ワールドニュース

米国ニュース


テレメディスン (遠隔医療) プログラムの成功を支えるシスコの IP 技術

シスコのメディカル グレード ネットワークが、オンタリオ北部の遠隔地域における医療の向上に貢献しました

2005年6月10日

チャールズ・ウォルトナー (Charles Waltner、News@Cisco)

テレビ電話技術を利用して、遠く隔絶された地域社会にかけがえのない医療サービスを提供するという国際的な遠隔医療のイニシアティブ、NORTH Network。その先駆的な試みには、カナダの雪原で暮らすムース (アメリカ ヘラジカ) たちでさえ感謝せずにはいられないことでしょう。

NORTH Network は、オンタリオ州北部の遠隔地域にある市や町をトロントなどのカナダ都市部の医師や医療施設とデジタルでつなぐという目的のもと、公共・民間の諸団体が協力し合い、1998年に設立されました。オンタリオ北部 (テキサス州とカリフォルニア州をあわせたぐらいの広さです) では小さな地域社会が大多数を占め、設備の整った病院を建てるのは難しいのが現状です。中には、医師がひとりもいない地域さえあります。150万人いる住民の多くは基本的な医療を受けることさえままならず、医師に診てもらうためには、ときに極寒地帯と化す数百キロの道のりを車で移動しなければなりません。カナダの人口密集地域に暮らす人びとが享受しているような良質な医療は、ここの人びとにとって夢のまた夢と言えるでしょう。

「とても雪深い地域で、運転するのが危険な場合も多いのです」と NORTH Network の創始者でエグゼクティブ ディレクターのエド・ブラウン (Ed Brown) 博士は語ります。「視界が悪いため、ムースにぶつかってしまうことさえあります。しかし私たちは、ここの人びとが当たり前の医療を当たり前に受けられるように、NORTH Network による取り組みを続けているのです」

オンタリオ北部の道路を車で移動する患者の数が減るのは、ムースたちにとっては朗報でしょう。しかし、それ以上に地元の人々は NORTH Network の始動を歓迎しています。シスコシステムズの IP メディカル グレード ネットワーク技術の応用により、テレメディスンは新しくより有効なものへと進化を続け、NORTH Network の医療システムには利用者が殺到しています。NORTH Network は順調に成功を収め、IP ベースの通信によって医療のクオリティ、コスト、およびアクセシビリティが劇的に変わることを示したことで、今やカナダの医療インフラストラクチャの根幹を担うようになりました。

その名が広く知られるにつれ、NORTH Network が提供する医療相談の平均数は増加の一途をたどり、ここ数年間は年間300パーセントもの伸びを見せています。現在、カナダ国内の同規模のネットワークの中では最も精力的に、インタラクティブな患者相談や教育活動に取り組んでいます。心臓、神経、放射線といった80余りの専門医療サービスに対応し、今やネットワークが利用できる地域は150ヶ所を越えるまでになりましました。始動から6年余りを経て、NORTH Network が手がけた医療相談の総数は先ごろ2万5000件に達し、現在はひと月に平均1000件以上の相談を実施しています。

2002年、NORTH Networks は、利用者にテレメディスンを最大限に活用してもらうためにはネットワークの帯域幅を拡大する必要があるということに気づきました。そこでシスコに協力を求め、必要な支援を得ることができたです。シスコの革新的な Multi-protocol Label Switching (MPLS) IP 通信技術により、NORTH Networks では、56キロビット⁄秒 (Kbps) のダイヤルアップ接続からのアップグレードをコスト効率よく実施することができ、考えられるすべてのテレメディスン サービスに対応可能な、高い安全性と信頼性を備えたブロードバンド ネットワークが実現しました。

「NORTH Network では次々とサービスを追加し続けていますが、新しいネットワークはそれらすべてにしっかりと対応しています」とシスコシステムズ カナダのエンタープライズ アンド ボイス マーケティングの現地マネージャー、ブランツ・マイヤーズ (Brantz Myers) は述べています。

NORTH Network のサービスの中核を成しているのは、医療提供者と患者の間で交わされるライブで双方向の音声⁄ビデオ通信です。検査カメラや、デジタル耳鏡、デジタル聴診器、内蔵検査用のデジタル内視鏡といった医療機器も、徐々に導入されています。NORTH Network はまた、レントゲンや CAT スキャンなどの医療画像をデジタル化し、保存、管理するための Picture Archival Communications Systems (PACS) を開発し、それによって医療の専門家がネットワーク上で簡単に画像を入手できるようになりました。

医療ネットワークで運ばれる情報は、文字どおり人の生死を左右するものであるため、最大限のネットワーク性能が求められます。また、医師が速やかに病気を認識し正確な診断を行うためには、最高レベルの画質および音質が必要であることから、品質の確保も重要な課題です。しかしシスコは、IP 技術が単にこれらのニーズを満たすだけのものではないことを証明しました。シスコ技術を採用したネットワークの信頼性によって、NORTH Network は病院の緊急治療室における救命治療にまでサービスの裾野を広げつつあります。

NORTH Network では、Cisco 7200 シリーズ、2600 シリーズ、および1700シリーズのルーター、Cisco PIX 500 シリーズ ファイアウォール、Cisco 3000 VPN コンセントレータ、Cisco 3500 シリーズ LAN スイッチをはじめ、多数のシスコ製品が使われています。

NORTH Network では、医療の向上を目指して IP ベース通信を使い始めたばかりですが、歴然とした効果がすでに現れてきています。オンタリオ州マラソンに暮らす夫婦の例を見てみましょう。3歳になる息子が突然肺炎を発症してしまい、治療を受けるためには、一番近い病院まで4時間の道のりを車で移動する必要がありました。ところが、トロントにいる医師が NORTH Network を使い、デジタル レントゲンで子供を診察し、即座に治療法を処方してくれたのです。これによって、子供は長い距離を移動しなくてすみ、合併症を起こすことなく回復することができました。

さらにカナダでは、オンタリオ北部での発症率が高いパーキンソン病の治療の向上のためにも NORTH Network が利用されています。この地域には神経科医がほとんどいませんが、NORTH Network が導入されたことで、専門医がデジタル カンファレンスを使ってパーキンソン病の患者を診察できるようになりました。超高画質のビデオを使うことで、あたかも同じ部屋にいるかのように、医師が患者の病状を正確に確認することが可能です。

また NORTH Network は、「テレストローク (発作患者の遠隔治療) サービス」などの専門医療プログラムも設立しました。ネットワークに接続されたテレビ電話設備と CAT スキャナーを使い、トロントの専門医がオンタリオのノースベイとサドベリーにある遠隔地病院を24時間体制でアシストします。発症から時間が経っていなければ、医師は血塊を溶かす薬を使い、発作を抑えることができます。しかし一方で、同じ薬によって患者が出血し、死亡してしまう場合もあるのです。そこで医師は、効果が期待できるわずかな時間内に薬を正しく投与するために、NORTH Network を使って素早く専門医に連絡を取ります。

人命救助ばかりでなく、NORTH Network はコスト節減にも大きく貢献しています。カナダ政府では国内の医療に多額の資金援助を行っていますが、オンタリオ州の人びとが病院に行って帰ってくるための交通費が月間250万ドル削減されるようになりました。「以前は患者さんにあちこち車で移動してもらわなければなりませんでしたからね」とブラウン博士は言います。

こうして、良質の医療が地域の人びとにとってより身近なものになりつつあります。NORTH Network を通して医療サービスを受けたことのある患者たちは、決して技術的なことに詳しい専門家ではありませんが、90パーセントの人びとが利用して「よかった」か「非常によかった」と答えているという調査結果が出ています。

なお、ムースたちからはコメントをもらうことができませんでした。

チャールズ・ウォルトナー : カリフォルニア州オークランド在住のフリーランス ジャーナリスト。

▲Return to Top

お問い合わせ