前提条件
Cisco CallManager Express 3.2 をインストールするための前提条件は、次のカテゴリに分類されます。
•
「ライセンスに関する前提条件」
•
「メモリに関する前提条件」
•
「ネットワークに関する前提条件」
•
「ソフトウェアに関する前提条件」
ライセンスに関する前提条件
Cisco CallManager Express 3.2 を使用する権利を得るための基本機能のライセンスと電話機のシート ライセンスを購入する必要があります。
(注) H.450 標準をサポートしていない Cisco CallManager などのネットワーク デバイスに対する H.323 コール転送および自動転送をサポートするには、ネットワーク内にタンデム ゲートウェイが必要です。タンデム ゲートウェイは Cisco IOS ソフトウェア 12.3(7)T 以降を実行している必要があります。また、Integrated Voice and Video Services 機能のライセンス(FL-GK-NEW-xxx)が必要です。このライセンスには、H.323 ゲートキーパー、IP 対 IP ゲートウェイ、および H.450 タンデムの機能が含まれています。
ネットワークに関する前提条件
•
IP ルーティングを有効にする必要があります。
•
VoIP ネットワーキングを運用可能にする必要があります。品質とセキュリティを保証するため、データと音声の Virtual LAN(VLAN; バーチャル LAN)を分離することを推奨します。各 VLAN に割り当てる IP ネットワークは、その VLAN 上のノードすべてのアドレスを十分にサポートできる規模にする必要があります。Cisco CME 電話機は、自分の IP アドレスを音声ネットワークから受信しますが、PC、サーバ、プリンタなど、その他すべてのノードは、自分の IP アドレスをデータ ネットワークから受信します。
•
Dynamic Host Configuration Protocol(DHCP; ダイナミック ホスト コンフィギュレーション プロトコル)サーバから IP アドレスを受信するように、音声 VLAN を設定する必要があります。Cisco CME 電話機用の DHCP サーバは、Cisco CME のセットアップ時に指定されます。詳細については、「 Cisco CME システムの設定 」の章の「Cisco CME の DHCP サービスの設定」の項を参照してください。
•
ルータ上のクロックを適切な日時に設定する必要があります。ルータに接続されている IP
Phone はすべて、日時の設定値をルータ クロックから受信します。ルータ クロックを正確な状態に保つには、ルータを Network Time Protocol(NTP; ネットワーク タイム プロトコル)用に設定します。
•
IP Phone で電話機ファームウェア ファイルをダウンロードできるようにするには、ルータで Trivial File Transfer Protocol(TFTP; トリビアル ファイル転送プロトコル)を有効にする必要があります。
Cisco IOS ソフトウェア
•
Cisco Software Center から Cisco IOS Release 12.3(11)T 以降の IP VOICE イメージをダウンロードしてインストールします。Cisco CME に関するその他の Cisco IOS 機能を有効にする場合は、
Feature Navigator を使用して、該当する Cisco IOS ソフトウェア機能を検索してください。
•
Cisco CME 3.2 の場合、Cisco 2600XM、2800、3600、3700、および 3800 シリーズには最小限の
12.3(11)T IP VOICE イメージが必要であり、Cisco 1751-V および Cisco 1760 シリーズには
IP/ADSL VOX PLUS イメージが必要です。Cisco 2600XM、3600、および 3700 シリーズで
AIM-ATM-VOICE-30 を使用している場合は、最小限の SP SERVICES イメージが必要です。
Cisco CME 3.2 ファイルをダウンロードおよびインストールする方法
次のいずれかの方法で、Cisco Software Center から Cisco CME 3.2 ファイルをインストールします。
•
「zip 圧縮されたアーカイブ」
•
「tar アーカイブ」
(注) この項に記載されているソフトウェア バージョンの番号は、このマニュアルが記載された時点のものです。ファイルをダウンロードするときは、それ以降のバージョンを入手できる場合があります。ソフトウェア ダウンロード サイトから入手できる最新のソフトウェア バージョンを使用してください。
zip 圧縮されたアーカイブ
zip 圧縮されたアーカイブの場合は、単一のアーカイブ ファイルにすべての Cisco CME 3.2 ファイルが含まれています。このアーカイブからファイルをインストールするには、次の手順を実行します。
1.
CME ルータで動作中の IOS バージョンに対応する cme-xxx.zip ファイルを
http://www.cisco.com/cgi-bin/tablebuild.pl/ip-key からダウンロードします。サイトには、ルータで動作中の Cisco IOS バージョンに対応する .zip ファイルはどれかということも示されます。ルータ上の Cisco IOS リリースに一致しない .zip ファイルを使用すると、Cisco CME の Graphical User Interface(GUI; グラフィカル ユーザ インターフェイス)などの機能が誤動作する場合があります。
2.
WinZip プログラムを使用して cme-xxx.zip を圧縮解除します。
3.
圧縮解除されたファイルのうち、電話機ファームウェア ファイルおよび CiscoIOSTSP.zip を除く各ファイルをルータのフラッシュ メモリにコピーします。電話機ファームウェア ファイルについては、サイトに配置された電話機タイプに対応するファイルだけをコピーします。CiscoIOSTSP.zip については、「 生産性ツールの設定 」の章の「Cisco IOS TSP のインストール」の項にあるインストール手順を参照してください。
tar アーカイブ
Cisco Software Center にある単一の tar ファイル(cme-basic-xxx.tar)には、基本的な Cisco CME システム ファイルと基本的な Cisco CME GUI ファイルが含まれています。Cisco IOS コマンドを使用すると、tar ファイルの圧縮解除と、ルータのフラッシュ メモリへのコピーを同時に行うことができます。cme-basic-xxx.tar ファイルには、バンドルされた TSP ファイル(CiscoIOSTSP.zip)が含まれていませんが、TSP ファイルは別途ダウンロードできます。Cisco CME 3.2 の tar アーカイブからファイルをインストールするには、次の手順を実行します。
1.
http://www.cisco.com/cgi-bin/tablebuild.pl/ip-iostsp から目的のバージョンの Cisco CME tar アーカイブと Cisco CME GUI tar アーカイブを、Cisco CME ルータにアクセス可能な TFTP サーバにダウンロードします。
2.
次のコマンドを使用して、各アーカイブを圧縮解除してルータのフラッシュ メモリにコピーします。
•
archive tar /xtract source-url flash: /file-url
たとえば、TFTP server 192.168.1.1 にある cme-basic-123-11T.tar の内容をルータのフラッシュ メモリに抽出するには、次のコマンドを使用します。
archive tar /xtract tftp://192.168.1.1/cme-basic-123_11Ttar flash:
(注) CiscoIOSTSP.zip ファイルは、いずれの tar アーカイブにも含まれていません。TSP ファイルをインストールするには、別途 CiscoIOSTSP.zip ファイルをダウンロードし、「生産性ツールの設定」の章の「Cisco IOS TSP のインストール」の項にあるインストール手順に従います。
個々の Cisco CallManager Express 3.2 ファイルのリスト
この項では、Cisco CME 3.2 で使用されるファイルの総合的なリストを示します。リスト内のファイルはすべて、zip 圧縮されたアーカイブの cme-xxx.zip に含まれています。このアーカイブは、Cisco Software Center からダウンロードできます。ファイルは、次のカテゴリに分類されています。
•
「電話機ファームウェア ファイル」
•
「GUI ファイル」
•
「XML テンプレート」
•
「保留音楽(MOH)ファイル」
•
「スクリプト ファイル」
•
「バンドルされた TSP アーカイブ」
電話機ファームウェア ファイル
電話機タイプ別のファームウェア ファイルのリストについては、『 Cisco CallManager Express 3.2 Specifications』を参照してください。サイトに配置された電話機のタイプに対応するファームウェア ファイルだけをコピーしてください。
ファームウェア ファイルは、個別にダウンロードすることも、圧縮されたアーカイブ(cme-xxx.zip、cme-basic-xxx.tar またはそれ以降のバージョン)の形でダウンロードすることもできます。ファイルを個別にインストールするには、 http://www.cisco.com/cgi-bin/tablebuild.pl/ip-iostsp から必要なファイルを TFTP サーバにダウンロードします。次に、ファイルを Cisco CME ルータのフラッシュ メモリにコピーします。
アーカイブからファームウェア ファイルをインストールするには、「Cisco CME 3.2 ファイルをダウンロードおよびインストールする方法」を参照してください。
Cisco IP Phone 7960 または Cisco IP Phone 7940 の場合は、次の手順を使用して、未署名ロードを署名済みロードにアップグレードすることを推奨します。
ステップ 1
http://www.cisco.com/cgi-bin/tablebuild.pl/ip-iostsp にある P00305000301.zip をダウンロードして、未署名ロードから署名済みロードに変換するためのファイルを取得します。
ステップ 2
.bin 拡張子を持つ 5.0 電話機ロードをルータのフラッシュ メモリにコピーします。
Router # copy tftp://x.x.x.x/P00305000300.bin flash:
Router (config)# tftp-server flash:P00305000300.bin
Router (config)# telephony-service
Router (config-telephony-service)# load 7960-7940 P00305000300
ステップ 3
電話機をリセットします。リセットすると、電話機は 5.0 bin ファイルを受信します。
Router (config)# telephony-service
Router (config-telephony-service)# reset all
ステップ 4
電話機で動作しているファームウェアをチェックし、電話機が 5.0 ロードを受信したことを確認します。
Router (config)# show ephone phone-load
ステップ 5
すべての電話機が暫定のイメージにアップグレードされたら、P00305000300.bin の TFTP 共有を無効にします。
Router (config)# no tftp-server flash:P00305000300.bin
(注) このファイルはこれ以上必要がないので、フラッシュ メモリから削除してもかまいません。
ステップ 6
.sbn 拡張子を持つセキュアな 5.0 電話機ロードをルータのフラッシュ メモリにコピーします。
Router # copy tftp://x.x.x.x/P00305000301.sbn flash:
Router (config)# telephony-service
Router (config-telephony-service)# load 7960-7940 P00305000301
ステップ 7
電話機をリセットします。リセットすると、電話機は 5.0 sbn ファイルを受信します。
Router (config)# telephony-service
Router (config-telephony-service)# reset all
ステップ 8
電話機で動作しているファームウェアをチェックし、電話機が 5.0 .sbn ロードを受信したことを確認します。
Router (config)# show ephone phone-load
GUI ファイル
表 1 は、ユーザおよび管理者の Web ブラウザ GUI をサポートしているファイルを示しています。これらのファイルは、tar アーカイブの cme-xxx-gui.tar またはそれ以降のバージョンに含まれています。ファイルをインストールするには、「Cisco CME 3.2 ファイルをダウンロードおよびインストールする方法」を参照してください。
(注) Cisco CME GUI ファイルはバージョン固有になっています。つまり、特定のバージョンの Cisco CME に対応する GUI ファイルは、それ以外のバージョンの Cisco CME と互換性がありません。Cisco CME をダウングレードまたはアップグレードする場合は、古いバージョンに対応している GUI ファイルを、インストールする Cisco CME バージョンと一致する GUI ファイルで上書きする必要があります。
表 1 GUI ファイル
admin_user.html |
dom.js |
normal_user.html |
Tab.gif |
admin_user.js |
downarrow.gif |
normal_user.js |
telephony_service.html |
CiscoLogo.gif |
ephone_admin.html |
Plus.gif |
uparrow.gif |
Delete.gif |
logohome.gif |
sxiconad.gif |
xml-test.html |
XML テンプレート
xml.template ファイルをコピーして、特定の GUI 機能をカスタマー管理者に許可または制限するように変更できます。カスタマー管理者とは、Cisco CME システムで限定機能を使用できる新しいクラスの管理ユーザです。このファイルは、zip 圧縮されたアーカイブの cme-xxx.zip と、2 つの tar アーカイブ(cme-basic-xxx.tar と cme-xxx-gui.tar およびそれ以降のバージョン)に含まれています。ファイルをインストールするには、「Cisco CME 3.2 ファイルをダウンロードおよびインストールする方法」を参照してください。
保留音楽(MOH)ファイル
ライブ フィードが使用されない場合、music-on-hold.au というオーディオ ファイルが、保留中の外部発信者に音楽を配信します。このファイルは、zip 圧縮されたアーカイブの cme-xxx.zip と、tar アーカイブの cme-basic-3.2.0.tar およびそれ以降のバージョンに含まれています。ファイルをインストールするには、「Cisco CME 3.2 ファイルをダウンロードおよびインストールする方法」を参照してください。
スクリプト ファイル
次の TCL スクリプト ファイルは、Cisco CME システムにオプション機能を提供します。
•
cme-aa-2.00.1.0.tar:自動アテンダントのサンプル スクリプト
•
app-h450-transfer.2.0.0.9.zip.tar:アナログ FXS ポートに対する H.450 コール転送および自動転送のサポートを追加するスクリプト
バンドルされた TSP アーカイブ
CiscoIOSTSP.zip というアーカイブには、いくつかの Telephony Application Programming Interface(TAPI)Telephony Service Provider(TSP)ファイルが含まれています。このファイルは、Cisco
CME-TAPI と TAPI 対応 PC ソフトウェアを統合して使用する Cisco IP Phone ユーザの個々の PC を設定する場合に必要です。このアーカイブは、zip 圧縮されたアーカイブの cme-xxx.zip と、
http://www.cisco.com/cgi-bin/tablebuild.pl/ip-iostsp にある個々のアーカイブに含まれています。ファイルをインストールするには、「 生産性ツールの設定 」の章の「Cisco IOS TSP のインストール」の項を参照してください。
制約事項
•
Cisco CME システムに接続された IP Phone は、アウトバンド Dual Tone MultiFrequency(DTMF; デュアルトーン複数周波数)リレーを使用して、VoIP 接続経由で DTMF(キーパッド)番号を転送する必要があります。詳細については、「H.323 ネットワークに対する DTMF リレー」を参照してください。
•
サポートされる Cisco IP Phone または内線番号の最大数は、『 Cisco CallManager Express 3.2
Specifications』で指定されているとおりです。
•
Cisco IP Phone 30 VIP や Cisco IP Phone 12 SP+ など、第一世代の Cisco IP Phone はサポートされません。
•
Cisco IP Phone 7970 と Cisco IP Communicator はサポートされません。
•
WAN リンク経由でリモート接続された Skinny Client Control Protocol(SCCP)電話機は、次の制約を受けます。
–
Cisco TAC では、リモート IP Phone に関する音声またはシグナリングの問題には対処しません。ただし、LAN 電話機に関して同一の問題が繰り返し発生する可能性がある場合はその限りではありません。
–
リモート IP Phone からの E911(北米における緊急コール)はサポートされません。
–
リモート IP Phone に対する着信および発信コールはすべて G.711 を使用する必要があります。Cisco CME では、リモート IP Phone 用に G.729 コーデックを指定する機能はサポートされません。
–
インバウンド コールまたはアウトバウンド コールの場合、リモート IP Phone ではフェールオーバーによって PSTN 接続に迂回することはできません。リモート電話機は、すべてのコールに対して WAN を使用する必要があります。使用可能な帯域が、音声品質を保証するのに十分なレベルにない場合でも同様です。
–
リモート IP Phone では、Network Address Translation(NAT)はサポートされません。Cisco CME 電話機はすべて、Cisco CME に対してルーティングできる IP アドレスを使用する必要があります。リモート IP Phone は、その他すべてのローカルおよびリモート電話機に使用される IP アドレスにアクセスできる必要があります。
–
PSTN アクセスはすべて、セントラル サイトだけを経由します。リモート サイトでの PSTN 終端はサポートされません。
–
Cisco CME では、リモート SCCP 電話機に対する Call Admission Control(CAC; コール アドミッション制御)はサポートされません。そのため、WAN リンクが加入過多になると、音声品質が低下する場合があります。広帯域データ アプリケーションを WAN 経由で使用すると、リモート IP Phone の音声品質が低下する場合があります。
•
サポートされるコーデックは、G.711 と G.729 だけです。会議と保留音楽(MOH)で G.729 をサポートするには、G.729 と G.711 の間で変換を行うハードウェア Digital Signal Processor(DSP; デジタル信号プロセッサ)が必要です。
•
Cisco 1751-V と Cisco 1760 では、Asymmetric Digital Subscriber Line(ADSL; 非対称デジタル加入者線)リンクに対する Quality of Service(QoS)機能はサポートされません。
•
サポートされるプラットフォームおよび電話デバイスは、『 Cisco CallManager Express 3.2
Specifications』に示されているものだけです。
•
Element Management System(EMS; 要素管理システム)はサポートされません。
•
Cisco Voice Manager(CVM)では、IP Phone の設定はサポートされません。
•
Media Gateway Control Protocol(MGCP; メディア ゲートウェイ コントロール プロトコル)のオンネット コールはサポートされません。
•
コール転送に関する制約事項は、このガイドの 「コール転送と自動転送の設定」 の章に一覧表示されています。
•
Telephony Application Programming Interface(TAPI)Version 2.1 はサポートされません。Cisco CME で実装されるのは、ごく一部の TAPI 機能だけです。複数の独立したクライアントの操作(たとえば、電話回線ごとに 1 クライアント)はサポートされますが、複数ユーザまたは複数コールの処理では一部の機能がサポートされません。完全にサポートするには、Automatic Call Distribution(ACD; 自動着信呼分配)や Cisco IP Contact Center(IPCC; IP コンタクト センター)などの複雑な機能が必要になります。また、この TAPI バージョンには、ダイレクト メディア機能と音声処理機能がありません。
•
Java Telephony Application Programming Interface(JTAPI)アプリケーション(Cisco IP Softphone、IPCC、IPCC Express、Cisco CallManager Auto Attendant、Cisco Personal Assistant など)はサポートされません。
•
CiscoWorks IP Telephony Environment Monitor(ITEM)はサポートされません。
•
Cisco CME は、Cisco CallManager クラスタのメンバーとして登録できません。
始める前に:Cisco CME の基本概念
Cisco CME システムはモジュラ式になっているため、柔軟性にきわめて優れています。Cisco CME システムは、ゲートウェイとして機能するルータ、および IP Phone や電話デバイスとルータを接続する 1 つ以上の VLAN で構成されます。また、Cisco CME システムは、次の基本的な要素を使用します。
ephone :ソフトウェア構成体であり、通常は物理的な電話機を表しますが、ボイスメール システムに接続するポートを表す場合もあります。ephone 構成体を使用すると、Cisco IOS ソフトウェアを使用して物理的な機器を設定できます。各 ephone には、多対多の関係で関連付けられた内線番号を複数割り当てることができます。また、単一の内線番号を複数の ephone と関連付けて、共有内線番号にすることができます。Cisco CME システムの ephone の最大数が、システムに接続できる物理機器の最大数となります。
•
ephone-dn :ソフトウェア構成体であり、コールの発信および受信に使用する電話機に音声チャネルを接続する回線を表します。ephone-dn は、Cisco CME システムの仮想音声ポートを表します。したがって、Cisco CME システムの ephone-dn の最大数が、同時に接続できるコールの最大数となります。この概念は、従来のテレフォニー システムにおける物理回線の最大数とは異なり、割り当てることのできる電話番号または内線番号の最大数とも異なることに注意してください。
従来のテレフォニー システムは物理接続に基づいているため、システムで提供できる電話サービスのタイプが制限されます。ephone と ephone-dn はソフトウェア構成体であり、オーディオ ストリームはパケット ベースであるため、計画および実装できる電話番号、回線、および電話機の組み合せはほぼ無限に存在します。
Cisco CME システムは、多くの方法で設計できます。重要になるのは、サイトで同時に処理するコールの全体数と電話機別の数、割り当てる電話番号の数、および配置する電話機の数を決定することです。ただし、Cisco CME システムにも制限があります。システムを設計するときは、次の要因を考慮する必要があります。
•
ephone-dn の最大数:『 Cisco CallManager Express 3.2 Specifications』
(http://www.cisco.com/univercd/cc/td/doc/product/voice/its/cme32/cme32spc.htm)に示すように、システムごとの ephone-dn の数には上限があります。この数は、同時に接続できるコールの最大数に対応します。
•
電話番号の最大数:番号計画の内容によっては、使用可能な電話番号または内線番号の範囲が制限される場合があります。たとえば、DID を備えている場合は、PSTN によって特定の連続番号が割り当てられることがあります。
•
電話機ごとのボタンの最大数:サイトで使用できるボタンおよび電話機の数が制限される場合があります。たとえば、2 人が 6 ボタンの電話機を使用して 20 個の異なる電話番号に応答しなければならない場合があります。
Cisco CME システムに柔軟性をもたらす大きな要因は、システム内の電話機にさまざまなタイプの ephone-dn を割り当てられることです。ephone-dn のタイプを理解し、ephone-dn の組み合せ方を考慮すると、ビジネスで必要になる完全なコール カバレッジ状況を作成できます。ephone-dn のタイプの詳細については、「ephone-dn」を参照してください。
必要な ephone-dn および ephone を設定したら、ビジネスの目標を高めるテレフォニー環境を作成するための Cisco CME のオプション機能を追加します。Cisco CME システムを PSTN やビジネスの要件と統合することで、既存の番号計画、ダイヤル方式、およびコール カバレッジ パターンを引き続き使用できるようになります。次の項では、Cisco CME システムの設計および設定に有用な概念について説明します。
•
「ephone」
•
「ephone-dn」
•
「電話番号計画」
•
「ダイヤルイン方式」
•
「PBX またはキースイッチのモデル」
ephone
ephone(イーサネット電話機)は単一のソフトウェア設定インスタンスであり、Cisco CMEシステム内で電話機ユーザがコールの発信および受信に使用する物理機器に対応します。物理 ephone は、Cisco IP Phone、または Analog Telephone Adaptor(ATA; アナログ電話アダプタ)デバイスを備えたアナログ電話機のいずれかです。
各 ephone には、ephone を設定時に識別するための固有の電話機タグ(シーケンス番号)が割り当てられます。
ephone に ephone-dn と機能を実装するには、 ephone コマンドを使用します。このコマンドは、ephone-dn およびその他の Cisco CME 機能に関連付けられた電話番号と、物理電話機の MAC アドレスを関連付けます。
ephone-dn
ephone-dn(イーサネット電話機の電話番号)はソフトウェア構成体であり、ユーザがコールの発信および受信に使用する電話機に音声チャネルを接続する回線を表します。ephone-dn には、コール接続を確立するための内線番号または電話番号が 1 つ以上関連付けられます。ephone-dn は、一部の例外を除いて、電話回線に相当します。ephone-dn にはさまざまなタイプがあり、特性も異なります。『 Cisco CallManager Express 3.2 Specifications』
(http://www.cisco.com/univercd/cc/td/doc/product/voice/its/cme32/cme32spc.htm)に示すように、Cisco
CME システムで使用できる ephone-dn の数には上限があります。
各 ephone-dn には、ephone-dn を設定時に識別するための固有の dn タグ(シーケンス番号)が割り当てられます。ephone-dn は、設定時に ephone 上の回線ボタンに割り当てられます。
ephone-dn を作成するには、 ephone-dn コマンドを使用します。このコマンドにより、ephone-dn に対する 1 つの仮想音声ポートと 1 つ以上のダイヤルピアが、ダイヤル プラン パターンと ephone-dn secondary number フィールドに応じて作成されます。 ephone-dn コマンドは、ダイヤルピアを ephone-dn の仮想音声ポートに割り当てるプロセスを自動化し、仮想音声ポートの番号付けおよび設定を管理します。 ephone-dn コマンドで作成されたダイヤルピアを確認するには、 show telephony-service dial-peer コマンドを使用します。
作成する ephone-dn の数は、同時に接続できるコールの数に対応します。これは、各 ephone-dn がルータの仮想音声ポートを表すためです。つまり、同じ番号への複数のコールに同時に応答するには、同じ宛先パターン(内線番号または電話番号)を持つ複数の仮想音声ポート(ephone-dn)が必要になります。
ephone-dn は、Cisco CME システムの基本的な要素です。6 つの異なるタイプの ephone-dn を、さまざまなコール カバレッジ状況に合せて、さまざまな方法で組み合せることができます。いずれのタイプも、特定のタイプの制限やコール カバレッジを設定する場合に有用です。たとえば、ephone-dn の数を増やさないで、多数のユーザにサービスを提供する必要がある場合は、共有 ephone-dn を使用できます。または、使用可能な内線番号の数に制限がある状況で、多数のコールを同時に接続する必要がある場合は、同じ番号の ephone-dn を複数作成できます。重要なのは、ephone-dn の各タイプの動作と利点を理解することです。
次の項では、Cisco CME システムにおける ephone-dn のタイプについて説明します。
•
単一回線 ephone-dn
•
二重回線 ephone-dn
•
1 つの番号を持つ 2 つの ephone-dn
•
二重番号 ephone-dn
•
共有 ephone-dn
•
オーバーレイ ephone-dn
単一回線 ephone-dn
単一回線 ephone-dn には、次の特性があります。
•
1 つの電話回線ボタンを使用して、コールを 1 つずつ接続します。単一回線 ephone-dn には、1 つの電話番号が関連付けられます。
•
Cisco CME システムに接続された PSTN 回線と電話機のボタンとが 1 対 1 で対応している場合に使用します。
•
インターコム、ページング、メッセージ受信のインジケータ(MWI)、ループバック、および保留音楽(MOH)の供給元に接続された専用線に対して使用します。
•
コール ウェイティング、コール転送、および会議のような複数回線機能と併用する場合は、電話機の単一回線 ephone-dn が複数必要になります。
•
同じ電話機で二重回線 ephone-dn と組み合せることができます。
ephone-dn の設定エントリを初めて作成するときは、システム内の各 ephone-dn を二重回線として設定するか、単一回線として設定するかを選択する必要があることに注意してください。後で単一回線から二重回線に変更する場合は、ephone-dn を削除してから再作成する必要があります。
図 3 は、単一回線 ephone-dn を示しています。
図 3 単一回線 ephone-dn
二重回線 ephone-dn
二重回線 ephone-dn には、次の特性があります。
•
1 つの電話回線ボタンを使用して、同時に 2 つのコールを接続できます。二重回線 ephone-dn には、コールを別々に接続するためのチャネルが 2 つあります。
•
番号を 1 つまたは 2 つ(プライマリおよびセカンダリ)関連付けることができます。
•
コール ウェイティング、コール転送、または会議のような機能に対して単一のボタンだけを使用する必要がある ephone-dn に使用します。
•
インターコム、ページング、メッセージ受信のインジケータ(MWI)、ループバック、および保留音楽(MOH)の供給元に接続された専用線に対して使用することはできません。
•
同じ電話機で単一回線 ephone-dn と組み合せることができます。
ephone-dn の設定エントリを初めて作成するときは、システム内の各 ephone-dn を二重回線として設定するか、単一回線として設定するかを選択する必要があることに注意してください。後で単一回線から二重回線に変更する場合は、ephone-dn を削除してから再作成する必要があります。
図 4 は、二重回線 ephone-dn を示しています。
図 4 二重回線 ephone-dn
1 つの番号を持つ 2 つの ephone-dn
1 つの番号を持つ 2 つの ephone-dn には、次の特性があります。
•
同じ電話番号を持つ 2 つの仮想音声ポートを別々に備えているため、2 つのコールを別々に接続できます。
•
単一回線 ephone-dn または二重回線 ephone-dn として使用できます。
•
同じ電話機の異なるボタンに表示することも、異なる電話機に表示することもできます。
•
より少ない番号を使用してより多くのコールを接続できるようにする場合に使用します。
図 5 は、内線 1003 という同じ番号が割り当てられた 2 つのボタンを持つ電話機を示しています。各ボタンには異なる ephone-dn(ボタン 1 は ephone-dn 13、ボタン 2 は ephone-dn 14)が割り当てられています。したがって、ephone-dn が単一回線の場合は 1 つの独立したコールを、ephone-dn が二重回線の場合は 2 つ(合計で 4 つ)のコールを、各ボタンから接続できます。
図 6 は、同じ番号のボタンをそれぞれ持つ 2 台の電話機を示しています。ボタンには異なる ephone-dn が割り当てられているため、これらのボタンに接続されるコールは互いに独立しています。電話機 4 の電話機ユーザが内線 1004 でコールを発信し、それと同時に電話機 5 の電話機ユーザが内線 1004 で異なるコールを受信できます。
2 つの ephone-dn に 1 つの番号が割り当てられた状況は、共有回線とは異なります。共有回線も 2 つのボタンに 1 つの番号が割り当てられていますが、両方のボタンに割り当てられた ephone-dn は 1 つだけです。共有 ephone-dn では、共有 ephone-dn が表示されているボタンすべてに同じコールが接続されます。共有 ephone-dn へのコールに 1 台目の電話機で応答して保留にした場合、共有 ephone-dn が表示されている 2 台目の電話機でそのコールを取得できます。ただし、2 つの ephone-dn に 1 つの番号が割り当てられた場合、コールは発信や受信に使用された電話機およびボタンにしか接続されません。図 6 の例では、電話機 4 のユーザがボタン 1 でコールを発信して保留にした場合、そのコールを取得できるのは電話機 4 からだけです。共有回線の詳細については、「共有 ephone-dn」を参照してください。
図 5 と図 6 の例は、1 つの番号を持つ 2 つの ephone-dn を使用して、小規模なハント グループとして機能させる方法を示しています。ボタン 1 の ephone-dn が使用中または無応答の場合、内線 1003 に着信するコールはすべて、ボタン 2 と関連付けられた ephone-dn に転送されます。これは、 preference コマンドと no huntstop コマンドが使用されたためです。 preference コマンドで割り当てられた値は、2 つの ephone-dn で作成されたダイヤルピアに渡されます。ephone-dn の両方のダイヤルピアは、この内線番号がダイヤルされたときに一致します。コールは、優先度の最も高い ephone-dn に接続されます。優先度のデフォルト値は 0(最高値)であるため、ボタン 1 の ephone-dn 13 に最初にコールが接続されます。 no huntstop コマンドは、別の一致ダイヤルピアのハントを停止しないようダイヤルピアに通知します。したがって、内線 1003 への 2 つ目のコールは ephone-dn 14 に送信されます。
図 5 1 台の電話機に 1 つの番号を持つ 2 つの ephone-dn
図 6 2 台の電話機に 1 つの番号を持つ 2 つの ephone-dn
二重番号 ephone-dn
二重番号 ephone-dn には、次の特性があります。
•
プライマリ番号とセカンダリ番号という 2 つの電話番号が割り当てられます。
•
単一回線 ephone-dn になっている場合は 1 つのコールだけを接続できます。
•
二重回線 ephone-dn になっている場合は一度に 2 つのコールを接続できます。
•
複数の ephone-dn を使用せずに、同じボタンに 2 つの異なる番号を割り当てる場合に使用します。
図 7 は、内線 1006 と内線 1007 の 2 つの番号を持つ ephone-dn を示しています。
図 7 二重番号 ephone-dn
共有 ephone-dn
共有 ephone-dn には、次の特性があります。
•
2 台の異なる電話機に表示されますが、同じ ephone-dn および番号を使用します。
•
コールは 1 つずつ発信できますが、そのコールは両方の電話機に表示されます。
•
複数の電話機でコールに応答またはコールを取得できるようにする場合に使用します。
これらの電話機は同じ ephone-dn を共有するため、ephone-dn が 1 台目の電話機でコールに接続された場合、その ephone-dn を 2 台目の電話機で別のコールに使用することはできません。1 台目の電話機でコールが保留になっている場合、そのコールは 2 台目の電話機で取得できます。この操作は、複数の内線番号を持つ単一回線電話機を家庭に配置した場合に似ています。番号が表示されている任意の電話機からコールに応答することも、番号が表示されている保留中の任意の電話機でコールを取得することもできます。
図 8 は、共有 ephone-dn を示しています。内線 1008 は、電話機 7 と電話機 8 の両方に表示されます。
図 8 共有 ephone-dn
オーバーレイ ephone-dn
オーバーレイ ephone-dn には、次の特性があります。
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オーバーレイ セットのメンバーです。オーバーレイ セットには、特定の電話機のボタンにまとめて割り当てられたすべての ephone-dn が含まれています。
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オーバーレイ セットの別のメンバーと同じ電話番号または内線番号を割り当てることも、異なる番号を割り当てることもできます。
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単一回線または二重回線にすることができますが、同じオーバーレイ セットで単一回線と二重回線を混合することはできません。
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複数の電話機で共有できます。
複数の電話機に同じ番号を表示できるため、オーバーレイ ephone-dn のコール カバレッジは共有 ephone-dn のものと似ています。2 つの ephone-dn を、単純な共有 ephone-dn としてではなく、オーバーレイ配置で使用する利点は、1 台目の電話機で特定の番号にコールが接続された場合、共有 ephone-dn では別の電話機で同じ番号を使用できなくなるのに対して、オーバーレイ配置では使用できるという点です。
単一のボタンには 10 回線までオーバーレイできます。さらに、10 台の電話機で共有するオーバーレイ セットで 10 回線を使用して、「10 * 10」の共有回線を作成できます。その結果、同じ番号に 10 個のコールを同時に接続できるようになります。
図 9 は、2 台の電話機で共有する 2 つの ephone-dn および 1 つの番号を含むオーバーレイを示しています。ephone-dn 17 は、優先度のデフォルト値である 0 を持つため、内線 1001 への最初のコールを受信します。電話機 9 の電話機ユーザがコールに応答した場合、内線 1001 に着信する 2 つ目のコールには、ephone-dn 18 を使用する電話機 10 で応答できます。
図 9 オーバーレイ ephone-dn(単純なケース)
ephone-dn のより複雑な設定としては、同じ電話機においてオーバーレイ ephone-dn を共有 ephone-dn および一般の二重回線と混合する場合が挙げられます。図 10 は、2 人のアシスタントを持つマネージャに関する次の例を示しています。マネージャの電話機のボタン 1 とボタン 2 には、2001 という同じ番号が表示されています。内線 2001 の 2 つの回線着信表示には 2 つの単一回線 ephone-dn が使用されているため、マネージャは、この番号で 2 つのアクティブなコールを各ボタンに 1 つずつ同時に接続できます。ephone-dn の設定では、最初にボタン 1 で呼び出し音が鳴り、2 つ目のコールが着信すればボタン 2 で呼び出し音が鳴るようになっています。各アシスタントは個人の ephone-dn を持ち、マネージャの ephone-dn を共有しています。アシスタント 1 の 1 つのボタンにはオーバーレイ セットにある 3 つの ephone-dn がすべて割り当てられています。一方、アシスタント 2 の 1 つ目のボタンには専用回線が、2 つ目のボタンにはオーバーレイ セットにあるマネージャの回線が両方とも割り当てられています。コールが次の順序で接続されたとします。
1.
マネージャがボタン 1 の内線 2001(ephone-dn 20)で着信コールに応答します。
2.
2 つ目のコールが 2001 で鳴り、マネージャの電話機にある 2 つ目のボタン(ephone-dn 21)に転送されます。このコールは、両方のアシスタントの電話機(同じく ephone-dn 21、つまり共有 ephone-dn)でも鳴ります。
3.
アシスタント 2 がコールに応答します。これは共有オーバーレイ回線です(この ephone-dn 21 は 3 台の電話機で共有され、そのうち 2 台の電話機ではオーバーレイ セットの一部になっています)。ephone-dn 21 はマネージャの電話機のボタン 2 で共有されているため、マネージャはアシスタント 2 がコールに応答するのが分かります。
4.
アシスタント 1 が ephone-dn 22 でコールを発信します。アシスタント 1 の電話機にはオーバーレイ セットの ephone-dn が追加されているため、ボタンは使用可能です。
この時点で、マネージャは ephone-dn 20 で会話中、アシスタント 1 は ephone-dn 22 で会話中、アシスタント 2 は ephone-dn 21 で会話中となっています。
図 10 オーバーレイ ephone-dn(複雑なケース)
電話番号計画
Cisco CME システムをインストールする場合、置き換え対象の古いテレフォニー システムで電話番号計画が作成されているときは、古い番号計画を保持できます。Cisco CME では、可変長の内線番号がサポートされているため、内線番号ダイヤルと E.164 公衆電話番号ダイヤルとの間で自動変換を行うことができます。
Cisco CME システムを正常に動作させるには、将来の拡張をサポートする電話番号計画が必要です。また、この番号計画は、同じ VoIP ネットワーク上にある他の番号や、一元化されたボイスメール システムに含まれている他の番号と重複も競合もしてはなりません。
Cisco CME では、同じ内線番号を使用するように設定された複数回線だけでなく、共有回線もサポートされています。つまり、複数の電話機が内線番号を共有するように設定して、その番号のカバレッジを作成できます。また、単一の電話機にある複数の回線ボタンを同じ内線番号に割り当てて、小規模なハント グループを作成できます。回線設定のタイプの詳細については、「ephone-dn」を参照してください。
複数の Cisco CME サイトを設定する場合、サイト間でコールをどのように処理するかを決定する必要があります。Cisco CME 電話機間のコールは、PSTN または VoIP を使用してルーティングできます。VoIP を使用してコールをルーティングする場合は、次の 3 つのいずれかを選択する必要があります。
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固定長の内線番号のグローバル プールを使用して、コールをルーティングする。たとえば、すべてのサイトに 5000 ~ 5999 の範囲にある固有の内線番号を割り当て、ゲートキーパーでルーティングを管理します。この方法を選択した場合、各サイトにサブレンジの内線番号を割り当てて、番号の二重割り当てを防ぐ必要があります。Cisco CME システムに割り当てた番号範囲についての正確な記録を保持する必要があります。
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ローカルの内線番号に加え、Cisco CME サイトごとに特殊なプレフィックスを使用して、コールをルーティングする。これを選択すると、複数のサイトで同じ内線番号を使用できるようになります。
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E.164 PSTN 電話番号を使用して、Cisco CME サイト間で VoIP を使用してコールをルーティングする。この場合、サイト間での発信者は、PSTN エリア コードとローカル プレフィックスを使用して、Cisco CME システム間でコールをルーティングします。
ゲートキーパーを使用して複数の Cisco CME システム間でコールをルーティングする場合、使用する内線番号の形式が追加で制限されることがあります。たとえば、ゲートキーパーには PSTN 形式の番号しか登録できない場合があります。ゲートキーパーでは、異なる Cisco CME システム間で重複する電話番号が登録できない場合がありますが、この制限は解消することもできます。Cisco CME では、2 ~ 5 桁の内線番号または 7 ~ 10 桁の PSTN 番号のいずれかを選択して登録できます。したがって、PSTN 番号だけを登録すれば、ゲートキーパーが内線番号の重複を検知することを防止できます。
Cisco CME サイト間でダイレクト コール、自動転送、およびコール転送を処理するように Cisco CME システムを正しく設定するには、必ず dialplan-pattern コマンドを理解した上で設定してください。このコマンドについては、「 Cisco CME システムでの電話機の設定 」の章を参照してください。
さらに、PSTN 接続を提供する電話会社から割り当てられた範囲の内線番号を使用する場合は、PSTN から直接ダイヤルできる電話機の番号付け方式の選択肢が制限されます。たとえば、電話会社から 408-555-0100 ~ 408-555-0199 の範囲が割り当てられた場合、内線番号にダイヤルイン方式(DID)アクセスを割り当てるときは、内線番号を 100 ~ 199 の範囲にしか割り当てられない場合があります。DID の詳細については、「ダイヤルイン方式」を参照してください。
また、公衆電話番号を内線番号にマップする場合、数字列を単純に切り捨てる方法以外の方法も使用できることに注意してください。 dialplan-pattern コマンドに extension-pattern キーワードを使用すると、数字を置換できます。詳細については、「 Cisco CME システムでの電話機の設定 」の章の「ダイヤル プラン パターン」の項を参照してください。
ダイヤルイン方式
ephone-dn コマンドを使用して ephone-dn(内線番号のインスタンス)を定義すると、Cisco CME システムにより、ephone-dn エンドポイントに対する POTS ダイヤルピアが転送先として自動的に作成されます。デフォルトでは、ephone-dn ごとに単一の POTS ダイヤルピアが作成されます。 dialplan-pattern コマンドが設定され、ephone-dn 番号と組み合されると、2 つの POTS ダイヤルピアが作成されます。1 つはローカル内線番号用に、もう 1 つは完全な E.164 直接ダイヤル電話番号用に作成されます。たとえば、ephone-dn 内線番号が 1234 で、ダイヤル プラン パターンが
「dialplan-pattern 1 4085551... extension-length 4」であるとすると、1 つ目の POTS ダイヤルピアが
「1234」に、2 つ目の POTS ダイヤルピアが「4085551234」に対して作成されます。ephone-dn のセカンダリ番号が定義されている場合は 3 つ目の POTS ダイヤルピアが作成され、セカンダリ番号がダイヤル プラン パターンと一致している場合は 4 つ目のダイヤルピアがこの番号に対して作成されます。PSTN により「4085551234」の DID コールが Cisco CME システムに接続されると、内線番号の数字「1234」が転送され、システムがコールをルーティングできるようになります。 ephone-dn コマンドで作成されたダイヤルピアを確認するには、 show telephony-service dial-peer コマンドを使用します。詳細については、『 Dial Peer Configuration on Voice Gateway Routers, Cisco IOS Release 12.3』を参照してください。
PBX またはキースイッチのモデル
Cisco CME システムを設定するときは、コール処理のモデルを PBX、キースイッチ、または両方の複合のいずれにするかを決める必要があります。Cisco CME では柔軟性のきわめて高いコール処理が可能ですが、そのためには、選択するモデルを明確に理解する必要があります。
最も単純なケースは PBX モデルです。このモデルでは、システム内の IP Phone のほとんどが単一で固有の内線番号を持ちます。このモデルの場合、二重回線設定オプションを使用するための ephone-dn エントリを設定することを推奨します。この設定を使用すると、IP Phone に表示される各ボタンで、2 つのコールを同時に処理できます。電話機ユーザは、電話機にある青色のナビゲーション ボタンを使用してコールを切り替えます。二重回線 ephone-dn エントリでは、コール ウェイティング、打診によるコール転送、および 3 者間会議(G.711 のみ)を設定できます。新規登録中の IP Phone に完全に連続した内線番号を割り当てる場合、Cisco CME セットアップ ツールを使用すると、PBX 形式の設定を自動的に作成できます。
キースイッチ タイプのシステムでは、ほとんどの電話機にほぼ同一の設定を割り当てることができます。この方法によって、任意の回線に着信するすべての PSTN コールに、各電話機から応答できるようになります。たとえば、4 台の異なる電話機にそれぞれ共有回線として表示される 4 つの着信 PSTN 回線があるとします。各電話機には同じ共有回線があります。PSTN 回線と 1 対 1 で対応する一組の ephone-dn エントリを作成して、このモデルを設定します。次に、着信コールを ephone-dn にルーティングするように PSTN ポートを設定します。このモデルで割り当てることができる PSTN 回線の最大数は、IP Phone で使用できるボタンの数によって制限されます。その場合でも、ephone-dn オーバーレイ オプションを使用すると、電話機からアクセスできる回線の数を増やすことができます。
キースイッチ モデルでは、同じ ephone-dn エントリがすべての IP Phone に割り当てられます。つまり、コールが着信すると、使用可能なすべての IP Phone で呼び出し音が鳴ります。複数のコールが同時にシステムに着信すると、個々のコール(呼び出し中または保留中のもの)が表示されるため、IP Phone で対応する回線ボタンを押すとそのコールを直接選択できます。このモデルでは、電話機間でコールを移動するには、1 台目の電話機でコールを保留にし、2 台目の電話機で回線ボタンを使用してそのコールを選択します。キースイッチを使用するモデルの場合、ephone-dn の二重回線オプションの使用が適さないことがよくあります。これは、ephone-dn エントリに対応する PSTN 回線自体が二重回線設定をサポートしていないためです。また、二重回線オプションを使用すると、コール カバレッジ(ハント)動作の設定がより複雑になります。
同じ IP Phone で PBX およびキースイッチの設定を混合し、PBX 形式のコールに対応する電話機固有の内線番号と、キースイッチ形式のコール操作に対応する共有回線の両方を含めることができます。また、同じ電話機で単一回線 ephone-dn と二重回線 ephone-dn を組み合せることもできます。