SCSI フロー サービスと統計情報の設定
この章では、ストレージ サービス モジュール(SSM)でサポートされるインテリジェント ストレージ サービス機能、Small Computer System Interface(SCSI)フロー サービス、および SCSI フロー統計情報について説明します。
この章は、次の項で構成されています。
SCSI フロー サービス
SCSI フローは SCSI 発信側およびターゲットの組み合わせです。SCSI フロー サービスは、SSM で取得された統計情報の書き込みアクセラレーションやフロー モニタリングなど、SCSI フローに関する拡張機能を提供します。
この項では、次のトピックについて取り上げます。
SCSI フロー サービスの概要
SCSI フロー サービスの機能アーキテクチャは、次のコンポーネントで構成されています。
- スーパーバイザ上の SCSI Flow Manager(SFM):SFM はスーパーバイザ モジュール上にあり、SCSI フローの設定を処理し、検証して、設定情報を適切な SSM にリレーします。また、外部イベントによる SCSI フロー ステータスの動的な変更すべて処理し、さまざまな操作によって発生する変更を登録します。
- スーパーバイザ上の SCSI フロー設定 CLI:SFCC は SSM の CPP に配置されています。SFM からフロー設定要求を受信し、発信側およびターゲット ポート インターフェイスに対応する DPP を設定して、設定要求のステータスとともに SFM に返します。
- SSM の Control Path Processor(CPP)上の SCSI Flow Configuration Client。
- SSM の Data Path Processor(DPP)上でサポートされる SCSI フロー フィーチャ セット:SSM 上の DPP は発信側とターゲットの間のすべてのメッセージを検証し、ファイバ チャネル書き込みアクセラレーションや統計情報モニタリングなどの SCSI フロー機能を提供します。
図 2-1 に、SCSI フロー サービスの機能アーキテクチャの例を示します。
図 2-1 SCSI フロー サービスの機能アーキテクチャ
(注) SCSI ターゲットおよび発信側は、異なるスイッチ上の異なる SSM に接続する必要があります。
(注) 統計情報をモニタする場合、SSM にターゲット デバイスを接続する必要はありません。
SCSI Flow Manager
SCSI Flow Manager(SFM)はスーパーバイザ モジュール上にあり、SCSI フローの設定を処理し、検証して、設定情報を適切な SSM にリレーします。また、外部イベントによる SCSI フロー ステータスの動的な変更もすべて処理します。SFM は、ポートのアップまたはダウン、VSAN の中断、SCSI フロー ステータスに関連するゾーン分割などの処理によって発生したイベントを登録し、フロー ステータスおよび設定を適宜更新します。
発信側 SFM は Cisco Fabric Services(CFS)を使用して、ターゲット側のピアと通信します。発信側 SFM は、ピア通信を使用してターゲット側でターゲット パラメータおよびプログラム情報を検証することができます。
SCSI Flow Configuration Client
SCSI Flow Configuration Client(SFCC)は SSM の CPP に配置されています。SFM からフロー設定要求を受信し、発信側およびターゲット ポート インターフェイスに対応する DPP を設定して、設定要求のステータスとともに SFM に返します。
SCSI フロー データ パス サポート
SSM 上の DPP は発信側とターゲットの間のすべてのメッセージを検証し、ファイバ チャネル書き込みアクセラレーションや統計情報モニタリングなどの SCSI フロー機能を提供します。
SCSI フロー サービスの設定
SCSI フローの仕様は、次の属性で構成されます。
- SCSI フロー ID
- VSAN ID
- SCSI 発信側の pWWN
- SCSI ターゲットの pWWN
- ファイバ チャネル書き込みアクセラレーションおよび統計情報モニタリングで構成されるフロー フィーチャ セット
SCSI フローの仕様は、SCSI 発信側とターゲットが異なるスイッチの SSM に物理的に接続されてファブリック内に配置されている可能性もあるので、分散型設定になっています。この設定では、スイッチ名や発信側またはターゲットの SSM スロット位置を識別する情報は必要ありません。SCSI フロー設定を手動で行うのは発信側だけです。このため、設定プロセスが簡略化されます。発信側スイッチは、CFS を使用してターゲット スイッチの SFM に設定を送信します。ターゲット スイッチには SCSI フロー設定が不要です。
インテリジェント ストレージ サービスの概要
インテリジェント ストレージ サービスは、Storage Services Module(SSM)でサポートされている機能です。Cisco MDS SAN-OS Release 2.0(2b) 以降または Cisco NX-OS 4.1.(1) 以降でサポートされているインテリジェント ストレージ サービスの内容は、次のとおりです。
- SCSI フロー サービス
- SCSI フロー統計情報
Cisco MDS SAN-OS Release 2.1(1a) 以降、または Cisco NX-OS 4.1(1) では、SSM 機能用のポートのサブセットをプロビジョニングできます。ポート範囲は 4 の倍数(fc4/1 ~ fc4-12 など)で設定する必要があります。SCSI フロー サービスは、SSM 全体または 4 つのインターフェイスのグループをイネーブルにできます。
インターフェイスで SCSI フロー サービスをイネーブルにする場合は、次のような制限事項があります。
- イネーブルにできるインターフェイスは 4 つ以上です。fc1 ~ fc4 は指定できますが、fc1 ~ fc2 は指定できません。
- グループ内の最初のインターフェイスには 1、5、9、13、17、21、25、29 を指定します。fc5 ~ fc8 は指定できますが、fc7 ~ fc10 は指定できません。
- 4 つのインターフェイスのグループは連続している必要はありません。fc1 ~ fc8 と fc17 ~ fc20 を指定できます。
(注) ファイバ チャネル書き込みアクセラレーションは SSM 全体にプロビジョニング可能であり、SSM の任意のインターフェイス グループにプロビジョニングすることはできません。
SCSI フロー サービスのイネーブル化
SCSI フロー サービスを有効にするには、次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
switch# config t switch(config)# |
コンフィギュレーション モードに入ります。 |
ステップ 2 |
switch(config)# ssm enable feature scsi-flow module 2 |
スロット 2 の SSM で SCSI フロー サービスをイネーブルにします。 |
switch(config)# no ssm enable feature scsi-flow module 2 |
スロット 2 の SSM の SCSI フロー サービスをディセーブルにします。デフォルトではディセーブルになっています。 |
switch(config)# no ssm enable feature scsi-flow force module 2 |
スイッチのスロット 2 の SSM で SCSI フロー サービスを強制的にディセーブルにします。デフォルトではディセーブルになっています。 |
ステップ 3 |
switch(config)# ssm enable feature scsi-flow interface fc 2/5 - 8 |
スロット 2 の SSM のインターフェイス 5 ~ 8 で SCSI フロー サービスをイネーブルにします。 (注) インターフェイスにはポート 1、5、9、13、17、21、25、および 29 で始まる 4 の倍数を指定する必要があります。 |
switch(config)# no ssm enable feature scsi-flow interface fc 2/5 - 8 |
スロット 2 の SSM のインターフェイス 5 ~ 8 で SCSI フロー サービスをディセーブルにします。デフォルトではディセーブルになっています。 |
switch(config)# no ssm enable feature scsi-flow force interface fc 2/5 - 8 |
スイッチのスロット 2 の SSM のポート 5 ~ 8 で SCSI フロー サービスを強制的にディセーブルにします。 |
SCSI フロー設定の配布のイネーブル化
CFS を使用して SCSI フロー設定の配信をイネーブルにするには、次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
switch# config t switch(config)# |
コンフィギュレーション モードに入ります。 |
ステップ 2 |
switch(config)# scsi-flow distribute |
CFS により、SCSI フロー設定の配布をイネーブルにします。デフォルトではイネーブルになっています。 |
switch(config)# no scsi-flow distribute |
SCSI フロー設定の CFS 配布をディセーブルにします。 |
SCSI フロー ID の設定
SCSI フロー ID は、VSAN ID などのスイッチで固有で、ユーザによって選択されます。SCSI フロー ID を設定するには、次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
switch# config t switch(config)# |
コンフィギュレーション モードに入ります。 |
ステップ 2 |
switch(config)# scsi-flow flow-id 3 initiator-vsan 2 initiator-pwwn 21:00:00:e0:8b:07:5f:aa target-vsan 4 target-pwwn 2a:20:00:05:30:00:77:e0 |
イニシエータとターゲットの pWWN を使用して SCSI フロー ID 3 を設定します。指定できるフロー ID の範囲は 1 ~ 65535 です。 |
switch(config)# no scsi-flow flow-id 3 initiator-vsan 2 |
SCSI フロー ID 3 を削除します。 |
SCSI フロー統計情報
この項では、次のトピックについて取り上げます。
SCSI フロー統計情報の概要
収集可能な SCSI フロー統計情報は次のとおりです。
– I/O の数
– I/O ブロックの数
– I/O ブロックの最大数
– I/O 応答時間の最小値
– I/O 応答時間の最大値
– I/O の数
– I/O ブロックの数
– I/O ブロックの最大数
– I/O 応答時間の最小値
– I/O 応答時間の最大値
- 他の SCSI コマンド(read または write 以外)
– 待機中のテスト ユニット
– LUN レポート
– 問い合わせ
– 読み込み可能サイズ
– モード センス
– 要求センス
– タイムアウトの回数
– I/O エラーの数
– SCSI ステータスのイベント数
– SCSI センス キー エラーまたはイベントの数
この機能を利用するには、SSM に発信側だけを直接接続する必要があります。
(注) SCSI フロー統計情報の機能を使用するには、発信側スイッチにだけ Enterprise Package ライセンスをインストールする必要があります。
(注) SCSI フロー統計情報の場合、発信側は Cisco MDS スイッチの SSM に接続する必要がありますが、ターゲットはファブリックの任意の別のスイッチに接続できます。SCSI フロー発信側とターゲットを同一のスイッチには接続できません。
SCSI フロー統計情報の設定
この項では、次のトピックについて取り上げます。
SCSI フロー統計情報のイネーブル化
SCSI フロー統計情報モニタリングをイネーブルにするには、次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
switch# config t switch(config)# |
コンフィギュレーション モードに入ります。 |
ステップ 2 |
switch(config)# scsi-flow flow-id 3 statistics |
SCSI フロー ID 3 で統計情報のモニタリングをイネーブルにします。 |
switch(config)# no scsi-flow flow-id 3 statistics |
SCSI フロー ID 3 で統計情報のモニタリングをディセーブルにします。デフォルトではディセーブルになっています。 |
SCSI フロー統計情報のクリア
SCSI フロー統計情報を(デバッグのために)クリアするには clear device-name statistics flow-id コマンドを使用します。
switch# clear scsi-flow statistics flow-id 3
SCSI フロー サービス情報の表示
SCSI フロー サービスに関する情報を表示するには、 show scsi-flow コマンドを使用します(例 2-1 ~例 2-5 を参照)。
例 2-1 SSM 上にプロビジョニングされたアプリケーションの表示
switch# show ssm provisioning
Module Ports Application Provisioning Status
-----------------------------------------------------------
例 2-2 すべての SCSI フロー ID の SCSI フロー サービス設定の表示
Initiator WWN: 21:00:00:e0:8b:05:76:28
Target WWN: 21:00:00:20:37:38:7f:7d
Flow Verification Status:
-------------------------
Initiator Verification Status: success
Target Verification Status: success
Initiator Linecard Status: success
Target Linecard Status: success
Write-Acceleration enabled
Write-Acceleration Buffers: 1024
Configuration Status: success
Configuration Status: success
Initiator WWN: 21:00:00:e0:8b:05:76:28
Target WWN: 21:00:00:20:37:38:a7:89
Flow Verification Status:
-------------------------
Initiator Verification Status: success
Target Verification Status: success
Initiator Linecard Status: success
Target Linecard Status: success
Write-Acceleration enabled
Write-Acceleration Buffers: 1024
Configuration Status: success
例 2-3 特定の SCSI フロー ID の SCSI フロー サービス設定の表示
switch# show scsi-flow flow-id 3
Initiator WWN: 21:00:00:e0:8b:05:76:28
Target WWN: 21:00:00:20:37:38:7f:7d
Flow Verification Status:
-------------------------
Initiator Verification Status: success
Target Verification Status: success
Initiator Linecard Status: success
Target Linecard Status: success
Write-Acceleration enabled
Write-Acceleration Buffers: 1024
Configuration Status: success
Configuration Status: success
例 2-4 すべての SCSI フロー ID の SCSI フロー サービス統計情報の表示
switch# show scsi-flow statistics
Stats for flow-id 4 LUN=0x0000
------------------------------
I/O Min response time=5247 usec
I/O Max response time=10160 usec
I/O Total block count=12795840
I/O Min response time=492 usec
I/O Max response time=10056529 usec
Rx Frame Byte Count=6549984752
Tx Frame Byte Count=6549984752
SCSI Status Reservation Conflict=0
SCSI Status Task Set Full=0
Sense Key Hardware Error=0
Sense Key Illegal Request=0
Sense Key Unit Attention=28
Sense Key Aborted Command=0
Sense Key Volume Overflow=0
例 2-5 特定の SCSI フロー ID の SCSI フロー サービス統計情報の表示
switch# show scsi-flow statistics flow-id 4
Stats for flow-id 4 LUN=0x0000
------------------------------
I/O Min response time=5247 usec
I/O Max response time=10160 usec
I/O Total block count=12795840
I/O Min response time=492 usec
I/O Max response time=10056529 usec
Rx Frame Byte Count=6549984752
Tx Frame Byte Count=6549984752
SCSI Status Reservation Conflict=0
SCSI Status Task Set Full=0
Sense Key Hardware Error=0
Sense Key Illegal Request=0
Sense Key Unit Attention=28
Sense Key Aborted Command=0
Sense Key Volume Overflow=0
デフォルト設定値
表 2-1 に、SCSI フロー サービスおよび SCSI フロー統計情報のパラメータのデフォルト設定を示します。
表 2-1 インテリジェント ストレージ サービスのパラメータのデフォルト値
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SCSI フロー サービス |
ディセーブル |
SCSI フロー サービス配信 |
イネーブル |
SCSI フロー統計情報 |
ディセーブル |