ソリューション概要





Cisco ASR 1000 シリーズ ブロードバンド アグリゲーション サービス


このドキュメントでは、より洗練されたクワッドプレイ(データ、音声、ビデオ、およびモビリティ)サービスをお客様に提供するという、サービス プロバイダーが直面する新しい課題を解決する Cisco ASR 1000 シリーズ ブロードバンド アグリゲーション サービス ソリューションの概要を説明します。このソリューションは、Cisco® の最新の革新的プラットフォーム、Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータを通じて実現されます。

Cisco ASR 1000 およびこのプラットフォームから提供されるアプリケーションは、シスコの IP Next-Generation Network(NGN; 次世代ネットワーク)ビジョンの全体像に適合します。標準ベースの次世代ネットワークおよび非標準ベースの次世代ネットワークの両方における Cisco ASR 1000 のビジョンと役割について説明します。


課題

ワイヤーラインのプロバイダーは IP NGN ソリューションを積極的に追求し、従来の定額料金サービスからより洗練されたクワッドプレイ サービスへの変換をサポートするテクノロジーの検討を続けています。さまざまなネットワーク トランスポート テクノロジー上で多様なデバイスを通じてサービスを提供するために、デバイスやトランスポートに依存しないサービスが必要とされています。サービス プロバイダーが真のアクセスの独立性を達成するためには、加入者の身元と、加入者がどのサービスへのアクセスを許されているかの理解に基づき、ネットワークの理解、可視性、および制御能力を向上する必要があります。プロバイダーはポリシーを通じてネットワークへのアクセスを動的に制御し、加入者が使用中のサービスについてリアルタイムに把握できる必要があります。このような精度の高い可視性と制御能力を得ることで、サービス プロバイダーは顧客のアクティビティに関する理解を格段に深めると同時に、差別化された新しい付加価値サービスを、より安全に、効率的に、そして収益性の高い方法で提供できるようになります。

ブロードバンド サービス プロバイダーが新規加入者数およびブロードバンド サービスによる Average Revenue per User(ARPU; ユーザ 1 人あたりの平均収入)の大幅な増加を維持するための短期的な戦略としては、バンドリング、階層化、および価格割引が引き続き効果的です。ブロードバンド サービス プロバイダーは、バンドリングにより顧客を自社の製品オファリングにつなぎとめることで、顧客離れを減らし、ARPU を最大化できます。階層化は、市場のより多くのセグメントに対応できるように帯域幅や価格オプションを拡張することで、製品の浸透および市場シェアの拡大につながります。

サービス プロバイダーが次世代の顧客エンターテイメントおよびコミュニケーション サービスにおける市場シェアを獲得しようとするならば、「バンドリング」から脱却し、エンターテイメント、コミュニケーション、Voice over IP(VoIP)、およびインターネットを組み合わせた、パーソナライズされたメディアおよび対話型 IPTV サービスを提供する必要があります。ただし、既存のネットワーク インフラストラクチャでは、これらの新規サービスの展開能力に限界があります。ネットワークが新規サービスの要件に対応するためには、何百万もの顧客に対応できる拡張性、帯域幅リソースの最大化、およびエンドツーエンドの Quality of Service(QoS)とセキュリティが必要になります。このような理由から、またその他の理由により、ブロードバンド接続、DSL、Fiber to the Home(FTTH; ファイバ トゥー ザ ホーム)、ケーブル、および無線上でこれらの新規サービスを展開するうえで、ネットワーク インテリジェンスは必要不可欠なものです。


ソリューション

シスコはこの課題を解決するため、アーキテクチャ、テクノロジー、および製品を包括した Cisco IP NGN ビジョンを開発しました。ブロードバンド サービス プロバイダーは、ほとんど暗黙の了解に基づき、IP こそが次世代ネットワークを実現する基盤テクノロジーであると判断しています。Cisco IP NGN は、ビジネスおよび加入者の要求に合わせてテクノロジーおよびネットワーク リソースを調整することで、サービス プロバイダーのネットワーク全体の大きな転換と同時に、この新しい IP 環境の利点を存分に享受できるように、ビジネスの大きな転換を実現します。サービス プロバイダーはインテリジェント IP に基づくシスコのネットワーキング ソリューションの能力を活用して、従来のサービスをサポートしながら、管理可能で制御可能、そしてより多機能な新しいプレミアム サービスを将来にわたり実現できるように拡張可能な、持続的で経済的な優れたインフラストラクチャを構築できます。


Cisco IP NGN の概要

シスコは、サービス プロバイダーが直面する課題を解決するため、データ、音声、およびビデオの統合オファリングとして、Cisco IP NGN と呼ばれる統合ネットワーク アーキテクチャを開発しました。このアーキテクチャには、真のモビリティ、十分な帯域、ネットワーク管理の容易さ、およびセキュリティを含めて、サービス プロバイダーおよびサービス プロバイダーのお客様のネットワークで最も必要とされているすべての機能が組み込まれています。また、同じく重要なことに、IP NGN は、組み込みのインテリジェンス スループットにより、今後何十年にもわたりビジネスの基盤として機能できるだけの十分なサービス認識力、柔軟性、適応性、および拡張性を備えています。

この基盤を実現するにはサービス プロバイダー ネットワークの「統合」が必要であるとシスコは考えています。これは、漠然とした意味ではなく、アプリケーションの統合、サービスの統合、およびネットワークの統合という、個々の分野ごとの統合を意味します。最後に、これら 3 つの統合レイヤのそれぞれがインテリジェントに協調動作することで、エンドユーザおよびプロバイダーの両者にとっての利益が生まれます。

Cisco IP NGN アーキテクチャは、世界中のお客様、標準化機関、およびテクノロジー パートナーとの緊密な協力関係を通じて開発されました。この結果として、すべてのレイヤにわたり、多数の新しい IP テクノロジーやプロセス、革新的なマルチサービス ソリューション、統合戦略、および組み込みのインテリジェンスとセキュリティが実現されました。

図 1 Cisco IP NGN アーキテクチャ

図 1 Cisco IP NGN アーキテクチャ
※ 画像をクリックすると、大きく表示されます。popup_icon

図 1 に示すように、IP NGN の中核には、サービス プロバイダーが今日すでに統合を進めている 3 つの基本的な分野があります。

  • アプリケーションの統合:お客様が複数の機能を備えた装置(有線サブネットと無線サブネットの切り替えが可能な電話機など)の採用を進めるにつれて、サービス プロバイダーも、その装置に対する単一のサービスの提供という制約から解放されます。今では、ビデオ電話会議、ピアツーピアのゲーム、およびその他の統合アプリケーションなど、音声、ビデオ、およびデータの各エレメントとモビリティを組み合わせた新しいサービスの提供が可能となっています。これらの新規サービスは巨大な収益機会を秘めていますが、同時に、より高いスケーラビリティ、アベイラビリティ、アプリケーションや加入者の認識能力、および変化する要件に迅速かつ費用有効な方法で対応するための適応性が必要とされています。
  • サービスの統合:デジタル時代においては、お客様がどこにいたとしても、1 つの統合ネットワークから、さまざまな装置を通じて、複数のサービスを提供できる必要があります。Cisco IP NGN は、Cisco Service Exchange Framework(SEF)を通じて、サービス コントロール レイヤにおけるデータ、音声、ビデオ、およびモバイルの統合サービスの展開を可能にします。シスコは、加入者の多次元アイデンティティの維持、ポリシーとセッションの管理、および品質とサービス クラスの管理を行う統合プラットフォームを通じて、これらの多様なサービスの制御を可能にします。Cisco SEF は、一括請求書やコンテンツのフィルタリングなど、個々の加入者の要求に対応して、またはより広範囲の定義済みサービス オファリングに対応して、サービスを管理、拡張、およびカスタマイズするための豊富な制御機能を提供します。Cisco SEF は、アプリケーション展開に制限を加えることなく、お客様によるサービスへのアクセスとサービスの使用を制御します。また、侵入防御、ペアレンタル コントロール、および Distributed-Denial-of-Service(DDoS)保護などの新しいタイプの消費者およびビジネス サービスを既存サービス上にレイヤし、これらのサービスを、使用回数制、前払い、または使い放題などの新しいパッケージ方法で提供できます。
  • ネットワークの統合:ネットワーク レイヤにおける統合は、固定またはモバイル、ATM、フレームリレー、時分割多重(TDM)、または IP などのあらゆる個別ネットワークを、古い IP データだけでなく音声やビデオなどの新しいサービス(QoS や高度なセキュリティなどの特殊な機能を必要とする)をサポートできるだけの柔軟性を備えた、単一の IP Multiprotocol Label Switching(IP/MPLS)プラットフォーム上に統合します。統合ネットワークのもう 1 つの重要な利点は、運用コストと導入コストの削減です。単一の統合ネットワークでは、複数ネットワークを維持する場合に比べて、特に長期的に見た場合、構築、管理、および保守の費用が減少します。

売上の増大、競合上の優位性の確立、および顧客の忠誠心の強化につながるより多くのサービスが求められている中で、Cisco IP NGN アーキテクチャのサービス コントロール レイヤである Cisco SEF は、IP Multimedia Subsystem(IMS; IP マルチメディア サブシステム)および非 IMS アプリケーションの両方をサポートしています。このアプローチは、データ、音声、ビデオ、およびモビリティを統合した幅広いポートフォリオをお客様に迅速に展開できるように、最大限の柔軟性を提供します。


IP NGN における Cisco ASR 1000 の役割

Cisco ASR 1000 は、Cisco IP NGN ビジョンのセキュア ネットワーク レイヤにおいて、アクセスおよび集約ネットワークのレイヤ 2 およびレイヤ 3 の終端として重要な役割を担います。ここでは、新しい革新的なモジュラ Cisco IOS® XE オペレーティング システムによって、ブロードバンド加入者にとってのサービス アウェアネス、サービスの有効化、およびサービスの統合が実現されます。

Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、次世代のハードウェアおよびソフトウェアを通じて、高性能、スケーラブル、多機能、そしてキャリアクラスの強力な機能を実現します。Cisco ASR 1000 シリーズ製品ラインにより、シスコの次世代のミッドレンジ ハードウェアおよびソフトウェア プラットフォームが構築されます。これらのルータでは、業界のテクノロジー基準を一新するシスコの新しい革新を採用することで、パフォーマンスと復元力が飛躍的に向上しています。

Cisco ASR 1000 シリーズ ブロードバンド アグリゲーション サービス ソリューションは、エッジ ネットワークを統合して集約ネットワークを簡素化します。このソリューションにより以下のことが可能になります。

  • 安全で使用しやすいアプリケーションの提供
    • VoIP およびビデオを含む VoIP
    • ビデオ オンデマンド(VoD)やテレビ放送などのビデオ デリバリ サービス
    • 次世代インターネット
  • これらのアプリケーションの円滑なロールアウト
    • ネットワーク パラダイムの変更により、水平のネットワーク接続と、(サービス プロバイダーのポリシー、管理、およびアプリケーション レイヤとサービス エッジを直接にリンクする)標準に基づく垂直インターフェイスの両方を提供します。
    • 汎用インフラストラクチャに基づくネットワーク機能の協調動作を通じて顧客に安全でオープンなアプリケーションを提供するためのネットワークの使用例を整理して提供します。

サービス エッジを統合サービス ソリューションに組み込んだことは、サービス エッジ上ですべてのサービスを使用可能にする必要があることを意味します。これは、H.248 および RADIUS などのサービス制御インフラストラクチャ全体が必要であり、このために特別の注意を払う必要があることを意味します。

統合サービス アプローチの 1 つの差別化要因として、ビデオやその他の典型的なインターネット サービス プロバイダー(ISP)アクセスに加えて、Session Initiation Protocol(SIP)ベースの VoIP など、セッション ベースの対話型サービスの提供に重点が置かれていることがあります。さらに、音声サービスに必要な制御インターフェイスは、Cisco Intelligent Service Gateway および VoD などのその他のアプリケーションでも使用されます。アプリケーションはサービス エクスチェンジ レイヤを通じてネットワーク リソースおよびステータスを要求し、サービス エクスチェンジ レイヤは必要な移動、追加、または変更を行うようにセキュア ネットワーク レイヤに指示します。統合サービス モデルの目標は、ネットワーク内の同じサービス ノード内で複数のサービスを組み合わせ、すべての加入者アクセスに使用される単一のサービス エッジを提供することです。Cisco ASR 1000 シリーズは、この統合サービス モデルをターゲット ソリューションとして設計および開発されています。


分散アーキテクチャにおける統合サービス ソリューション

ネットワークの設計では、加入者のアクセスのできるだけ近くにネットワークのレイヤ 2/レイヤ 3 エッジを配置するという決定がしばしば行われます。このような形態のアクセスや集約ネットワークにおけるシスコの経験によれば、サービスを迅速に実現すると同時に、顧客へのサービス デリバリの範囲を最小化および区分化する必要がある場合に、このようなモデルが選択される傾向が見られます。つまり、新規テクノロジーを他に先駆けて使用したいと希望しながらも、複製と管理の容易なアーキテクチャを求めているのです。このようなネットワークにおいては、ネットワーク運用の容易さという利点の前に、ネットワークの拡張性に関する漠然とした懸念は忘れられがちです。また、あらゆるネットワークについて言えることは、今日提供されているサービスは、将来のネットワークにおいても必要なものであるということです。つまり、音声やビデオなどの NGN サービスへの変換の際には常に、既存の顧客ベースを設計に組み込む必要があるのです。

集中化した集約モデルにおいては、サービスごとに、ネットワーク内の個々のサービスを担当する、中央の専用ネットワーク サーバのセットへのアクセスを提供することに重点が置かれています。集約ネットワークでは、加入者トラフィックを非常に信頼性が高くスケーラブルな方法で集約デバイス(DSL Forum の TR-101 に定義された Broadband Network Gateway(BNG))およびネットワーク内で稼動するネットワーク サービスに戻す(バックホールする)ために、Virtual Private LAN Services(VPLS)、IEEE 802.1Q(QinQ)、IP、レイヤ 2 VPN(L2VPN)Pseudowire(疑似回線)、MPLS VPN、および MPLS Traffic Engineering(MPLS-TE)など、多数の複雑なレイヤ 2 およびレイヤ 3 テクノロジーが使用されます。このようなアーキテクチャにより、家庭向けおよびビジネス向けのネットワーク サービスに最大限の柔軟性を提供できます。

ネイバーフッドなどの非常にローカルなレベルでサービス アクセスが決定されるようなローカル モデルとして、分散統合サービス ソリューションを検討することもできます。サービス インテリジェンスは加入者の近くで提供されるため、ここでは統合アプローチを使用するのが妥当です。

図 2 Cisco ASR 1000 シリーズ ブロードバンド統合サービス ソリューション

図 2 Cisco ASR 1000 シリーズ ブロードバンド統合サービス ソリューション
※ 画像をクリックすると、大きく表示されます。popup_icon

Cisco ASR 1000 を加入者の近くに配置することにより、プロビジョニングの観点からも、サービス エッジの運用が簡素化されます。


ソリューションの利点

このソリューションの利点は次のとおりです。

  • ネットワーク内に明確なサービス提供の定義点を作成します。
  • ネットワークの共通の場所で発生する問題の影響を緩和します。
  • ネイバーフッド レベルに至るまでローカル コンテンツを微調整できます。
  • キャリアによって物理的な分散プラントへの投資がすでに行われている分散アクセス ネットワークに適しています。
    • また、このソリューションは、地方や小さな町など、さまざまな地域で効果的に使用できます。大規模な高密度集中アプローチを単純に当てはめるよりも妥当なアプローチです。
  • 集約ネットワークを大幅に簡素化することで、ネットワーク自体ではなく、VoIP などのアプリケーションに努力を集中できます。

Cisco ASR 1000 シリーズ ブロードバンド統合サービス ソリューションの展開シナリオ

Cisco ASR 1000 シリーズ統合サービス モデルは大手サービス プロバイダーですでに採用されています。このソリューションは、音声とビデオを同じサービス エッジ デバイスに統合して、同じ光ファイバ接続で家庭に届けられるように、安全で信頼できるネットワーク プラットフォームを提供します。

目標は、消費者が容易かつ安全に使用できる音声および対話型サービスを提供することです。これには次のサービスが含まれます。

  • VoIP およびビデオを含む VoIP
  • VoD およびテレビ放送などのビデオ デリバリ サービス
  • 次世代インターネット

VoIP、ビデオ ストリーミング、インスタント メッセージング、およびゲームは、競争熾烈な現在のコミュニケーション市場で急成長を示しているリアルタイムの IP ベース アプリケーションのほんの数例にすぎません。サービス プロバイダーは Cisco ASR 1000 シリーズ Session Border Controller を使用して、音声、ビデオ、およびマルチメディア ベースの IP ネットワークを相互接続し、これらのリアルタイム アプリケーションの IP ベースのトランスポートをエンドツーエンドで有効化できます。Cisco ASR 1000 シリーズ SBC は、強力で柔軟な Cisco ASR 1000 シリーズ プラットフォームから提供される連続運用とサービス集約に基づいて構築され、アプリケーション固有の追加ハードウェアを必要とすることなく、セキュリティ、先進的な階層型 QoS、IP マルチキャストなど、その他のレイヤ 2 およびレイヤ 3 サービスと完全に統合されています。このような統合により、Cisco ASR 1000 シリーズ SBC は、オーバーレイ ネットワークおよびスタンドアロン アプライアンスを必要とせずに、ピアリングまたは顧客アクセスなど、サービス プロバイダーのあらゆる展開に対応した、オープンで柔軟なアーキテクチャを提供します。Cisco ASR 1000 シリーズ SBC は、IMS および非 IMS サービスをサポートする Cisco SEF の重要なエレメントとして、ネットワークの統合を加速し、投資を保護します。

SBC 機能の統合に加えて、新しい QoS 機能により、ベストエフォート帯域幅へのアクセス可能性が向上するため、加入者は現在よりも多くの共有ファイバ帯域幅を使用できます。たとえば、200 Mbps が使用可能であり、他の加入者がサービスを使用していない場合、アクティブな加入者は、この使用可能な帯域幅のすべてを使用できることになります。また、キャリアは、より高い料金を支払った加入者に混雑時により多くのベストエフォート帯域幅を提供できるように、加入者ごとに使用可能帯域幅へのアクセスを区別することもできます。

2 番目の革新として、キャリアは、インターネットおよびベストエフォート サービスのすべての利用者に対して共通の上限を設定できます。キャリアは、ベストエフォート インターネット サービスに使用可能な帯域幅として一定量(おそらくは現在使用可能であるよりも多く)を設定できます。このシナリオは、航空機のエコノミークラスの座席に例えることができます。座席が空いていれば、乗客はいくつでも座席を使用できますが、ビジネスクラスに空席があっても、その席を使用することはできません。このように、サービス プロバイダーは、音声やビデオなどの高優先度サービスとインターネット アクセスなどのベストエフォート サービスの間に明確な境界を設定できます。

Cisco ASR 1000 シリーズのサービス モデルでは、図 3 に示すように、ネットワークのコンテンツはユニキャストまたはマルチキャスト IP パケットの形式で配信されます。

図 3 Cisco ASR 1000 シリーズの家庭における使用例

図 3 Cisco ASR 1000 シリーズの家庭における使用例
※ 画像をクリックすると、大きく表示されます。popup_icon

このネットワーク モデルでは、DSL Forum の Technical Report TR-101 サービス マッピングに示された 1 対 1 の VLAN モデルと同じセットアップに従い、すべての加入者が、サービス エッジ上のそれぞれの VLAN 上で終端しています。1 対 1 サービスにおいては、すべての加入者に VLAN が割り当てられ、すべてのサービスはこの VLAN を通じて提供されます。

各加入者のすべてのサービスは 1 つの汎用 VLAN を通じて処理されるため(QinQ および Cisco EtherChannel® テクノロジーの両方のサービスが可能)、このネットワーク モデルには多くの利点があります。

  • 音声およびビデオ アプリケーションの場合、すべての加入者のすべてのサービスを対象にサービス エッジで階層的 QoS を実行する能力は不可欠です。音声およびビデオの遅延を最小化し、ベストエフォート データ サービスと比べて高い優先順位を維持できるように、加入者のトラフィックの優先順位付けが必要です。
  • マルチキャストの配布は、サービス エッジですべての IP マルチキャスト フォワーディングを処理できるように最適化されていますが、ダウンストリーム集約または DSL Access Multiplexer(DSLAM)が IP マルチキャストをサポートしていれば、さらに配布を促進できます。
  • サービス エッジは、コントロール プレーンのアクセスをフロー単位で管理できます。このネットワーク モデルの場合、サービス エッジは音声制御に使用される SIP などのサーバへのアクセスを許可できます。また、VoD の制御のための SIP の使用も許可できます。さらに、サービス エッジは各加入者の VoD フローごとに個別のピンホールも提供できます。言い換えるならば、SIP 対応のビデオ アプリケーションでも、音声アプリケーションで使用可能なものと同じ課金および Call Detail Records(CDR; 呼詳細レコード)を使用できます。

もう 1 つの興味深い分野として、これらの NGN サービス提供のラストマイルに必要なアクセス テクノロジーを挙げることができます。初期の集約レイヤが、VLAN または QinQ VLAN などの比較的単純な集約スキームであることが重要です。サービス エッジは加入者の非常に近くに実装されているため、このセットアップにおけるスケーラビリティは大きな問題とはならないはずです。


標準に基づく次世代ネットワークと Cisco ASR 1000 のコンプライアンス

分散統合サービス ソリューションにおいては、ネットワーク エッジでのプロトコルの使用可能性および加入者サイトに展開されているすべてのサービスとの対話能力が重視されます。必要とされるプロトコル インタラクションには、アドレス管理、マルチキャスト アクセス プロトコル、認証および許可スキーム、セキュリティ適用や QoS およびアドレス変換などのボーダー ゲートウェイ機能、そして SBC などの多様な機能が含まれます。これらのプロトコルの使用例およびインタラクションは非常に複雑であり、加入者ごとに異なります。あらゆる NGN の目標達成のうえで、Cisco ASR 1000 などのエッジ デバイスに設定されたベースライン機能は、これらのプロトコルによって形成されます。

サービス エッジにおいて、より基本的な IP サービスの提供に使用されている典型的な水平型アプローチの代わりに、なんらかの形式の垂直方向のアプローチを採用する必要があることは明白です。先に説明したような複雑性により、サービス プロバイダーにとって、サービス エッジだけでなく、次世代ネットワーク全体にわたり、標準に基づくアプローチを使用することは、ほとんど必須条件となってきました。ETSI Telecoms、Internet Converged Services and Protocols for Advanced Networks and Next-Generation Network(TISPAN)および ITU など、ほとんどの標準化機関は、特に NGN に焦点を絞っています。サービス エッジでこれらのモデルを遵守することで、信用力を増し、実際の NGN の展開時に発生する複雑性を緩和できる可能性があります。

図 4 TISPAN モデルにおけるサービス エッジの機能およびインターフェイス

図 4 TISPAN モデルにおけるサービス エッジの機能およびインターフェイス
※ 画像をクリックすると、大きく表示されます。popup_icon

Cisco ASR 1000 シリーズは、青の点線で示したボックス内のすべての機能を実装し、TISPAN モデルを明確に踏襲しています。

  • Layer 2 Termination Function(L2TF):レイヤ 2 終端点は、IP の観点から加入者が認識される点であり、サービスが最初に制御される点です。また、ルーティングの開始点でもあります。ネットワーク内のサービスまでデータをトンネルする代わりに、音声、ビデオ、またはデータなどの種類に関係なく、IP パケットが転送されます。
  • Access Management Function(AMF):この機能は、該当するサーバ上でアクセス要求、IP アドレスなどを転送します。
  • Resource Control Enforcement Function/Access Border Gateway Function(RCEF/A-BGF):A-BGF のサブセットである RCEF は、ゲーティング、セッション単位の QoS などの機能を定義します。また、A-BGF は、特定の加入者フロー(特に音声)について Network Address Translation(NAT; ネットワーク アドレス変換)およびアカウンティングなどの先進機能を定義します。

ソリューションのサポートおよびパートナー

シスコのパートナーは、計画、展開、そして継続的な保守に至るまで、ソリューション全体の管理に習熟しています。シスコは、認定リセラーのグローバル ネットワークに加えて、Cisco CCIE® プロフェッショナルおよび Cisco Technical Assistance Center(TAC; テクニカル アシスタンス センター)を通じて幅広いデザインおよびサポートを提供し、その有線および無線ネットワーク テクノロジーによる音声、ビデオ、およびデータ通信の技能は、業界でも高く評価されています。


シスコが選ばれる理由

シスコはネットワーク テクノロジーにおける世界的リーダーとして、20 年間にわたり、世界中のあらゆる規模のお客様をサポートしてきました。業界の揺るぎないリーダーとの共同作業を通じて、お客様は以下の利益を享受できます。

  • 大規模ネットワークの構築における 20 年以上の経験
  • 実証済みのパフォーマンス、信頼性、セキュリティ
  • 顧客固有の要件を理解できる多数のテクニカル エキスパートとエンジニア
  • お客様の投資の有効活用およびネットワークの資産価値の持続を可能にする顧客サポート サービス
  • 最重要の多数のサービスを含めて、最もスケーラブルで利益率の高い次世代ネットワークの構築を可能にする、研究開発への継続的な投資
  • 標準に基づくアップグレード可能なソリューションによる価値の維持
  • ネットワークへの新規テクノロジーの統合を可能にするフェーズ別アプローチ

結論

Cisco ASR 1000 シリーズ ブロードバンド統合サービス ソリューションは、固定ワイヤーライン セグメントにおいて標準に基づく NGN を実現する卓越したメカニズムです。ローカルな場所でブロードバンド利用者に豊富な機能を提供し、特にサービス エッジのプロビジョニングおよび管理において、独自の有効性を提供します。ここでは、今日のモバイル ネットワークで使用可能な対話型サービスが中心となります。

サービス プロバイダーは Cisco ASR 1000 シリーズ ブロードバンド統合サービス ソリューションを使用し、従来の定額料金サービスからより洗練されたクワッドプレイ サービスへの変換をサポートするテクノロジーを活用して、次世代ネットワークを構築できます。

サービス プロバイダーは Cisco ASR 1000 シリーズ ブロードバンド統合サービス ソリューションを使用することで、ブロードバンド サービスの新規加入者の増加と ARPU の増大を高いレベルで維持できます。


追加情報

Cisco ASR 1000 シリーズ製品の詳細については、http://www.cisco.com/jp/go/asr1000/ をご覧ください。

Cisco IP NGN ビジョンの詳細については、http://www.cisco.com/web/JP/solution/isp/ipngn.html をご覧ください。

Cisco Service Exchange Framework の詳細については http://www.cisco.com/web/JP/solution/isp/ipngn/service_convergence.html をご覧ください。