拡張 ATM(非同期転送モード)ポートアダプタ(ATM PA-A3)は、1 ポートを備えたシングルワイドまたはデュアルワイドの ATM ポートアダプタで、Catalyst 6000® スイッチファミリ用 Flex WAN モジュールを利用する Cisco 7200、7500、および 7600 OSR シリーズルータ向けに設計されています。ATM PA-A3 は、ローカルのバッファメモリを持つ、高性能な二重 SAR(Segmentation And Reassembly)を備えたアーキテクチャになっています。
ATM PA-A3 は、VC(仮想回線)トラフィックシェーピングや VP(仮想パス)トラフィックシェーピングなど、表 1 に示すような最新の ATM ハードウェア機能をサポートします。また、nrt-VBR(Non-real time Variable Bit Rate)、ABR(Available Bit Rate)、UBR(Unspecified Bit Rate)、4096 の ATM VC サポートなどの ATM サービスを提供します。
表 1 各ポートアダプタでサポートされるプラットフォームと機能
PA-A3-OC3 PA-A3-E3 PA-A3-T3 | PA-A3-OC12SMI PA-A3-OC12MI | PA-A3-8T IMA PA-A3-8E IMA | |
---|---|---|---|
NPE 150、175、200、225、300、400 を搭載した Cisco 7200 および 7200 VXR シリーズ、または NSE-1 シリーズルータ | ○ | × | ○ |
Catalyst 6000 ファミリ向け FlexWAN モジュール | ○ | × | × |
VIP2-40 および VIP2-50 を搭載した Cisco 7500 シリーズ | ○ | × | ○ |
VIP4-50 を搭載した Cisco 7500 シリーズ | ○ | × | ○ |
VIP4-80 を搭載した Cisco 7500 シリーズ | ○ | ○ | ○ |
フォームファクタ | シングル幅ポートアダプタ | デュアル幅ポートアダプタ | シングル幅ポートアダプタ |
ABR(Available Bit Rate) | ○ | × | ○ |
nrt-VBR(Non-real-time Variable Bit Rate) | ○ | ○ | ○ |
UBR(Unspecified Bit Rate)および UBR+ | ○ | ○ | ○ |
LANE(LAN エミュレーション) | ○ | 将来 の Cisco IOS® でサポート予定 | × |
CoS(VC 単位および VP 単位のトラフィックシェーピング) | ○ | ○ | ○ |
表 2 発注情報
製品モデル | 説明 | IOS リリース |
---|---|---|
PA-A3-OC12MM | 1 ポートの ATM OC-12c/STM-4 マルチモードポートアダプタ(拡張) | 12.0(11)S、12.0(11)ST3 12.1(3a)E 12.2(1)、12.2(1)T |
PA-A3-OC12SM | 1 ポートの ATM OC-12c/STM-4 シングルモードポートアダプタ(拡張) | |
PA-A3-T3 | 1 ポートの ATM DS3 ポートアダプタ(拡張) | 11.1(22)CC 12.0(1)、12.0(1)T、12.0(5)S 12.1(1)、12.1(1)E、12.1(1)T 12.2(1)、12.2(1)T |
PA-A3-E3 | 1 ポートの ATM E3 ポートアダプタ(拡張) | |
PA-A3-OC3MM | 1 ポートの ATM OC-3c/ST-1 マルチモードポートアダプタ(拡張) | |
PA-A3-OC3SMI | 1 ポートの ATM OC-3c/STM-1 シングルモード(IR)ポートアダプタ(拡張) | |
PA-A3-OC3SML | 1 ポートの ATM OC-3/STM-1 シングルモード(LR)ポートアダプタ(拡張) | |
PA-A3-8T1IMA | 8 つの T1 ポートでの ATM ポートアダプタ逆多重 | 12.0(5)XE 12.1(1)E、12.1(5)T 12.2(1)、12.2(1)T |
PA-A3-8E1IMA | 8 つの E1 ポートでの ATM ポートアダプタ逆多重 |
ATM PA-A3 は、性能が高く、新しい ATM 機能を幅広く組み合わせることができるため、企業の広域ネットワーク(WAN)やサービスプロバイダのバックボーンアプリケーションに最適です。
ATM PA-A3 アーキテクチャの拡張トラフィック管理のメカニズムにより、クライアント/サーバトラフィックのサポートが可能です。また、保証や最善のサービスが要求されるアプリケーションのサポートも行っています。
ABR(Available Bit Rate)、nrt-VBR、UBR(拡張 UBR を含む)などの ATM サービスクラスをサポートします。
表 3 サポートされるサービスの種類
ATM PA-A3 サービスクラス | 代表的な使用法 |
---|---|
nrt-VBR(Non-real time Variable Bit Rate) | ATM ネットワークを通してサービス保証が必要なすべてのアプリケーションに対して使用 |
UBR(Unspecified Bit Rate)および UBR+ | コンフィギュレーションがほとんど必要ないベストエフォート型サービスのみを必要とするデータアプリケーションに対して使用 |
ABR(Available Bit Rate) | 混雑状態フィードバック通知を使用して ATM リンクの帯域幅を最大限使用 (最小の帯域幅を定義可能)。(OC-12c/STM-4 では使用不可) |
トラフィックシェーピングは、バースト性トラフィックを事前に定義された「契約」に従わせるために、ATM エッジデバイスで提供される機能です。より厳密に言えば、トラフィックシェーピングは、ある VC からのトラフィックが別のトラフィックに悪影響を与えてデータ損失が発生することを防ぎます。これは、ATM WAN またはパブリック ATM ネットワークに接続する場合に非常に重要な機能です。特に、ATM スイッチの入口側で事前定義済みの契約を超過した全トラフィックを廃棄するようなトラフィックポリシングが有効になっている場合は、重要になります。
ATM PA-A3 は、VC 単位および VP 単位でのトラフィックシェーピングをサポートし、運用時はいずれか一方を動作させることができます。ハードウェアでトラフィックシェーピングをサポートすることで、シェーピングを有効にしてもパフォーマンスが低下することはありません。VC および VP 単位のトラフィックシェーピングを搭載することで、設定した各 VC と VP の柔軟な制御が可能です。
ATM PA-A3 は、選択された ATM サービスクラスに応じて、PCR(最大セル速度)、SCR(平均セル速度)、MBS(最大バーストサイズ)、および MCR(最小セル速度)といったパラメータをサポートします。これらのパラメータは、特定アプリケーションの必要に応じ、個々の VC 特有の帯域要求に基づいて定義できます。
ATM PA-A3 ハードウェアは、ホイールベースのスケジューリングアルゴリズムを使って特定パラメータに VC を「適合」させて、ATM インタフェース上で公正な伝送が行われるようにします。同じタイムスロットに対して 2 つのセルが競合した場合は、優先度の高いものから、1) OAM セルおよびシグナリング、2) nrt-VBR、3) ABR、4) UBR の順番で VC の優先度が付けられます。このように VC の優先順位を付けることで優先度の高い保証されたトラフィックがベストエフォートトラフィックより確実に優先されるようになります。また VC 単位で優先順位を付けることもできます。
将来的な柔軟性を高めるために、これらの各パラメータを広範囲に渡って小さな増分で設定することが可能となっています。
表 4 サポートされているトラフィックシェーピングの値(OC-3、DS3、および E3 バージョン)
パラメータ | データ幅 | 増分 |
---|---|---|
PCR | ラインレート 56kbps | OC-3c/STM-1 は 4.57-kbps、DS3 は 1.33-kbps、E3 は 1.03-kbps |
SCR | ラインレート 56kbps | OC-3c/STM-1 は 4.57-kbps、DS3 は 1.33-kbps、E3 は 1.03-kbps |
MBS | 1 ~ 64,000 セル | 1 セル |
ATM PA-A3 には、先進的な二重 SAR アーキテクチャが採用されています。SAR プロセッサの一方は送信用で、もう一方は受信用です。各 SAR は、AAL5 ATM が高性能なデータアプリケーションへ対応できるようサポートしています。これまでに述べた ATM PA-A3 の先進的トラフィック管理機能の多くは、この SAR 設計の直接的な結果と言えます。
ATM PA-A3 には、ポートアダプタ上に大きなローカルバッファメモリがあります。これは ATM PA-A3 独自の機能です。このバッファメモリは VC および VP 単位に区切られるため、全体のパフォーマンスを高め、トラフィックの輻輳を吸収できます。この設計により、1 つの VC からの混雑したトラフィックが他の VC の通行を妨げることはありません。これは、サービスプロバイダの ATM ネットワークにとって大変重要な機能です。
Return to TopATM ネットワークモジュールアーキテクチャの先進的な帯域幅管理メカニズムによって、バースト性のクライアント/サーバトラフィックをサポートすると同時に、保証されたサービスやベストエフォート型サービスを必要とするアプリケーションをサポートすることが可能になります。ATM PA-A3 の帯域幅管理機能は、ミッドレンジルータの既存の ATM インタフェースを超えるものです。
この新機能により、インタフェースごとに VC や VP が使用した帯域幅を追い続けることができます。ATM リンクの過剰使用を防げ、ユーザーの設定も可能です。
インタフェースに割り当てられた全帯域幅は、各 VC ごとに指定された値を集めることで調べることができます。新たに VC が要求されると、要求された速度が使用可能な速度と常に照らし合わされ、使用可能帯域幅を超えることはありません。リンクの過剰使用が必要であれば、この照合を行わないようにすることもできます。
Return to TopOAM(Operations and Management)セルは ATM レイヤのエンドツーエンドリンク管理メッセージに使用されます。これは、リモート接続が稼働中であることを保証します。OAM F4 と F5 フローの両方でサポートされています。分割が行われる間には、OAM セルには最も高い優先度が割り当てられ、キューイングされている他のデータの前に送信されます。再構築が行われる間には、OAM トラフィックは、512 の 64 バイトバッファのグローバルな OAM 受信バッファプールにルートされます。
Return to TopMPLS(Multiprotocol Label Switching)機能は、Basic MPLS、MPLS トラフィック管理、MPLS VPN(仮想プライベートネットワーク)、MPLS-CoS でサポートされています。
Return to TopATM PA-A3 ポートアダプタは、Cisco IOS ソフトウェアの IP-ATM CoS(IP QoS to ATM Class of Service)機能をサポートしています。この機能は、IP と ATM 間の QoS(Quality of Service)特性のマッピングが粗いという問題に対するソリューションを実現しています。これらの機能により、IP と ATM 間の内部動作ネットワークの QoS が一貫したものになっています。IP/ATM ネットワークは、ルートされている部分に限らず広域ネットワーク全体にわたって異なるサービスクラスを提供できるようになります。重要なアプリケーションでは、ネットワークが混雑している間も高い CoS を提供できます。QoS の柔軟性は、より重要なトラフィックやユーザータイプで使用できます。
仮想回線ごとの QoS は、個々の VC に CBWFQ、WRED、LLQ といった先進的なキューイング機能および帯域幅管理機能を適用します。また VC バンドリング機能を使った IP から ATM への CoS マッピングもサポートしており、必要な CoS に応じて複数の VC にトラフィックを分配することができます。
ATM PA-A3 は、最大 4096 までの仮想接続(IMA バージョンの場合 2048)と最大 256 までの仮想パスをサポートしています。4096 の VC/VP の組み合わせから、VC と VP の任意の組み合わせの最大数をサポートします。これらの VC は、手動で作成された相手先固定接続の場合もあれば、ポイントツーポイントおよびポイントツーマルチポイントの UNI(User Network Interface)のシグナリングによって作成されたスイッチ型相手先固定接続の場合もあります。
これらの機能は、パフォーマンスの高いスループットに貢献しており、DSL(デジタル加入者線)アプリケーションやキャンパス LAN のように多くの VC が必要なアプリケーションに対して特に便利です。
Cisco IOS の特別な機能による ATM PA-A3 の ATM サービスには次のものがあります。
ATM PA-A3 は、Cisco IOS リリースの導入により、次の MIB(管理情報ベース)をサポートします。
表 5 サポートされているインタフェースタイプ
インタフェース | 速度 | コネクタタイプ | ケーブルタイプ | 波長 | 最大距離 |
---|---|---|---|---|---|
OC-12c/STM-4 シングルモード中距離 | 622Mbps | SC | 9um シングルモードファイバ | 1260 ~ 1360nm | 15km |
OC-12c/STM-4 マルチモード | 622Mbps | SC | 9um シングルモードファイバ | 1270 ~ 1380nm | 500m |
DS3 | 44.736Mbps | BNC | 75 Ω 同軸 | --- | 約 137m(450 フィート) |
E3 | 34.368Mbps | BNC | 75 Ω 同軸 | --- | 約 381m(1250 フィート) |
OC-3c/STM-1 マルチモード | 155.52Mbps | SC | 62.5/125 um マルチモードファイバ | 1270 ~ 1380nm | 2km |
OC-3c/STM-1 シングルモード中距離 | 155.52Mbps | SC | 9um シングルモードファイバ | 1260 ~ 1360nm | 15km |
OC-3c/STM-1 シングルモード長距離 | 155.52Mbps | SC | 9um シングルモードファイバ | 1260 ~ 1360nm | 45km |
DS1 | 1.544Mbps | RJ-48c | シンメトリックペア 100 Ω | --- | 198m(650 フィート) |
E1 | 2.048Mbps | RJ-48c | シンメトリックペア 120 Ω | --- | 198m(650 フィート) |
表 6 オプティカルインタフェースとパワーパラメータ
インタフェース | TX パワー(最小) | TX パワー(最大) | RX パワー(最小) | RX パワー(最大) | バジェット |
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OC-12c/STM-4 シングルモード中距離 | -19dBm | -14dBm | -30dBm | -14dBm | 11dBm |
OC-12c/STM-4 マルチモード | -14dBm | -20dBm | -26dBm | -14dBm | 12dBm |
OC-3c/STM-1 マルチモード | -19dBm | -14dBm | -28dBm | -14dBm | 9dBm |
OC-3c/STM-1 シングルモード中距離 | -15dBm | -8dBm | -31dBm | -8dBm | 15dBm |
OC-3c/STM-1 シングルモード長距離 | -5dBm | 0dBm | -34dBm | -10dBm | 29dBm |
EMI
更新日:2002 年 4 月 16 日