ソリューション概要Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータに搭載された IP マルチキャストCisco® 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータを使用することで、企業およびサービス プロバイダーは、インストール、管理、保護、制御、および拡張が容易な高性能の IP マルチキャスト ネットワークを低コストで展開できます。このドキュメントでは、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータに搭載されたマルチキャストの機能と利点の概要を説明します。シスコのマルチキャストの基本的な概念、および Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ アーキテクチャについての知識があることを前提としています。課題企業およびサービス プロバイダーは、長年にわたり、IP マルチキャストという帯域幅節約技術を使用してサービスを実現してきました。新たなアプリケーションで、マルチキャストを使用した高帯域幅およびミッション クリティカルなサービスが提供され始めたのに伴い、IP マルチキャストを展開するネットワークには新たな課題が発生しています。これらの新しい課題について説明する前に、企業およびサービス プロバイダーのネットワークに IP マルチキャストが展開されるシナリオを理解しておくことも重要です。 エンタープライズ ネットワークにおける IP マルチキャストIP マルチキャスト アプリケーションは、帯域幅を効果的に管理し、必要に応じてネットワーク内のトラフィックを複製することでアプリケーション サーバの負荷を軽減する重要な通信プロトコルとして、企業の間で普及が進んでいます。 IPTV:広域に分散した従業員、顧客、およびパートナーに研修ビデオや企業からのメッセージを届けるために、IPTV ブロードキャストを使用する企業の数は増え続けています。また、Cisco TelePresence など、高帯域幅で遅延の影響を受けやすいテクノロジーを使用したブランチ オフィス間の効果的なコミュニケーションを促進するためにも、IP マルチキャストが使用されています。 金融業界での用途:金融企業は、証券コード サービスなどの金融データを効率的に取引現場から顧客に配布する手段として、マルチキャストを使用しています。 IP マルチキャストを使用することで、企業はコンテンツおよびメディアをネットワーク内で効率的に配布できます(図 1)。
図 1 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータをエンタープライズ ネットワークに配置した IP マルチキャストの展開 サービス プロバイダー ネットワークにおける IP マルチキャスト新しい収益機会を模索するサービス プロバイダーにとって、IP マルチキャストは収益を生む付加価値サービスの実現に役立ちます。 Multicast Virtual Private Network(MVPN; マルチキャスト バーチャル プライベート ネットワーク):サービス プロバイダーは従来の VPN サービスから MPLS VPN サービスに移行しています。MPLS ではマルチキャストがネイティブでサポートされていないため、Multiprotocol Label Switching VPN(MPLS VPN; マルチプロトコル ラベル スイッチング VPN)ネットワーク上で IP マルチキャストを有効にするためには、機能を別途用意する必要があります。 IP/TV:IP マルチキャスト プロトコルを使用してデータを効率的に配布するために、サービス プロバイダーは主に次の 2 種類の IP/TV サービスを提供しています。
図 2 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータを配置したサービス プロバイダーのネットワークによる IP/TV の展開 このようなサービスの拡大や、収益を生む高帯域幅のミッションクリティカルなサービスには IP マルチキャストが必要であり、これに関連して次のような課題が発生しています。
解決方法Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータは、シスコの既存の IP マルチキャスト機能の幅広さとスケールを最大限に活用して、現在および将来のネットワーク要件に対応します。 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータに搭載されたマルチキャスト機能Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでは、Cisco IOS ソフトウェアの IP マルチキャスト機能を受け継ぐ、Cisco IOS® XE ソフトウェアが実行されます。Cisco IOS XE ソフトウェアに継承された Cisco IOS マルチキャスト機能の特徴をいくつか説明します。 Protocol Independent Multicast(PIM):IP PIM は、マルチキャスト配布ツリーを構築する業界標準として認められています。通常、システムでは PIM から得た情報を使用して、階層的マルチキャスト ルーティング テーブル(ルーティング ツリー)がインストールおよび動的に保守されます。 次に、Cisco IOS ソフトウェアでサポートされる PIM プロトコルの主なバージョンを示します。いずれもコントロール プレーンのプロトコルです。
IP マルチキャスト Call Admission Control(CAC; コール アドミッション制御):Cisco IOS XE ソフトウェアではリソースのオーバーサブスクリプションを制御するため、Cisco IOS ソフトウェアに IP マルチキャストの CAC を構成する次の各種のオプションが実装されています。
IPv6 マルチキャスト:IPv4 アドレスの枯渇が進んでいるため、Cisco IOS XE ソフトウェアでは、IPv6 用の PIMv2、および Multicast Listener Discovery(MLD)バージョン 1 および MLDv2 のサポートが追加されました。
図 3 Cisco IOS XE ソフトウェアに継承される Cisco IOS ソフトウェアの IP マルチキャストの進化 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのマルチキャスト ハイ アベイラビリティ(HA)アーキテクチャCisco ASR 1000 シリーズ ルータは、ハイ アベイラビリティ(HA)実現のため、ハードウェアおよびソフトウェア コンポーネントにいずれも冗長性が備えられています。これらのコンポーネントはモジュラ型のため、フェールオーバーまたは再起動イベント中も障害を隔離して、システムのほかの部分は正常な動作を続行できます。 完全冗長構成の Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでは、コントロール プレーンとフォワーディング プレーンが物理的に分離されています。ASR 1000 シリーズ ルータのハイ アベイラビリティを理解するためには、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの主なコンポーネントについて理解する必要があります。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ システムの主なコンポーネントは次のとおりです。
このハードウェア アーキテクチャでは、Non Stop Forwarding(NSF)、Stateful Switch Over(SSO)、および In Service Software Upgrade(ISSU)など、Cisco IOS ソフトウェアから継承された機能と、Cisco IOS XE ソフトウェア独自の機能を使用して、ハイ アベイラビリティを実現します。IP マルチキャストのハイ アベイラビリティは、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上でほかのプロトコルと同じように動作し、信頼性の高い Inter-Process Communication(IPC; プロセス間通信)トランスポートを使用して同期化されます。 ASR 1000 シリーズ ルータでは、ルーティング プレーン(RP)とフォワーディング プレーン(ESP)が物理的に分離されています。完全冗長性を備えた 6RU シャーシの場合、RP と ESP はアクティブ/スタンバイ モードで稼働します。フェールオーバーの際に、ハイ アベイラビリティは次のように機能します。
図 4 は、完全冗長構成の Cisco ASR1000 シリーズ ルータ内部の概略図です。
図 4 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのマルチキャストのハイ アベイラビリティ概略図 4RU および 2RU のシャーシでは、単一の RP および ESP を物理的に分離できます。ハードウェア コンポーネントに冗長性は備えられていないものの、Cisco IOS ソフトウェア プロセスによって冗長性が提供されます。プライマリ Cisco IOS ソフトウェアに障害が発生した場合は、バックアップ イメージにシームレスに切り替わります。図 5 は、Cisco IOS ソフトウェア プロセスの冗長性を示しています。また、4RU および 2RU シャーシでも、デュアル RP(6RU シャーシ)システムでサポートされるすべての NSF/SSO 機能がサポートされます。
図 5 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの単一ルート プロセッサの冗長性 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのハイ アベイラビリティの詳細については、http://www.cisco.com/go/asr1000/ [英語] で、ハイ アベイラビリティに関するホワイト ペーパーを参照してください。 エンベデッド サービス プロセッサ(ESP)での効率的なマルチキャスト複製Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでは、IP マルチキャスト データ パケットは IP ユニキャスト データ パケットと同じように処理されます。入力インターフェイスに到着したパケットは、SPA によって ESP に転送され処理されます。ただし、マルチキャスト パケットは ESP 内で複製されるため、ESP 内での処理は大きく異なります。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでは、効率的な複製アルゴリズムを使用してパケットが複製されます。 ESP では、次のような方法でマルチキャスト処理を効率化しています。
複製を効率化することで、IP マルチキャスト トラフィックの遅延およびジッタを最小限に抑えることができます。ESP は、システム全体の能力に負荷をかけることなく、マルチキャストを複製する効率的でスケーラブルなソリューションです。図 6 に、ESP におけるマルチキャスト データの複製方法を示します。
図 6 エンベデッド サービス プロセッサでのマルチキャスト複製のフロー Cisco QuantumFlow Processor の詳細については、http://www.cisco.com/go/asr1000/ [英語] で、QuantumFlow Processor に関するホワイト ペーパーを参照してください。 Cisco ASR1000 シリーズ ルータを企業およびサービス プロバイダーのネットワークで展開する利点企業およびサービス プロバイダーは、Cisco ASR1000 シリーズ ルータを使用することで次の利点を実現し、サービスを効果的に提供できます。
まとめCisco ASR 1000 シリーズ ルータは、Cisco QuantumFlow Processor の利点を最大限に活用する先進的なミッドレンジ ルータです。この革新的なプラットフォームを導入すると、次世代ネットワークに Cisco ASR 1000 シリーズを柔軟に展開できます。 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでは、ユーザ環境でのファームウェア アップグレード、ソフトウェア アップグレード、および将来のハードウェア要件を十分配慮することにより、お客様の投資を保護します。シスコの製品をお使いいただくと、お客様の今日そして将来のネットワーク投資を確実に保護できます。 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの詳細については、 http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/routers/asr1000/index.html を参照してください。 Cisco IOS マルチキャスト テクノロジーの詳細については、 http://www.cisco.com/en/US/products/ps6552/products_ios_technology_home.html [英語] を参照してください。 |