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シスコ、41 カ国による国際的相互運用性確保のための軍事演習に主要インフラストラクチャを提供

2006 年 5 月 17 日

ジェイソン・デイン(Jason Deign、News@Cisco)

「Combined Endeavor」と銘打たれた本演習は、今月、独フランクフルト近郊のラーゲル アーレンバッハおよびボスニアの前進作戦拠点「イーグルべース」で実施されており、41 カ国の軍隊がシスコ機器をベースに相互運用性の確保に向けた演習を繰り広げています。

米欧州軍(EUCOM)では、ドイツ国防省の協力のもと、通信・情報システムの相互運用性確保に向けた本演習を 1995 年から毎年開催してきました。

Combined Endeavor は、当初、オーストリア、ブルガリア、チェコ共和国、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア共和国、スロベニア、およびアメリカが相互に通信しあうための軍用交換機の確保を目的に、10 日間のワークショップとして始まりました。

以来、年々規模を広げ、現在ではこの種の軍事演習としては世界最大のものとなっています。

今年は、NATOや、平和のためのパートナーシップ協定(PfP)加盟国、非同盟国、戦略的同盟国を含む、合計 41 カ国が参加しています。演習は、ラーゲル アーレンバッハとイーグルベースでの 2 週間の実用テストをはじめ、2 カ月間にわたり行われる予定です。

以下のトライアルを含む 1000 回以上のテストが実施されます。

  • 高周波伝送システム、デジタル/アナログ スイッチボード、情報システム、情報保証、WAN、LAN
  • ビデオ会議機能: VoIP(Voice over IP)
  • 情報保証認定
  • IP 連携バックボーン: 衛星通信
  • ネットワーク対戦シミュレーション
  • 高保証の IP 情報標準
  • PMR(Private Mobile Radio)
  • 指揮統制システムの一般作戦画像、多国間情報共有、ドキュメント プロシージャ、運用デモンストレーション

Combined Endeavor の持つ本質的な意味合いは時と共に進化を遂げ、現在では、人道支援、軍事活動、平和維持、および災害救助といった複合的な活動を支援すると同時に、EUCOM の変革をサポートする演習であると見られています。

また、その目的もより広範なものへと変わってきています。同盟国による多国籍型の作戦を可能にする一定水準の相互通信性と互換性を確保すべく、指揮、統制、通信、およびコンピュータに関する各テストを実施する、というのが Combined Endeavor の現在の開催目的です。

シスコでは、テストで得られた情報を記録・転送し、テスト結果の分析を支援する管理用 LAN として、Cisco 3845 統合型サービス ルータなどのプラットフォームをベースとしたインフラストラクチャを提供しています。

このインフラは、デンマークとイタリアの軍隊が提供する軍事バックボーンと、 Combined Endeavor 演習期間中にテストされるデバイスとをつなぐ、重要なリンクの役目を果たします。

しかし今回の演習では、軍事環境におけるシスコ技術の有用性が実証されることはあっても、ネットワークそのものがテストされるわけではありません。

シスコの NATO 連絡担当者であるハロルド・フェルマネン(Harold Vermanen)はこう説明します。「当社にとって Combined Endeavor は、展示の場でもなければ、製品テストの場でもありません。シスコ製品は、すでに実際の作戦において使用されているのです」

また、陸軍中佐のジョセフ・アンギャル(Joseph Angyal)氏によると、シスコ技術はテストの必要がなく、それが採用の決め手の 1 つになったということです。

さらに、アンギャル氏は「コア インフラストラクチャで相互運用性の問題が生じるということは避けなければなりません。信頼性という点から見て、シスコ機器を使用することは私たちにとって当然の選択なのです」とも言います。

自社機器を貸し出すと同時に、現地サポートおよび参加者に向けた数々のトレーング セッションを提供しているシスコですが、Combined Endeavor で採用されるにいたったもう 1 つの決め手は、IP ネットワーキング分野におけるそのリーダーシップにありました。IP は、同演習のテスト課題に合った最適の技術だったのです。

ビジネス管理やコマース分野では、ほとんどすべての業種で、ATM や時分割多重をベースにした従来のネットワーク インフラストラクチャから IP 利用のインフラへの移行が進んでいますが、世界の軍隊の場合も例外ではありません。

移行の規模は国によって様々ですが、シスコの NATO 担当防衛イニシアティブ マネージャであるトム・クーパー(Tom Cooper)は「一般的に見て、IP の利用は対数的に増加しています。つまり、どの国も極めて急ピッチで移行を進めているのです」と指摘します。

クーパーはまた、フィールドでの実体験が移行を後押ししているとも言います。IP などのオープン通信プロトコルの使用は、旧態然とした軍隊では敬遠されがちだったのです。

「10 年前ならば、IP では軍事利用に必要な QOS(サービス品質)を提供できないという意見が多く聞かれたかもしれません。しかし今では、ほとんどの軍事作戦で IP が一般的に使われています」とクーパーは言います。

しかし、IP をはじめとする新技術を導入する上で、軍組織はある問題を抱えています。旧来の機器を撤去するには莫大なコストがかかるため、予算が許さないケースが多々あるのです。

「現在あるものを一掃して新たなスタートを切ることができる国など皆無です。前進しつつも時に後退し、既存のものに頼ってやっているのです」とアンギャル氏は言います。

Combined Endeavor を貴重なものにしているのは、連合の戦闘部隊における新旧技術の融合を促進し続けなければならないという現状です。このニーズがあるからこそ、11 年が過ぎた今でも演習は変わらぬ有効性を保ち、今後もさらに進化することが可能なのです。

現時点ですでに、Combined Endeavor は、ほかの地域における相互運用性テストの枠組み的役割を果たしています。昨年、第 1 回目の「Pacific Endeavor」が 16 カ国の参加のもと実施されました。また、今年 7 月には南アフリカで初の「Africa Endeavor」が開催されることになっており、20 カ国以上が参加を表明しています。

アンギャル氏は、世界中の軍隊と組織における通信および相互運用性を向上させるための「Global Endeavor」がいつか開催されるかもしれない、と見ています。

これが実現すれば、「フェーズ ゼロ」――国同士の摩擦予防を目的とした作戦――に対する貢献は極めて大きなものになるでしょう。いずれにせよ、演習を実施する上で IP とシスコは今後も重要な役割を担うことになりそうです。

ジェイソン・デイン : スペイン バルセロナ在住のフリーランス ジャーナリスト

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