スイッチング データベース マネージャの設定
この章では、ML100T-12 および ML1000-2 カードに組み込まれているスイッチング データベース マネージャ(SDM)の機能について説明します。
この章の内容は次のとおりです。
• 「SDM の概要」
• 「SDM 領域」
• 「SDM の設定」
SDM の概要
ML シリーズ カードでは、転送エンジンおよび Ternary Content Addressable Memory (TCAM; ターナリ コンテント アドレッサブル メモリ)を使用して、高速転送を実現しています。高速転送情報は、TCAM に保持されます。SDM は、TCAM に保持されているスイッチング情報を管理するソフトウェア サブシステムです。
SDM は、TCAM 内のスイッチング情報をアプリケーション固有の領域に編成し、これらのアプリケーション領域のサイズを設定します。SDM によって完全一致および最長一致のアドレス検索が可能となるため、高速転送が実現します。SDM は、アプリケーション固有のスイッチング情報を複数の領域に分割することにより、TCAM スペースを管理します。
TCAM は、転送される各パケットに関連付けられたロケーション インデックスを識別して転送エンジンに伝えます。転送エンジンでは、このロケーション インデックスを使用して、各転送パケットに関連付けられた情報を取得します。
スイッチングで SDM を使用する主な利点は、TCAM 内のスイッチング情報をアプリケーション固有の領域に編成でき、このアプリケーション領域のサイズを設定できることです。SDM によって完全一致および最長一致のアドレス検索が可能となるため、高速転送が実現します。
SDM 領域
SDM は、TCAM スペースを複数のアプリケーション固有の領域に分割し、個々のアプリケーション制御レイヤと連動してスイッチング情報を保存します。SDM は、次のタイプの領域で構成されています。
• 完全一致領域:完全一致領域は、IP 隣接など、複数のアプリケーション領域のエントリで構成されます。
• 最長一致領域:各最長一致領域は、複数のバケット、つまりマスク長に基づいて降順に編成されたレイヤ 3 アドレス エントリのグループで構成されます。 バケット内のすべてのエントリは、同じマスク値とキー サイズを共有します。バケットは、隣接バケットからアドレス エントリを借用することにより、サイズを動的に変更できます。アプリケーション領域全体のサイズは決まっていますが、この設定は変更できます。
• 重み付け完全一致領域:重み付け完全一致領域は、重み付けまたはプライオリティが割り当てられた完全一致エントリで構成されます。たとえば、サービス品質(QoS)では、複数の完全一致エントリが存在する場合がありますが、他のエントリよりもプライオリティの高いエントリがあります。重み付けは、複数のエントリが一致するときに 1 つのエントリを選択するために使用します。
TCAM スペースは 65,536 のエントリで構成されます。各エントリは 64 ビット幅です。SDM は TCAM スペースを管理する役割を担うため、ユーザ設定に基づいて、TCAM スペース全体に各アプリケーション領域の SDM パーティションを作成します。すべてのアプリケーション領域の最大サイズは決まっていますが、各アプリケーション領域の最大サイズを変更できます。
表 14-1 に、TCAM の各アプリケーション領域のデフォルト パーティションを示します。
表 14-1 TCAM のアプリケーション領域のデフォルト パーティション
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IP Adjacency |
完全一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
IP Prefix |
最長一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
QoS Classifiers |
重み付け完全一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
IP VRF Prefix |
最長プレフィックス一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
IP Multicast |
最長プレフィックス一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
MAC Addr |
最長プレフィックス一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
Access List |
重み付け完全一致 |
64 ビット |
65536(共有) |
65536(共有) |
SDM の設定
この項では、SDM の設定に必要なコマンドについて説明します。SDM 領域のサイズを設定するコマンドも含まれています。ここで説明するコマンドは、スイッチング ソフトウェア固有のコマンドです。
SDM 領域の設定
TCAM スペースは 65,536 のエントリで構成されます。各エントリは 64 ビット幅です。SDM は TCAM スペースを管理する役割を担うため、ユーザ設定に基づいて、TCAM スペース全体に各アプリケーション領域の SDM パーティションを作成します。パーティション設定の変更は、次回のシステム再起動時に有効になります。
SDM のアプリケーション領域のサイズは、64 ビット エントリの数で表します。すべてのアプリケーション領域を結合したサイズは、64 ビット TCAM エントリ換算で計算します。このサイズは、TCAM の総サイズである 65,536 バイトを超えないようにすることが重要です。
各アプリケーション領域の SDM の最大サイズを設定するには、グローバル設定モードで開始し、次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
Router(config)#
sdm size
region-name [
k-entries ]
number-of-entries
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サイズを設定するアプリケーション領域の名前を指定します。サイズは、1KB(1024)エントリの倍数、またはエントリの絶対数で指定します。 |
ステップ 2 |
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特権 EXEC モードに戻ります。 |
例14-1 に、この設定の一例を示します。
例14-1 IP-Prefix 領域を 2KB エントリに制限する場合
Router # configure terminal
Router(config)# sdm size ip-prefix k-entries 2
使用できる TCAM エントリの数を表示するには、グローバル設定モードから show sdm size コマンドを入力します。
Active Switching Database Region Maximum Sizes :
IP Adjacency : 65536 64-bit entries
IP Prefix : 65536 64-bit entries
QoS Classifiers : 65536 64-bit entries
IP VRF Prefix : 65536 64-bit entries
IP Multicast : 65536 64-bit entries
MAC Addr : 65536 64-bit entries
Access List : 65536 64-bit entries
TCAM のアクセス コントロール リストのサイズ設定
アクセス コントロール リスト(ACL)のデフォルトの最大サイズは、65,536 の 64 ビット エントリです。 表 14-2 に示すように、 sdm access-list コマンドを使用して、ACL の TCAM スペースを制限できます。
表 14-2 ACL として使用する TCAM サイズの割り当て
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sdm access-list
number-entries
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サイズを設定するアプリケーション領域の名前を指定します。サイズは、エントリの絶対数で指定します。 |
例14-2 に、この設定の一例を示します。
例14-2 TCAM の ACL 領域として 8,192 エントリを設定する場合
Router# configure terminal
Router(config)# sdm access-list 8192