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シスコ、利用者数世界最大の空港の通信インフラ刷新を手がける

アトランタ国際空港が 450 万ドルを投じて通信アップグレードを実施、統合ネットワークを利用した 18 のデータ、音声、およびビデオ プロジェクトを進めています

2006 年 1 月 4 日

チャールズ・ウォルトナー(Charles Waltner、News@Cisco)

ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港(以下、アトランタ空港)は、これまで空港で行われてきた中でも最大規模となる通信インフラストラクチャのアップグレードを実施するにあたり、シスコシステムズに白羽の矢を立てました。

アトランタ空港はしかし、競争の激しい航空輸送業界において、ほかのこぢんまりとした空港とは一線を画しています。世界最高の利用者数を誇ると同時に、もっとも優れた空港の 1 つでもあるのです。アトランタ市が経営する同空港は、国際航空運送協会や American Express 社、航空輸送調査学会などの団体によるランキングで、カスタマー サービス、生産性、および効率に優れた空港として、幾度となく 1 位を獲得しています。

今回の通信システムの見直しは、キャパシティを拡大し、世界最高レベルの空港であり続けることを目標に、10 年の年月と 63 億ドルの予算を投じて実施されている開発プログラムの一環を占めるものです。通信システムのアップグレードに際し、アトランタ空港ではほとんどのデータ、電話、およびビデオ システムを IP ベースのワイヤード/ワイヤレス ネットワークに統合、主にシスコ機器で稼動させるようにしました。「通信ニーズごとに別々のインフラストラクチャを構築するのではなく、IP ネットワークを使い、すべてのトラフィックを統合することにしたのです」とアトランタ空港の CIO(最高情報責任者)であるランス・リットル(Lance Lyttle)氏は説明します。

利用客やスタッフにとってできるだけ使いやすい通信システムにするための取り組みの一環として、世界で唯一と言ってもいいほど、まったく利用者を選ばない IP ネットワークを構築した、とリットル氏は言います。乗客や航空会社、小売業者、警備係、空港スタッフなど、空港を訪れた人やそこで働く人なら誰でも、IP ネットワークを仮想的に共有することができるようになるということです。

450 万ドルを投じたアップグレードの主な内容としては、新しい光ファイバー バックボーン、大規模なワイヤレス ネットワーク、および独自のプライベート携帯通信システムなどがあげられます。プロジェクトの第 1 フェーズは 2001 年に開始され、このときレースウェイやケーブリング、コンジット、機器室といった基本的な通信インフラストラクチャが設置されました。第 2 フェーズでは、OC-192 Sonet リングファイバー バックボーンの導入に取りかかり、それが完了したのが 2004 年でした。光コアネットワークとイーサネットベースのブランチ エクステンション――すなわち「エッジ」――の両方の運用を、シスコのスイッチとルーターが担っています。リットル氏によると、この光ファイバーは今後 20 年にわたって使うことができ、シスコ機器は少なくとも 5 年間は十分な帯域幅を提供し続けるだろうということです。

アトランタ空港のプロジェクトは現在、第 3 段階に入っており、業務とサービスの向上に向けた 18 種類の最新アプリケーションを施設全域に導入しているところです。ネットワーク アップグレードの最終目標は、カスタマー サービスを向上させ、空港を訪れる乗客にとってできるだけ快適で不便のないようにすることだ、とリットル氏は言います。ネットワークが統合されたことによって、たとえば、航空会社が空港内のあらゆるところでフライト情報を放送することができるようになりました。

新しいネットワークはまた、空港業務の効率化にも貢献しています。たとえば、空港スタッフは仕事へのアクセスやソフトウェア プログラムのメンテナンスを、場所を選ばず行えるようになり、データを紙媒体から再入力する手間が大幅に削減されました。また、空港内店舗の事務処理も簡素化されました。店のキャッシュ レジスターのデータを直接空港の財務システムに伝送して、売り上げ配分や支払いの記録・処理を行うことができるようになったのです。

プロジェクトのハイライトは 150 万ドルを投じたワイヤレス ネットワークです。このネットワークは、空港敷地内ならば屋内外のどこででも利用することができるようになっています。54 万平方メートルの空港全域をカバーするために 150 台の Cisco Aironet 1230 シリーズ アクセスポイントが使われており、屋内のものとしてはアメリカでも最大規模のホットスポットとなっています。

このワイヤレス ネットワークの特徴は、Boingo Wireless Inc.、Concourse Communications Group LLC、Sprint Nextel Corp. など、複数ベンダーの「WiFi」サービスに対応しているところだ、とリットル氏は言います。複数のベンダーを使うことによって、インターネット接続や時間潰しのためのネットワーク サービスを、乗客に低価格で提供することができるというわけです。現在、毎月 1 万 1000 人以上の乗客が空港内のワイヤレス インターネット サービスを利用しています。

保守スタッフもまた、ワイヤレス ネットワークを携帯端末と組み合わせて使い、業務支持をリアルタイムで管理しています。以前は、情報を「ドッキング ステーション」で更新するか、紙媒体から手入力するしかありませんでした。リットル氏によると、いくつかの航空会社は現在、ワイヤレス ネットワーク上で独自のアプリケーションのテストを行っているとのことです。ワイヤレス ネットワークを利用するグループは、シスコの仮想 LAN(VLAN)技術によってほかのユーザと分離され、安全性の面でも問題はありません。

アトランタ空港ではまた、独自の携帯電話アンネナ インフラストラクチャを設置し、空港敷地内ならば、たとえコンコース間連絡シャトルの中であっても通話ができるようになっています。ワイヤード/ワイヤレス IP ネットワークと同様、携帯電話システムもまた、複数ユーザに向けた設計がなされています。複数の通信会社が同じアンテナを使って携帯電話サービスを提供することから、乗客のほとんどは空港内でも自分のプロバイダーを利用することが可能です。

アトランタ空港では、新しい IP ネットワークを使って、超最新のビデオ セキュリティ システムを運用しています。使用するカメラのタイプに関係なく、ビデオ画像は IP パケットに変換されたのちに、ネットワーク経由でワイヤレス システムに運ばれ、警察や消防、および警備のスタッフが PDA タイプの携帯端末を使って画像を見ることができるようになっています。リットル氏のチームは現在、システム稼動にもっとも適したアプリケーションを探しているところです。迅速かつ柔軟なビデオ配信によって、スタッフは空港のどこにいても、すべての監視カメラの映像を見ることができます。シスコ技術に白羽の矢が立ったのは、セキュリティ ビデオフィードなどの重要なデータが帯域幅ボトルネックの影響を受けることがないよう、ワイヤレス トラフィックを優先させたかったからだ、とリットル氏は説明します。

アトランタ空港では、国際ターミナルや滑走路といった空港施設が完成するまでの間、仮設建物の中で様々な業務が行われていますが、そこでもまた Cisco IP フォンが使用されています。Cisco IP フォンはイーサネット接続さえあればどこでも使えるため、移設の手間がほとんどかからない、とリットル氏は言います。ラップトップ コンピュータと同様、ネットワークがかかってきた電話や経路を自動的に識別するのです。予算の問題があり、電話システムを IP ベースのものに変えることを踏みとどまっていたものの、空港移転の際のベンダーはシスコにお願いすることになりそうだ、とリットル氏は語っています。

リットル氏からは、シスコ機器に関する問題もわずかながら報告されています。空港では大量の電子機器や通信デバイスによって電波障害が発生し、そのような条件下でのワイヤレス導入作業は困難の連続だ、とリットル氏は言います。とは言うものの、不思議なことにネットワークの使用にいっさい支障はありません。リットル氏のスタッフは独自の設計によって、アクセスポイントの信号を隣接するアクセスポイントに 50 パーセントだけオーバーラップさせ、使用域でのデッドスポットを実質的に解消しているのです。

今回のプロジェクトは、自分にとっても 6 人のチームメンバーにとっても学ぶことの多い貴重な経験だ、とリットル氏は感想を述べています。以前ほかの企業で働いていたときにはコスト削減ばかりが重要視されていたが、このプロジェクトでは顧客とネットワーク ユーザのニーズが第一に考えられている、とのことです。リットル氏は、スタッフたちが光ファイバーやワイヤレス、統合型 IP といった技術のノウハウを学び、成長していくのを見るのが楽しいと語っています。

このような大規模なプロジェクトには、多種多様な問題がつきまといます。何よりも、手本にすべきこれといった前例がなかったことが大変だった、とリットル氏は言います。「同じような共有型ネットワーク インフラストラクチャの構築例が見あたらなかったのです。よって、いっさいの基準がないまま、すべてをゼロから設計していくしかありませんでした」

空港増築の計画を練る際にリットル氏は、わずかしかいないスタッフへの負担が少なくてすむように、IT 機器を可能なかぎり標準化したいと考えていたといいます。またリットル氏は、もし思い切り予算を使うことができるのなら、長きにわたって良質の製品とサービスを確実に提供できるプロジェクト担当ベンダーを、自分自身で選びたいと希望していました。

結局リットル氏は、ドットコムバブル崩壊の余波が残る 2000 年にネットワーク ベンダーの調査に取りかかったわけですが、特に気にかけていたのは、シスコも含めた各ベンダーの存続性でした。そこでリットル氏は、ベンダーのケーススタディを実施し、機器性能から株価にいたるまですべてを調べ上げました。そうしてシスコ機器がたいへん信頼できるものであることが明らかになりましたが、何よりもリットル氏を感動させると同時に安心させたのは、世界のフォーチュン 1000 社の大半を含むその顧客ベースだったといいます。「それを見て、シスコならば大丈夫だと確信しました。これほどの企業が信頼を寄せているのなら、自分たちも信頼していいはずだ、と」とリットル氏は語っています。

それ以来ずっと、リットル氏はシスコのサービスに満足しています。プロジェクトを進めていく中で、リットル氏とそのスタッフには様々な問題を解決するための助けが必要でした。リットル氏はこう言います。「アップグレードのあらゆる場面において、シスコの技術スタッフは頼めばすぐに対応してくれました。しょっちゅうここにいたものだから、最後には同じ職場の同僚のようになっていました。私たちのためにそうしてくれていたのです。機器を売ることは誰でもできる。しかし、必要なサポートを提供してくれるベンダーはなかなかいないものです」

そのほか、リットル氏のスタッフが IP ネットワーク上で使うために開発を進めているアプリケーションには、駐車料金自動収集サービスとセキュリティ アクセス管理システムがあります。大規模通信システムのモニタリングと遠隔管理のためのネットワーク運用センターに最後の仕上げを施せば、今回のプロジェクトは無事完了です。

しかし、実際にはプロジェクトの業務は永遠に終わることはありません。アトランタ空港のネットワークは、これから 10 年の間に作られるであろう、ほとんどすべてのマルチメディア アプリケーションやサービスに対応できるようになっています。リットル氏とそのスタッフは、最初の 4 年間の初心を忘れることなく、ネットワーク技術実験室を設置しました。空港の最先端のインフラストラクチャを補完する最適なアプリケーションやそのほかの通信イノベーションを探す際、「ありとあらゆるもの」をテストするためです。このような取り組みは、アトランタ空港が今後長きにわたり業界屈指の空港業務とカスタマー サービスをスケジュール通りに提供し続けるための一助となることでしょう。

チャールズ・ウォルトナー : カリフォルニア州オークランド在住のフリーランス ジャーナリスト

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