制限クラス(COR)は、サービス クラス(CoS)またはコール特権を割り当てられるようにする Cisco 音声ゲートウェイの機能です。これは、Cisco Survivable Remote Site Telephony(SRST)および Cisco CallManager Express で最も一般的に使用されますが、ダイヤル ピアに適用できます。
COR 機能により、ダイヤルピアに配布される発着信 COR に基づいて特定のコール試行を拒否できる機能が提供されます。COR が必要となるのは、一部の電話機については機能を制限して特定タイプのコールだけを発信するようにしたいが、その他の電話機では一部の電話機で制限したコールを発信できるようにしたい場合です。
COR を使用して、コールするときにどの発信ダイヤルピアがどの着信ダイヤルピアコールを使用できるかを指定します。各ダイヤルピアは、着信および発信 COR リストでプロビジョニングできます。corlist コマンドにより、ダイヤルピアの COR パラメータと、Cisco CallManager Express ルータに関連付けられた Cisco IP Phone 用に作成された電話番号が設定されます。COR 機能により、ダイヤルピアに配布される発着信 COR に基づいて特定のコール試行を拒否できる機能が提供されます。この機能は、ネットワーク設計に柔軟性を提供し、ユーザはコールをブロックできるようになります(たとえば、900 番へのコールをブロックするなど)。また、さまざまな発信者からのコール試行に、それぞれ異なる制限を適用できます。
着信ダイヤルピアで(着信コールに対して)適用される COR がスーパーセットであるか、発信ダイヤルピアで(発信コールに対して)適用される COR と同等である場合、そのコールは通されます。着信と発信は「音声ポート」に関するものを指します。COR は、よくロックとキー メカニズムと呼ばれます。ロックは、発信 COR リストを使用してダイヤルピアに割り当てられます。キーは、着信 COR リストを使用してダイヤルピアに割り当てられます。
たとえば、ルータの Foreign Exchange Station(FXS)ポートの 1 つに電話をフックアップして、その電話からコールしようとする場合、ルータの音声ポートから見ると着信コールとなります。同様に、その FXS 電話にコールすると、それは発信コールとなります。
デフォルトでは、着信コール区間には最高の COR 優先度が与えられ、発信 COR リストには最低の COR 優先度が与えられています。つまり、あるダイヤルピアで着信コール用の COR 設定がされていない場合には、そのダイヤルピアの COR 設定とは無関係に、このダイヤルピア(このダイヤルピアに接続されている電話)から、他のダイヤルピア経由でのコールが可能です。
この文書では COR 設定方法の例を示します。
設定を試行する前に、ルータでの Cisco IOS Telephony Service の設定に精通していることを確認してください。Cisco IOS Telephony Service バージョン 3.0 は、CallManager Express 3.0 と呼ばれます。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
最小限の IP Plus(Cisco 1700 シリーズ上の IP/VOX Plus)機能セットを持つ Cisco IOS(R) ソフトウェア リリース 12.2(8)T 以降。この文書では、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2(8)T 以降での Cisco IOS Telephone Services (ITS) 2.0 サポートを想定しています。ITS および Cisco IOS ソフトウェア リリースの詳細については、『Cisco IOS Telephony Services Version 2.1』を参照してください。
設定例では、IP Plus 機能セット付きの Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(4)T がインストールされた Cisco 3725 Gateway が使われていますが、現在、ほとんどの IAD 2400 と 1700、2600、2800、3600、3700、3800 シリーズのルータを適用できます。Cisco CallManager Express 3.0 は Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.4(10) でサポートされます。 現在のバージョンとソフトウェアのサポート情報については、Cisco IOS のリリース ノートを確認してください。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
図 1 は、COR リストの概念について示しています。
COR 設定方法の例として次の手順を使います。
ephone-dn | 着信ダイヤルピア上の COR リスト | コール パターン |
1001 | エンジニアリング | 911、408....(local_call)および316....番号 |
1002 | HR | 911、1800....408...、.(local_call)および316....番号 |
1003 | マネージャ | 911、1800....1900...、408....(local_call)および316....番号 |
1004 | none | ルータ R1 から可能なすべての番号をコールできる |
dial-peer cor custom を設定して、COR をダイヤルピアに適用する有意な名前を割り当てます。以下に、いくつかの例を示します。
Dial-peer cor custom name 911 name 1800 name 1900 name local_call
ダイヤルピアに適用する制限の実際のリストを作成します。
Dial-peer cor list call911 Member 911 Dial-peer cor list call1800 Member 1800 Dial-peer cor list call1900 Member 1900 Dial-peer cor list calllocal Member local_call Dial-peer cor list Engineering Member 911 Member local_call Dial-peer cor list Manager Member 911 Member 1800 Member 1900 Member local_call Dial-peer cor list HR Member 911 Member 1800 Member local_call
ダイヤルピアを作成して、使用する COR リストを指定します。
この例では、宛先番号408....、1800...、1900...、911、および316....に5つのダイヤルピアが作成されます各ダイヤルピアに適切な corlist が適用されます。
Dial-peer voice 1 voip Destination-pattern 408…. Session target ipv4:1.1.1.1 Corlist outgoing calllocal Dial-peer voice 2 voip Destination-pattern 1800… Session target ipv4:1.1.1.1 Corlist outgoing call1800 Dial-peer voice 3 pots Destination-pattern 1900… Port 1/0/0 Corlist outgoing call1900 Dial-peer voice 4 pots Destination-pattern 911 Port 1/0/1 Corlist outgoing call911 Dial-peer voice 5 pots Destination-pattern 316…. Port 1/1/0
注:ダイヤルピア5 POTSにはCORは適用されません。
注:着信ダイヤルピアまたは発信ダイヤルピアにCORリストが適用されていない場合、コールは成功します。
Cisco CallManager Express システムを設定するためにテレフォニーサービス コンフィギュレーション モードを開始するには、グローバル コンフィギュレーション モードで telephony-service コマンドを使用します。デフォルトでは、Cisco CallManager Express や ITS 設定はありません。
個々の phone/Ephone-dn に COR リストを適用します。
Ephone-dn 1 Number 1001 Cor incoming Engineering Ephone-dn 2 Number 1002 Cor incoming HR Ephone-dn 3 Number 1003 Cor incoming Manager Ephone-dn 4 Number 1004
注:Ephone-dn 4 に適用される COR はありません。
上記の設定により:
Ephone-dn 1(1001)は408....、911、および316....番号をコールできます。
Ephone-dn 2(1002)は、408....、1800..、 911、および316....の番号をコールできます。
Ephone-dn 3(1003)はルータから可能なすべてのメンバーにコール可能。
Ephone-dn 4(1004)はルータから可能なすべてのメンバーにコール可能。
注:すべてのEphone-dnsは316....番号をコールできます。
さまざまな組合せの COR リストとその結果を、次の表に示します。
着信ダイヤルピア上の COR リスト | 発信ダイヤルピア上の COR リスト | 結果 | 原因 |
---|---|---|---|
COR なし | COR なし | コール成功 | COR がないため。 |
COR なし | 発信コールに適用される COR リスト。 | コール成功 | COR が適用されないと、着信ダイヤルピアはデフォルトで最高の COR 優先度を持ちます。したがって、あるダイヤルピアへの着信コール区間で COR を適用しない場合、このダイヤルピアは、発信ダイヤルピアの COR 設定にかかわらず、他のダイヤルピア経由でのコールが可能です。 |
着信コールに適用される COR リスト。 | COR なし | コール成功 | 発信ダイヤルピアは、デフォルトでは最低の優先度を持ちます。着信/生成側ダイヤルピア上で着信コールのための何らかの COR 設定があるので、それは発信/終端側ダイヤルピア上での発信コール COR 設定のスーパーセットになります。 |
着信コールに適用される COR リスト(発信ダイヤルピア上で発信コールに適用される COR リストのスーパーセット)。 | 発信コールに適用される COR リスト(着信ダイヤルピア上で着信コールに適用される COR リストのサブセット)。 | コール成功 | 着信ダイヤルピア上での着信コール用の COR リストは、発信ダイヤルピア上での発信コール用の COR リストのスーパーセットです。 |
着信コールに適用される COR リスト(発信ダイヤルピア上で発信コールに適用される COR リストのサブセット)。 | 発信コールに適用される COR リスト(着信ダイヤルピア上で着信コールに適用される COR リストのスーパーセット)。 | この発信ダイヤル ピアを使用して、コールを完了することはできません。 | 着信ダイヤルピア上での着信コール用の COR リストは、発信ダイヤルピア上での発信コール用の COR リストのスーパーセットではありません。 |
Cisco IOS ソフトウェアの COR 機能は、Cisco CallManager コーリング サーチ スペースとパーティションに類似しています。
Cisco IOS ソフトウェアは、ダイヤル ピアの照合によって制限を設けます。Cisco CallManager は、ディジット分析に基づいて、それを実行します。
dial-peer cor custom コマンドを実行すると、Cisco CallManager パーティションの作成と同様の処理が行われます。
dial-peer cor list コマンドを実行すると、パーティションを設定した Cisco CallManager コーリング サーチ スペースの作成と同様の処理が行われます。
パーティションとコーリング サーチ スペースにより、コール制限を実装する機能と、同じ Cisco CallManager 上にクローズ型のダイヤル グループを作成する機能が提供されます。COR の動作と、Cisco CallManager コーリング サーチ スペースおよびパーティションの機能は、類似しています。Cisco CallManager が実行できて COR は実行できないこととして、個別の回線、デバイスのコーリング サーチ スペースおよびパーティションが挙げられます。
このドキュメントで説明する設定をルータに入力したら、ネットワークが正常に動作していることを確認することが重要です。ここに示すコマンドとそれぞれの出力により、このドキュメントで説明した設定が正しく実装されていることを確認できます。
一部の show コマンドはアウトプット インタープリタ ツールによってサポートされています(登録ユーザ専用)。このツールを使用することによって、show コマンド出力の分析結果を表示できます。
show ephone-dn summary:Cisco IP Phone の内線番号(Ephone-dns)について簡単な情報を表示します。
show telephony-service ephone-dn:Cisco CallManager Express システムでの内線番号(Ephone-dns)について情報を表示します。
show telephony-service dial-peer:Cisco CallManager Express システムでの内線番号(Ephone-dns)についてダイヤルピア情報を表示します。
show telephony-service all:Cisco CallManager Express システムでの電話機、音声ポート、ダイヤルピアについての詳細情報を示します。
show dial-peer cor:corlist の一覧および各リストのメンバーを示します。
ここに、このドキュメントの設定に関連するコマンドの出力例を示します。
Router3725#show ephone-dn summary PORT DN STATE MWI_STATE CODEC VAD VTSP STATE VPM STATE ======== ========== ============ ======== === ===================== ========= 50/0/1 CH1 IDLE NONE - - - EFXS_ONHOOK 50/0/2 CH1 IDLE NONE - - - EFXS_ONHOOK 50/0/3 CH1 IDLE NONE - - - EFXS_ONHOOK 50/0/4 CH1 IDLE NONE - - - EFXS_ONHOOK Router3725#show telephony-service dial-peer dial-peer voice 20001 pots destination-pattern 1001 calling-number local huntstop corlist incoming Engineering progress_ind setup enable 3 port 50/0/1 dial-peer voice 20002 pots destination-pattern 1002 calling-number local huntstop corlist incoming HR progress_ind setup enable 3 port 50/0/2 dial-peer voice 20003 pots destination-pattern 1003 calling-number local huntstop corlist incoming Manager progress_ind setup enable 3 port 50/0/3 dial-peer voice 20004 pots destination-pattern 1004 calling-number local huntstop progress_ind setup enable 3 port 50/0/4 Router3725#show dial-peer cor Class of Restriction name: 911 name: 1800 name: 1900 name: local_call COR list <call911> member: 911 COR list <call1800> member: 1800 COR list <call1900> member: 1900 COR list <calllocal> member: local_call COR list <Engineering> member: 911 member: local_call COR list <Manager> member: 911 member: 1800 member: 1900 member: local_call COR list <HR> member: 911 member: 1800 member: local_call
ここでは、設定のトラブルシューティングに使用できる情報を示します。
設定が正しいことを確認するため、IP WAN または PSTN を介したゲートウェイ経由で何回かテスト コールを行ってみてください。ターゲット ゲートウェイで debug を実行すると、ゲートウェイ経由で着信するコールの呼び出し音があるかどうかを確認できます。
トラブルシューティングについての追加情報は、Cisco IOS Telephony Service(ITS)の設定とトラブルシューティングの指示を参照してください。
注:debugコマンドを発行する前に、『debugコマンドの重要な情報』を参照してください。