IP 最適化オプティカル トランスポート ソリューション

シスコ ルーテッド オプティカル ネットワーク

概要

サービスプロバイダーのトラフィックは、常に IP サービスによるものが大半を占めているため、

  • 次世代ネットワークアーキテクチャは、IP サービスのトランスポートに最適化していかなければなりません。
  • 従来の非 IP TDM サービスは小規模で一時的なもののため、次世代ネットワークのトランスポート アーキテクチャに与える影響を考慮する必要はありません。

現在のサービスプロバイダーのネットワーク インフラストラクチャは、IP サービスのトランスポート用には最適化されていないため、次のような要因による TCO の高騰という問題に直面しています。

  • インフラストラクチャが階層化されて分断され、ネットワークレイヤ間でのトラフィックのハンドオフに大量のラインカードが必要
  • 各ネットワークレイヤでレジリエンススキームが重複して冗長になっているため、コストが高く、ネットワークリソースの使用率が低い(収益性に劣る)
  • 複数の独立したスイッチングポイント、コントロールプレーン、管理プレーンが各ネットワークレイヤに重複して関連付けられ、非常に複雑
  • 階層化されて分断されたアーキテクチャでは、ネットワークドメイン全体でサービスを手動で切り替える必要があり、自動運用(修復)に必要な、エンドツーエンドでのクロスループの自動化を実現し、サービスリードタイムを短縮することが困難

これらの問題に対処し、トラフィック量の予測に合わせてネットワークを効果的に拡張できるようにするために、シスコは、ネットワークをシンプルにして TCO を削減しながら IP サービスの規模を拡大できる、新しいルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャを提唱しています。このアーキテクチャには次のようなメリットがあります。

  • 現在の階層型ネットワークアーキテクチャと比較して、TCO を最大 40% 削減可能
  • IP アグリゲーションデバイスにコヒーレント DWDM インターフェイスを統合し、モバイル バックホール アプリケーション向け IP アグリゲーションの TCO を削減するソリューションにより、CapEx で最大 50%、OpEx で最大 70% のコスト削減が可能

シスコ ルーテッド オプティカル ネットワーク アーキテクチャの特長

  • 400G コヒーレントトランスポンダ機能をルーティングデバイスに統合:新たに進化したシリコンフォトニクスを活用して、IP ルーティングとコヒーレント DWDM を統合し、大規模ルーティング プラットフォーム上の非常にコンパクトな QSFP56-DD で、400G コヒーレントトランスポートを実現します。グレイオプティカル製品と比較しても、ルーティングポートの密度とキャパシティの点で引けを取りません。
  • 専用回線/OTN サービスとフォトニクスイッチを単一の IP/MPLS ネットワークレイヤに統合:IP、OTN、専用回線サービスを単一の IP/MPLS ネットワークレイヤ(単一のフォワーディングプレーンとコントロールプレーン)に統合しています。あらゆる障害に対して 50 ミリ秒未満でのサービス回復を実現する、セグメントルーティングを活用できます。
  • H2H IP コアアーキテクチャを活用することで、ネットワークの大幅なシンプル化と光ファイバ利用率の向上を実現:コンテンションレス ROADM に伴う複雑さの回避、光ファイバリソース使用率が低下するリスクの軽減(オプティカルネットワークの収益性の最大化)、シャノン限界によるコストのかかる再生成の軽減を実現します。
  • ネットワーク インフラストラクチャの自動化を推進:単一の IP/オプティカル統合インフラストラクチャ全体でクローズドループの自動化を実現するフレームワークを提供し、サービスパスの計算、アクティベーション、オーケストレーション、修復、最適化を自動化します。

トラフィックの大半は IP

サービスプロバイダーは、ユーザあたりの平均収益(ARPU)が一定のまま、ネットワークトラフィックの急増に対応しなければならないという課題に直面しています。トラフィックは、動画、ゲーム、仮想現実/拡張現実、および 5G などの将来のテクノロジーを利用したモビリティ拡大の兆しから、今後も増加し続けます。サービスプロバイダーは、キャパシティに対するこのような新しいニーズに対応し続けながら、新たな収益創出サービスも展開しつつ、コストを削減する必要があります。予測によると、サービスプロバイダーは、2022 年は、インフラストラクチャへの投資 1 ドルにつき、2012 年の 11 倍のトラフィックを処理する必要があります。

図 1. SP のネットワーク投資(出典:Cisco Visual Networking Index(VNI))

インターネットトラフィックは、接続されているデバイスの数が増え、コンテンツの消費量が増加しているため、過去 5 年間で年間 30% 以上の平均成長率(複利)を記録しています。1

サービスプロバイダーは、これほどのキャパシティを消費するサービスの大部分でますます ARPU が下がっていることを認識しています。これでは、急増するキャパシティに対応するためにネットワーク インフラストラクチャを拡張することは、コスト面からできません。テクノロジーはムーアの法則に従って進化し、シャノン限界を押し上げ続けています。運用面では、自動化、Software Defined Networking(SDN)、テレメトリ、機械学習、人工知能を活用してコストを削減しようとする動きが活発になっています。ネットワークアーキテクチャの観点から見ると、パケットからオプティカル トランスポート ネットワーク(OTN)、高密度波長分割多重(DWDM)に至るまで、個々のネットワークレイヤへの投資が継続的に行われ、各レイヤは、キャパシティと柔軟性がばらばらに進化しています。これが、かえってネットワーク インフラストラクチャ全体のコストを押し上げ、複雑にする原因になっています。

これらの問題に試行錯誤しながら対応するのは効果的でないことが実証されているため、予想される大幅なトラフィックの増加に対応するためには、必要なレベルのネットワーク規模と効率性を実現する、より革新的なアプローチが求められます。革新的なアプローチを採用して、以下を実現しなければなりません。

  • サービス提供のスピードと効率性に重点を置き、ネットワークの自動化とオーケストレーション ツールキットを活用して、ネットワーク運用を劇的に変革する
  • 冗長なレガシーネットワークレイヤを排除してシンプルにすることで、IP トラフィックに最適なネットワークを再設計する(シスコは、ほとんどのサービスプロバイダーのネットワーク インフラストラクチャに古いサービスが残っていることを認識していますが、それらは比較的規模も小さく一時的なもののため、次世代のネットワークアーキテクチャに与える影響はほとんどありません)

このホワイトペーパーの目的は、シスコのコンバージド SDN トランスポートイニシアチブの一端を担う、以下のような革新的なネットワークアーキテクチャとソリューションを詳細に説明し、IP サービス向けに効率的にネットワークを拡張できるようにすることです。ルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャは、コンバージド SDN トランスポート フレームワークに含まれているコンポーネントの 1 つです。

 

ルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャ

従来のネットワークアーキテクチャは、レイヤ間でのサービスのハンドオフをラインカードに依存したネットワークレイヤで構成されています。この種の階層型アーキテクチャは、ラインカードへの設備投資(CapEx)が大量に必要で、レイヤ間でのサービスのハンドオフを手動で設定しなければならないため、非常に非効率です。さらに、各ネットワークレイヤには独自のコントロールプレーンと管理プレーンが関連付けられ、それらが互いに独立して動作しています。

図 2. 従来のネットワークアーキテクチャ

そのため、サービスアシュアランス、障害の関連付け、ネットワーク使用率面でのパスの最適化、ネットワークの計画/最適化を実現するのが非常に難しくなっています。これらの問題によって、ネットワーク インフラストラクチャ全体で、サービスに重点を置いてエンドツーエンドのクローズドループでの自動化を実現するという、サービスプロバイダーの目標を達成できなくなっています。このネットワークアーキテクチャに関連する総所有コスト(TCO)2は非常に高く、サービスプロバイダーが IP サービスのキャパシティニーズに対応するためにネットワークを拡張しようとしても、コスト面から実現できません。

シスコは、IP ドメインとオプティカルドメインを真に統合する主要なテクノロジーを利用してネットワークをシンプルにすることで、これらの課題に対応しています。ネットワークをシンプルにするのは、インフラストラクチャの複雑さを解消し、サービスプロバイダーが次の方法で資産をより効果的に活用できるようにするためです。

  • トランスポート ネットワーク アーキテクチャを革新する
  • 適切なコストと電力消費量で優れたパフォーマンスと伝送距離を実現する、プラガブル コヒーレント モジュールを導入する

これらのイニシアチブは、ルーティング オプティカル ネットワーキング アーキテクチャに組み込まれています。このアーキテクチャは、Internet for the Future(未来のインターネット)に対するシスコのビジョンを実現するための重要な要素です。この新しいアプローチにより、ネットワークは、分断されたインフラストラクチャから新しいアーキテクチャに移行します。新しいアーキテクチャでは、IP レイヤとオプティカルレイヤが統合されたホップツーホップ(H2H)のネットワークで、IP/MPLS ベースの単一のコントロールプレーンが活用されます。これにより、非常にシンプルになって、大幅にコストが削減されます。また、スケーラビリティのボトルネックとなっている複雑な冗長ネットワークレイヤに対応し、以下によって、サービスプロバイダーのネットワーク インフラストラクチャにおけるエンドツーエンドの自動化を実現します。

  • 従来の時分割多重(TDM)サービスに対応するために必要な OTN スイッチング インフラストラクチャの統合
  • Cisco IP over Dense Wavelength-Division Multiplexing(IPoDWDM)で利用していた IP ファブリックのキャパシティを損なうことなく、大容量オプティカル インターフェイス(グレイおよびコヒーレントの両方に対応)をルーティングデバイスに直接統合
  • IP ドメイン内の単一のネットワーキング/スイッチングレイヤと、カラーレス(Colorless)/ディレクションレス(Directionless)/コンテンションレス(Contentionless)(CDC)再構成可能オプティカル アド/ドロップ マルチプレクサ(ROADM; Reconfigurable Optical Add-Drop Multiplexers)のコストと複雑さを排除した、シンプルなポイントツーポイント オプティカル インフラストラクチャを備えたフルコア H2H IP ルーティングアーキテクチャ
  • IP/ルーティングおよびオプティカル トランスポート インフラストラクチャ全体のベースとなる単一のユニファイドトランスポート SDN アーキテクチャによって以下を実現
  • キャパシティとネットワークの統合プランニング
  • パス最適化
  • サービスアシュアランス、インベントリ、要素管理
  • クローズドループの自動化

図 3. シスコ コンバージド SDN トランスポート ネットワーク アーキテクチャ

革新的なアーキテクチャに変更することで、多くの場合、サービスプロバイダーの現在の運用構造が根本的に変わるため、段階的に導入する必要があります。サービスプロバイダーは、目標とするルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャを構築するまでに、最初の段階での変更レベルに応じて異なるパスを取ることになります。

ルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャのソリューション コンポーネントは、サービスプロバイダーが現在のネットワーク インフラストラクチャに導入している ROADM ベースのオプティカル ネットワーク アーキテクチャと連携できます。たとえば、現在の IP アグリゲーションデバイスですでにサポートされているコヒーレント DCO オプティクスは、既存の ROADM ベースのインフラストラクチャでも活用できます。コンバージド SDN トランスポート アーキテクチャは、今日のネットワークアーキテクチャの非効率な点に対処するための 2 つのイニシアチブによって定義されています。

1. 400G トランスポンダ機能の統合

2. 以下の統合によるサービスコンバージェンス

a. OTN アグリゲーション機能とスイッチング機能

b. フォトニクススイッチング

図 4. ルーテッド オプティカル ネットワーク アーキテクチャの革新的ソリューション コンポーネント

サービス統合を実現するルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャ

現在、多くのサービスプロバイダーは、サービス自体ではなく、サービスを提供するネットワークレイヤに重点を置いています。ネットワークレイヤに重点を置いているのは、特定のサービスレベル契約(SLA)の目標は、特定のネットワークレイヤでしか達成できないという前提に基づいています。そのネットワークレイヤのトランスポート インフラストラクチャは、独立した個別のネットワーク/オーバーレイを必要とする TDM サービスしか活用できません。これは、基本的に次のことを意味しています。

  • 専用回線サービスは、専用のリソースでしか対処できないという課題があった
  • 双方向の確定的サービスは、ネットワークレイヤを介してのみ提供できる
  • OAM はネットワークレイヤをベースに実施されていた
  • SLA は、サービスの可用性ではなく階層化に基づいて設定されていた

基本的にサービスプロバイダーは、サービス重視の理想的なネットワークではなく、階層型ネットワークを構築せざるを得ませんでした。現在、技術面および組織面を強化してこのモデルから脱却するための、さまざまな取り組みが行われています。

  • シスコが主導する CO の最新化では、従来の TDM トラフィックはパケットネットワークを介して伝送され、高速専用回線サービスと OTN サービスを、SLA に対応したパケットネットワークで行う新たな取り組みもなされています。この最新化の取り組みは、世界中の多くの主要なサービスプロバイダーに採用されています。
  • ルーティングキャパシティは何倍にも拡大しています。シスコの新しいシングルラックユニット(RU)の 14.4 TBps ルータは、400Gbps DWDM インターフェイスを 36 個3備え、現在最大のプラットフォーム(3.6TBps)の 4 倍のキャパシティをわずかなフットプリントと電力で実現しています。
  • ユニバーサルラインカードは、革新的なオプティカル技術を活用することで、グレイとカラー(400GbE ZR/ZR+)のオプティカル インターフェイスを組み合わせて使用でき、QSFP56-DD フォームファクタで 400GbE クライアントを実現しています。これにより、IPoDWDM 回線システムで通常発生するポート密度とのトレードオフが大幅に軽減され、サービスルーティング プラットフォームでの統合が容易になります。
  • 複数の設定ポイントとオプティカル面での自由度の高さにより、柔軟性が向上しています。さまざまな技術を統合し、ルータ(トランシーバ)、回線終端装置、中間増幅器、外部のプラントファイバ自体のどこに問題の根本原因があるかを示すアラームに重点を置くことで、接続性とパフォーマンスを保証します。
  • 自動化とライフサイクル管理ツールキットを利用して実現した、シンプルで効率的な運用モデルにより、ネットワークは、多数のネットワークをつぎはぎしたものではなく、1 つのネットワークとして扱うことができます。
Figure 5 – Routing Line Card Bandwidth Enabled by Optical Pluggable Modules

図 5. プラガブル オプティカル モジュールによって実現されたルーティングラインカードの帯域幅

複雑さを解消してキャパシティを最大化し、ネットワーク効率を高めることで、このようなメリットを実現するには、アーキテクチャを変更する必要があります。SDN は、このような複雑さを見えないようにして対処するためのものだと主張する人もいるかもしれませんが、SDN が解消しなければならない複雑さは、システムに内在する固有の複雑さに直接関係しています。CDC ROADM は、フォトニクスレイヤでネットワークの柔軟性を実現しましたが、この柔軟性は、運用の複雑化によるコスト(OpEx)の増加を伴います。マルチレイヤネットワークでは、システムの計画、保護、管理の運用ライフサイクルの観点において、新たな複雑さが加わります。

サービスプロバイダーが現在直面している問題に対処するために、シスコは、次世代ネットワーク構築のガイドラインとして次の原則を採用しています。

  • レイヤの排除
  • 運用ライフサイクルのシンプル化
  • 電力消費量とフットプリントの削減
  • 従来のサービスおよび高速専用回線/OTN サービス向けの高度な回線エミュレーションの活用
  • 単一レイヤネットワークによるネットワークのシンプル化
  • 既存の SLA への適合
  • 専用の帯域幅(BW)と予測可能なパスの提供
  • ポート密度とのトレードオフを大幅に削減したオプティクスの統合
  • 400G の価格によって状況が一変
  • 小型フォームファクタにより、ポート密度のトレードオフを大幅に削減可能(グレイ オプティカル ライン カードと比較した場合、トレードオフなし)
  • キャパシティをさらに拡大可能
  • ROADM ベースのアーキテクチャから H2H アーキテクチャへの移行
  • バイパスネットワークから H2H ネットワークにスムーズに移行可能
  • エンドポイント間の距離を短縮することで最適なキャパシティを確保
  • 運用のシンプル化
  • ライフサイクル管理のシンプル化

ルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャをベースに、進化したテクノロジーと新しい機能を活用することで、サービスに最適化されたネットワークを構築できます。また、ネットワークをシンプルにしながら、ネットワークキャパシティの真の最適化を実現します。これは、ネットワークに不要なスイッチが追加されて複雑になった冗長なレイヤを、ポート密度とのトレードオフをなくしながら減らすことで実現されます。

中空コア(HC)アーキテクチャとオプティカルバイパス(OB)アーキテクチャの両方に備わっているオプティカルバイパス機能の基本的な要件は、ルーティングデバイス間で直接ルート(プロバイダーエッジ(PE)デバイスからプロバイダー(P)デバイスへのルーティング)を確立するために、オプティカル ネットワーク インフラストラクチャの ROADM スイッチング要素を活用する必要があるということです(隣接するルーティングデバイス間(例:PE - PE 間)での H2H オプティカル接続を回避するため)。このオプティカルバイパス機能は、ROADM エレメントのオプティカルトランジット機能と高性能のコヒーレント DSP を活用します。これにより、オプティカルネットワークのパフォーマンスが確保され、(距離または品質、あるいはその両方の面で)厳しい長距離ファイバ インフラストラクチャを介した、ルーティングデバイス間のオプティカル接続が実現されます。つまり、HC アーキテクチャは、ムーアの法則とシャノン限界4の間のギャップを埋めるために、最も強力なコヒーレント DSP を活用することに大きく依存しているということです。多くのサービスプロバイダーが認識しているように、このトレードオフによって、光ファイバの使用率(すなわち収益)が低下します。これは、長距離ファイバでのパフォーマンスを維持するために必要な対策として導入された、大量のトラフィックの再生成によってチャネル数が減少し、ネットワークコストが高くなるためです。大量の再生成が必要になると、トランスポート機能にルーティングラインカードを使用することを最小限に抑えるという、HC アーキテクチャの当初の目的が失われます。その場合、再生成機能は、ルーティングデバイスからオプティカル トランスポンダ ラインカードに移るだけです。

HC アーキテクチャとは対照的に、H2H アーキテクチャは、シャノン限界による、チャネルのキャパシティとパフォーマンス間のトレードオフの問題を解消しようとしています。H2H アーキテクチャは、隣接するルーティングデバイス間でのみオプティカル接続を推奨することで、ルーティングデバイス間が長距離の場合にオプティカル接続が必要なくなります。

表 1:HC、OB、H2H アーキテクチャの比較

H2H アプローチでは、HC ネットワークの 40%、OB ネットワークの約 34% のコストが削減されます。より多くのインターフェイスが必要なのは事実ですが、コンバージド SDN トランスポートネットワークにおける H2H アーキテクチャの利点は、最適なキャパシティのインターフェイスを使用してコストを削減することで、インターフェイスの追加コストを相殺しながら、運用ライフサイクルをシンプルにできることです。

シスコ ルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャは、現在利用可能な高度なテクノロジーと機能を活用して、テクノロジーに合わせて拡張できる新しいアーキテクチャとして、次のようなメリットをもたらします。

  • コストの削減
  • 40% の削減(モデルケース)
  • 冗長なネットワークレイヤの統廃合による機器の電力消費量とフットプリントの削減
  • ネットワークのシンプル化
  • 単一レイヤ H2H ネットワーク
  • 計画、設計、アクティベーション、管理、トラブルシューティングのシンプル化
  • 既存の SLA に適合または超越
  • 従来の TDM サービスおよび専用回線サービスに対応した回線エミュレーション
  • コンポーネントの削減、可用性の向上、平均故障間隔の長期化
  • 新しい収益創出サービスを市場に投入するまでの期間の短縮
  • サービス指向のネットワークアーキテクチャ
  • 自動化機能とテレメトリ機能の統合
  • 光ファイバ使用率の最適化
  • 非再生成距離を短縮し、スペクトル効率(シンボルあたりの転送ビット数)を向上させることで、シャノン限界を達成

OTN および専用回線サービスエミュレーション

パケットスイッチング用半導体やフィールド プログラマブル ゲート アレイ(FPGA)技術の最近の進歩および、OTN フレーマ分野におけるイノベーションの停滞に伴い、拡張性/コスト効率性に優れた大容量パケット ネットワーク インフラストラクチャを介したエミュレーション テクノロジーによって、ビットトランスペアレント トランスポート サービスが向上しています。このソリューションは専用回線エミュレーションと呼ばれ、OC-48、OC-192、1GbE、10GbE、100GbE を含む幅広いクライアントポート間で、ビットトランスペアレントのポイントツーポイント接続を実現します。また、オプティカル チャネル トランスポートユニット(OTU-k)クライアントポート向けに、トランスペアレント オプティカル チャネル データユニット(ODU-k)接続も可能です。

ODU-k 接続は、疑似ワイヤエミュレーション(PWE3)アーキテクチャに基づいて疑似回線を使用して確立され、MPLS またはセグメントルーティング(SR)アンダーレイを活用します。PWE3 アーキテクチャでは、SR の柔軟性、効率性、シンプルさを実現するために、巡回型サービス用の拡張機能と SR トランスポート機能を活用できます。この柔軟性により、専用回線サービスやその他のキャリアイーサネットまたは IP サービスに対応した、単一の共通 SR/MPLS スイッチングレイヤを構築できるため、ネットワーキングレイヤが減ってシンプルになり、コストが削減されます。

Topology Independent-Loop Free Alternatives(TI-LFA)は、コンバージェンス後のパスを活用することで、リンク、ノード、ローカルの Shared Risk Link Group(SRLG)などの障害に対応できるよう、サービスで高速再ルーティングを実現します。TI-LFA は、SR をベースに、実績のある IP-FRR(IP-Fast Re-Route)の概念に基づいて保護メカニズムを構築し、一般的に OTN スイッチング ネットワーク レイヤで提供される 1 + 1 保護スキームと同様に、50 ミリ秒未満で障害から回復する仕組みを専用回線サービスに拡張しています。

ネットワーク自動化フレームワーク

ルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャの変化を促進する概念は、主に次の 2 つです。

  • デジタルコヒーレント WDM インターフェイスをルータに直接統合する
  • ROADM への依存割合を削減/排除することで、フォトニクス インフラストラクチャをシンプルにする

ルータにデジタルコヒーレント WDM インターフェイスを直接統合することで、オプティカル トランスポート ドメインとパケットドメイン間でサービスをハンドオフする際に、従来の手動による設定が不要になります。その結果、単一のエンティティとして計画、設計、導入、運用が可能なネットワーク インフラストラクチャが実現します。

ネットワークの自動化は、すべてのネットワーク機能を計画、最適化、管理、維持し、真の SDN を実現して、ネットワーク インテリジェンスをエンドツーエンドで推進するための重要な要素です。ノードのステータスと状態に関するリアルタイムの情報は、サービスルートを管理して最適化するために事前定義されたトリガーメカニズムと組み合わせて利用されます。自動化エコシステムを形成するパス計算、オーケストレーション、管理ツールキットは、オープンでプログラム可能なモジュラ型で、これまでの運用方法と同じように利用できます。

図 6. ネットワークアーキテクチャに対応した自動化

自動化アーキテクチャには、統合キャパシティプランニング、パス最適化、IP レイヤとオプティカルレイヤ両方の要素管理機能が含まれています。また、トポロジとインベントリの可視化、サービスアシュアランスおよび、エンドツーエンドのサービス オーケストレーションとワークフローエンジンを利用してプロアクティブに問題を修復するためのクローズドループの自動化機能も含まれています。

オプティカルトランスポンダ機能の統合による IP/オプティカルレイヤ統合

これまでは、ルーティングデバイスで DWDM インターフェイスを直接終端してトランスポンダを無くそうとすると、ラインカードのポートを占有するルータラインカードにコヒーレント DSP を実装する必要がありました。その結果、ルータラインカードのポート密度とキャパシティが少なくなっていました。ホストラインカードの代わりにプラガブル オプティカル モジュールにコヒーレント DSP を組み込んだ新しいプラガブル コヒーレント オプティクスを使用することで、ポート密度をほとんど、またはまったく減らすことなく、ルータの最大キャパシティを維持できます。

ルーテッド オプティカル ネットワークの重要なポイントは、プラガブル コヒーレント モジュールの統合です。ルータのポート密度が高くなると、ラインカードのポートではなく、プラガブルオプティクスに投資することになります。Internet of the Future 戦略で想定されている規模を実現する主な要素は、400GbE のラインレートです。400GE コヒーレントオプティクスは、標準化された仕様のマルチベンダー Quad Small Form-Factor Pluggable(QSFP)を活用して相互運用性を確保しているため、導入が容易で、拡張性に優れています。以前は、標準化されていないため相互運用性のないルータラインカード上の、独自のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)が使用されていました。

400GbE は、単一のブレードで最大 14.4TBps を実現できる次世代ルーティングラインカードに搭載されます。最大の柔軟性を確保するために、このラインカードは、QSFP56-DD プラガブルフォームファクタで、コヒーレント インターフェイスとグレイ オプティカル インターフェイスの両方(またはその組み合わせ)に対応しています。コヒーレント オプティカル インターフェイスとグレイ オプティカル インターフェイスの両方に QSFP56-DD を活用することで、ルーティング プラットフォームのコヒーレントオプティクス(以前は IPoDWDM と呼ばれていました)で通常発生する、ポート密度と IP ファブリックのキャパシティのトレードオフがなくなります。つまり、コヒーレント DWDM オプティカル インターフェイスをホストするための特定のラインカードが不要になるということです。ユニバーサルラインカードを導入することで、コヒーレント DWDM またはグレイ オプティカル ライン インターフェイスの終端を柔軟にサポートできます。1 つのコヒーレントラインカードで利用できる 400G ZR/ZR+ ポート(QSFP56-DD 利用)の最大数は、オプティカル電力バジェットと回線の特性によって制限がありますが、400G ZR/ZR+ ラインカードは、依然として高いポート密度に対応できます。前世代の CFP2-DCO ベースのコヒーレント DWDM ラインカードで実現可能なポート密度を大幅に上回っています。

QSFP フォームファクタは業界で広く活用されていて、シスコは、Optical Internetworking Forum(OIF)などの標準化団体を通じて、QSFP-DD マルチサプライヤ契約(MSA)の推進に大きく貢献しています。QSFP56-DD は、400GbE、特に 400GbE ZR+ の実現に向けた戦略的な製品です。ZR+ インターフェイスは、400G ラインレートでの長距離オプティカルネットワークを確立するために必要なコヒーレント伝送機能を備えているため、QSFP56-DD では、ZR+ インターフェイスによる熱を放散できます。

デジタル コヒーレント オプティクスの進化

IP アグリゲーション アプリケーション空間では、モジュラポートアダプタ(MPA)とデジタル コヒーレント オプティカル(DCO)プラガブルモジュールを搭載した IP アグリゲーションデバイスを活用することで、IP/オプティカルレイヤの統合をすでに実現できるようになっています。DCO モジュールを統合することで、オプティカル トランスポンダ ライン カードにコストをかけて複雑にすることなく、コヒーレント DWDM インターフェイスを IP アグリゲーションデバイスに直接接続できます。ルーティングデバイスに CFP2-DCO モジュールを統合することは、IP アグリゲーション空間における主なネットワーキングの問題に対処するためにすでに採用されています。ただし、CFP2 ベースのオプティクスに関連するポート密度は、同等の TCO 削減を実現するグレイ オプティカル ライン カードで使用されている QSFP プラガブルに比べて少なすぎます。これは主に、IP アグリゲーションスペースでは、通常、限られた 100G/200G 回線インターフェイスしか各アグリゲーションサイトで終端されないため、IP ファブリックの大幅なキャパシティ減少につながらないためです。ただし、コア/エッジアプリケーションの場合、トラフィック量が大幅に増加するため、現在の DCO ラインカードを使用するコア/エッジ アグリゲーション デバイスでは、ポート密度が低下することで、IP ファブリックのキャパシティが減少しやすくなります。

図 7. プラガブル コヒーレント オプティクスの進化

コア/エッジルーティングデバイスの現在のポート密度は、ラインカードあたり 3.6TBps です5。現在、ACO/DCO を導入できるのは CFP2 プラガブルに限定されているため、グレイ インターフェイス ポート ライン カードでのこのレベルのポート密度を、コヒーレントラインカードと比較するのは困難です。CFP2 プラガブルは、グレイ インターフェイス ライン カードで使用される QSFP モジュールよりも大きなフットプリントが必要です。そのため、コア/エッジアプリケーションで大量のトラフィックを処理するために CFP2-ACO/DCO ラインカードを使用すると、IP ファブリックのキャパシティが大幅に少なくなる可能性があります。シスコでは、CFP2 フォームファクタの DCO インターフェイスを使用することから、QSFP56-DD を使用したインターフェイスに移行するため、これは一時的な問題です。QSFP56-DD のフットプリントは非常に小さく、グレイ クライアント インターフェイスにも活用できます。


脚注

1 Cisco Annual Internet Report(2018 ~ 2023 年)ホワイトペーパー

2 ネットワークの所有と運用にかかる設備投資(CapEx)と運用コスト(OpEx)に共通して関連するコスト面での考慮事項

3 1 つのラインカードに搭載できるコヒーレント 400Gbps チャネルの最大数を示しています。実際に搭載できるコヒーレント DWDM ポート数は、ラインカードで終端するオプティカルチャネルに適用されるオプティカル電力バジェットによって決まります。

4 ムーアの法則とシャノン限界:ムーアの法則は、サービスプロバイダーのネットワークにおけるサービスキャパシティの増加傾向を表します。シャノン限界は、サービスを伝送するオプティカル トランスポート ネットワークのキャパシティの上限に関する理論です。シャノン限界は、オプティカルパフォーマンス(光信号対雑音比によって決まる伝送距離)と、オプティカルネットワーク上でエラーを発生させずに伝送できるデジタルキャパシティは、トレードオフの関係であることを示しています。オプティカルリーチ(伝送距離)が短いほど、デジタルチャネルのキャパシティは大きくなります。

5 Cisco NCS 5500 36x100GbE サービスラインカード

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