情報漏えいをストップできない会社は生き残れない

INDEX

  1. 蛇口の壊れた水道のように漏れるプライバシー
  2. 打ち出の小槌となったプライバシー
  3. eリスクへの危機感が低い企業ほど漏えいの危険性は高い
  4. eリスクマネジメントは自社情報の棚卸しから

打ち出の小槌となったプライバシー

こうしたプライバシー漏えいが頻発する背景には、個人情報の売買が“商売”として十分に成り立っていることがある。個人情報を名簿業者に持ち込めば、一人あたり 1円~150円前後で買ってくれる。もちろん利用価値の高い情報ほど高くなる。

たとえば、住所、氏名だけの情報価値は低いが、それに加えて電話番号、生年月日が加わると商品価値は高くなる。それらの情報は、銀行やクレジットカードなどの本人確認に使われるからだ。さらに、その人の趣味や嗜好、所有する車の種類、スポーツクラブ会員、クレジットカード番号、銀行口座番号、納税額などが記載されていれば、今注目の One to One マーケティングに最適な情報となり、さらに高く売れる。

詳細な個人情報であればあるほど、その人にふさわしい商品を効率よく案内でき、かゆいところに手が届く顧客満足度の高いサービスを提供できる。ただ昔から、洋の東西を問わず顧客満足度の高い商売を行うには、顧客のプライバシーを熟知することは当たり前だった。昔は、そうしたプライバシーは店主の頭のなかにあるか、企業の顧客台帳に記録されていたに過ぎず、今日のように漏えい・拡散する危険性は低かった。

ビジネス効率を上げるためにデータベースが整備され、One to One マーケティングに活用されるようになると、データベースに蓄積されたプライバシーは成長を続ける。その結果、さらに個人情報の量が増え質 (住所、氏名、電話番号、生年月日などのほかに、趣味や嗜好などの属性情報) も高くなって電子的な人格 (幻人) を形成し、効率的なビジネスへの利用が可能になる。

こうした利用価値の高いプライバシーだからこそ、売買されることになる。仮に一人 1円で 10万人分あれば 10万円になり、その情報の質が高ければ数百~数千万円にも上る。こうした個人情報を盗み出すのは、情報に容易にアクセスできる内部犯がほとんどだ。データは紙のように 1枚 1枚コピーする手間も入らないので、盗み出す労力と対価を考えればこんな楽な“商売”はない。今やプライバシーは打ち出の小槌となった。

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