Cisco IP Transfer Point

Cisco M3UA/SUAシグナリング ゲートウェイ

ダウンロード

ホワイト ペーパー





Cisco IP Transfer Point


MTP3 User Adaptation(M3UA)およびSCCP User Adaptation(SUA)シグナリング ゲートウェイ

概要

モバイル事業者には、現在、2つの主要なビジネス ニーズがあります。1つはネットワークの拡大に合わせてコストを削減し、加入者の要望に応えること、もう1つは収益の拡大と加入者の維持および獲得につながるサービスを提供することです。Signaling System 7(SS7)ネットワークを完全なIPネットワークに移行することにより、モバイル事業者はこの両方のニーズを実現することができます。

Cisco IP Transfer Point(ITP)は、SS7シグナリング トラフィックをIPネットワーク上で伝送するための製品ファミリーです。Cisco ITPの最初のリリースでは、Internet Engineering Task Force(IETF)のSignaling Transport(SIGTRAN)MTP2-User Peer-to-Peer Adaptation(M2PA)レイヤ プロトコルをサポートしています。このリリースでは、コストの高いTime Division Multiplexing(TDM;時分割多重)ネットワークからコスト効率のよいIPネットワークにSS7トラフィックの一部を移すことにより、IPネットワークへの移行の第一歩を実現しました。Cisco ITPの最新リリースでは、SIGTRANのMTP3-User Adaptation(M3UA)レイヤ プロトコルおよびSCCP-User Adaptation(SUA)レイヤ プロトコルを使用しており、従来のSS7 ネットワークとの通信が可能なIP対応のエンド ノードやアプリケーションを可能にすることで、IPネットワークへの移行をさらに進歩させています。

ネットワークの効率化

Home Location Register(HLR)、Short Message Service Center(SMSC)、Signaling Control Point(SCP)などの新しい高性能Signaling Endpoint(SEP)の処理能力は、従来のSS7ネットワークを上回っています。モバイル事業者は、これらのアプリケーションを十分に活用し、低コストで効率的に展開するための方法を模索しています。しかし、コストの問題やSS7ネットワークの制約により、これまで実現には至りませんでした。

Cisco ITPのM3UA/SUAシグナリング ゲートウェイは、従来のSS7の制約を打破し、これらのアプリケーションを十分に活用可能とする、シグナリング トラフィック伝送のための高性能で拡張性の高いソリューションを実現しています。これにより、モバイル事業者はTDMやSignaling Transfer Point(STP)のコストを低減すると同時に、SCPアプリケーションの高いROI(投資対効果)を実現しています。

収益を産み出すアプリケーションおよびサービスの実現

SS7-over-IP(SS7oIP)シグナリング ゲートウェイを使用すると、IPベースの最新のアプリケーションおよびサービスをすみやかに展開できます。モバイル インターネット/イントラネットでは、有線のインターネットと同様にオープンなアプローチが必要とされています。そして、このような環境においてこそ、モバイル事業者は独自の魅力的なアプリケーションやサービスを携えて市場に参入することができます。また、モバイル インターネット市場で成功を収めるには、これらのアプリケーションをIPベースで稼働させ、第2世代(2G)、2.5G、および第3世代(3G)ワイヤレス ネットワークへのシームレスな移行を可能にするとともに、ネットワークや加入者数の増大に合わせて拡張できるようにする必要があります。

このような高度なアプリケーションとサービスによって、モバイル事業者は新たな収益源を得ることができます。また、新規顧客の獲得と既存顧客のロイヤルティ向上にも役立つため、顧客数の増加につながります。

中心となるネットワーク インフラストラクチャ

幅広いアプリケーションやサービスへの柔軟な対応を可能にするには、中心となるネットワーク インフラストラクチャが技術的にオープンでなければなりません。従来のIntelligent Network(IN;インテリジェント ネットワーク)やAdvanced Intelligent Network(AIN;高度インテリジェント ネットワーク)を使用して新しいアプリケーションおよびサービスを実現することは、狭く閉ざされたコミュニティだけでしか開発できない、時間のかかる難しい作業でした。これに対してSS7oIPは、市場参入時の障壁を低くし、INおよびAINを十分に活用できるようにします。また、オープンな規格であるため、市場へのアプリケーション ベンダーの参入を促進することが可能です。Cisco ITPはM3UA/SUAのシグナリング ゲートウェイ機能を備えているため、モバイル事業者は標準ベースのIPネットワークを使用してビジネス目標を実現できます。

SS7oIPの概要

IETFのSIGTRANワーキング グループは、IPネットワーク上で従来のSS7シグナリングを伝送する標準プロトコル(SS7oIP)を策定しました。最初に下位レイヤに対応する規格が定められ、SS7に相当する冗長性とアベイラビリティが実現されました。さらにこの上位に、IPベースのエンドポイントに対するSS7シグナリング伝送メカニズム(バックホール)が追加されました。

詳しくは、SIGTRANのホームページhttp://www.ietf.org/html.charters/sigtran-charter.htmlを参照してください。

Cisco ITPファミリーでサポートされているプロトコルは次のとおりです。

  • Stream Control Transmission Protocol(SCTP、RFC2960) - TCPと同様、トランスポート レイヤ プロトコルです。このプロトコルを使用すると、信頼性の高いデータ転送、多重ストリーム、データのバンドルとフラグメンテーション、輻輳制御とフロー制御、マルチホーミングによる信頼性の向上などの機能を実現できます。SCTPは、Cisco ITP製品ファミリーのトランスポート レイヤ プロトコルです。
  • MTP2-User Peer-to-Peer Adaptation(M2PA、Internet-Draft) - SCTPと同時に使用することにより、MTP3にMTP2と同等のトランスポート レイヤ サービスを提供します。Cisco ITP製品にはM2PAが実装されており、従来のSS7ネットワークからMTP3メッセージをオフロードします。
  • MTP3-User Adaptation(M3UA、Internet-Draft) - MTP3レイヤとのインターフェイスを持つプロトコルIPベース アプリケーション(ISDN-User Part [ISUP;ISDNユーザ部]およびSignaling Connection Control Part [SCCP]など)に対して、従来のSS7ネットワークへのゲートウェイを提供するクライアント/サーバ プロトコルです。Cisco ITP製品には、M3UAが実装されています。
  • SCCP-User Adaptation(SUA、Internet-Draft) - SCCPレイヤとのインターフェイスを持つIPベース アプリケーション(Transaction Capabilities Application Part [TCAP]など)に対して、従来のSS7ネットワークへのゲートウェイを提供するクライアント/サーバ プロトコルです。Cisco ITP製品には、SUAが実装されています。


M3UAおよびSUA

M3UAは、SS7 MTP3-User PartメッセージおよびMTPネットワーク管理イベントをSCTPトランスポート経由でIPベース アプリケーション エンドポイントに伝送するためのトランスポート メカニズムを備えています。M3UAシグナリング ゲートウェイは、SS7のMTP2およびMTP3プロトコル レイヤを終端し、ISUP、SCCP、およびその他のMTP3ユーザ プロトコル メッセージを配信します。Application Server Process(ASP)はシグナリング ゲートウェイのコンポーネントであり、アプリケーションのエンドポイント上に存在するプロセスまたはデータベース(コール エージェントやHLRなど)です。

図1は、従来のSS7サービス コントロール ポイント、M3UAシグナリング ゲートウェイ、IPベースASP、および各プロトコル スタック間の関係を示しています。

図1 M3UAベースのアーキテクチャ

図1 M3UAベースのアーキテクチャ


図1では、従来のSS7 SCP(右側)はMTP1、MTP2、およびMTP3を使用してSCCPおよびISUPメッセージをネットワークに送信します。シグナリング ゲートウェイはSS7リンクを終端して、MTP3メッセージをM3UAメッセージに変換し、これをSCTP/IP経由でASPに送信します。ASPのM3UAは、MTP3と同様にSCCPおよびISUPをアプリケーションに配信します。

SUAは、SS7 SCCP-User PartメッセージおよびSCCPネットワーク管理イベントをSCTPトランスポート経由でIPベース アプリケーション エンドポイントに伝送するためのトランスポート メカニズムを備えています。SUAシグナリング ゲートウェイは、SS7のMTP2、MTP3、およびSCCPプロトコル レイヤを終端し、TCAP、Radio Access Network Application Part(RANAP)、およびその他のSCCPユーザ プロトコル メッセージを配信します。ASPはシグナリング ゲートウェイのコンポーネントであり、アプリケーションのエンドポイント上に存在するプロセスまたはデータベース(コール エージェントやHLRなど)です。

図2は、従来のSS7サービス コントロール ポイント、SUAシグナリング ゲートウェイ、IPベースASP、および各プロトコル スタック間の関係を示しています。

図2 SUAベースのアーキテクチャ

図2 SUAベースのアーキテクチャ


図2では、従来のSS7 SCP(右側)はMTP1、MTP2、およびMTP3を使用してSCCPメッセージをネットワークに送信します。シグナリング ゲートウェイはSS7リンクを終端して、SCCPメッセージをSUAメッセージに変換し、これをSCTP/IP経由でASPに送信します。ASPのSUAは、SCCPと同様にTCAPをアプリケーションに配信します。

ルーティング キー、アプリケーション サーバ、およびASP

シグナリング ゲートウェイは、ルーティング キーに基づいて適切な宛先にメッセージをルーティングします。ルーティング キーは、SS7メッセージのフィルタリングに使用されるパラメータによって定義されます。これらのパラメータは実装形態によって異なります。ルーティング キーは、次のようなパラメータを組み合わせて定義されます。

  • Destination Point Code(DPC)(必須)
  • Origination Point Code(OPC)
  • Service Indicator(SI)
  • ISUP Circuit Identifier Code(CIC)
  • SCCPサブシステム番号
  • グローバル タイトル


アプリケーション サーバは、個別のルーティング キーを持つ論理エンティティです。アプリケーション サーバには、メッセージを処理する固有のASPが1つまたは複数存在します。

図3は、ポイント コード1.1.1でシグナリング ゲートウェイがISUPメッセージを一方のASP(ASPA)にルーティングし、SCCPメッセージをもう一方のASP(ASPB)にルーティングする様子を示しています。

図3 ルーティング キーの例

図3 ルーティング キーの例


シグナリング ゲートウェイは、特定のアプリケーション サーバに属する(たとえば、ルーティング キーが一致する)メッセージを、そのアプリケーション サーバに対応する1つまたは複数のASPにルーティングします。ASPはアプリケーション サーバの現在のトラフィック モードに基づいて選択されます。

トラフィック モード

M3UAおよびSUAは、オーバーライド、ロードシェア、およびブロードキャストの3つのトラフィック モードをサポートしています。

ASPはASP Activeメッセージをシグナリング ゲートウェイに送信することにより、ASPが特定のアプリケーション サーバのシグナリング トラフィックを処理可能であることを通知します。ASPはActiveメッセージによって希望するトラフィック モードを通知します。

  • オーバーライド モードの場合、ASPはアプリケーション サーバでアクティブになっているASPすべてに優先され、そのアプリケーション サーバのすべてのトラフィックを受け取ります。
  • ロードシェア モードの場合、ASPはアクティブになっている他のASPとトラフィック配信を共有します。シグナリング ゲートウェイのロードシェアリング アルゴリズムは、実装形態によって異なります。
  • ブロードキャスト モードの場合、ASPはアクティブである他のASPと同じメッセージを受信します。


ポイント コード

アプリケーション サーバはMTP3ユーザに相当するため、固有のポイント コードを持っています。これは、シグナリング ゲートウェイがSS7ネットワークの残りの部分に管理メッセージを通知するために必要となります。ルーティング キーには、アプリケーション サーバのポイント コードが必須です。アプリケーション サーバは、シグナリング ゲートウェイのポイント コードを共有できます。また、複数のアプリケーション サーバで1つのポイント コードを共有することもできます。

Signaling Point Management Cluster(SPMC)は、SS7から単一のポイント コードで識別される、アプリケーション サーバの集合を指します。

アプリケーション プラットフォーム アーキテクチャ

従来のSS7アーキテクチャ

アプリケーションがインテリジェント ネットワークの情報にアクセスするには、コンピューティング プラットフォームでSS7接続に対応したハードウェアとソフトウェアを用意する必要があります。図4は、一般的なアプリケーション プラットフォームを示しています。

図4 従来のプロトコル スタック

図4 従来のプロトコル スタック


アプリケーション プラットフォームは、STPなどのSS7デバイスへのTDMリンクを可能にするT1/E1/V.35インターフェイス カードを備えている必要があります。また、MTPプロトコル スタックをサポートするためのソフトウェアも必要です。呼制御機能を提供するアプリケーションには、ISUPスタックが必要です。Mobile Application Part(MAP)またはIS-41の情報を必要とするアプリケーションには、SCCPスタックおよびTCAPスタックが必要です。

一般的に、これまでの通信インフラストラクチャ ベンダーは、独自のプラットフォームと標準のSS7プロトコル スタックを利用してアプリケーションをサポートしてきました。

新しい革新的なアプリケーションをモバイル事業者に提供しようと考えるアプリケーション ベンダーは、通常、SolarisやNTなどの標準プラットフォームを選択し、T1/E1インターフェイス カードを搭載し、さらにソフトウェア ベンダーからSS7スタックのライセンスを受けます。SS7接続ソリューションを提供しているベンダーは数多く存在します。

しかし、こうしたソリューションは高価で複雑なものであり、独自のハードウェア インターフェイスや多額のソフトウェア投資を必要とします。また、これらのシステムの拡張性は、MTP2処理におけるCPU要件、SS7リンクの帯域幅、および物理ポート容量によって制約を受けます。トランザクション スループットを向上させるには、ハードウェアを追加してSS7リンクを増やさなければなりません。完全なIPプラットフォームに移行すれば、コストを削減し、システムを簡素化することができます。

IPベースのアーキテクチャ

現在の標準的なプラットフォームには、イーサネット接続およびIPサポートが装備されています。これにより、帯域幅の増加を可能にするとともに、プラットフォームのコスト削減と簡素化が実現されます。

ISUPのサポートが必要なアプリケーションの場合、M3UAプロトコルを使用する必要があります。図5は、このようなタイプのプラットフォームでのプロトコル アーキテクチャを示しています。MAP、IS-41、およびその他のTCAPユーザへのアクセスが必要なアプリケーションのサポートが可能となっています。ただし、M3UAとのインターフェイスを確保するために標準のSCCPスタックを実装する必要があることに注意してください。

図5 SIGTRAN M3UAおよびSUAプロトコル スタック

図5 SIGTRAN M3UAおよびSUAプロトコル スタック


Cisco IP Transfer Pointの機能

標準のCisco IOSソフトウェア

Cisco ITPの機能は標準のCisco IOS®ソフトウェアの一部として実装されており、幅広く使用されているCisco 2600、7200VXR、および7500シリーズ ルータ プラットフォーム上でサポートされています。これはCisco ITPの大きな利点です。

  • Cisco ITPは、お客様が必要とするCisco IOSの多くの標準機能をサポートします。
    • IPメディア:ATM、ギガビット イーサネット、Packet over SONET
    • IP Version 6(IPv6)、IPv4からIPv6への変換およびトンネリング、IPv6のQuality of Service(QoS;サービス品質)
    • Network Address Translation(NAT;ネットワーク アドレス変換)
    • ファイアウォール
    • モバイルIP
    • Remote Access Dial-In User Service(RADIUS)Authentication, Authorization, Accounting(AAA;認証、許可、アカウンティング)などのセキュリティ機能
    • Voice over IP(VoIP)
  • モバイル事業者は、TDMリンクを使用せずにエンドツーエンドにまでIPネットワークを拡張することを目指しています。ネットワークがここまで進化すれば、タイトル ルーティングおよびアプリケーション ロードバランシングを行うためのGlobal Title Translation(GTT;グローバル タイトル変換)機能を備えたIPルータがあれば十分です。Cisco ITPは Cisco IOSソフトウェアの一部として実装されるため、あらゆるIPルーティング プラットフォームに導入されているハイエンドのキャリアクラス プラットフォーム上で常にサポートされます。ネットワークがさらに進化しても、お客様の投資は保護されます。


M3UA/SUAシグナリング ゲートウェイ

Cisco ITP M3UA/SUAシグナリング ゲートウェイは、SIGTRAN標準のM3UAおよびSUAを実装しています。これらは、SS7シグナリング情報をIPベース アプリケーションに伝送する際に使用されます。現時点では、M3UAおよびSUAはIETFでのドラフト ステータスにあります。Cisco ITPは、最新のドラフトに準拠しています。

Cisco ITP M3UA/SUAシグナリング ゲートウェイは、次の機能をサポートしています。

  • 完全なルーティング キー構成
  • 完全なトラフィック モード オペレーション(オーバーライド、ロードシェア、およびブロードキャスト)
  • 完全なシグナリング ネットワーク管理オペレーション:
    • Destination Unavailable(DUNA) - 利用できない宛先
    • Destination Available(DAVA) - 利用可能な宛先
    • Destination State Audit(DAUD) - 宛先の状態監査
    • Signaling Congestion(SCON) - シグナリング輻輳
    • Destination User Part Unavailable(DUPU) - 利用できない宛先ユーザ部
    • Destination Restricted(DRST) - 制限された宛先
  • 完全なASPステートおよびトラフィック メンテナンス オペレーション:
    • ASP Up(ASPUP) - ASPアップ
    • ASP Up Acknowledgement(UPACK) - ASPアップ確認応答
    • ASP Down(ASPDN) - ASPダウン
    • ASP Down Acknowledgement(DOWN ACK) - ASPダウン確認応答
    • ASP Active(およびAcknowledgement) - ASPアクティブ(確認応答)
    • ASP Inactive(およびAcknowledgement) - ASP非アクティブ(確認応答)
  • SUA SCCPコネクションレス トラフィック(クラス0および1):
    • Connectionless Data Transfer(CLDT) - コネクションレス データ転送
    • Connectionless Data Response(CLDR) - コネクションレス データ応答
  • ハートビート(BEAT)の確認応答
  • M3UA、SUA、およびM2PAの同時サポート
  • グローバル タイトル アドレスのプレフィクス変換(E.212からE.214など)


Cisco ITP M3UA/SUAシグナリング ゲートウェイの最初のリリースでは、次の機能はサポートしていません。

  • ルーティング キーのダイナミック登録要求
  • マルチプル ネットワーク アピアランス
  • SUAコネクション型トラフィック
  • ハートビート(BEAT)の開始


ロードシェアリング アルゴリズム

アプリケーション サーバのトラフィック モードをロードシェアに設定した場合、Cisco ITPはラウンドロビン アルゴリズムを使用して適切なASPを選択し、メッセージを送信します。Cisco ITPは、アプリケーション サーバ内にアクティブなASPのリストを保有しています。最初のMSUが受信されると、リスト内の最初のアクティブASPに送信され、処理されます。次のMSUが受信されると、次のアクティブASPに送信され、処理されます。これ以降のMSUも同様に処理されます。

単一のトランザクションまたはプロシージャ(TCAPトランザクション、ISUPコール セットアップなど)が複数のMSUで構成されている場合は、同じASPで処理される必要があります。適切な順序で処理が実行されるように、バインディングという概念を使用してASPを選択します。バインディングは、ロードシェアの「シード」に基づいています。シードとは、MSUに含まれるパラメータで、トラフィック タイプによって異なります。Cisco ITPのロードシェアリング アルゴリズムの場合、シードは次のいずれかとなります。

  • ISUPトラフィックの場合、MSUのDPC/OPC/CIC
  • SCCPクラス1の場合、Signaling Link Selection(SLS)値(クラス0トラフィックにはバイディングは不要)


ロードシェアリングがロードシェア シードに基づいて実施される場合、Cisco ITPは、まず始めにMSU内のロードシェア シードが特定のASPとバインディングされているかどうかを確認します。特定のASPとバインディングされている場合、MSUをそのASPに送信します。特定のASPとバインディングされていない場合、Cisco ITPは次のアクティブASPを選択して、ロードシェア シードをそのASPにバインディングし、MSUをそのASPに送信します。

Cisco ITPが最初に受信したロードシェア シードは、アプリケーション サーバ リスト内の最初のアクティブASPに割り当てられます。これとは異なるシードが次に受信されると、アプリケーション サーバ リスト内の次のアクティブASPに割り当てられます。これ以降のシードも同様に処理されます。ASPが非アクティブになると、そのASPのすべてのシード バインディングはクリアされます。さらに、そのASPにバインディングされていたロードシェア シードを持つ後続のトラフィックは、リスト内の他のアクティブASPに配信されます。

ポイント コードの利用

Cisco ITP M3UA/SUAシグナリング ゲートウェイでは、次のようなポイント コードの割り当ておよび利用が可能です。

  • Cisco ITPにはポイント コードが割り当てられます。Cisco ITP上にプロビジョニングされたアプリケーション サーバはいずれも、そのポイント コードを共有できます。
  • Cisco ITPに機能ポイント コード(またはエイリアス ポイント コード)を割り当てることができます。Cisco ITP上にプロビジョニングされたアプリケーション サーバはいずれも、そのポイント コードを使用できます。アプリケーション サーバは、Cisco ITPのメーテッド ペアとポイント コードを共有します。
  • アプリケーション サーバには固有のポイント コードを割り当てることができます。
  • 固有のポイント コードが割り当てられたアプリケーション サーバ内にASPを1つだけ設定することにより、ASPに固有のポイント コードを割り当てることができます。
  • 複数のアプリケーション サーバで共通のポイント コードを共有できます。これは、Signaling Point Management Cluster(SPMC)と呼ばれます。


Cisco ITPは、アプリケーション サーバの状態に基づいてSS7管理メッセージを通知します。同一のポイント コードに複数のアプリケーション サーバを割り当てる場合には、特別な配慮が必要です。たとえば、2つのアプリケーション サーバで1つのポイント コードを共有し、いずれかのアプリケーション サーバのすべてのアクティブASPが非アクティブになった場合、Cisco ITPはSS7ネットワークにTransfer Prohibited(TFP;転送禁止)を通知することはできません。これは、ポイント コードを共有するもう一方のアプリケーション サーバがアクティブになっているためです。このため、ポイント コードは利用可能なままの状態となります。

ルーティング キーの割り当て

Cisco ITPでは、M3UAのルーティング キー割り当てに、DPC、OPC、およびSIの3種類を利用できます。ISUPトラフィックの場合、CICの範囲を指定できます。SCCPトラフィックの場合、Global Title Address(GTA;グローバル タイトル アドレス)を指定できます。

Cisco ITPでは、SUAのルーティング キー割り当てに、DPC、OPC、SSN、およびGTAを利用できます。

ルーティング キーのプライオリティは、最初にGTAキーとの比較によって判断され、次にプロトコル スタックの最上位レイヤでルーティング キーの最長一致によって決定されます。

グローバル タイトル アドレスのプレフィクス変換

この機能を使用すると、International Telecommunication Union(ITU)ネットワークで、E.212からE.214、およびE.212からE.164への変換をサポートできます。

  • プレフィクス変換処理は、着信ユーザ アドレスの数字だけに適用され、ルーティング インジケータがグローバル タイトルと等しい場合にのみ実行されます。
  • プレフィクスおよび変換後の数字列(最長15桁)は可変長です。
  • プレフィクス変換はGTTの前後で実施できます。
  • ITUネットワークの場合、GTAインジケータのナンバリング計画の値を変更できます。
  • 変換ルールは、定義された入力プレフィクスでの最長一致が使用されます。マッチングに成功すると、入力プレフィクスは変換後の出力プレフィクスに置き換えられます。


ネットワークのアベイラビリティと冗長性

モバイル事業者にとって、ネットワークのアベイラビリティの高さは非常に重要です。SIGTRANプロトコル(SCTP、M3UA、およびSUA)は、事業者の要求するハイ アベイラビリティを実現できるように設計されています。これらのプロトコルの主な機能には、SCTPマルチホーミング、M3UA/SUAトラフィック モード タイプ管理、およびASP管理があります。適切に設計されたネットワークでは、事業者は従来のTDM SS7ネットワークと同等またはそれ以上のアベイラビリティを実現できます。

Cisco ITP M3UA/SUAシグナリング ゲートウェイは、SIGTRAN管理メッセージを完全にサポートしています。これには、シグナリング ネットワーク管理メッセージ(DUNA、DAVA、SCON、DUPU、およびDRST)とASPステートおよびトラフィック メンテナンス メッセージ(ASPUP、ASPDN、ASPAC、ASPIA)が含まれます。

SGMP(Signaling Gateway Mate Protocol)

2つのCisco ITP M3UA/SUAシグナリング ゲートウェイをメーテッド ペアとして動作させ、Signaling Gateway Mate Protocol(SGMP)を使用して必要なステート情報を交換することができます。これらのメーテッド ペアとなっているCisco ITPは、ロードシェアリングやフェールオーバーのための相互バックアップとして使われます。Cisco ITPとASP間のアソシエーションが失われた場合、メーテッド ペアであるもう一方のCisco ITPをバックアップ用のポイント コードとして使用できます。

メーテッド ペアとして動作する2つのCisco ITPは、同一のM3UA/SUA設定(アプリケーション サーバおよびルーティング キーの定義を含む)が必要です。ただし、各Cisco ITPのローカル ポイント コードは一意でなければならず、相手側のローカル ポイント コード、機能ポイント コード、セカンダリ ポイント コード、任意のアプリケーション サーバ ポイント コード(DPC)、または任意のアプリケーション サーバ ルート ポイント コードと一致しないようにする必要があります。

Cisco ITPのメーテッド ペアの関係が有効である場合、Cisco ITPには相手側のアプリケーション サーバの状態変化がリアルタイムで通知されます。一方のアプリケーション サーバが非アクティブになり、相手側のアプリケーション サーバがアクティブである場合、後続のメッセージは相手側のアプリケーション サーバにのみルーティングされます。

非アクティブであったCisco ITP上のアプリケーション サーバがアクティブに戻ると、新しいメッセージは一時的にキューイングされ、相手側のCisco ITPから送信の途中にあるメッセージがASPに到達するのを待ちます。アプリケーション サーバ固有のタイマー(2秒間)が経過すると、キュー内のメッセージが解放されてASPに送信されます。

QoS

Quality of Service(QoS;サービス品質)とは、ネットワーク上でのパケット フローのパフォーマンスを意味します。QoSを導入することによって、ネットワーク上を、いつ、どのようなトラフィックが流れているかにかかわらず、特定のトラフィック クラスまたはトラフィック タイプについては予測可能なサービス配信を可能にします。IPネットワーク上のSS7シグナリング トラフィックにQoSを適用することはネットワーク アベイラビリティの重要な要件であり、サービスレベル アグリーメントの確保につながります。

SS7ネットワークを流れるメッセージのタイプはさまざまです。たとえば、呼制御用のISUPやShort Message Service(SMS)メッセージを送信するためのMobile Application Part(MAP)が挙げられます。QoSを設定すれば、ISUPトラフィックに最高のプライオリティを割り当て、重大なネットワーク輻輳が生じた場合でも迅速に伝送することができます。

Cisco ITPは実績あるCisco IOSテクノロジー上で動作するため、IP precedence、Differentiated Services Code Point(DSCP)、およびアクセス リストなどの多様なQoS機能を利用できます。M3UA/SUAシグナリング ゲートウェイを使用することにより、ルーティング キーに基づいてトラフィックにプライオリティを割り当てることができます。

SCTPアソシエーション

現在のRFCでは、SCTPフロー制御はアソシエーション レベルで扱われます。このため、Cisco ITPシグナリング ゲートウェイは、送信時にSCTPの多重ストリーム機能を使用しません。ただし、Cisco ITPでは、多重ストリームの受信はサポートされています。管理メッセージはすべてストリーム0で送信され、データ メッセージはすべてストリーム1で送信されます。Cisco ITPシグナリング ゲートウェイは、個別のSCTPアソシエーションを使用してQoSを実現します。

QoSクラス

Cisco ITPのQoSサービス モデルを使用すると、8つのQoSクラス(0~7)を定義できます。1つのSCTPアソシエーションに割り当て可能なQoSクラスは1つのみです。QoSクラスには、IP precedence値またはDSCPを割り当てることができます。IPヘッダーのToSフィールドは、QoSクラスに基づいてIP precedenceまたはDSCPが設定されます。

QoSクラスの選択

Cisco ITPシグナリング ゲートウェイを使用すると、アプリケーション サーバ(ルーティング キー)に基づいてQoSクラスを選択できます。SS7ネットワークからメッセージを受信すると、シグナリング ゲートウェイはアプリケーション サーバおよびASPを通常どおりに選択します。アプリケーション サーバにQoSを設定しておくと、選択されたASPを使用しているアクティブなアプリケーション サーバには、最も高いQoSクラスが設定されます。

シグナリング ゲートウェイで、複数のアプリケーション サーバをサポートしているホストへのトラフィックにプライオリティを付けるには、各アプリケーション サーバ用に個別のアソシエーションを確立する必要があります。つまり、ホストはサポートしているアプリケーション サーバごとに1つのASPを持つことになります。たとえば、ISUPおよびSCCPトラフィックをサポートしているアプリケーション ホストの場合、シグナリング ゲートウェイに対して固有のアソシエーションを確立します。その結果、シグナリング ゲートウェイに対して2つの異なるASPを持つことになり、それぞれが異なるQoSクラス値を持つ固有のアプリケーション サーバをサポートします。

管理

ネットワーク管理

Cisco ITPシグナリング ゲートウェイは、次のような各種管理アプリケーションを使用して管理できます。

Cisco Signaling Gateway Manager

Cisco Signaling Gateway Manager(SGM)は、Cisco ITPベースのルーテッド ネットワークにおける付加価値機能を管理するために設計されています。Cisco SGMはクライアント/サーバ アプリケーションであり、主に次のような機能を提供します。

  • Cisco ITPネットワーク トポロジーの自動検出と表示
  • Cisco ITPルータの定期的ポーリングと関連するリンクおよびリンク セットの状態通知
  • Cisco ITP対応ルータおよび従来のSS7機器(SSP、SCP、およびSTP)をトポロジー マップ上のノードとして表示
  • トポロジー形式および表形式でノード、リンク セット、およびリンクを表示
  • SNMP(簡易ネットワーク管理プロトコル)トラップをネイティブに受信、あるいはHP OpenView経由で受信し、正確な最新の状態を表示
  • CiscoWorksデスクトップとの統合
  • CiscoView Element ManagerおよびCiscoWorks Device Centerをトポロジー マップ上のノード アイコンから直接起動することにより、迅速な詳細分析が可能
  • ダウンロード可能なSolarisおよびWindowsクライアントをサポートすることにより、ユーザへの配布と重要情報へのアクセスが容易
  • 自動プロセス管理、デバッギング、およびカスタマイズのためのツールを使用することにより、優れたサーバ アップタイムをサポート


プロビジョニング

Cisco ITPでは、Cisco IOSベースのすべての製品で使用されている共通のテキストベースのCLI(コマンドライン インターフェイス)を使用します。Cisco SGMは、Cisco ITP専用のGUI(グラフィカル ユーザ インターフェイス)ツールで、ルート テーブルおよびグローバル タイトル テーブルの作成、編集、およびバージョン管理を行うことができます。

Cisco IP Transfer Pointに関する参考資料

  • Cisco ITP製品ファミリーの情報(データ シート、ホワイト ペーパー、コンフィギュレーション ガイド、競合製品分析、導入事例など)については、次のCisco ITPのWebページを参照してください。
    http://www.cisco.com/jp/product/hs/wireless/iptp/
  • Cisco ITPのITU、ANSI、およびTelcordia/Bellcore適合規格については、Cisco ITPのデータ シートを参照してください。
  • プラットフォーム、性能、およびキャパシティ プランニングについては、Cisco ITPのデータ シートを参照してください。


お問い合わせ