テクノロジー解説

Fibre Channel over Ethernet(FCoE)

 Fibre Channel over Ethernet(FCoE)は、ANSI INCITS T11で FC-BB-5 として標準化が完了した新しいプロトコルです。このプロトコルの目的は名前が示すとおり、ファイバチャネル(FC)のプロトコルをイーサネット フレームとして運ぶことです。これによって、LAN(イーサネット)とSAN(ファイバチャネル)とで別々のインフラストラクチャを構築する必要がなくなり、I/O 統合が実現されます。FCoEの技術と利点を紹介します。

 社内ネットワークの普及と発展とともに、ファイル共有やデータベース共有のためにファイル サーバ専用アプライアンスである NAS(Network Attached Storage)が登場し、データセンターにおけるデータの集中管理が促進されるようになりました。データセンターで企業データを集中管理することは、一環したデータ管理、セキュリティ、管理のしやすさやにおいてもメリットがあります。そして、ストレージ自身をネットワーク化する技術も登場しました。それが、ストレージ エリア ネットワーク(Storage Area Network)です。頭文字をとって SAN(「サン」と発音)と呼ばれています。SAN は、ストレージとサーバなどを接続するネットワークで、ファイバチャネルなどの特別なプロトコルが使われます。

 FCoE は、イーサネット上でファイバ チャネルのデータ(FCフレーム)を運ぶことを目的に開発された技術です。これにより、サーバとストレージを接続する SAN と、サーバとクライアントを接続する LAN ネットワーク、あるいはサーバ同士を接続をするサーバ/クラスタ ネットワークを同じ物理ネットワーク上に統合できます。

 FC は、ほかのプロトコルと同様に階層構造になっています。FC の場合、物理層から上位プロトコルまでを5つの階層に分けています。FCoE では、そのなかのFC-0の物理層とFC-1のエンコード/デコードのレイヤを、イーサネット(IEEE 802.3)の物理層とMAC層に置き換えたような構造になります。

 これによって、上位プロトコルに変更を加える必要がなく、これまで利用してきたSANのアプリケーションや管理ツールをそのまま利用できます。一見するとシンプルですが、このシンプルなコンセプトにも、解決しなければならないさまざまな技術的課題があります。

カプセル化

 イーサネット上でFCの通信を行うためには、FCフレームをイーサネット フレームのなかにカプセル化する必要があります。つまり、イーサネット フレームのデータ部分にFC フレームを組み込むのです。そのために FCoE では、イーサネット フレームに拡張を加えています。次の図は、イーサネット(IEEE 802.3)フレームと FCoE フレームを簡略化して並べています。

カプセル化

 FCoE では、IEEE 802.3のVLANタグ対応のフレームを使用します。先頭の48ビットが宛先MACアドレス、次の48ビットが送信元MACアドレス、その後に32ビットの VLANタグ(IEEE 802.1Qタグ)が続きます。これが VLAN のためのオプション機能で、1つの物理ネットワーク上で複数のLANを実装するためのフィールドです。FCoE フレームでは、その次のフィールドが「タイプ」フィールドとなり、ここでこのフレームが FCoE であることを示します。

 ここで注目していただきたいのは、通常のイーサネットのデータフィールドが46〜1500バイトであるのに対して、FCoE のフレームが平均で2112バイトあることです。そのため、FCoE を利用するためには、ジャンボフレーム、あるいはベビージャンボフレームをサポートするイーサネット環境が必要となっています。

パケット ロスのないイーサネットの実現

 イーサネットは、対話型のアプリケーションに代表されるような、小さなデータが頻繁に発生するようなネットワーク環境で使用されてきました。それに対してデータセンターのストレージ ネットワークでは、ブロックI/Oが実行されます。これらの送受信データの特性は、輻輳時の処理の違いに現れています。

 ファイバ チャネルでは、データが途中でドロップされずに送信先に届くことを保障しています。一方、イーサネットでは送信先に確実に届くことは保障しておらず、パケット ロスは上位階層の TCP/IP の再送機能で対応するようになっています。イーサネットのようなパケット ドロップ方式の輻輳管理は、ストレージ ネットワーク環境には使用できないのです。

 そこで FCoE では、輻輳管理にイーサネットの PAUSE 機能を使用しています。これは、ある受信ポートのトラフィックが多くなると、その受信ポートから送信元ポートに対して PAUSE 信号を送り、送信を一時的にストップさせる機能です。これによって FCoE では、ファイバ チャネルのトラフィックを確実に送れるようにしています。

 このPAUSE機能を更に拡張させたものが、IEEE データセンター ブリッジング の機能の 1 つとして実装されています。

アドレスマッピング

 ここで、FC対応スイッチの役割を見てみましょう。FCoE対応スイッチは、ファイバ チャネル スイッチとイーサネット スイッチの両方の機能を備えており、イーサネット フレームについては宛先MACアドレス、ファイバ チャネル フレームについては宛先のFC IDに基づいてフレームを送り出すポートを決定します。そのとき、受け取った FC フレームの宛先が同じスイッチになければイーサネット フレームにカプセル化してイーサネット ポートから送出したり、イーサネット ポートに届いたフレームから FC フレームと取り出してファイバ チャネル スイッチに渡したりする役割を果たします。

 ファイバ チャネル スイッチは、フォワーディング テーブルを維持しており、このテーブルの情報に基づいて最良のリンクを選択してフレームを転送します。ファイバ チャネルのリンクは、通常、ポイントツーポイントであるため、フレームの転送時にアドレスの付け替えをする必要がありません。しかし、イーサネット フレームには宛先と送信先のMACアドレスの指定が必要になりますから、FCoE対応スイッチはファイバ チャネル リンクに対して MAC アドレスを割り当てなければなりません。これもFCoE対応スイッチの重要な機能の1つです。

ユニファイド ファブリックの利点

 ファイバ チャネルFCoEでは、ファイバチャネルのフレームがそのままカプセル化されるため、ファイバチャネルへの投資をムダにすることなく、セキュリティなどのトラフィック属性を継承し、管理ツールもそのまま活用することができます。

 さらにサーバ仮想化に対する要求に応えるためにも、FCoE のようなユニファイド ファブリック機能は、データセンターにとって必須の機能ということができます。仮想化によって複数のオペレーティング システムを同じ物理サーバ上で稼動させ、VMware社のVMortionなど仮想サーバのモビリティをサポートするためには、複数のイーサネットNIC(Network Interface Card)やファイバチャネルHBA(Host Bus Adapter)が必要です。具体的には、VMortionネットワーク用のNIC、Hypervisor管理ネットワーク用のNIC、クライアントとの接続にしようするLAN用NIC(冗長を考慮し2枚)、それにネットワーク上のストレージにアクセスするためのSAN用のHBA(冗長を考慮し2枚)と、平均で4つのLANポートと2つのSANポートの合計6ポートが必要となります。 状況によっては、さらにポートやアダプタを追加する場合もあります。

 FCoE はSAN と LAN のトラフィックの両方を1つのネットワーク アダプタに統合します。したがって、2つのSAN と4本以上のLAN接続を、たった2本に減らすことができるのです。I/O 統合とは、複数あるネットワークやストレージ アダプタを1つの統合ネットワーク アダプタ(CNA:Converged Network Adapter)に機能統合することです。したがって、これは、サーバ スロットとスイッチポートの数を減らすだけでなく、I/Oや冷却に必要となる電力の削減にもつながります。

SAN、LAN、サーバのトラフィックを統合するユニファイド ファブリックは、これからのデータセンターの可能性を広げるだけでなく、大幅な消費電力の削減が可能になることなどから、グリーン データセンターの構築を支援します。

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