。ファイバ チャネルのフレームは 2112 であるため、このオプションを使用することを推奨します。ボックスの選択を解除した場合、FCIP Wizard は MTU サイズを設定しません。したがって、デフォルト値の 1500 に設定されます。
(注) Cisco MDS 9000 SAN-OS、Release 3.0(3) の場合、デフォルトでは [Use Large MTU Size (Jumbo Frames)] オプションは選択されません。
[IP Address/Route] 入力画面が表示されます。
ステップ 6 IP ルートを追加する場合、[Add IP Route] を選択します。選択しない場合、デフォルトのままになります。
ステップ 8 FCIP リンク上の TCP 接続の最小および最大帯域幅、および往復時間を設定します。
ギガビット イーサネットのエンドポイント間の往復時間は、[Measure] ボタンをクリックすると測定できます。
ステップ 9 [Write Acceleration] チェックボックスをオンにして、FCIP リンク上の FCIP 書き込みアクセラレーションをイネーブルにします。
「FCIP 書き込みアクセラレーション」を参照してください。
ステップ 10 [Enable Optimum Compression] チェックボックスをオンにして、FCIP リンク上の IP 圧縮をイネーブルにします。
「FCIP 圧縮」を参照してください。
ステップ 11 [Enable XRC Emulator] チェックボックスをオンにして、この FCIP リンクの XRC エミュレータをイネーブルにします。
XRC エミュレータの詳細については、『Fabric Configuration Guide, Cisco DCNM for SAN』を参照してください。
ステップ 13 [Port VSAN] を設定して、この FCIP リンクの [Trunk Mode] オプション ボタンをクリックします
ステップ 14 [Finish] をクリックして、この FCIP リンクを作成します。
FCIP Wizard を使用して FCIP リンクを作成したあと、これらのリンクのパラメータを変更することが必要となる場合があります。変更が必要なのは、FCIP プロファイル、FCIP リンク パラメータなどです。各ギガビット イーサネット インターフェイスには、アクティブな FCIP リンクを一度に 3 つ設定できます。
FCIP リンクを変更するには、両方のスイッチで次の手順を実行します。
ステップ 1 ギガビット イーサネット インターフェイスを設定します。
ステップ 2 FCIP プロファイルを作成し、ギガビット イーサネット インターフェイスの IP アドレスをプロファイルに割り当てます。
ステップ 3 FCIP インターフェイスを作成し、インターフェイスにプロファイルを割り当てます。
ステップ 4 FCIP インターフェイスのピア IP アドレスを設定します。
スイッチ 1 の FCIP プロファイルを作成する手順は、次のとおりです。
ステップ 1 IPS モジュールが搭載されたスイッチに接続していることを確認します。
ステップ 2 DCNM-SAN の [Physical Attributes] ペインで、[Switches] > [ISLs] > [FCIP] を選択します。Device Manager の [IP] メニューで、[FCIP] を選択します。
ステップ 3 新しいプロファイルを追加するには、DCNM-SAN で [Create Row] ボタンをクリックします。Device Manager の場合は、[Create] ボタンをクリックします。
ステップ 4 [ProfileId] フィールドにプロファイル ID を入力します。
ステップ 5 プロファイルをバインドするインターフェイスの IP アドレスを入力します。
ステップ 6 必要に応じて、オプションの TCP パラメータを変更します。これらのフィールドの説明については、DCNM for SAN のオンライン ヘルプを参照してください。
ステップ 7 (任意)[Tunnels] タブをクリックして、リンク先エンドポイントの [Remote IPAddress] フィールドのリモート IP アドレスを変更します。
ステップ 8 必要に応じて、オプション パラメータを入力します。
FCIP プロファイル情報を表示する場合の詳細については、「FCIP プロファイル」を参照してください。
ステップ 9 [Apply Changes] アイコンをクリックして、変更を保存します。
デフォルトでは、トランク モードは、すべてのファイバ チャネル インターフェイスでイネーブルです。ただし、トランク モード設定は E ポート モードでしか有効になりません。トランク モードを on(イネーブル)、off(ディセーブル)、または auto(自動)に設定できます。デフォルトのトランク モードは on です。2 つのスイッチ間での ISL の両端のトランク モード設定により、リンクのトランキング状態および両端のポート モードが決まります。
Device Manager で FCIP インターフェイスのトランク ステータスを確認する手順は、次のとおりです。
ステップ 1 IPS モジュールが搭載されたスイッチに接続していることを確認します。
ステップ 2 [IP] メニューで [FCIP] を選択します。
ステップ 3 [Trunk Config] タブが選択されていない場合は、クリックします。[FCIP Trunk Config] ダイアログボックスが表示されます。このダイアログには、インターフェイスのステータスが表示されます。
ステップ 4 [Trunk Failures] タブが選択されていない場合は、クリックします。[FCIP Trunk Failures] ダイアログボックスが表示されます。
Cisco Transport Controller(CTC)は、ネットワーク要素のインストール、プロビジョニング、およびメンテナンスに使用するタスク型ツールです。NE 障害が発生した場合のトラブルシューティングおよび修復にも使用します。
ステップ 1 ファブリックで光トラフィックを伝送している ISL を右クリックします。
ステップ 2 [Element Manager] をクリックします。
ステップ 3 Cisco Transport Controller の URL を入力します。
このセクションで説明された TCP パラメータを設定することにより、スイッチ内の TCP 動作を制御できます。
(注) FCIP を WAN リンクを介して伝送する場合、デフォルトの TCP 設定が適さないことがあります。このような場合は、TCP パラメータ(具体的には、帯域幅、往復時間、および CWM バースト サイズ)を変更することによって、FCIP WAN リンクを調整することを推奨します。
FCIP リンクが動作しているかどうかを TCP 接続で確認するインターバルを設定できます。この確認によって、トラフィックがない場合でも、FCIP リンク障害が迅速に検出されます。
接続のアイドル状態が続く最初のインターバルを設定できます(60 秒がデフォルト)。設定されたインターバルの間、接続がアイドル状態だった場合は、8 つのキープアライブ プローブが 1 秒間隔で送信されます。8 つのプローブに応答がなく、その間も接続のアイドル状態が続いた場合は、FCIP リンクが自動的に終了します。
(注) 変更できるのは、(接続がアイドル状態である)最初のインターバルだけです。
Path MTU(PMTU)は、IP ネットワークにおける FCIP リンクの 2 つのエンドポイント間の最小 MTU です。PMTU ディスカバリは、TCP が PMTU をダイナミックに学習し、最大 TCP セグメントを相応に調整するメカニズムです(RFC 1191)。
デフォルトでは、PMTU ディスカバリはすべてのスイッチでイネーブルになり、タイムアウトは 3600 秒です。PMTU の変更によって TCP の最大セグメント サイズを引き下げる場合は、時間がどれだけ経過したら TCP が元の MTU を試行するのか、その時間を reset-timeout で指定します。
1 つのウィンドウ内で複数のパケットが失われると、TCP のパフォーマンスが低下する可能性があります。累積確認応答から取得できる情報は限定されているため、TCP の送信側が学習できるのは、1 往復について 1 つの消失パケットに関する情報だけになります。選択的確認応答(SACK答)メカニズムによって、TCP 伝送時の複数の消失パケットに伴う制限を克服できます。
受信側 TCP は、送信側に SACK アドバタイズメントを送り返します。送信側はその後、欠落したデータ セグメントだけを再送信できます。Cisco MDS 9000 ファミリ スイッチ上では、SACK はデフォルトでイネーブルです。
最大帯域幅パラメータ、最小使用可能帯域幅パラメータ、および動的に測定されるラウンドトリップ時間(RTT)を使用して、最適な TCP ウィンドウ サイズが自動的に計算されます。
(注) 設定された round-trip-time パラメータによって、TCP 接続のウィンドウ倍率が決まります。このパラメータは、近似値にすぎません。計測された RTT 値によって、ウィンドウ管理の往復時間パラメータが上書きされます。設定された round-trip-time が計測された RTT に対して小さすぎる場合は、ウィンドウ倍率が小さすぎるために、リンクがフルに利用されていない可能性があります。
min-available-bandwidth パラメータと計測された RTT の組み合わせに基づいてしきい値が決定され、このしきい値を下回ると、最小限利用可能な帯域幅で送信できるだけのウィンドウ サイズを TCP が積極的に維持します。
max-bandwidth-mbps パラメータと計測された RTT の組み合わせによって、最大ウィンドウ サイズが決まります。
(注) 物理リンクで最悪の場合に利用可能な帯域幅と一致するよう最大帯域幅を設定します。このリンクを通過する他のトラフィック(たとえば、他の FCIP トンネル、WAN 制限)に注意してください。最大帯域幅とは、総帯域幅からこのリンクを通過する他のトラフィックを引いたものです。
Congestion Window Monitoring(CWM; 輻輳ウィンドウ モニタリング)パラメータをイネーブルにすると、各アイドル期間経過後の輻輳が TCP によって監視されるようにできます。CWM パラメータによって、アイドル期間経過後の最大許容バースト サイズも決まります。このパラメータはデフォルトでイネーブルになり、バースト サイズは 50 KB です。
次に、帯域幅パラメータと CWM の相互作用、および結果としての TCP 動作について簡単に説明します。
• 前の RTT におけるファイバ チャネル トラフィックの平均レートが min-available-bandwidth に RTT を乗じた値に満たない場合、TCP ドロップが発生しないかぎり、バースト全体が min-available-bandwidth レートでただちに送信されます。
• ファイバ チャネル トラフィックの平均レートが min-available-bandwidth に RTT を乗じた値よりも大きく、max-bandwidth に RTT を乗じた値よりも小さい場合で、かつ、ファイバ チャネル トラフィックが設定された CWM 値よりも小さいバースト サイズで伝送される場合、バースト全体が FCIP によって max-bandwidth レートでただちに送信されます。
• ファイバ チャネル トラフィックの平均レートが min-available-bandwidth に RTT を乗じた値よりも大きく、バースト サイズが CWM 値より大きい場合は、バーストの一部分だけが即時送信されます。残りは次の RTT で送信されます。
ソフトウェアでは標準の TCP ルールを使用して、min-available-bandwidth の維持に必要な値よりウィンドウを拡大し、max-bandwidth に近づけます。
ヒント 最適なパフォーマンスを実現するために、この機能はイネーブルのままにしておくことを推奨します。CWM バースト サイズを大きくすると、IP ネットワークでのパケット ドロップが増え、TCP パフォーマンスが影響を受ける可能性があります。IP ネットワークに十分なバッファリングがある場合にかぎり、CWM バースト サイズをデフォルトより大きくして、送信遅延の軽減を図ってください。
ジッタは、受信パケットの遅延変動として定義されます。送信側では、パケットはパケット間隔が均一な連続ストリームとして送信されます。ネットワークの輻輳、不適切なキューイング、または設定エラーが原因で、この安定したストリームにむらが生じたり、各パケットの遅延が一定ではなく、ばらつきが生じたりすることがあります。
パケット送信側に基づく最大推定ジッタをマイクロ秒単位で設定できます。推定変動には、ネットワーク キューイング遅延は含まれません。IPS モジュールまたは MPS-14/2 モジュールが搭載されている Cisco MDS スイッチでは、このパラメータはデフォルトでイネーブルです。
FCIP インターフェイスに対するスイッチの出力パスをフロー制御するまでに、TCP で許容される必要な追加バッファリング(標準送信ウィンドウ サイズを上回る)を定義できます。デフォルトの FCIP バッファ サイズは 0 KB です。
(注) FCIP トラフィックがハイ スループットの WAN リンクを通過する場合は、デフォルト値を使用してください。ファイバ チャネル リンクと WAN リンク間で速度が一致していないと、DMA ブリッジでタイムスタンプ エラーが生じます。このような場合は、バッファ サイズを増やすことによって、タイムスタンプ エラーを回避できます。
FCIP の基本設定では、ピア IP アドレスを使用してピア情報を設定します。ピアのポート番号を指定して、ピア情報を設定することもできます。ポートを指定しなかった場合は、接続を確立するためにデフォルトの 3225 ポート番号が使用されます。IPv4 アドレスまたは IPv6 アドレスを指定できます。
IPv4 アドレスおよびポート番号に基づいてピア情報を割り当てる手順は、次のとおりです。
ステップ 1 [Physical Attributes] ペインで [ISLs] を展開し、[FCIP] を選択します。
[Information] ペインに FCIP プロファイルおよびリンクが表示されます。
Device Manager で、[IP] > [FCIP] を選択します。
ステップ 2 [Tunnels] タブをクリックします。FCIP リンク情報が表示されます。
ステップ 3 DCNM-SAN で [Create Row] アイコンをクリックするか、または Device Manager で [Create] ボタンをクリックします。
[FCIP Tunnels] ダイアログボックスが表示されます。
ステップ 4 [ProfileID] および [TunnelID] フィールドを設定します。
ステップ 5 設定中のピア IP アドレスの [RemoteIPAddress] および [RemoteTCPPort] フィールドを設定します。
ステップ 6 このリンク端で TCP 接続を開始しない場合は、[PassiveMode] チェックボックスをオンにします。
ステップ 7 (任意)[NumTCPCon] フィールドに、現在の FCIP リンクからの TCP 接続数を設定します。
ステップ 8 (任意)[Time Stamp] セクションの [Enable] チェックボックスをオンにし、[Tolerance] フィールドを設定します。
ステップ 9 (任意)このダイアログボックスのその他のフィールドを設定し、[Create] をクリックして、この FCIP リンクを作成します。
IPv6 アドレスおよびポート番号に基づいてピア情報を割り当てる手順は、次のとおりです。
ステップ 1 DCNM-SAN の [Physical Attributes] ペインで、[ISLs] > [FCIP] を選択します。
[Information] ペインに FCIP プロファイルおよびリンクが表示されます。
Device Manager で、[IP] > [FCIP] を選択します。[FCIP] ダイアログボックスが表示されます。
ステップ 2 [Tunnels] タブをクリックします。FCIP リンク情報が表示されます。
ステップ 3 DCNM- SAN で [Create Row] アイコンをクリックするか、または Device Manager で [Create] ボタンをクリックします。
[FCIP Tunnels] ダイアログボックスが表示されます。
ステップ 4 [ProfileID] および [TunnelID] フィールドを設定します。
ステップ 5 設定中のピア IP アドレスの [RemoteIPAddress] および [RemoteTCPPort] フィールドを設定します。
ステップ 6 このリンク端で TCP 接続を開始しない場合は、[PassiveMode] チェックボックスをオンにします。
ステップ 7 (任意)[NumTCPCon] フィールドに、現在の FCIP リンクからの TCP 接続数を設定します。
ステップ 8 (任意)[Time Stamp] セクションの [Enable] チェックボックスをオンにし、[Tolerance] フィールドを設定します。
ステップ 9 (任意)このダイアログボックスのその他のフィールドを設定し、[Create] をクリックして、この FCIP リンクを作成します。
TCP 接続を開始するために必要なモードを設定できます。IP 接続を能動的に試行するアクティブ モードは、デフォルトでイネーブルです。パッシブ モードをイネーブルにする場合、スイッチは TCP 接続を開始せず、ピアが接続してくるのを待機します。デフォルトで、スイッチは各 FCIP リンクに対して 2 つの TCP 接続を試行します。
(注) FCIP リンクの両端をパッシブ モードに設定しないでください。両端がパッシブに設定されていると、接続は開始されません。
指定期間外のパケットを廃棄するように、スイッチに指示できます。イネーブルの場合、この機能はパケットが受け入れられる期間を指定します。このオプションで指定された期間内に着信したパケットは、受け入れられます。そうでない場合、パケットはドロップされます。
デフォルトでは、タイムスタンプ制御は Cisco MDS 9000 ファミリのすべてのスイッチでディセーブルです。ネットワーク時刻から 2000 ミリ秒のインターバル内(+ または -2000 ミリ秒)で着信したパケットは、受け付けられます。
(注) パケットを受け入れるデフォルト値は 2000 マイクロ秒です。time-stamp オプションがイネーブルの場合は、両方のスイッチに NTP が設定されていることを確認してください(詳細については、『Cisco NX-OS Fundamentals Configuration Guide』を参照してください)。
ヒント テープ アクセラレーションまたは書き込みアクセラレーションが設定されている FCIP インターフェイスでは、タイムスタンプ制御をイネーブルにしないでください。
通常、E ポートはファイバ チャネル スイッチと相互接続します。一方、シスコ製 PA-FC-1G ファイバ チャネル ポート アダプタ、SN 5428-2 ストレージ ルータなど、一部の SAN エクステンダ デバイスは、地理的に分散したファブリックを接続するためのブリッジ ポート モデルを実装しています。このモデルは、T11 Standard FC-BB-2 に記載されているとおりに B ポートを使用します。B ポートは、ローカル E ポートからリモート E ポートにファイバ チャネル トラフィックをブリッジします。主要スイッチの選定、ドメイン ID の割り当て、およびファイバ チャネル Fabric Shortest Path First(FSPF)ルーティングなど、ファブリック関連アクティビティには関与しません。IPS モジュールおよび MPS-14/2 モジュールは、ギガビット イーサネット インターフェイス上で B アクセス ISL プロトコルを実装して、B ポート SAN エクステンダ デバイスから接続された FCIP リンクをサポートします。
FCIP ピアがファイバ チャネル B ポートだけをサポートする SAN エクステンダ デバイスの場合、FCIP リンクに対して B ポート モードをイネーブルにする必要があります。B ポートがイネーブルにされている場合、E ポート機能もイネーブルにされ、共存します。B ポートをディセーブルにしても、E ポート機能はイネーブルのままです。
B ポート モードをイネーブルにする手順は、次のとおりです。
ステップ 1 [Physical Attributes] ペインで、[ISLs] > [FCIP] を選択します。
[Information] ペインに FCIP プロファイルおよびリンクが表示されます。
Device Manager で、[IP] > [FCIP] を選択します。[FCIP] ダイアログボックスが表示されます。
ステップ 3 DCNM-SAN で [Create Row] アイコンをクリックするか、または Device Manager で [Create] ボタンをクリックします。
[FCIP Tunnels] ダイアログボックスが表示されます。
ステップ 4 [ProfileID] および [TunnelID] フィールドを設定します。
ステップ 5 設定中のピア IP アドレスの [RemoteIPAddress] および [RemoteTCPPort] フィールドを設定します。
ステップ 6 このリンク端で TCP 接続を開始しない場合は、[PassiveMode] チェックボックスをオンにします。
ステップ 7 (任意)[NumTCPCon] フィールドに、現在の FCIP リンクからの TCP 接続数を設定します。
ステップ 8 ダイアログボックスの [B Port] セクションの [Enable] チェックボックスをオンにします。任意に、FCIP ピアから受信した ELS エコー フレームに応答を送信する場合は、[KeepAlive] チェックボックスをオンにします。
ステップ 9 (任意)このダイアログボックスのその他のフィールドを設定し、[Create] をクリックして、この FCIP リンクを作成します。
FCIP 書き込みアクセラレーションをイネーブルにできるのは、FCIP Wizard を使用して FCIP リンクを作成する場合です。
既存の FCIP リンク上で書き込みアクセラレーションをイネーブルにする手順は、次のとおりです。
ステップ 1 DCNM-SAN の [Physical Attributes] ペインで、[ISLs] > [FCIP] を選択します。
[Information] ペインに FCIP プロファイルおよびリンクが表示されます。
Device Manager で、[IP] > [FCIP] を選択します。
ステップ 2 [Tunnels(Advanced)] タブをクリックします。
ステップ 3 [Write Accelerator] チェックボックスをオンまたはオフにします。
ステップ 4 [IP Compression] ドロップダウン リストから適切な圧縮率を選択します。
ステップ 5 [Apply Changes] アイコンをクリックして、これらの変更を保存します。
FCIP テープ アクセラレーションをイネーブルにする手順は、次のとおりです。
ステップ 1 DCNM-SAN の [Physical Attributes] ペインで、[ISLs] > [FCIP] を選択します。
[Information] ペインに FCIP プロファイルおよびリンクが表示されます。
Device Manager で、[IP] > [FCIP] を選択します。
ステップ 2 [Tunnels] タブをクリックします。FCIP リンク情報が表示されます。
ステップ 3 DCNM-SAN で [Create Row] アイコンをクリックするか、または Device Manager で [Create] ボタンをクリックします。
[FCIP Tunnels] ダイアログボックスが表示されます。
ステップ 4 [ProfileID] フィールドでプロファイル ID を設定し、[TunnelID] フィールドでトンネル ID を設定します。
ステップ 5 設定中のピア IP アドレスの [RemoteIPAddress] および [RemoteTCPPort] フィールドを設定します。
ステップ 6 [TapeAccelerator] チェックボックスをオンにします。
ステップ 7 (任意)このダイアログボックスのその他のフィールドを設定し、[Create] をクリックして、この FCIP リンクを作成します。
Device Manager で FCIP インターフェイスおよび Extended Link Protocol(ELP)を確認する手順は、次のとおりです。
ステップ 1 IPS モジュールが搭載されたスイッチに接続していることを確認します。
ステップ 2 [Interface] メニューで [FCIP] を選択します。
ステップ 3 [Interfaces] タブが選択されていない場合は、クリックします。[FCIP Interfaces] ダイアログボックスが表示されます。
ステップ 4 [ELP] タブが選択されていない場合は、クリックします。[FCIP ELP] ダイアログボックスが表示されます。
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エラーが検出されなかったにもかかわらず、上位層プロトコルに配信されないようにするために廃棄することが選択された着信フレームの数。 |
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インターフェイスが現在の動作状態にいつ移行したか。ローカル ネットワーク管理サブシステムの前回の初期化以前に現在の状態に移行した場合、この値は N/A です。 |
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FICON テープ アクセラレーションが設定される VSAN(1 ~ 2047 の範囲)のリスト。存在する CISCO-FICON-MIB の cficonVsanEntry がある VSAN のみ、FICON テープ アクセラレーション用に設定できます。 |
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FCIP デバイスで受信したパケットの IP 圧縮比。このオブジェクトの値は、小数点以下 2 桁までの浮動小数点数で示されます。 |
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FCIP デバイスで送信したパケットの IP 圧縮比。このオブジェクトの値は、小数点以下 2 桁までの浮動小数点数で示されます。 |
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FCIP の実装に関する詳細情報については、次の各セクションを参照してください。
• 「関連資料」
• 「標準」
• 「RFC」
• 「MIB」
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この機能によってサポートされる新しい標準または変更された標準はありません。またこの機能による既存標準のサポートに変更はありません。 |
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この機能によってサポートされる新しい RFC または変更された RFC はありません。また既存 RFC のサポートに変更はありません。 |
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表 2-7 は、この機能のリリースの履歴です。5.0(1a) 以降のリリースで追加または変更された機能だけが、表に示されています。
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