このドキュメントの内容
データセンターや分散した場所の効果的なシステム管理には、幅広い環境と機能のサポートが必要です。このドキュメントでは、Cisco UCS® C シリーズ ラック サーバの管理方法について、2 つの選択可能なオプションの概要について説明します。1 つ目のオプションは、Cisco UCS Manager による管理です。2 つ目のオプションは、Cisco® Integrated Management Controller(IMC)を単独(スタンドアロン)モードで使用します。
● Cisco UCS Manager は、複数のラックマウント サーバ、および数千単位の仮想マシンにわたる Cisco Unified Computing System™(Cisco UCS)のすべてのソフトウェア コンポーネントとハードウェア コンポーネントを管理する、統合された組み込みの管理機能を提供します。Cisco UCS Manager は、使いやすい GUI、コマンドライン インターフェイス(CLI)を利用するか、またはすべての Cisco UCS Manager 機能に対して、プログラム可能なアクセスを実現する統合 API を介して、Cisco UCS 全体を 1 つのエンティティ(システム)として管理します。
● Cisco Integrated Management Controller(IMC)は、データセンターおよび分散したリモート拠点に配置されたサーバに組み込まれており、C シリーズ ラックサーバ管理を提供するベースボード管理コントローラ(BMC)です。Web ユーザ インターフェイス(UI)、コマンドライン インターフェイス(CLI)、Cisco UCS Manager で使用されるものと同じ統合 API など、複数の管理インターフェイスをサポートします。IMC は、Simple Network Management Protocol(SNMP)v3 およびインテリジェント プラットフォーム管理インターフェイス(IPMI)v2.0 など、業界標準の管理プロトコルもサポートしています。
本書では、IMC Supervisor が、スタンドアロンの Cisco UCS C シリーズ ラック サーバに加え、1 つまたは複数のサイトに配置された Cisco UCS S シリーズ ストレージ サーバや Cisco UCS E シリーズ サーバの一元管理を可能にする方法についても説明します。
サーバ管理の背景
現在の大多数の x86 アーキテクチャ サーバは、一般にベースボード管理コントローラ(BMC)と呼ばれる管理機能を備えています。BMC は、通常ラック サーバでは、サーバのマザーボードやメインの回路基板に組み込まれていて、サーバ ハードウェアの物理的な状態を監視および管理するための特殊なサービス プロセッサとファームウェアを備えています。BMC の機能と標準は、IPMI 仕様に規定されています。IPMI は Intel、Hewlett-Packard Enterprise、Dell、および NEC が最初にこの仕様を共同で開発したものです。この仕様は Intel 社の Web サイトで維持および公開され、BMC の機能がすべての x86 マネージド サーバ プラットフォームに一貫して実装されるように一役買っています。
Intel は、同社のカスタマー リファレンス ボード(CRB)設計に BMC を搭載しています。CRB は、販売までの期間を短縮し、IPMI などの業界標準とのコンプライアンスを確保するために、Original Equipment Manufacturer(OEM)と Original Design Manufacturers(ODM)に提供されます。シスコは、BMC を再構築して Cisco UCS アーキテクチャの重要な一部となるよう、BMC の基本機能に付加価値を付けました。このように統合したことで、業界最先端の強力なユニファイド コンピューティング機能が実現し、サーバのプロビジョニングと変更管理にサービス プロファイルを使用できます。
Cisco UCS Manager と Cisco UCS C シリーズ
Cisco UCS Manager は、Cisco UCS 6000 シリーズ ファブリック インターコネクトで稼働します。Cisco UCS Manager は、Cisco UCS のサーバ、ネットワーキング、およびストレージ環境に対応したさまざまな強力な機能を提供します。この機能には、コンピューティング、ネットワーキング、ストレージ リソースの共有プールからのインフラストラクチャの迅速な構成提供(プロビジョニング)、および Cisco サービス プロファイルのモデルベース管理アプローチによる IT インフラストラクチャの迅速な拡張とプロビジョニングが含まれています。
1 つの管理ドメインにおいて、サービス プロファイルを使用し、Cisco UCS C シリーズ ラック サーバ、およびそれらの I/O プロパティをプロビジョニングし、管理します。サービスプロファイルはサーバ管理者、ネットワーク管理者、およびストレージ管理者が作成し、ファブリック インターコネクトに格納されます。アプリケーション導入に必要なインフラストラクチャ ポリシーは、サービス プロファイルに組み込まれます。このポリシーは、RAID レベル、BIOS 設定、ファームウェア リビジョンおよび設定、サーバ ID、アダプタ設定、VLAN および VSAN ネットワーク設定、ネットワークサービス品質(QoS)、データセンター コネクティビティなど、ハードウェア スタックの各レイヤの要素を管理し、整合性を自動調整します。
サービス プロファイルには、テンプレート機能が用意されており、サービスやアプリケーション向けに一貫したポリシーを簡単に作成、提供できます。サービス プロファイルは論理サーバを定義したもので、プロファイルと物理サーバとの間には 1 対 1 の関係があるのに対し、サービス プロファイル テンプレートは複数サーバに共通定義するのにも使用できます。テンプレートを使用することで、数百単位のサーバに数千単位の仮想マシンを設定するような場合でも、1 台のサーバの設定のように簡単に設定、管理できます。この自動化によって、手作業の工数が減り、人的エラーの発生する可能性が低くなります。さらに、一貫性が向上するとともに、サーバやネットワークの配置に要する時間も短縮できます。
Cisco IMC は、各サーバに関する重要な情報を Cisco UCS Manager に伝達します(図 1)。Cisco IMC は、多数の診断サービスとヘルス モニタ サービスを提供して、Cisco UCS による包括的な管理環境の実現に貢献します。
Cisco IMC に搭載されている診断とヘルス モニタの機能は、次のとおりです。
● SNMP
● XML API イベント サブスクリプションと設定可能なアラート
● システム イベント ログ
● 監査ログ
● フィールド交換可能ユニット(FRU)、HDD の障害、メモリ モジュール(DIMM)の障害、ネットワーク インターフェイス カード(NIC)MAC アドレス、CPU、および温度障害
● 設定可能なアラートとしきい値
● ウォッチドッグ タイマー
● RAID 構成とモニタリング
● HDD と DIMM に関する故障の予測分析
● 統合型ネットワーク アダプタ(CNA)
● 信頼性、可用性、サービス有用性(RAS)
● Network Time Protocol(NTP)
● グラフィカルおよびコマンドライン クライアント
Cisco UCS C シリーズ サーバの単独(スタンドアロン)モードでの Cisco IMC
多くのお客様が、Cisco UCS C シリーズ サーバを x86 サーバとしてスタンドアロン環境に導入しています(上記図 2 を参照)。この場合、サーバはファブリック インターコネクト、ファブリック エクステンダ、Cisco UCS Manager など、Cisco UCS の他のコンポーネントと統合されません。Cisco UCS C シリーズ サーバを単独(スタンドアロン)モードで稼働すると、管理者が Web ベースの GUI やセキュア シェル(SSH)ベース コマンドライン インターフェイス(CLI)、またはネイティブ API を通して Cisco IMC を業界標準の BMC として使用し、サーバを設定、管理、モニタできます。IMC はユーザがサーバをすべて制御できるようにし、すべての設定と管理が可能です。また複数の異なる管理ネットワーク モードで動作するよう設定でき、専用の管理ポートを利用することも、共有 LOM または Cisco カード モードのホストと同じポートを共有することもできます。Cisco IMC では、管理者が次のサーバ管理作業を実施できます。
● サーバの電源オン、電源オフ、電源の再投入、リセット、およびシャットダウン
● ロケータ LED の点灯(リモート作業者に場所を示す)
● サーバのブート順序を設定する
● サーバのコンポーネント状況とセンサーの表示
● アウトオブバンド ストレージ設定の実施
● リモート プレゼンスの管理
● ファームウェア管理
● ローカル ユーザ アカウントの作成と管理、および Active Directory と LDAP を介した認証方法
● NIC プロパティ、IPv4、IPv6、VLAN、ネットワーク セキュリティなどのネットワーク関連の設定
● HTTP、SSH、IPMI Over LAN などの通信サービスの設定
● 証明書の管理
● プラットフォーム イベントのフィルタの設定
● 障害、アラーム、およびサーバのステータスのモニタ
Cisco IMC は、各 Cisco UCS C シリーズ サーバに組み込みで付属しており、お客様にライセンス ソフトウェア サポート等の追加コストはかかりません。
IMC のバージョン 3.0(1) では、お客様のニーズに合わせて、より多くの新機能が導入されています。主な追加機能の 1 つは、HTML5 Web UI、KVM、Redfish のサポート、および XML API トランザクションのサポートです。HTML5 は信頼性の高い KVM とともに、シンプルなユーザ インターフェイスをお客様に提供し、IMC を使用する環境に Java は不要になり
ます。
IPMI インターフェイスはスケールアウトに対応できず、また最新のプログラミング インターフェイスで利用できるシンプルさとセキュリティというクラウドベースの要件に対応できないため、Intel や他のサーバ ベンダーは新しい Redfish 標準を開発しました。Redfish はオープンな業界標準仕様と構造定義(スキーマ)であり、RESTful インターフェイスと JSON や Odata を使用して顧客が既存のツールとソリューションを統合できるよう支援します。Redfish は、高い拡張性、使いやすさ、安全なシステム制御のための新しい管理方法を確立します。Redfish は、業界全体で認知されているピアレビュー標準機関である Distributed Management Task Force(DMTF)の後援を受けています。Cisco UCS は、IMC バージョン 3.0 で Redfish 標準をサポートしました。
Redfish は IMC に RESTful API を採用し、IPMI にかわってシンプルで安全です。こうして、プログラムを活用するユーザ向けに IMC に対して XML API を利用した処理がサポートされました。ユーザは 1 つの処理で複数の管理対象オブジェクトを設定できるようになり、より迅速でシンプルな導入が可能になりました。
多くの新しいソフトウェア機能に加え、シスコは IMC と連携するいくつかのユーティリティを強化しました。
● Cisco IMC エミュレータ
● 非インタラクティブ(物理サーバ不要)のサーバ構成ユーティリティ(NI-SCU)
● SCU から診断機能の分離
● ドライバ アップデート(Linux)
IMC Supervisor での拡張管理
複数の場所に点在する Cisco UCS サーバをサポートする必要がある場合、IMC Supervisor を集中コンソールとして使用できます。IMC Supervisor は最大 1,000 台のサーバまで対応できます。また IMC Supervisor は、スタンドアロンの Cisco UCS C シリーズ ラック サーバに加え、複数のサイトにまたがる Cisco UCS S シリーズ ストレージ サーバや Cisco UCS E シリーズ サーバも一元管理を可能にします。IMC Supervisor を使用すると、システム構成や死活状態に関する情報など、管理対象のプラットフォームの状況を詳細に把握できます。管理対象のサーバをユーザ定義のグループに割り当てて、管理チームの担当範囲に基づいてサーバをグループ編成しておけます。これらのグループ間あるいはグループ内で、サーバ検索が可能になるよう、複数のタグをメタデータとして各サーバに割り当てることができます。管理者は、電源オン、電源オフ、仮想 KVM 起動など、個々のシステムごとに、基本的な管理作業を実行できます。また、非インタラクティブ(作業時点での入力不要)なファームウェア更新や診断ツールなど、複数のプラットフォームに対する操作もサポートされています。
まとめ
シスコは、Cisco UCS C シリーズ ラック サーバの管理用に、2 つのオプションを提供しています。IMC は、IPMI に準拠した業界標準の BMC です。IMC は各 Cisco UCS C シリーズ サーバに組み込みで付属しており、お客様にソフトウェア ライセンスやサポートなどの追加コストはかかりません。BMC に対応した Cisco IMC は、スタンドアロンの Cisco UCS C シリーズ サーバで利用することができ、管理者はサーバをプロアクティブに管理およびモニタリングできます。シスコは IMC で、業界標準の Redfish を追加サポートし、スケールアウトおよびクラウドベースの要件に対応します。Cisco IMC は、業界最先端のツールとインターフェイスとの統合用に多くのオプションを提供するとともに、従来の環境やユニファイド コンピューティング環境を高信頼性で効率的に運用して企業ワークロードの厳しい要求に応えるためのさまざまな機能を備えています。
Cisco UCS Manager は、Cisco UCS 用の統合された組み込みマネージャです。IMC を Cisco UCS Manager と併用すると、Cisco UCS Manager を補完し、サーバの診断と管理の多様な機能を Cisco UCS Manager の包括的な機能セットに提供します。Cisco UCS Manager は、サービス プロファイルの使用と物理リソースのジャストインタイムのプロビジョニングを通して、ポリシーベース管理アプローチを実現します。Cisco UCS Manager による管理の一元化は、総所有コスト(TCO)の削減と Cisco UCS 操作の高速化に貢献する大きな特長の 1 つです。
関連情報
● Cisco UCS サービス:ユニファイド コンピューティング アーキテクチャへの移行の促進 [英語]:http://www.cisco.com/en/US/services/ps2961/ps10312/Unified_Computing_Services_Overview.pdf
● Cisco UCS C シリーズ サーバ統合管理コントローラ CLI 設定ガイド リリース 3.0 [英語]:http://www.cisco.com/c/en/us/td/docs/unified_computing/ucs/c/sw/cli/config/guide/3_0/b_Cisco_UCS_C-Series_CLI_Configuration_Guide_301.html
● Cisco UCS C シリーズ サーバでの Cisco IMC のセットアップ:http://www.cisco.com/en/US/partner/products/ps10493/products_configuration_example09186a0080b10d66.shtml
● Cisco UCS C シリーズ ラックマウント サーバ:http://www.cisco.com/en/US/partner/products/ps10493/tsd_products_support_series_home.html
● ユニファイド コンピューティング:http://www.cisco.com/en/US/partner/netsol/ns944/index.html
● インテリジェント プラットフォーム管理インターフェイス(IPMI)の仕様 [英語]:http://www.intel.com/design/servers/ipmi/spec.htm