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ネットワーク・ブートでリモート・サーバ管理を簡略化した癌センター

iSCSIを利用したネットワーク・ブートで、高度な可用性、信頼性を持つデータ・ストレージが実現


2002年12月11日

文: チャールズ・ウォルトナー (ニュース@シスコ)

インターネットを利用したネットワーク技術の可能性を絶えず追求しているシスコ・システムズでは、その活動の一環として、ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)の管理ができる、iSCSIによるリモート・ブート技術を新たに開発しました。この新技術は、iSCSIブートのためのIETF提案に準拠するものとなっています。

ネットワーク・ブートにより、ユーザはシステム・ドライブだけでなく、複数のサーバから外部のストレージ機器(ディスク・サブシステムなど)への「ブート」機能をも一元管理でき、さらにネットワークから複数のサーバに直接アクセスすることが可能になります。もっとも注目すべき点は、ネットワーク・ブートは追加サーバの導入をよりスピーディーにするためのカギであるということ。ITエクゼクティブにとっては、ブート・イメージの管理を簡単で信頼のおけるものにしてくれる大きな助けとなるとともに、最近人気の高度にクラスタ化されたラックマウント・サーバやブレード・サーバと呼ばれる新種のサーバ・アーキテクチャではより一層効果を発揮するものとなるでしょう。コストと時間が節約できるだけでなく、ネットワークの信頼性が向上し、ソフトウエアのインストレーションも集中管理できるので、カスタマもその恩恵を受けることになります。

ディスクレスのサーバでリモート・ブートを可能にする技術はほかにもありますが、シスコのiSCSIを利用したネットワーク・ブートは、インターネットで広く普及している通信言語TCP/IPをサポートしています。iSCSI(Internet Small Computer System Interfaceの略)の最大の利点は、他の技術に比べてより離れたところで、より低コストでSCSIコマンドを効果的にやりとりできるところ。ファイバー・チャネルもリモート・ブートに利用できますが、メトロ・エリア・ネットワーク(MAN)環境で導入するには費用がかかりすぎてしまいます。現在では、多くの企業がメトロやリモート接続環境でのIPバックボーンを持っていますので、ネットワーク・ブートではこのような既存のインフラストラクチャを充分に活用することが可能になります。

「ファイバー・チャネルはストレージ・サブシステムには良いプロトコルですが、iSCSIでは、ネットワーク・マネジャはストレージ・システムも、バックアップ・システムも、ローカル・エリア・ネットワークで使っているのと同じ単一のプロトコルで管理することが可能です」と言うのは、シスコのネットワーク・ブート・プロダクト・マネジャであるボブ・ファイン氏。「しかも、何キロも離れた施設からでも同じことができるのです。」

ネットワーク・ブートは、Cisco SN 5420 と Cisco SN 5428という2機種のストレージ・ルーター用ファームウエアの最新アップグレード版に含まれており、マルチレイヤ・スイッチの Cisco MDS 9000ファミリーで提供されるIPストレージ・サービスでも利用が可能となる予定です。

初期の頃からのユーザによれば、ネットワーク・ブートはデータ・ストレージやバックアップの操作を改善し、簡略化させる効果的なツールだそうです。

テキサス州サン・アントニオに拠点を置く癌の治療研究センター、The Cancer Therapy and Research Center (CTRC)の情報主任であるリード・アイクナー氏は、ストレージの可用性と信頼性をなによりも求めている組織ではネットワーク・ブートが可能なiSCSIの人気はさらに高まるだろう、と予想しています。毎月1万人以上の来院患者のあるCTRCを、アイクナー氏はストレージへの要望がもっとも高い組織の一つであると考えています。

アイクナー氏をはじめとして、CTRCではデータ・ストレージ・サーバの信頼性は可能な限り高くなければならないと考えています。CTRCでは、メインの医療センターとそこから40キロばかり離れた研究施設それぞれでデータ・ストレージのバックアップを行っています。医療センターに8台、研究施設に4台のサーバがあり、どちらの側でも相手側のデータをバックアップしてストレージするためのサーバが設置されています。それぞれの側でのバックアップ操作はリアルタイムのミラーリングで行い、相手側のデータを継続して記録、転送、バックアップします。サーバには、放射線治療や腫瘍学、治療スケジュール、医学記録、患者統計、会計記録に関する情報が保存されています。

それぞれのサーバには少なくとも30ギガバイトのデータが保存されており、CTRCではきわめて大きなデータ・ブロックの転送を行っています。二つのキャンパス間のデータ転送量は、IP接続で1秒間に1.25ギガバイト(Gbps)。そのため、CTRCではiSCSIを使って既存のIPブロードバンド・ラインを利用する必要があるのです。アイクナー氏によれば、IP接続は他の通信プロトコルでのデータ接続に比べはるかに経済的な選択だそうです。

アイクナー氏は9月からネットワーク・ブートをテストしてきましたが、ネットワーク・ブートのおかげでCTRCの従業員や患者がいつも利用するソフトやデータの管理が格段に楽になったと言います。

CTRCでは10分に一人の患者の診察を行っています。もしサーバがダウンすれば、大切な診療情報が閲覧できなくなり、患者は診療を受けられなくなるかもしれません。一例を挙げると、CTRCでは、放射線化学療法でのリニアアクセラレータによる放射線量を自動的に記録、トラックするコンピュータ・アプリケーションを使用しています。この情報によって、それぞれの患者が受けた放射線量の正確な履歴が明らかになり、来院のたびに適切な療法を施すことが可能となるのです。しかし、もしサーバがダウンして、アプリケーションをオン・ラインで使用できなくなれば、CTRCは貴重な助けとなっていたアプリケーションを使用できないため、患者の化学療法履歴を正確にトラックできなくなるのです。

「もしサーバがダウンしたなら、我々が最大限の努力を払ってすべきことはできるだけ速くバックアップをとることです。患者さんの健康に関わる問題ですからね」とアイクナー氏。「ネットワーク・ブートならダウンしてから10分から20分で復旧が可能です。従来ですと、すべて手動で新しいサーバにオペレーティング・システムをインストールし、最新のデータを取り込むのに2時間から8時間が必要でしたものね。」

アイクナー氏が述べたところによれば、シスコが提供するiSCSIによるストレージ・ソリューションはマーケットにある類似のものに比べてはるかに経済的だそうです。iSCSIでの通信をサポートするCisco SN 5428は価格が安かったので、自分のチームではそれぞれのサイトでバックアップ・ルータをもう1台買うことができた、とアイクナー氏は語ります。さらに、iSCSIのプロトコルはマイクロソフトのWindows 2000のミラーリング技術に対応しているので、アイクナー氏の非営利組織にとってはきわめてコスト効果が高く、シンプルな選択であったわけです。

IPを利用したiSCSIソリューションは、CRTCに他の恩恵ももたらしました。この会社では、二つのキャンパスをシスコの機器を装備したIPテレフォニで繋いでいます。この方法により、一つのブローバンド回線と一つのプロトコルだけで、音声、データ、ストレージのやりとりが可能になりました。また、この組織ではシスコのメトロ・エリア・ネットワーク・イーサネット技術も導入し、2002年12月に開設予定の新サテライト・クリニックともIPテレフォニ接続を行う予定です。

チャールズ・ウォルトナーは北カリフォルニアを拠点するフリーランス・ライターです。

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