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スマート ビルディングでエネルギー消費を賢く削減

〜インターネット技術を使って建物の環境制御システムを統合し、
大幅な効率向上が可能になったにもかかわらず、
新しいシステムへの投資に消極的な不動産業界〜



* 当資料は、米国で発表されたニュースリリースの抄訳です。

2008年7月21日

チャールズ・ウォルトナー

スマート ビルディング技術は、建物の所有者や店子の経費節約になるだけでなく、地球の環境を守る上でも大きな役割を果たしています。

IPベースのネットワークにより、新しいデジタル技術は、建物の効率化――特に、エネルギー消費の削減に大きく貢献しようとしています。

スマート ビルディングという考え方は数十年前からあるにもかかわらず、基準となる通信インフラが確立されていないことが取り組みの障害になってきたと話すのは、シスコのコネクテッド リアル エステート グループの責任者を務めるマーク・ゴーランです。それが今では、IP(インターネット プロトコル)ネットワークが、建物のさまざまな自動化タスクを統合する基盤としての役割を果たすようになりました。「これらのシステムを共有のワイヤレス ネットワークに集約することが求められるようになってきたのです」と、ゴーランは述べています。

レンガやモルタルに頭脳を持たせるというと、やはり途方もないことのように聞こえるかもしれませんが、業界の専門家によれば、今日のテクノロジーは、この種のインテリジェンスを建物に持たせられるだけの能力が以前に比べてあるのだといいます。「スマート ダスト」と呼ばれるマイクロセンサーやワイヤレス メッシュ通信などの分野が進歩を遂げたことで、IPネットワークは、建物の効率性を高める最先端のシステムと接続できるようになりました。

このような可能性を秘めながらも、スマート ビルディングは多くの人々にとって未だ謎に包まれた存在であり、この素晴しいシステムの費用を負担する側である不動産の開発会社や所有者も例外ではありません。不動産業界の現状は厳しく、開発会社は、初期投資はもちろん、定評の高いテクノロジーや建築手法以外への投資に対して非常に敏感になっています。

また、インターネット技術によって、さまざまな要素を統合することができるようになってきたとはいえ、建物内のすべてのシステムを統合するのは簡単なことではありません。市場は未だ細分化されており、さまざまな機能を網羅しながら、むずかしい初期設定の必要のないソリューションというのは、まだ手に入りません。そのため、不動産業界や建設業界ではスマート ビルディングの導入が進まないのだと、業界の専門家は指摘しています。

「製品やサービスの準備は整いました。問題なのは、それをいかに皆さんに利用していただくかということです。ほとんどの企業がインテリジェント ビルディングへの移行を進めていますから、要は、スピードの問題だといえるでしょう」と、Continental Automated Buildings Association(CABA)の広報担当者であるロールソン・オニール・キング氏は述べています(シスコはCABAの理事会のメンバーでもあります)。

統合=効率化
ショッピングモールや住宅から、病院や高層ビルにいたるまで、スマート ビルディングは、ほぼあらゆる構造の建物に導入することができ、共通点として、建物の内部で何が起こっているかを「知る」能力とそれに対応できる能力を備えているのが特徴です。スマート ビルディングは、暖房や空調、照明といった環境変数をモニターして調整するために使用される、いわゆるビルディング オートメーション システムを制御することができます。また、セキュリティや消火、エレベーターの運転といった建物の他の機能も監視することが可能です。

スマート ビルディング技術は、さまざまな機能を統合するだけでなく、さらにきめ細かい監視や検出を行うための「認識機能」を建物に持たせることを狙いとしています。通常、冷暖房設備は、フロア全体で1台のサーモスタット(自動温度調節器)しか備えていませんが、新しいスマート ビルディング ネットワークでは、建物内部の状態を低コストできめ細かく監視することができるため、建物の環境システムは、いつでもどこでも必要に応じて、適度な暖房や空調、冷房を提供することができます。

また、スマート ビルディングにはさまざまなセンサー機能が統合されているため、室内に入ってくる日光の量などをモニターし、それに応じて屋内の照明を調節するといったことも可能です。さらに、最先端のスマート ビルディング技術では、(セキュリティ システムに差し込まれたキーを読み取ることで)勤務時間後の来訪者を確認したり、特定の照明や機器、環境制御機能を作動させることもできるようになっています。

さまざまな機能を統合することが、スマート ビルディングがもたらすメリットのカギを握っているのだと、キング氏はいいます。「すべてのシステムが相互に対話できるようになれば、効率も向上するのです」

このようなインテリジェンスや連動機能を持たせることで、最終的に、商用施設のオペレーション費用を大幅に削減することができます。業界の調査によれば、このような間接費は、建物が一生を終えるまで(建設中を含む)にかかるコストの80パーセントにもなる場合があるといいます。そうした費用の大半を占めるのが、エネルギーの使用料です。

暖房・換気・空調(HVAC)システムは、それぞれが独立して稼動するのが通例だったと話すのは、テキサス州ジョージタウン在住のビルディング システム コンサルタント、トム・ハートマン氏です。ハートマン氏によれば、従来の環境制御システムは、建物の電力の50パーセントを無駄に消費しているといいます。このような非効率が起きているのは、オフィスビルの冷水器や温水器といった設備のそれぞれが、ひとつの変数しか測定できない制御装置ひとつに頼っていることが主な原因です。

システムを統合して、さまざまなセンサーから情報を得ることができるようにすれば、いわゆる「Equal Marginal Performance Principle(均等限界性能原理)」に基づく新しい制御戦略によって、あらゆる環境装置がはるかに効率よく運用できるようになる、とハートマン氏はいいます。「建物のあらゆる設備を連動させる必要があります。決してむずかしいことではありませんが、設計にちょっとした工夫が必要なのは確かです」

こうした進歩は、建物の所有者だけでなく、世界のエネルギー消費や地球環境対策にとっても大きな意味があります。例えば、米国エネルギー省によれば、米国内の年間二酸化炭素排出量の39パーセント、電力消費量の70パーセントを商用施設と住宅が占めているといいます。また、米国グリーン建築評議会によると、商用施設から排出される二酸化炭素の量は、今後25年間で、米国経済の他のどの分野よりも急速に増加することが予想されます。

スマート ビルディングには大きな可能性が秘められているにもかかわらず、不動産開発業界や建設業界がスマート ビルディングの導入に消極的なのは、こうした技術に実績がないからだと、ハートマン氏は指摘しています。「要はリスクの問題です。何か新しいものに挑戦しようとすれば、リスクは必ずついてきます」

効果を見せはじめた早期の取り組み
ところが、スマート ビルディングへの信頼を大きく深めている開発業者も現れるようになり、そうした業者の経験によって、新しいテクノロジーが単なるSF物語ではないということが証明されつつあります。南フロリダ州に新たに建設されたカトリック系のアベマリア大学では、構内の照明や冷房をはじめ、入館管理や防火、テレビ、電話、コンピュータ システムにいたるまで、あらゆる機能をひとつのIPネットワークに統合しました。同大学のシステムおよびエンジニアリング担当バイスプレジデント、ブライアン・メハフェイ氏の試算によれば、無駄な配線をなくしただけで、建築費用を100万ドル以上も節約できたといいます。

さらに重要なのは、建物の通信インフラを統合することで、持続的なメリットが生まれつつあるということです。メハフェイ氏によれば、オペレーション ネットワークを統合することで、900エーカーの敷地内にある建物すべての空調や暖房、照明システムをより正確に監視・制御することができるようになったため、年間の電力コストを約600,000ドル節約できるようになったのだといいます。また、スマート ビルディング ネットワークによって、オペレーションを一本化し、一元管理できるようになったため、人材配置の合理化が可能となり、年間のコストをさらに350,000ドル節約できるようになりました。

しかし、スマート ビルディング技術は、新築の建物の効率向上にだけ有効なのではありません。キング氏は、既存の建物にも大きなチャンスがあるといいます。「研究によって、築30年の建物でも、統合型の環境システムを導入すれば、大きな効果を得られるということがわかっています」

のような不動産所有者は、建物の管理を効率的に行えるようになりました。不動産投資信託会社であるBoston Propertiesの最高情報責任者、ジム・ワーレン氏によれば、最先端のシスコ ネットワークのおかげで、大都市ボストン市場の同社オフィスビル40軒以上を一元管理できるようになったといいます。

システムには、暖房や換気、空調からセキュリティにいたるまで、各種設備のアラート機能や制御機能が統合されています。「建物の中で何が起こっているのかを24時間365日監視できるようになりました」と、ワーレン氏は話します。集中監視機能を導入したことで、オペレーション管理や人材配置を効率化できたため、経費の節約が可能になったのです。

ワーレン氏によれば、IPネットワーキング技術の進歩によって、スマート ビルディングはより実際的なものになったといいます。例えば、新しいネットワークであれば、異なる種類のトラフィックを安全に分離することができます。Boston Propertiesの場合を例にとってみると、同社の会計・財務システムは、建物のオペレーションのために収集される環境情報から安全に切り離すことが可能です。

建物毎に異なるさまざまなオペレーションシステムに接続することは比較的簡単だと、ワーレン氏はいいます。ビルディング オートメーションや環境制御システムを販売する多くのベンダーは、未だ独自開発のプロトコルをベースに製品を開発していますが、そのほとんどが、IPネットワークとの通信を変換する「ゲートウェイ」を提供するようになったからです。「ベンダーがこうした新しいツールを提供するようになったのは、ごく自然の成りゆきだと思います」と、ワーレン氏は話します。

Boston Propertiesは、この2年の間に、エネルギーの使用量をほぼリアルタイムで測定できる新しい電気計器を導入しました。さまざまな拠点の建物同士を結ぶためにワイヤレス インフラストラクチャが使用されていますが、ワーレン氏は、建物のさまざまな機能をより詳細に把握するために、副計器やセンサーを稼動させる屋内向けのワイヤレス システムを導入することを検討しています。

ビルディング オートメーション市場は細分化されており、さまざまなベンダーがしのぎを削っていますが、ワーレン氏は、インテグレーションにもっと多くの選択肢があればと考えています。建物の環境情報やセキュリティ情報を一元管理することはできるようになったものの、建物によって異なるシステムを利用しているので、スタッフは、6〜7台のスクリーンをモニターする必要があるからです。とはいえ、ビルディング オートメーション技術の大手ベンダーが新世代の製品開発に着手していることもあり、今後、ベンダーの異なるシステム間の相互運用性がさらに高まるのではないかと、ワーレン氏は期待を寄せています。「市場は今、面白い時期にきているといえるでしょう」

スマート ビルディングは、ちょうど一般に普及しはじめところだと、CABAのキング氏は考えています。キング氏によれば、環境や地球温暖化の問題によって、省エネに新たな関心が集まってきているのだといいます。環境にやさしい建築技術を評価するための体系的な手法――特に、米国グリーン建築評議会が提唱するグリーン建築認証プログラム「LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)」が開発されたことは、米国の建設業者や不動産開発会社にとって、テクノロジーを導入する大きな動機づけとなるでしょう。

また、開発会社に統合型のビルディング システムに投資させる大きな原動力となるのは世論や政府の政策だと、ハートマン氏はいいます。建築基準法によって、建設業者は耐震や耐ハリケーン性強化のためのさらなる対策を講じることが求めてられていますが、それと同じように、政府の指導によって、省エネのためにスマート ビルディングの導入を促すことができます。

しかるべき社会政策や業界イニシアティブが進められれば、スマート ビルディングは、空室時に自動的に照明を切る以上のことができるようになるかもしれません。スマート ビルディングは、気候変動の流れを変える重要なカギとなる可能性を秘めているのです。

チャールズ・ウォルトナー:米カリフォルニア州ピードモントを拠点に活動するフリーライター

*当資料は、米国で発表されたニュースリリースの抄訳です。米国で発表されたニュースリリースの内容は以下のWebサイトをご参照ください。
<http://newsroom.cisco.com/dlls/2008/ts_072108.html >

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