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シスコの IP ネットワークを利用し、先駆者たちが医療の限界に挑戦

宇宙計画「NEEMO 7」において、宇宙飛行士など隔絶された状況の人々への最新の医療支援を実現するために、シスコの MPLS 技術を利用してテレメンタリングおよびテレロボティックスの実験を実施

2004 年 11 月 18 日

シスコシステムズは、カナダおよび米国の著名な研究機関が、画期的な在宅診療の手法を発見できるように支援を行なっています。

本年 10 月、 NASA Extreme Environment Mission Operations 7(NEEMO 7;NASA 極限環境ミッション オペレーション 7)において、シスコの最先端のIPネットワーク技術が採用され、これまででもっとも進んだ形態の遠隔医療の手法がいくつかテストされました。

「技術を使って、代理の手術や診察ができるかどうか、つまり電気通信の助けを借りて、専門家以外の人が内科医や外科医の代理として行動できるかどうかを試しているのです」と、医療実験を指揮していたメヘラン アンバーリ(Mehran Anvari)博士は話しています。

「NEEMO 7」のミッションでは、1 人の科学者と 2 人の常駐技術者からなる 3 人の宇宙飛行士が、フロリダ州キーラーゴ沖 7 マイルの地点の海面下 50 フィートに沈む、縦 9 フィート 横 50 フィートのカプセル、「アクエリアス」の中に 11 日間滞在しました。「アクエリアス」では、宇宙空間に隔絶され、幽閉された状況が再現されました。カプセル内では空気圧が違うため、宇宙飛行士が水面上に安全に到達するためには、17 時間の減圧が必要でした。宇宙空間の宇宙飛行士と同じように、「NEEMO 7」のクルーと外部世界との交信は、おもに通信リンクを使って行なわれました。

クルーは、隔絶された環境にいる人々に最新の医療支援を行なうための手段として、テレメンタリングとテレロボティックスの実験を行ないました。今回のプロジェクトでは、このような手法を利用して、宇宙で病気にかかった宇宙飛行士にどのように緊急医療支援を行なえばよいのかが検証されました。また、テストそのものが、隔絶あるいは孤立した場所や世界中の辺境地域に最新の医療支援を提供する方法を示す、大きなヒントにもなっています。

テレメンタリングとは、経験の豊富な外科医あるいは専門家が、双方向のビデオ会議システムを使って、遠隔地にいる専門家でない一般の人あるいは医師に、手術や処置の間、指示を送るプロセスを言います。テレロボティックスでは、バーチャル リアリティー技術とロボット工学を駆使し、数百から数千マイル離れた位置から外科医が患者を遠隔手術できるようになります。いずれの場合においても、人命に関わる情報を伝え、センシティブなロボット手術機器を充分に駆使できるようにするためには、高い信頼性と性能を持ったネットワークが不可欠になります。

メヘラン アンバーリ博士、ジュリアン ドブラノウスキー(Julian Dobranowski)博士、アニル カプール(Anil Kapoor)博士の支援を受け、「アクエリアス」のクルーは、腎結石などの超音波検査とともに模擬手術を行ない、血管縫合などの救命修復措置を試行しました。

プロジェクトの主要な参加団体には、オンタリオ州ハミルトンのマクマスター大学の付属病院である St. Joseph's Healthcare の Centre for Minimal Access Surgery(CMAS)やカナダ航空宇宙局(CSA)、米国航空宇宙局(NASA)などがあり、シスコと Bell Canada も専門知識と機器を提供しました。

CMAS の創設者で、テレロボティック手術のパイオニアであるアンバーリ博士は、クルーの医療実験が成功したのは通信リンクの品質および堅牢さによるところが大きい、と話しています。

「ミッションの大部分は、ネットワークに依存しています。実験の多くは通信に関するものであり、ネットワークが高いレベルで機能することが求められていました。シスコのビジョンがなければ、今回のようなことはできなかったでしょう」

「アクエリアス」から St. Joseph の CMAS 本部にいるアンバーリ博士までの 1,500 マイルの通信リンクは、高い品質と性能のブロードバンド IP 接続を実現する、シスコの業界最高水準の技術によって可能になりました。IP ネットワークでは、シスコの最先端のMPLS 技術とVPN 技術が利用されました。MPLS により、IP ネットワークのインテリジェンスと柔軟性がさらに向上され、医療にも対応可能なレベルの通信が実現しました。信号は、Bell Canada の運営する IP バックボーンを経て、キーラーゴに伝送されました。またキーラーゴからの信号は、マイクロ波トランスミッターを経由して、「アクエリアス」の上方に浮かぶブイにリレーされました。ブイからは「命綱」とも言える通信回線が水中の「アクエリアス」に伸びていました。

「アクエリアス」の内部では、クルーが「Cisco 2950」スイッチと「Cisco 2955」スイッチを使って、カプセル内の通信ネットワークを管理していました。スイッチには、地上の 2 倍以上の圧力や湿気、および狭い室内での乱雑な取り扱いに対する耐久性が求められていました。そのような過酷な条件とネットワークおよび機器に対する厳しい要求にもかかわらず、アンバーリ博士によれば、通信インフラストラクチャそのものは完ぺきに機能していたそうです。

News@Cisco では「アクエリアス」の内部との電話通話を試み、「NEEMO 7」ミッションの司令官であるロバート サースク(Robert Thirsk)博士とクルーの一員であるクレイグ マッキンリー(Craig McKinley)博士より、水面下の室内に高品質な動画と音声を提供できたことがテレメンタリング実験の成功の大きな要因となった、という連絡を受けました。

「ブロードバンドの動画および音声により、カプセル内に一緒に居て手術について助言をしているような感覚になりました」と、マッキンリー博士は言います。

宇宙飛行士たちは、高品質なブロードバンド ネットワークの出現があったからこそ今回のような医療処置が可能になった、と語っています。「ネットワークで混乱が生じれば、このような種類の努力がすべて台なしになってしまうのです」と、サースク博士は言います。

「NEEMO 7」のクルーは、実験の端緒についたばかりのテレハプティックス(Tele-haptics)ソフトウェアの評価も行いました。テレハプティックスとは、遠隔手術の際に手術の管理者に触覚を伝えるためのものです。この技術により、ブロードバンド ネットワークを通じて手触りや張りが感じ取れるようになり、アンバーリ博士のような医師が、より高度な手術を行なえるようになります。ネットワークでの時間遅延により、テレハプティックス ソフトウェアの効果が大幅に低減されるおそれもありましたが、「Cisco MPLS」での IP 通信リンクによりこの課題も解消された、とアンバーリ博士は話していました。

テレメンタリング実験が成功し、テレハプティックスのテストでも貴重なデータが得られましたが、テレロボティックスの実験は途中で打ち切られた、と宇宙飛行士たちは報告しました。用意されたテレロボティック機器は小ささが足りず、敏捷性に欠け、「アクエリアス」のような状況で使用するには頑丈さにも問題がある、とクルーがすぐに発見したのです。「NEEMO 7」の組織では、来年の「アクエリアス」での使用に備えて、新しいロボティック設計の開発およびテストを行なっています。

「アクエリアス」でのテレロボティックス実験は機器の問題により限定的なものとなりましたが、マッキンリー博士は、この新技術には、宇宙や、近代的な病院設備から離れた場所にいる人々への医療支援を実現する、大いなる可能性があると考えています。マッキンリー博士は、オンタリオ州ノースベイで診療医をしていますが、この同じ場所で、2003 年 2 月 28 日、アンバーリ博士が世界で初めて、病院でのテレロボティックス手術を行ないました。この手術も Bell Canada の運営するシスコのネットワーク上で「MPLS」技術を利用して行なわれ、オンタリオ州ハミルトンにいるアンバーリ博士と 200 マイル離れたノースベイの手術室のロボットがネットで繋がりました。それ以来、アンバーリ博士は同様の手術を 22 件行ないました。「我々は、テレロボティックスにより、病院の外にいるドクターも遠隔地から外科的な仕事をできるのだと学びました」と、マッキンリー博士は話しています。

アンバーリ博士は、「アクエリアス」での実験は遠隔医療の可能性の一端を示しただけであり、通信やロボットが相互に発展すれば、医師はさらに新たな可能性を手に入れられる、と言います。アンバーリ博士は、テレロボティックス手術は今後 5 年間で件数が大幅に増加し、最新の医療サービスを受けられない患者へのケアも変革されてゆくだろう、と予想しています。

「これからの治療では、通信ネットワークの利用が大きな意味を持つようになります。北極圏やブータンの山岳地帯、カナダの辺境の街などに医療サービスを提供できるようにする、これらの技術への関心は高まっており、『NEEMO 7』は宇宙旅行以外の分野にも意義深い成果をもたらしています。つまり、人命を助けるための基本的なニーズを満たそうとしているのです」と、アンバーリ博士は話しています。

チャールズ ウォルトナー:カリフォルニア州オークランドのフリーランス ジャーナリスト。

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