この文書では、特定の宛先への複数のパスを利用するために Hot Standby Router Protocol(HSRP; ホットスタンバイ ルータ プロトコル)をどのように設定すればよいかについて、具体例を示します。
このドキュメントに関しては個別の要件はありません。
このドキュメントは、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
本書の情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されたものです。 このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。 稼働中のネットワークで作業を行う場合、コマンドの影響について十分に理解したうえで作業してください。
HSRP は多くの場合、ネットワークの復元力を向上させるために使用されますが、HSRP が原因でネットワークの効率が低下する場合があります。 このドキュメントの例では、ホスト ネットワークからサーバ ネットワークへのパスが 2 つあります。 冗長化のために R1 と R2 の間で HSRP が動作しています。R1 と R2 のどちらか一方がアクティブ ルータになり、HSRP 仮想 IP アドレスの「所有権」を取得します。 もう 1 台のルータはスタンバイ ルータになり、現在のアクティブ ルータがダウンした場合のみ、アクティブ ルータになります。 アクティブ ルータとスタンバイ ルータの詳細については、『standby preempt および standby track コマンドの使用法』を参照してください。
ホストのデフォルト ゲートウェイ アドレスは、その HSRP 仮想 IP アドレスとして割り当てられます。 ホストがサーバ ネットワークにパケットを送信するときは、デフォルト ゲートウェイ、つまりアクティブ状態にあるルータに対してパケットが送信されます。 1 台のルータのみがアクティブであるため、ホストからサーバへのパケットは、2 つの使用可能なパスのうち、どちらか一方のみを通過します。
注: サーバからホストに戻るパケットは、R3 の設定方法に応じて両方のリターン パスを使用することも、一方のみを使用することもあります。 また、サーバからホストに戻るパケットはアクティブ ルータを経由する必要はありません。
ホスト ネットワークからサーバ ネットワークへのパスを両方とも利用するために、R1 と R2 の間で Multigroup HSRP(MHSRP)を設定できます。 基本的に、R1 には 2 つの HSRP グループ(グループ 1 やグループ 2 など)を設定し、R2 にも同じ HSRP グループを設定します。 グループ 1 では、R1 がアクティブ ルータで、R2 がスタンバイ ルータです。 グループ 2 では、R2 がアクティブ ルータで、R1 がスタンバイ ルータです。 半数のホストのデフォルト ゲートウェイには HSRP グループ 1 仮想 IP アドレスを設定し、残りの半数には HSRP グループ 2 仮想 IP アドレスを設定します。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
この項では、このドキュメントで説明する機能の設定に必要な情報を提供します。
注: このドキュメントで使用されているコマンドの詳細を調べるには、Command Lookup Tool(登録ユーザ専用)を使用してください。
このドキュメントでは、次のネットワーク構成を使用しています。
このドキュメントでは、次の設定を使用します。
R1 の MHSRP 設定 |
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Current configuration: interface Ethernet0 ip address 171.16.6.5 255.255.255.0 standby 1 preempt standby 1 ip 171.16.6.100 standby 1 track Serial0 standby 2 preempt standby 2 ip 171.16.6.200 standby 2 track serial 0 standby 2 priority 95 |
R2 の MHSRP 設定 |
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Current configuration: interface Ethernet0 ip address 171.16.6.6 255.255.255.0 standby 1 preempt standby 1 ip 171.16.6.100 standby 1 track Serial0 standby 1 priority 95 standby 2 preempt standby 2 ip 171.16.6.200 standby 2 track serial 0 |
上記の設定例から、2 台のルータが HSRP の実行を開始したとき、R1 は、グループ 1 に対する優先順位がデフォルトの 100 であり、グループ 2 に対する優先順位が 95 です。R2 は、グループ 2 に対する優先順位がデフォルトの 100 であり、グループ 1 に対する優先順位が 95 です。 そのため、R1 はグループ 1 のアクティブ ルータ、R2 はグループ 2 のアクティブ ルータとなります。 次の例は、MHSRP でロード シェアリングを実現する方法を示します。 ただし、これを実現するには、HSRP 優先順位を使用してトラフィックを優先的に割り当てる必要があります。 HSRP は、リターン トラフィックには影響を及ぼしません。 リターン トラフィックが通過するパスはルータに設定されるルーティング プロトコルによって異なります。
注: スタンバイ プライオリティ値および standby preempt コマンドが設定された場合は、グループ番号を明示的に示す必要があります。 示されない場合、デフォルト値の 0 となります。 デフォルトのグループ番号は 0 です。
ローエンド製品に搭載されているイーサネット(Lance および QUICC)コントローラによっては、アドレス フィルタ内にユニキャスト Media Access Control(MAC; メディア アクセス制御)アドレスを 1 つしか設定できません。 これらのプラットフォームは HSRP グループを 1 つだけ許可し、そのグループがアクティブになると、インターフェイス アドレスを HSRP 仮想 MAC アドレスに変更します。 この制限のあるプラットフォームでは、HSRP を使用したロード シェアリングは実現できません。 上記のようなローエンド製品で HSRP を実行する際に発生する問題を回避するために、use-bia コマンドが導入されました。 たとえば、同じインターフェイス上で HSRP と DECnet を実行すると、DECnet と HSRP が MAC アドレスを変更しようとするため、問題が生じます。 use-bia コマンドを使用すれば、DECnet プロセスで生成された MAC アドレスを使用するように HSRP を設定できます。 ただし、use-bia コマンドの使用には次のような問題があるため、注意する必要があります。
ルータがアクティブになると、仮想 IP アドレスが別の MAC アドレスに移ります。 新しいアクティブ ルータは gratuitous Address Resolution Protocol(ARP)応答を送信しますが、必ずしもすべてのホスト実装が gratuitous ARP を正しく処理できるとは限りません。
use-bia を設定するとはプロキシ ARP を使用できません。 障害が発生したルータでプロキシ ARP データベースが失われた場合、スタンバイ ルータでは対応できません。
現在、この設定に使用できる確認手順はありません。
現在のところ、この設定に関する特定のトラブルシューティング情報はありません。