Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータ

Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータのハイアベイラビリティ:ミッドレンジ ルータ システムにおける「キャリアクラス」サービスの実現

ソリューション概要





Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータのハイアベイラビリティ:ミッドレンジ ルータ システムにおける「キャリアクラス」サービスの実現


今日のネットワークの集約エッジにおいては、Web 2.0 およびコラボラティブ ビジネス アプリケーションの結果として急増したビデオ トラフィックおよびアップストリームとダウンストリームの比率の変化への対応が必要とされています。複雑さを増す一方のポリシー管理やユーザ エクスペリエンスの一貫性の管理は非常に重要ですが、その一方で、新しいネットワーク要件が急速なペースで次々に出現してきます。サービス プロバイダーおよび企業のネットワークは変化しつつあり、ネットワーク エッジに正しいソリューションを展開することの重要性が増しています。このようなテクノロジーの混乱の中で、第一世代のネットワーク エッジ設計は、新たな複雑性と課題に直面しています。新興のアプリケーションによって加入者管理の複雑さが増大し、その管理機能が強く求められています。膨大な数の並列タスクをリアルタイムに管理する必要性から、メモリ管理およびパフォーマンスの向上が要求されます。サービス プロバイダーおよび企業の IT マネージャにとって、一貫したユーザ エクスペリエンスを維持するためには、ネットワーク コアと同様に、エッジにおけるハイアベイラビリティが重要です。いずれの環境においても、ダウンタイムや停止は許されません。このため、インボックスの冗長性機能と、ネットワーク ベースのアベイラビリティの改善の両方が必要とされています。

シスコは、ハイエンドのお客様施設、エンタープライズ WAN、およびサービス プロバイダーのエッジ ルーティング用のソリューションとして、価格性能比の新しいクラスを実現する、新しいルート プロセッサ、Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータを開発しました。集約エッジの要件に対応して設計されたこの新ラインは、パフォーマンス、スケール、柔軟性、セキュリティ、およびプログラマビリティを提供するとともに、サービス プロバイダーと企業の双方に有益な、かつてないレベルのコストの削減を実現します。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、サービス プロバイダー環境と企業環境の両方において、ハイアベイラビリティの厳格な要件を満たすキャリアクラスのシステムとして設計されています。このドキュメントでは、これらのルータのキャリアクラスの特性について説明します。ハードウェアおよびソフトウェアの両方について、ハイアベイラビリティの観点から説明します。特に、ハイアベイラビリティを実現する Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの革新機能については詳しく説明します。このドキュメントの対象読者は、技術上の意思決定者、ネットワーク エンジニア、および Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ アーキテクチャの基本知識を持つ、技術指向のビジネス開発マネージャです。


Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのハイアベイラビリティの概念

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのハードウェアとソフトウェアは、キャリアクラスのミッドレンジ ルーティング システムの要件を満たすように設計されています。

ハードウェアの観点から、12 の共有ポート アダプタ(SPA)スロットを備えた Cisco ASR 1006 ルータ シャーシは、ルート プロセッサ(RP)およびエンベデッド サービス プロセッサ(ESP)の両方の冗長性をサポートします。コントロール プレーンとデータ プレーン機能をルート プロセッサと ESP に分離することにより、障害時のシステム復元性が向上しています。アクティブ ルート プロセッサの障害によってデータ フォワーディング パスが中断することはありません。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータを通過するデータ パケットのフォワーディングは ESP によって続行されます。同様に、アクティブ ESP の停止は、中継中のデータ トラフィックに最小限の影響しか与えません。Cisco ASR 1006 ルータ内の冗長 ESP はホットスタンバイ モードで稼働し、アクティブ ESP の障害の際にフォワーディング機能を即時に引き継ぐことができるように、最新のフォワーディング ステートが維持されます。また、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ内のすべてのシステムは、冗長電源(AC 二重化または DC 二重化電源)を備えています。

ソフトウェアの観点から、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、Cisco IOS® ソフトウェアのハイアベイラビリティ機能を十分に活用します。Cisco ASR 1000 IOS XE ソフトウェアは、設定の同期化、ウォーム スタンバイ、ウォーム リブートなどの基本的なハイアベイラビリティ機能を提供します。また、Nonstop Forwarding with Stateful Switchover(NSF/SSO)、ブロードバンドのハイアベイラビリティ、Multiprotocol Label Switching(MPLS; マルチプロトコル ラベル スイッチング)のハイアベイラビリティ、Bidirectional Forwarding Detection(BFD)、マルチキャストのハイアベイラビリティ、Cisco Session Border Controller のハイアベイラビリティ(SBC-HA)、および In Service Software Upgrade(ISSU)などの先進的なハイアベイラビリティ機能もサポートします。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの大きな差別化要因は、ミッドレンジ プラットフォームにおいて傑出したパフォーマンスで統合サービスを提供すること、そして、これらのサービスでハイアベイラビリティを実現していることです。

停止の際の復元力の向上は、ハードウェア冗長性を備えていない Cisco ASR 1002 ルータおよび Cisco ASR 1004 ルータでもサポートされています。いずれのシステムでも、ルート プロセッサ上の専用の保護メモリ スペース内で、2 つの独立した Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスを実行できます。各Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスは、コントロール プレーン、レイヤ 2 およびレイヤ 3 プロトコルについて、それぞれ独自のシステム ステート情報を維持します。このステート情報は、アクティブな Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスからスタンバイ プロセスに絶えずミラーリングされています。障害発生時、または強制的スイッチオーバーの際には、スタンバイの Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスが、コントロール プレーン機能の実行を即時に開始し、必要なシステム ステート テーブルの更新を行います。

この後は、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのキャリアクラスの利点を、シャーシの設計およびソフトウェアの観点から説明します。


Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのキャリアクラスのシャーシ設計

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの 3 タイプのシャーシは、それぞれ異なる度合いのハイアベイラビリティ サポートを提供します。Cisco ASR 1006 ルータ シャーシは、フォワーディング プロセッサ(ESP)の冗長性とルート プロセッサ(RP1)の冗長性をサポートし、これらのコンポーネントの障害に対して高い復元力を提供します。Cisco ASR 1004 および 1002 モデル ルータ シャーシは、単一ルート プロセッサおよび単一 ESP として設計され、2 つの Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスをホットスタンバイ モードで実行することで、ソフトウェアのハイアベイラビリティを実現します。

Cisco ASR 1006 ルータのキャリアクラスの特性

Cisco ASR 1006 ルータの完全冗長構成では(図 1)、両方のルート プロセッサ上で Cisco IOS XE ソフトウェアが実行されます。いずれかのルート プロセッサおよびいずれかの ESPが、それぞれアクティブ ルート プロセッサおよびアクティブ ESP として選択されます。この設計は、Cisco ASR 1006 ルータ内でルート プロセッサと ESP のモジュールを物理的に分離することで、障害のローカリゼーションをサポートします。ルート プロセッサの障害が、アクティブ ESP またはスタンバイ ESP のフォワーディング能力に影響を与えることはありません。同様に、アクティブ ESP の障害の際も、両方のルート プロセッサの稼働に影響はありません。

図 1 Cisco ASR 1006 シリーズ ルータ

図 1 Cisco ASR 1006 シリーズ ルータ

Cisco ASR 1006 ルータの連続稼働という面では、アクティブ ルート プロセッサが特に重要です。システム内のアクティブ ルート プロセッサとして選択されたルート プロセッサは、以下のタスクを担当します。

  • ネットワーク内の他のルータとの間のネットワーク コントロール プレーン メッセージの送受信および各種のネットワーキング プロトコルに関わるコントロール プレーン ステートの計算:プロトコルには、Open Shortest Path First(OSPF)、Border Gateway Protocol(BGP; ボーダー ゲートウェイ プロトコル)、Point-to-Point Protocol(PPP; ポイントツーポイント プロトコル)、Layer 2 Tunneling Protocol(L2TP; レイヤ 2 トンネリング プロトコル)などが含まれます。
  • アクティブ ESP のフォワーディング ステートのプログラミング:このステップが完了すると、Cisco ASR 1000 ルータの ESP は、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータを通過するデータ パケットに関してフォワーディング デシジョンを行うことができます。アクティブ ESP は、シスコ エクスプレス フォワーディング テーブルやマルチキャスト フォワーディング テーブルなど、必要なフォワーディング データベースをローカルに維持します。
  • すべてのスタンバイ コンポーネント(スタンバイ ESP およびスタンバイ ルート プロセッサの両方)内のコントロール プレーンおよびフォワーディング プレーンのステート情報の管理:このタスクには、算出されたフォワーディング ステートのアクティブ ESP へのコピー、および現在のコントロール プレーン ステートのスタンバイ ルート プロセッサへのコピーが含まれます。

Cisco ASR 1006 ルータ シャーシ内では、システム内部の Ethernet Out-of-Band Channel(EOBC)を使用して、さまざまなモジュール間で常時システム ステート情報が交換されています。障害条件が検出されると、スイッチオーバー イベントが発生し、障害が発生したコンポーネントのフォワーディングまたはコントロール プレーン機能は、スタンバイのルート プロセッサおよび ESP に即時に引き継がれます。

正常稼働状態の場合、アクティブ ルート プロセッサは、各種の内部メカニズムを使用してシステムの状態を監視しています。重要なシステム コンポーネント間でキープアライブが実行され、この受信に失敗した場合は、フェールオーバー イベントがトリガーされます。また、たとえば電源入力モジュール(PEM)の障害が発生した場合や、ルート プロセッサを手動でシステムから除去した場合など、低レベルの割り込みによってフェールオーバー イベントがトリガーされることもあります。

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータから提供される Onboard Failure Logging(OBFL)機能を使用してすべての障害を記録できます。各モジュール(ルート プロセッサ、ESP、および SPA インターフェイス プロセッサ [SIP] キャリア カード)上のフラッシュ メモリを使用してログ ファイルを保存できます。

図 2 は、データ プレーンの接続およびコントロール プレーンの接続を含めて、Cisco ASR 1006 ルータの高レベルのブロック図を示しています。

図 2 データ プレーン(左)とコントロール プレーン(右)のリンクを示す Cisco ASR 1006 のブロック図

図 2 データ プレーン(左)とコントロール プレーン(右)のリンクを示す Cisco ASR 1006 のブロック図
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Cisco ASR 1006 ルータのフェールオーバー シナリオ

アクティブまたはスタンバイ ルート プロセッサ、またはアクティブまたはスタンバイ ESP のいずれで障害が発生したかにより、障害の検出後、次のいずれかのシナリオが発生します。

  • アクティブ ルート プロセッサの障害:アクティブ ルート プロセッサの障害が検出されると、Cisco ASR 1006 ルータの内部回路は即時に、スタンバイ ルート プロセッサの状態を「アクティブ」に変更します。ミドルウェア ソフトウェア コンポーネントは、両方のESP およびすべての SIP カード(図 5 を参照)に対してこのステート変更を通知します。その後ミドルウェア ソフトウェア コンポーネントは、すべての内部リンクの再構成を開始します。障害のあるルート プロセッサへのデータ プレーン リンク(Enhanced Serdes Interface [ESI])はループバック モードに変更され、新しいアクティブ ルート プロセッサへの ESI リンクがオンとなり、EOBC でも同様のステート変更が実行されます。
    内部回路が新しいアクティブ ルート プロセッサに切り替わると、その Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスがコントロール プレーン機能を開始します。新しいアクティブ ルート プロセッサは、システム内の両方の ESP と共同で、シャーシ内のすべてのステート テーブルの同期を維持します。
    この間に、障害が発生したルート プロセッサのリスタート サイクルが実行されます。障害が発生したルート プロセッサがリスタートに成功すると、シャーシ内のスタンバイ ルート プロセッサとしての役割が与えられます。ルート プロセッサはこの役割において、新しいアクティブ ルート プロセッサから完全なステート情報を受け取ります。障害のあるルート プロセッサのリスタートが失敗した場合(たとえばハードウェア コンポーネントの回復不能なエラーのため)、Cisco ASR 1006 ルータは単一のルート プロセッサによる稼働を続行します。
    障害の発生したルート プロセッサから新しいアクティブ ルート プロセッサへのスイッチオーバーの間も、アクティブ ESP 上のパケットのフォワーディングは続行されます。中継中のパケットがルート プロセッサのスイッチオーバー イベントの影響を受けることはありません。
  • スタンバイ ルート プロセッサの障害:スタンバイ ルート プロセッサの障害の際のプロセスは、アクティブ ルート プロセッサの障害の場合と似ていますが、より単純です。スタンバイ ルート プロセッサの障害が検出されると、スタンバイ ルート プロセッサのリスタート サイクルが開始されます。障害が発生したスタンバイ ルート プロセッサのリブートが成功すると、Cisco IOS XE ソフトウェアのコントロール プレーンのステート テーブルが、アクティブ ルート プロセッサが維持しているステート テーブルと同期化されます。
    システム内のいずれのアクティブ コンポーネントも障害の影響を受けることはありません。ESI リンクも EOBC リンクも再構成は必要ありません。アクティブ ルート プロセッサおよびアクティブ ESP は両方とも、コントロール プレーン機能およびフォワーディング プレーン機能の実行を続けます。冗長の ESP もスタンバイ モードで稼働し、アクティブ ESP との同期を維持します。
  • アクティブ ESP の障害:アクティブ ESP の障害が検出された場合は、スイッチオーバー イベントが発生します。アクティブ ルート プロセッサ上のオペレーティング システムのミドルウェア コンポーネントによって障害が登録されます。アクティブ ルート プロセッサの障害の場合と同様に、ESI リンクが再構成され、スタンバイ ESP とアクティブおよびスタンバイの両方のルート プロセッサとの間のリンクが活動化されます。SIP キャリア カードとスタンバイ ESP の間の ESI リンクも活動化されます。
    アクティブ ルート プロセッサは、障害のある ESP 宛てにリスタート シグナルを送信します。障害が発生した ESP のリブートが成功すると、アクティブ ルート プロセッサとの間でステートの同期化が行われます。障害のある ESP の電源の再投入が失敗した場合、システムは単一 ESP による稼働を続けます。
    アクティブ ルート プロセッサと両方の ESP の間では、フォワーディング ステート テーブルの同期化のみ実行されます。2 つの ESP 間でパケット メモリの調整は行われないため、アクティブ ESP の障害により、一時的なパケットの損失が発生します。障害発生時にいずれかの ESP メモリ バンク内に存在していたすべてのパケットは失われます。
  • スタンバイ ESP の障害:キープアライブまたは割り込みメカニズムなどによって(障害のタイプによって異なります)障害が検出された場合、障害のあるスタンバイ ESP のリスタート フェーズが開始されます。リブートが成功すると、アクティブ ルート プロセッサはスタンバイ ESP のフォワーディング ステート情報を埋め込みます。スタンバイ ESP の障害条件が永続的な場合、システムは単一のアクティブ ESP を使用して稼働を続けます。
    このような障害の場合、アクティブ ルート プロセッサとスタンバイ ルート プロセッサの両方が各自の機能を続行します。アクティブ ルート プロセッサは、障害のあるスタンバイ ESP がスタンバイの役割を再開できるように、スタンバイ ESP を支援する責任さえも担います。同様に、アクティブ ESP では、すべてのデータ トラフィックのフォワーディングが続行されます。スタンバイ ESP の障害によってパケットが損失することはありません。

Cisco ASR 1002 および 1004 モデル ルータのハイアベイラビリティ サポート

Cisco ASR 1002 および 1004 モデル ルータは、モジュラ性の程度に違いはありますが、単一のルート プロセッサと単一の ESP をサポートします(図 3)。いずれのシャーシも、AC または DC の PEM のみの冗長性と、完全な Online Insertion and Removal(OIR; 活性挿抜)機能を備えています。

図 3 Cisco ASR 1002 および 1004 モデル ルータ

図 3 Cisco ASR 1002 および 1004 モデル ルータ
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さらに、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでは、これらのシャーシ タイプについて、ソフトウェア ベースのしっかりしたハイアベイラビリティ サポートを、ハードウェアの完全冗長システムよりも低いコストで提供しています。このようなサポートは、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの革新的なソフトウェア アーキテクチャによって可能になりました。ルータの Cisco IOS XE ソフトウェアは、Linux ベースのカーネル上のプロセスとして実行されます。このアーキテクチャにより、1 つのカーネル上で 2 つの独立した Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスを同時に実行することが可能になります。このような構成は、Cisco 1002 および 1004 モデル ルータの両方でサポートされています。

このような設定の場合のメモリ要件として、4 GB の DRAM が必要になります。2 つの独立した Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスはそれぞれ、専用の保護メモリ スペース内で実行されます。

図 4 は、この場合の Cisco IOS XE ソフトウェアのハイアベイラビリティ インフラストラクチャを示しています。同じアクティブ ルート プロセッサ上で 2 つの Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスが実行されていることに注目してください。同じルート プロセッサ上で実行されるアクティブおよびスタンバイの Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスの間で、Interprocess Communication(IPC; プロセス間通信)プロトコルが確立されています。これは、Cisco ASR 1006 ルータの場合に別々のルート プロセッサ モジュール上でアクティブおよびスタンバイの Cisco IOS XE ソフトウェアが実行されるのとは異なります。この信頼できる IPC 上の通信の使用方法は、ルート プロセッサの冗長モジュールを使用する場合と同じです。アクティブな Cisco IOS XE ソフトウェアは、さまざまなレイヤ 2 およびレイヤ 3 プロトコルおよび機能に関するマスター ステート テーブルを維持しています。スタンバイの Cisco IOS XE ソフトウェアは、システム ステート テーブルの独自のコピーを維持しています。アクティブおよびスタンバイの Cisco IOS XE ソフトウェア上のハイアベイラビリティ サブシステム間の IPC により、ステート テーブルの複数のコピー間でシステム ステートの同期を維持できます。

スタンバイの Cisco IOS XE ソフトウェアは、キープアライブ メカニズムを使用してアクティブな Cisco IOS XE ソフトウェアの障害を検出します。その後、スタンバイの Cisco IOS XE ソフトウェアはコントロール プレーンの処理を引き継ぎます。この構成では、スタンバイの Cisco IOS XE ソフトウェアは最新のステート テーブルを保持しているため、このようなスイッチオーバー イベントの際にも、コントロール プレーンのトラフィックの中断は発生しません。新しくアクティブになった Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスは、コントロール プレーンの更新を処理します。ローカル テーブルは必要に応じて更新されます。このような障害イベントの場合、ルート プロセッサが関与しないデータ プレーン トラフィックは影響を受けないことを思い出してください。シャーシ内の ESP は、ローカルなフォワーディング ステート情報に従って、データ プレーンを通過するトラフィックのフォワーディングを続行します。

図 4 Cisco ASR 1002 および 1004 モデル ルータ システムのハイアベイラビリティ アーキテクチャ

図 4 Cisco ASR 1002 および 1004 モデル ルータ システムのハイアベイラビリティ アーキテクチャ
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Cisco ASR 1002 および 1004 モデル ルータ上の Cisco IOS XE ソフトウェアのハイアベイラビリティ機能は、特に ISSU の面で重要です。アクティブおよびスタンバイの Cisco IOS XE ソフトウェアが同じバージョンである必要はなく、ISSU 互換であれば使用できます。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ ソフトウェアのハイアベイラビリティ機能により、Cisco IOS XE ソフトウェアの透過なアップグレードが可能になります。


Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのキャリアクラスのソフトウェア インフラストラクチャ

Cisco ASR 1000 シリーズを既存のミッドレンジ システムと比較した場合の大きな相違の 1 つは、ソフトウェア設計です。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、Cisco IOS XE ソフトウェアの豊富な機能を提供すると同時に、重要なシステム プロセスのソフトウェア モジュラ性を提供します。このソフトウェア アーキテクチャは、さまざまなミドルウェア ソフトウェア コンポーネントでサポートされている Linux ベースのカーネルの利点を十分に活用しています。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのすべてのハードウェア モジュールで、Linux カーネルとミドルウェア プロセスの組み合わせが採用されています。このインフラストラクチャ上で、追加のモジュラ ソフトウェア コンポーネントが実行されます。両方のルート プロセッサ モジュールで Cisco IOS XE ソフトウェア イメージを実行することにより、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上で Cisco IOS ソフトウェアの豊富な機能を実現できます。SPA インターフェイス ドライバは SIP キャリア カード上で実行されます。Cisco QuantumFlow Processor(QFP)フォワーディング ソフトウェアは、ESP フォワーディング プロセッサ上で実行されるプロセスです。

図 5 は、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのモジュラ ソフトウェア アーキテクチャのメイン コンポーネントを示しています。ここでは、個々のモジュールについて説明します。

  • Linux カーネル:カーネルは、プロセスのスケジューリング、メモリ アクセス、割り込み処理など、低レベルのオペレーティング システム機能を処理します。また、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ内のモジュラ コンポーネント間の接続も管理します。カーネルは、プロセスの先取り機能を提供し、これにより、プロセスの優先順位付けの制御を可能にします。
  • Cisco IOS XE ソフトウェア ミドルウェア:Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのミドルウェア コンポーネントは、Linux カーネルによるシャーシの管理を支援し、システム アーキテクチャのモジュラ性を促進します。最初に、ルート プロセッサは、ルート プロセッサおよびシャーシ内の他のすべてのハードウェア モジュールの間でシャーシ管理情報を交換することで、システム内に存在するモジュールのタイプについて最新のステータスを把握できます。シャーシ管理プロセスは、モジュールのリスタート、環境条件の監視、またはミッドプレーンを通じた相互接続インフラストラクチャの管理や初期化にとっても重要です。2 番目に、ルート プロセッサおよびシステム内の各 SIP の間で、インターフェイス管理プロセス同士の通信が行われます。このようにして、インターフェイス ステータス情報、トンネル構成、または統計がルート プロセッサに伝達されます。3 番目に、ルート プロセッサと ESP の間でフォワーディング管理プロセス同士の通信が行われます。これにより、ステート情報および統計がルート プロセッサに報告されます。代わりに、フォワーディング情報がルート プロセッサから ESP へプッシュされます。
  • Cisco IOS XE ソフトウェア:Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上の Cisco IOS ソフトウェアは、ルータのルーティング システムを定義するネットワーク機能を提供します。Cisco IOS XE ソフトウェアは、レイヤ 2 プロトコル、トンネルやその他の各種の仮想インターフェイス、ブロードバンド セッション、Simple Network Management Protocol(SNMP; 簡易ネットワーク管理プロトコル)およびその他の管理機能に加えて、ルーティング プロトコルの実行、そしてルーティング システムの構成のためのコマンドラインの管理を担当します。
  • SPA インターフェイス ドライバ:SPA インターフェイス モジュールは、SPA の適切な稼働および SIP キャリア カードとの通信を担当する、独自のソフトウェア ドライバによって管理されます。SPA ドライバは、物理レイヤの通信機能も担当します。
  • Cisco QuantumFlow Processor フォワーディング ソフトウェア:このソフトウェアは、Cisco QuantumFlow Processor による Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの高性能のフォワーディング機能を実現するフォワーディング プレーンを提供します。QFP ソフトウェアは、ESP 上の各種のオンボード リソースの割り振りと管理も行います。ルート プロセッサ上で実行される Cisco IOS XE ソフトウェアは、IPC を通じて QFP ソフトウェア モジュールと通信します。
図 5 Cisco ASR 1000 シリーズ ソフトウェア インフラストラクチャ

図 5 Cisco ASR 1000 シリーズ ソフトウェア インフラストラクチャ
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Cisco IOS XE ソフトウェアのすべてのモジュールは、専用の保護メモリ スペース内で実行されます。これにより障害の隔離が可能になるため、この機能はキャリアクラスという観点から特に重要です。個々のソフトウェア モジュールのソフトウェアの停止状態は、その特定のモジュールに限定されます。その他すべてのプロセスは稼働を続けます。たとえば、同じタイプの複数の SPA が使用されている場合でも、SPA キャリア カード上で、SPA インターフェイス カードごとに別個のドライバ プロセスが実行されます。各 SPA ドライバは専用の保護メモリ内で実行されるため、個々のドライバの障害またはアップグレードの影響はその SPA 内に限定されます。

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのモジュラ ソフトウェア アーキテクチャは、ISSU またはプロセスのリスタート機能の基盤ともなります。完全冗長ハードウェアの Cisco ASR 1006 ルータの場合、すべてのソフトウェア プロセスについて、サービス中のアップグレードや、個々のプロセス単位でのリスタートが可能です。Cisco ASR 1002 および 1004 モデル ルータの場合でも、ルート プロセッサ上で実行される Cisco IOS XE ソフトウェアまたはミドルウェア ソフトウェア モジュールの ISSU がサポートされています。ISSU については、次の項でさらに詳しく説明します。


Cisco ASR 1000 シリーズ ルータにおけるサービスのアベイラビリティ

サービス プロバイダーおよび企業の多数のアプリケーションでは、ハードウェアとソフトウェアのハイアベイラビリティ機能と Quality of Service(QoS)メカニズムの両方を使用して、サービスのアベイラビリティを実現しています。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ アーキテクチャは、システム内のパケット パス全体にわたり必要な制御メカニズムを提供し、基礎サービスに応じたトラフィックの優先順位付けを可能とします。

たとえば、SIP カードでは入力パケットを高優先度および低優先度のキューに分類およびスケジューリングできます。これにより、重要なサービスに属するトラフィックは、フォワーディング エンジンに到着する前から、高優先の扱いを受けることができます。同様に、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの ESP 内でも、サービスのアベイラビリティをサポートする広範囲の QoS メカニズムが用意されています。基礎サービスに応じて、絶対に優先されるキュー(低遅延キュー)、相対的に優先されるキュー(重み付け均等化キュー)、またはベストエフォート キューにトラフィックをスケジュールできます。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ内のスケジューラは、複数のスケジューリング階層をサポートし、クラスごとに、最小帯域幅、最大帯域幅、および超過帯域幅のスケジューリングを可能とします。このようなセットアップにより、さらに複雑なサービス メカニズムが可能となり、特定の加入者向けのバンドル サービスでさえも、QoS メカニズムによって適切にサポートできるようになります。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータからの送出時には、出力キューが短期的なトラフィック バーストを吸収します。これによりシステム全体の QoS サポートが完成します。

図 6 は、Cisco ASR 1000 シリーズの QoS 制御点の高レベルの概要を示しています。

図 6 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのサービス アベイラビリティのための QoS メカニズム

図 6 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのサービス アベイラビリティのための QoS メカニズム
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Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの QoS メカニズムの詳細については、
http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/routers/asr1000/prodlit/asr1000qosaas_sov.html をご覧ください。サービスに対する Cisco QFP サポートの詳細については、
http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/routers/asr1000/prodlit/qfp_sov.html をご覧ください。


Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの最先端のハイアベイラビリティ

一般的に、Cisco IOS XE ソフトウェアのハイアベイラビリティ機能は、Cisco IOS XE ソフトウェアで 3 つのクラス(ネットワーク レベルの復元性、システム レベルの復元性、および組み込みの管理機能)のいずれかに分類できます。

  • ネットワーク レベルの復元性機能では、IP ネットワークおよびコントロール プレーンの分散性による停止時の対応力が活用されます。ネットワーク内の稼働中のルータは共同で、障害のあるノードまたはリンクからトラフィックを遠ざけ、障害のあるルーティング システムが再度アクティブになったときには、そのコントロール プレーン ステートの再構築を支援します。このような機能の例としては、Fast Convergence サポートを含む IP ルーティング プロトコル、BFD、NSF アウェアネス、または MPLS Fast Reroute があります。
  • システム レベルの復元性機能により、障害の影響をルーティング システム内に限定できます。NSF/SSO、ステートフル レイヤ 2 またはレイヤ 3 プロトコル サポート、ウォーム リロード、またはウォーム アップグレードなどの機能は、独立したステート情報の個別の維持を可能にする、ルータのインボックス冗長性に依存しています。停止の際には、ミラーリングされたステート テーブルによってフォワーディング デシジョンが行われます。このプロセスは、ネットワーク内のネイバー ルータに対して透過です。
  • 組み込みの管理機能は、停止管理のメカニズムを提供することで、ハイアベイラビリティの概念全体をサポートします。たとえば、Cisco IOS Embedded Event Manager(EEM)機能を使用して、警戒シグナルを早期にトリガーできます。これは、オペレータによって定義されたしきい値を超えた場合に通知イベントが生成される仕組みです。このカテゴリのもう 1 つの例は、構成のロールバックです。これにより、オペレータは以前のバージョンのルータ構成に戻すことができます。

図 7 は、シスコのハイアベイラビリティのカテゴリを示しています。

図 7 Cisco IOS XE ソフトウェアのハイアベイラビリティ機能のカテゴリ

図 7 Cisco IOS XE ソフトウェアのハイアベイラビリティ機能のカテゴリ
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Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでサポートされる以下のソフトウェア機能は、ミッドレンジ ルーティング分野において特に革新的なものです。

  • NSF/SSO
  • MPLS NSF/SSO
  • BFD
  • L2TP のハイアベイラビリティ
  • SBC のハイアベイラビリティ
  • ブロードバンドのハイアベイラビリティ
  • IP マルチキャストのハイアベイラビリティ
  • ISSU

Cisco ASR 1006 ルータにおける Stateful Switchover によるノンストップ フォワーディング

NSF/SSO は、ルート プロセッサおよび ESP の冗長性に依存していますが、特に、独立したルーティング テーブル(Routing Information Base [RIB; ルーティング情報ベース])およびシスコ エクスプレス フォワーディング テーブル(Forwarding Information Base [FIB; 転送情報ベース])に依存します。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの ESP モジュール内のフォワーディング ステートの独立性により、ルート プロセッサまたは ESP が停止した場合でも、トラフィックのノンストップ フォワーディングが維持されます(冗長構成の Cisco ASR 1006 ルータの場合)。このため、Cisco ASR 1006 ルータ内の冗長コンポーネント間でフォワーディング ステートを維持できるように支援することが、NSF/SSO の 1 つの役割となります。SSO は、スイッチオーバーに備えて、スタンバイのルート プロセッサおよび ESP を完全に初期化しておく責任があります。スタートアップおよび実行時の構成は、アクティブ ルート プロセッサからスタンバイ ルート プロセッサにコピーされます。また、SSO は、すべてのステートフル アプリケーションまたはプロトコルについて、アプリケーションまたはレイヤ 2 セッション ステートを維持します。

さらに、NSF/SSO はその不在時に発生する可能性のあるネットワークの不安定条件を緩和します。アクティブ ルート プロセッサの停止後に冗長ルート プロセッサにスイッチオーバーした場合、ネイバーとの隣接関係が破壊され、再構成が必要になる場合があります。このため、スイッチオーバーを検出したネイバー ルータが、標準のルーティング プロトコル メカニズムを使用して、ネットワークの残りの部分に対して完全なシステム停止を宣言する可能性があります。NSF/SSO は、ネイバー ルータ間のグレースフル リスタート機能によるネゴシエーションを可能にすることで、このような状況を防止します。ネイバーとの隣接関係が確立されると、ネイバー ルータにグレースフル リスタート機能が伝達されます。グレースフル リスタート対応のネイバー ルータとのネイバー関係が喪失した場合(たとえばルート プロセッサのフェールオーバーにより)、障害のあるルータの周囲のルータは、ネットワーク内の残りのルーティング システムに対して隣接関係の喪失を伝搬する代わりに、ネイバーの隣接関係および最新のルーティング ステートを協力して再確立することで、ネットワーク全体の安定性に貢献します。NSF/SSO の詳細については、http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/switches/cat6500/prodlit/nfssdg_dg.html を参照してください。


Cisco ASR 1006 ルータにおける MPLS NSF/SSO

MPLS NSF/SSO のサポートにより、MPLS 環境まで NSF/SSO 機能を拡張できます。これは特に、Label Forwarding Information Base(LFIB; ラベル転送情報ベース)の同期化による、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの ESP 内でのラベル ベースのフォワーディング情報の同期化に役立ちます。この場合、LFIB もまた、アクティブおよびスタンバイのルート プロセッサ間で同期化されます。さらに、MPLS NSF/SSO 機能により、Cisco ASR 1006 ルータ内のアクティブおよびスタンバイのルート プロセッサ間で、Label Information Base(LIB; ラベル情報ベース)内のラベル バインディング情報の同期を維持できます。

前に説明したルーティング プロトコルの場合と同様に、ルート プロセッサの障害により、ピアリング ルータ間のラベル バインディングの交換に使用される Label Distribution Protocol(LDP; ラベル配布プロトコル)セッションの隣接関係が喪失する可能性があります。Cisco ASR 1006 ルータのアクティブ ルート プロセッサからスタンバイ ルート プロセッサへのフェールオーバー イベントにより LDP 隣接関係が喪失する可能性はありますが、ここでも、LDP グレースフル リスタート機能により、障害の発生したシステムで実際のラベル バインディングが失われることを防止できます。LDP ピアが協力して、障害が発生したルータの LDP 隣接関係を再確立し、LDP ラベル バインディングを検証します。前に説明したように、このような操作を実行するには、LDP ネイバーが LDP グレースフル リスタート対応である必要があります。


Bidirectional Forwarding Detection

BFD は、さまざまなメディア タイプ、カプセル化、トポロジ、またはルーティング プロトコルにおいて、より迅速な収束または障害検出をサポートするために急速に普及しつつある高速の Hello プロトコルです。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、非同期 BFD モードをサポートしているため、ネイバー ルータ間の BFD セッションの確立および BFD ネイバー間の BFD 制御パケットの交換が可能です。上位レイヤのルーティング プロトコルは、各自の Hello メカニズムに追加して、または既存のメカニズムに替えて、これらのキープアライブ メカニズムを使用できます。BFD は、ルーティング プロトコルに対して障害検出イベント通知を早期に送信できるため、再収束時間が大幅に短縮されます。

BFD は Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのルート プロセッサに実装されているため、完全にステートフルです。BFD ステート情報はアクティブとスタンバイの両方のルート プロセッサで維持されます。


ブロードバンドのハイアベイラビリティ

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、ブロードバンドのハイアベイラビリティにより、モジュールの障害の際にも、PPPoX セッションを維持できます。PPP Termination and Aggregation(PTA)展開においては、アクティブおよびスタンバイのルート プロセッサおよび ESP の間で PPPoX セッションのステート情報が調整されます。アクティブ ESP の障害が発生した場合は、スタンバイ ESP がフォワーディング機能を引き継ぎます。スタンバイ ESP は、アクティブ ルート プロセッサからすべての PPPoX ステート情報を得られるため、PPPoX セッションを通じてトラフィックの受け渡しを続行できます。


L2TP のハイアベイラビリティ

法人向けブロードバンド環境における L2TP セッションのハイアベイラビリティ サポートの重要性が高まっています。L2TP は、制御データを交換するための制御接続を、ピア ルータに依存して維持しているトンネル プロトコルです。L2TP のハイアベイラビリティがない場合は、これらのトンネルを介して維持される PPP セッションを含めて、すべての L2TP トンネルが失われます。

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、L2TP ハイアベイラビリティをサイレント モードでサポートします。L2TP ピア ルータ自体が L2TP ハイアベイラビリティをサポートする必要はなく、グレースフル リスタートのような機能を提供する必要もありません。L2TP ステート情報はアクティブおよびスタンバイのルート プロセッサの間で同期化されます。このため、Cisco ASR 1006 ルータのアクティブ ルート プロセッサの障害が発生した場合、スタンバイ ルート プロセッサは必要なステート情報を入手し、L2TP ピアの間の L2TP 制御接続を維持できます。これらの L2TP トンネルを介して維持される法人向けセッションが失われることはないため、法人向けブロードバンド環境においても、障害に対するより強固な復元力が提供されます。


SBC のハイアベイラビリティ

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの大きな差別化要因の 1 つは、SBC 機能のサポートです。特に、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、SBC 環境において Distributed Border Element(DBE)として機能できます。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、H.248 制御プロトコルを使用して Session Border Element(SBE)から制御メッセージを受け取るため、メディア ピンホールの開閉が可能なうえ、セッション ボーダーの制御下のトラフィックのためのデータ プレーンを提供できます。

前に説明したハイアベイラビリティ機能の場合と同様に、Cisco ASR 1006 シリーズ ルータはアクティブおよびスタンバイのルート プロセッサまたは ESP の間で SBC セッション ステートを同期化できます。ここでも、アクティブ ルート プロセッサの障害の際には、スタンバイ ルート プロセッサへのスイッチオーバーが発生します。H.248 制御メッセージの処理は、スタンバイ ルート プロセッサで即時に再開されます。同様に、スタンバイ ESP は DBE フォワーディング ステート テーブルのコピーを維持しているため、アクティブ ESP の障害が発生した場合は、SBC 制御下のトラフィックのフォワーディング機能を即時に引き継ぐことができます。

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの SBC ハイアベイラビリティ機能の詳細については、http://www.cisco.com/jp/go/asr1000/ をご覧ください。


IP マルチキャストのハイアベイラビリティ

IP マルチキャストのハイアベイラビリティは、Cisco IOS XE ソフトウェアの他のいくつかの機能に関連して説明したハイアベイラビリティの概念をマルチキャスト環境に適用したものです。Cicso ASR 1006 ルータ上のアクティブおよびスタンバイのルート プロセッサ、およびアクティブおよびスタンバイの ESP の間で、マルチキャスト ステート情報が維持されます。マルチキャストに関係する Cisco IOS XE ソフトウェア設定文のすべてを同期化することで、スタンバイ ルート プロセッサは構成済みのマルチキャスト機能についての最新のビューを維持できます。また、アクティブおよびスタンバイ両方の ESP モジュールでマルチキャスト FIB(MFIB)を常に最新の状態で維持することにより、アクティブな ESP の障害の際にも透過なスイッチオーバーを実現できます。

ランデブー ポイント、双方向 PIM 指定フォワーダ、またはマルチキャスト配布ツリー(MDT)の PIM トンネル詳細などの Protocol Independent Multicast(PIM)情報もまた、アクティブおよびスタンバイのモジュール間でマッピングされます。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのマルチキャストのハイアベイラビリティには、現在 IETF 1 で指定されている PIM Hello GenID オプションも実装されています。この仕様は、Multicast Routing Information Base(MRIB; マルチキャスト ルーティング情報ベース)を失ったルータ宛てに、ネイバー ルータから PIM Join メッセージを再送信するためのメカニズムを提供します。この方法により、Cisco ASR 1006 ルータのルート プロセッサの障害の際にも、マルチキャスト ネイバーからマルチキャスト ルーティング テーブルを迅速に再習得して、MFIB の最新バージョンを計算し、ESP にダウンロードできます。

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのマルチキャストのハイアベイラビリティ機能の詳細については、http://www.cisco.com/jp/go/asr1000/ をご覧ください。

1 http://tools.ietf.org/html?draft=draft-ietf-pim-hello-genid-01.txt popup_icon


In Service Software Upgrade

ISSU は、ルータのトラフィックの処理中(サービス中)に、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのオペレーティング システム ソフトウェアをアップグレードするための機能を提供します。この機能は、システムのダウンタイムを短縮し、これによりネットワークおよびネットワークが提供するサービス全体のアベイラビリティの向上に寄与するため、サービス プロバイダーおよび企業のお客様にとって特に重要なものです。ISSU がない場合、ソフトウェアのアップグレードまたはパッチが必要なときには、ルータのリロードが必要となり、これは、多くの場合、お客様の接続の中断を意味します。

Cisco IOS XE ソフトウェアの ISSU 機能では、バージョン管理を含めて、NSF/SSO 機能が拡張されています。ISSU は、2 つの異なる Cisco IOS XE ソフトウェア リリースの機能および能力の整合性を検証します。既存の構成が新しいソフトウェア バージョンで正しく機能するかどうかを確認するため、健全性チェックが実行されます。ISSU は、Cisco IOS XE ソフトウェアの各リリースのソフトウェア互換性マトリックスを使用してこれらのチェックを行うことで、アップグレードが失敗した場合に必要になるトラブルシューティングおよびダウンタイムを最小化します。新しい Cisco IOS XE ソフトウェアのリリースが既存のソフトウェア バージョンと ISSU 互換の場合は、NSF/SSO メカニズムを使用して、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上でアクティブ ESP からスタンバイ ESP へのスイッチオーバーが実行されます。

この ISSU の説明はダウングレード(新しいバージョンの Cisco IOS XE ソフトウェアを古いリリースで置き換える場合)についても当てはまります。

ISSU は Cisco ASR 1006 ルータに限定されたものではありません。Cisco ASR 1002 および 1004 モデル ルータでも、Cisco IOS XE ソフトウェアまたはルート プロセッサのミドルウェア ソフトウェア モジュールの ISSU 機能がサポートされています。


アプリケーション

図 8 は、音声、音声を含むビデオ、ビデオ オンデマンド、テレビ放送、および高速インターネット アクセス サービスを提供する次世代のトリプルプレイ(データ、音声、およびビデオ)ブロードバンド ネットワークをサポートする、多数の Cisco ASR 1006 ルータの展開例を示しています。このネットワーク内の Cisco ASR 1006 ルータはエッジ機能を提供します。単一の Cisco ASR 1006 ルータ上で、顧客単位の VLAN を使用して、最大 16,000 の加入者を終端できます。加入者から到着したトラフィックに関して、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、ネットワーク内の最初の IP ホップになります。各種のサービス宛てのトラフィックは、コアにルーティングされ、そこから宛先に送られます。同様に、加入者宛てのトラフィックに関して、Cisco ASR 1006 はエンドツーエンド パス上の最後の IP ホップとなります。

図 8 Cisco ASR 1006 ルータによるキャリアクラスの次世代ブロードバンド ネットワーク

図 8 Cisco ASR 1006 ルータによるキャリアクラスの次世代ブロードバンド ネットワーク
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Cisco ASR 1006 ルータには以下のハイアベイラビリティ機能が用意されています。

  • NSF/SSO:各 Cisco ASR 1006 ルータには、ルート プロセッサおよび ESP モジュールが二重に搭載されています。NSF/SSO 機能により、Cisco IOS XE ソフトウェアの構成およびその他のプロトコル ステート情報は常に同期化されています。このシナリオでは、アクティブなルート プロセッサまたは ESP の障害の際にフォワーディング機能を即時に引き継げるように、スタンバイのルート プロセッサおよび ESP は常に準備を整えています。
  • ギガビット イーサネット チャネル(GEC; IEEE802.32ad):GEC は、Passive Optical Network(PON)集約インフラストラクチャに向けたリンクの冗長性を提供します。これにより、個々のギガビット イーサネット リンクの障害を、トラフィックを中断することなく、GEC バンドルに構成された残りのギガビット イーサネット リンクで容易に吸収できます。
  • 10 ギガビット イーサネット アップリンクの冗長性:各 Cisco ASR 1000 シリーズ ルータには、IP コア ネットワーク宛ての 10 ギガビット イーサネット リンクが二重に構成されています。ルーティング機能により、アップリンクの障害によるルータの孤立を防止できます。このような場合、OSPF ルーティング プロトコルはコア宛てのトラフィックをセカンダリ アップリンクにリダイレクトします。
  • IP マルチキャストのハイアベイラビリティ:このネットワークでは、Cisco ASR 1006 ルータに IP マルチキャストを構成し、数百のチャネルを通じてテレビ放送サービスを提供しています。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの IP マルチキャストのハイアベイラビリティ機能により、ルート プロセッサまたは ESP の障害の際にも、加入者の接続は維持され、マルチキャスト トラフィックの受信が続けられます。
  • SBCのハイアベイラビリティ:この次世代ネットワークでは、SBC 機能により、音声サービスおよび音声を含むビデオ サービスが実現されています。Cisco ASR 1006 ルータは、ルート プロセッサおよび ESP モジュール内でセッションおよびフォワーディング ステートの同期を維持することで、コンポーネントが停止した場合の音声サービスおよび音声を含むビデオ サービスの復元性を保証しています。
  • L2TP のハイアベイラビリティ:この展開では、L2TP 法人向けモデルを使用して、高速インターネット アクセス サービスを提供しています。PPP over Ethernet(PPPoE)のセッションは L2TP ネットワーク サーバ(LNS)に向けてトンネルされ、そこで終端します。Cisco ASR 1006 ルータの L2TP ハイアベイラビリティ機能により、アクティブなルート プロセッサまたは ESP の障害の際に、PPPoE セッションと L2TP トンネルの両方をアクティブなまま維持できます。
  • BFD:このネットワークの展開では、Bidirectional Forwarding Detection を使用して、ルーティングの高速の収束をサポートしています。BGP および OSPF ルーティング プロトコルは BFD とリンクされるため、BFD が提供する迅速な障害検出機能を利用できます。

Cisco ASR 1006 ルータの最先端のハイアベイラビリティ機能を組み合わせることで、ネットワーク内のトリプルプレイ サービスによる収益性が向上します。


結論

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、電力、スペース、スペア、および保守の大幅な削減を可能にする、強力な小型ルータです。このルータは、今日の音声、ビデオ、およびデータを組み合わせたサービスの複雑性を解消し、今後数十年にわたり、サービス デリバリの課題に対応できるだけの柔軟性をサービス プロバイダーに提供することを目的として構築されました。キャリアクラスのソフトウェアおよびハードウェア設計を備えたこのルータは、コンポーネントの停止の際の復元力を大幅に強化し、システムおよびネットワーク全体のアベイラビリティを向上します。

Cisco ASR 1006 ルータは完全なハードウェア冗長性を備えています。ルート プロセッサおよび ESP 上でコントロール プレーンとフォワーディング プレーンを分離することで、障害のローカリゼーションが実現されます。ルート プロセッサが停止した場合にも、ESP 上のトラフィックのフォワーディングへの影響はまったくありません。同様に、アクティブ ESP の障害の際にはスタンバイ ESP が処理を引き継ぐため、アクティブ ルート プロセッサの稼働に影響はありません。ハードウェアの冗長性を備えていない Cisco ASR 1002 および 1004 モデル ルータにおいても、ソフトウェアのハイアベイラビリティを低コストで実現できます。

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの Linux ベースのソフトウェア アーキテクチャにより、1 つのルート プロセッサ上で、2 つの Cisco IOS XE ソフトウェア プロセスをホットスタンバイ モードで実行できます。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのハードウェアおよびソフトウェアのキャリアクラスの特性に基づいて、Cisco IOS XE ソフトウェアでサポートされる多数のハイアベイラビリティ機能を活用できます。NSF/SSO、MPLS NSF/SSO、ブロードバンドのハイアベイラビリティ、L2TP のハイアベイラビリティなどの機能に加えて、SBC のハイアベイラビリティ、IP マルチキャストのハイアベイラビリティ、および ISSU などの機能さえも提供する Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、厳格なハイアベイラビリティが必要とされるサービス プロバイダーおよびエンタープライズ ネットワークにとって理想的なものです。


関連情報

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータおよび関連するテクノロジーの詳細については、以下の資料をご覧ください。

[1] Cisco QuantumFlow Processor:シスコの次世代ネットワーク プロセッサ
http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/routers/asr1000/prodlit/qfp_sov.html

[2] Cisco ASR 1000 シリーズ:QoS アーキテクチャとソリューション
http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/routers/asr1000/prodlit/asr1000qosaas_sov.html

[3] Cisco NSF/SSO(ノンストップ フォワーディング/ステートフル スイッチオーバー)導入ガイド
http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/switches/cat6500/prodlit/nfssdg_dg.html

[4] Cisco ASR 1000 シリーズ セッションボーダーコントローラ
http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/routers/asr1000/prodlit/asr1000sbc_sov.html