目次
このモジュールでは、NPS の内部コンポーネントについて説明します。 NPS の内部にある SR サブシステム コンポーネントを次の図に示します。
図 1. Cisco Network Positioning System
以下のコンポーネントが NPS の内部にあります。
サービス解決エンジン
サービス解決エンジン(SRE)はサービス推薦要求を受けて計算能力やストレージ容量などのサービス パラメータを評価し、要件を満たす能力があるデータセンターのリストをカスタマーに返します。 返されるリストの並び順は、関連するポリシーとカスタマーが指定した順序付けの設定に従います。 たとえば、サービスの起点と物理データセンター間のネットワーク プロキシミティや、サービスの起点と物理データセンター間のパフォーマンス メトリックに従って、データセンターを推奨される順に並べることができます。
SRE は関連するポリシーを提供する外部ポリシー サーバへのインターフェイスを備えており、次世代ネットワーク(NGN)機能ディレクトリ、パフォーマンス マネージャ(PFM)、プロキシミティ エンジン(PXE)などの内部コンポーネントと連携します。 ポリシー サーバは、NPS コンポーネントが推奨リストを準備する操作を実行するために必要なデータを提供します。
SRE コンポーネントの連携
SRE は、以下に示す Network Positioning System(NPS)の各サブシステム コンポーネントと連携します。
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ユーザ インターフェイス/管理サブシステム(UIMS):NPS 全体のすべてのコンポーネントの集中管理されたユーザ インターフェイスおよび管理インターフェイス(たとえば、CLI フロントエンドや XML ベース API など)を提供します。
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NGN 機能ディレクトリ(NGN CD):データセンターによってアドバタイズされた機能データを集約し、このデータを使用して、サービス要求の要件を満たす能力があるデータセンター候補の初期リストを選択します。
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パフォーマンス サブシステム:ネットワーク ノード間のパフォーマンスまたは到達可能性データを取得します。 サービス解決の文脈では、これはサービスの起点から物理的なデータセンターの場所までのパス パフォーマンスと到達可能性の計算に使用されます。
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プロキシミティ サブシステム:NGN ネットワークの物理または論理ネットワーク トポロジに基づいてネットワーク ノード間のプロキシミティを計算します。 サービス解決の文脈では、これはサービスの起点と物理的なデータセンターの場所との間のネットワーク距離の計算とランク付けに使用されます。
SRE は外部 IT サービス管理(ITSM)とも連携します。 エンド ユーザは ITSM を使用して、サービス要求を満たす仮想データセンターを推薦するよう SRE に要求します。
図 2. SRE コンポーネントの連携.
次の図は、SRE の内部コンポーネントと、SRE が連携する各種コンポーネントを示します。
SRE によって使用されるインターフェイス
SRE にはいくつかの内部インターフェイスが組み込まれています。
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サービス解決(SR)API:NPS が使用するメイン API。SRE が提供し、ITMS(またはその他の許可されたアプリケーション)にエクスポートされます。 SR_Request() API をサポートし、これを通じて特定のサービス要求の要件を満たす能力がある DC の選択リストを提供します。 HTTPS の上に XML ベースの RESTful API として実装されています。 詳細については、『Cisco Network Positioning System ITSM API Guide』を参照してください。
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内部 SR API:SR API の内部版。UNIX ドメイン ソケットの上に実装されています。
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SRE ユーザ インターフェイス API:コンフィギュレーションや show コマンドなど、ユーザ インターフェイスに関連するすべての SRE 機能へのアクセスを提供します。
SRE は以下のインターフェイスを通じて外部コンポーネントと連携します。
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機能解決 API。NGN 機能ディレクトリによって提供されます。 SRE はこの API を使用して、元のサービス要求を満たす能力があるデータセンターを識別します。 機能ディレクトリはサービス要求から要件のリストを受け取り、それらの要件を満たす十分な能力があるデータセンターのリストを返します。
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パフォーマンス マネージャ API。パフォーマンス マネージャ サブシステムによって提供されます。 この API は、ネットワーク ノード間のパフォーマンスおよび到達可能性データを取得します。 サービス解決の文脈では、これはサービスの起点と物理的なデータセンターの場所との間のパス パフォーマンスと到達可能性の計算に使用されます。
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プラットフォーム パフォーマンス アダプタ API。PFM がプラットフォーム依存機能を呼び出すために使用します。 この API は直接呼び出しによって実装されています。
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プロキシミティ エンジン API。プロキシミティ エンジン サブシステムによって提供されます。 この API は、NGN ネットワークの物理または論理ネットワーク トポロジに基づいてネットワーク ノード間のプロキシミティを計算します。 サービス解決の文脈では、これはサービスの起点と物理的なデータセンターの場所との間のネットワーク距離の計算とランク付けに使用されます。
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プラットフォーム プロキシミティ アダプタ API。PXA によって提供され、PXE がプラットフォーム依存機能を呼び出すために使用します。 この API は直接呼び出しによって実装されています。
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ロギング API。ソフトウェア コンポーネントはこの API を使用して、ロギング情報やトレース情報を生成できます。
パフォーマンス サブシステム
パフォーマンス サブシステムは NPS のコンポーネントです。 パフォーマンス サブシステムは、データセンターのランキングをサービス解決エンジン(SRE)に提示できるように、パフォーマンス データを評価します。 以下のようなパフォーマンス データが評価されます。
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遅延:一定期間内のエンドツーエンドのパケット遅延
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損失:宛先へのパケット損失に関する統計情報
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到達可能性:到達不能な宛先に送信されたパケットに関する統計情報
パフォーマンス サブシステムは、パフォーマンス ルーティング(PfR)を使用してこれらのデータを取得します。 SRE から受け取った要求を解析し、その要求を満たすデータを PfR から導出します。
パフォーマンス サブシステムはパフォーマンス マネージャ(PFM)とプラットフォーム パフォーマンス アダプタ(PFA)で構成されています。
PFM はプラットフォームに依存しません。つまり、SRE と連携するためのパフォーマンス サブシステムの窓口となります。 PFM はパフォーマンス データ プロバイダーと連携して、ネットワーク ノード間のパフォーマンスおよび到達可能性データを取得します。 PFM はクラウド ユーザの場所からクラウド データセンターの場所までのパス パフォーマンスと到達可能性を計算します。
PFA はプラットフォームに依存します。 PFA は PFM とパフォーマンス データ プロバイダー(PDP)間のアダプタです(PDP はパフォーマンス サブシステムの外部にあるプラットフォーム依存サービス)。 プラットフォーム パフォーマンス アダプタ(PFA)はプラットフォームに固有のパフォーマンス データを収集するプラットフォーム依存コンポーネントで、PFM と PDP はこのアダプタを介してやり取りします。
パフォーマンス サブシステムの動作は、データセンター エッジ(DCE)に対向するプロバイダー エッジ(PE)デバイス上とカスタマー エッジ(CE)に対向する PE デバイス上で若干異なります。
DCE に対向する PE 上では(DCE に対向するデバイスには PFA または PDP は存在しない)、パフォーマンス サブシステムは以下の操作を行います。
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SRE から要求を受け取る
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対応する CE 対向 PE を特定し、その PE から eXtensible Messaging and Presence Protocol(XMPP)によってパフォーマンス データを受け取る
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最終的なパフォーマンス データを SRE に送信する
CE に対向する PE 上では、パフォーマンス サブシステムはリモート PFM から eXtensible Messaging and Presence Protocol(XMPP)によって要求を受け取ります。 CE に対向する PE は、PFA の API を使用して PDP からデータを取得できます。 PFA は CE に対向する PE のデータをフィルタリングして書式設定します。
プロキシミティ サブシステム
NPS 内で、プロキシミティ コンポーネントはデータセンターの選択に使用されます。 プロキシミティ サブシステムはネットワーク プロキシミティの概念を適用し、トポロジとクライアントからのパス距離に基づいてデータセンターを選択します。 Cisco NPS では、「プロキシミティ」はルーティングの近接性を意味します(プロキシミティ データは IS-IS、OSPF、BGP などの従来のルーティング プロトコルから導出されます)。
プロキシミティ サブシステムには以下の 2 つの部分があります。
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プロキシミティ エンジン(PXE):NGN ネットワークの物理または論理ネットワーク トポロジに基づいてネットワーク ノード間のプロキシミティを計算します。
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文脈によっては、プロキシミティはネットワーク ロケーション サービス(NLS)と呼ばれます。
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PXE は IGP(IS-IS、OSPF)と EGP(BGP)の両方からトポロジとパス情報を収集します。 次に、固定ソース(プロキシミティ ソース アドレスまたは PSA)からのトポロジ距離の順に宛先のリスト(プロキシミティ ターゲット リストまたは PTL)をランク付けします。 クライアント アドレス(PSA)とデータセンター候補のリスト(PTL)はサービス解決エンジンから PXE に送信されます。 続いて PXE は、ネットワーク プロキシミティによってランク付けしたリストを SRE に返します。 PXE は常に PSA と PTA のペアの間でトポロジ距離の計算を行います。ここで PTA(プロキシミティ ターゲット アドレス)とは、PTL 内の単一要素のことです。 PXE は他のどのような形態のプロキシミティにも関係しません。
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プラットフォーム プロキシミティ アダプタ(PPA):PPA はプラットフォームに固有のルーティング データを収集するプラットフォーム依存コンポーネントで、PXE とルーティング ピアはこのアダプタを介してやり取りします。 ルーティング ピアは IS-IS、OSPF、および BGP に関する情報を提供します。
NGN 機能ディレクトリ
NGN 機能ディレクトリは NPS のもう 1 つの重要なコンポーネントです。 機能ディレクトリは以下の操作を行います。
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NGN にアドバタイズされたすべてのデータセンター機能をサブスクライブし、受信する
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NGN 内のすべてのリソースおよび機能のリアルタイムのビューをサービス解決エンジンに提供する
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ドメイン内のすべてのリソースおよび機能の複製されたデータベースを維持することによって、ハイ アベイラビリティを確保する
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NGN のリソースおよび機能を表現したものを IT サービス管理(ITSM)などの管理システムに提供する
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適切なデバッグおよびトラブルシューティング メカニズムを提供する
NGN 機能ディレクトリは、データセンターによってアドバタイズされた機能データを集約できるように、外部のデータセンター機能アドバタイザと通信します。 サービス解決は機能ディレクトリに収集された情報を使用して、特定のサービス要求の要件を満たす能力があるデータセンター候補の初期リストを作成します。 『Cisco Network Positioning System Capability Directory Messages Guide』を参照してください。