Cisco Insight


第 13 号 - 特集記事 - 2

第6回 Cisco デジタイゼーションセミナー
~モバイル活用が支えるリテール業界の新しい働き方~
レポート

第6回 Cisco デジタイゼーションセミナー
~モバイル活用が支えるリテール業界の新しい働き方~
レポート

急激に変化しているリテールのビジネス環境。すでに導入しているモバイルデバイスをより効果的に、よりセキュアに活用したいというお客様の声が大きくなっています。2019年7月4日、シスコシステムズ(以下シスコ)は、東京本社にて「第6回 Cisco デジタイゼーションセミナー」を開催しました。セミナーでは「モバイル活用が支えるリテール業界の新しい働き方」をテーマに、小売業界のデバイス活用事例についてのセミナーが展開されました。

会場ではパートナー企業のモバイル活用事例が数例紹介され、セミナーに出席したリテール業界の担当者の大きな関心が寄せられていました。またこのセミナーは、大阪会場からもリモートで参加できる画期的なイベントとして進行されました。

このセミナーのメインとして、「シスコソリューションでiOS端末アプリを最大限活用する知られざる秘訣」と題したセッションが展開されました。セッションはデモを織り交ぜながら、シスコが2015 年から開始したAppleとの戦略アライアンスによって、ビジネス現場での業務生産性と、お客様体験 (CX) を劇的に向上させる技術について解説されました。ここではこのセッションを中心にレポートします。

モバイル端末の業務利用におけるトレンド

まず、シスコ パートナー事業 ストラテジックアライアンス開発部 ビジネス開発部長 山口 朝子が登壇し、モバイル端末の業務利用におけるトレンドについて解説しました。

シスコシステムズ合同会社
パートナー事業 ストラテジックアライアンス開発部 ビジネス開発部長
山口 朝子

現在、あらゆる業種でデジタル変革が加速しつつあり、モビリティツール(モバイルデバイス)の役割がますます重要になっている状況です。山口は、流通小売業でお客様が期待していることとサービスの実態について解説しました。モバイル決済系サービスを例にして、「お客様は、利便性や還元率が高いというメリットがある場合は自身の購買履歴や属性をメーカー、小売店に提供するのは厭いません」と山口は話しました。また、モバイルPOSもお客様満足の牽引をしていて、顧客満足度が増加すれば売上が増加することになるというデータを示しました。お客様の待ち時間が5分以上になると買い物を辞める人が1/3もいる、というデータを示しながら、お客様の待ち時間が長くなるほど、顧客離れに伴う機会損失となることを指摘しました。さらにシステムのダウンタイムが1分間あるとすると、小売業者が損失するコストはおよそ50万円もあるといい、そのインパクトの大きさを強調しました。

リテールにおけるお客様の期待とサービスの実態

モバイルデバイスを活用しているお客様は、質の高いサービスを利用したり、店舗から有用な情報を得たりすることを優先するようになります。それと同時に店舗スタッフは、モバイルデバイスを使って業務をこなすことで生産性を格段に向上できるようになっています。それによって、浮いた時間をお客様へのサービスへ当てることができるというサイクルが生まれます。

一方で、IT基盤を強化して安定させ、高性能な通信を確保することも重要です。さらに、新たな脅威に対抗できるようなセキュリティ対策も重要なポイントです。最適なIT基盤を構築することによってコストも最適化でき、それにより、セーブしたコストを新たな未来への投資へ振り分けることができます。「つまり、モバイルデバイスをお客様とともに活用することで、リテールは利益を追求でき、それこそが今後生き残るための戦略となるのです」と山口は説明しました。

モバイルデバイスを活用するにあたって関連する人々と優先するべき事項との関係

Appleとシスコの協業によって生まれたモバイルデバイスソリューション

従来、モバイルデバイスを活用するということになると、モバイルデバイスについてはそのベンダーに相談を行い、ネットワークについてはシスコやその他の事業社に相談、アプリについては各ベンダーへご相談を……という流れになりがちでした。しかし2015年8月にAppleとシスコがパートナーシップを結んだことによって、Appleデバイスとシスコのネットワーキング、セキュリティ、コラボレーションアプリといったそれぞれの製品を統合し、戦略やロードマップを考えながらリテールのお客様に提供できるようになっています。山口は、「エンドユーザーであるお客様にとって利便性が高く安心できるツールを導入できるようになり、リテールにとっては、導入にあたってワンストップで大きな付加価値を提供できるようになっています」とAppleとシスコの協業によるメリットを強調しました。

Appleとシスコの協業により生まれた4つのモバイルソリューション

次いで、シスコ パートナーシステムズエンジニアリング SE 弓場 洋平が登壇。引き続きAppleとシスコが共同で手がけているこれらのモバイルソリューションについて説明しました。

シスコシステムズ合同会社
パートナーシステムズエンジニアリング SE
弓場 洋平

まず、Appleとシスコはモバイルデバイスで遠隔会議や遠隔授業といったコラボレーションを可能にする「Cisco Webex」で連携を果たしています。iOSデバイスで、画面を共有しながらのWeb会議が可能になりました。

iOSデバイス上で利用できる「Cisco Webex」のイメージ図

また「アダプティブローミング」によってWi-Fi接続時のローミング最適化も実現。ローミングパフォーマンスが改善されるだけでなく、それによってモバイルデバイスのバッテリーのもちも改善されることとなっています。「広い店舗での販売接客にAppleのモバイルデバイスを活用しているあるリテールでは、通信の切断がなくなったためにお客様対応のロスタイムが激減したケースもあります」と弓場は実際の事例をあげて説明しました。

Wi-Fi接続の最適化

シスコが実証した最適化されたWi-Fiによるメリット

AppleのモバイルデバイスとシスコのWi-Fiシステムのみで可能な高速ローミングのイメージ

さらにWi-Fiにおける“高速道路の優先レーン”ともいえる「ファストレーン」においても、シスコのWi-FiシステムはiOSアプリに最適化しています。たとえばカフェなどで公開しているWi-Fiをお客様が使う場合に、特定のお客様だけが回線を占拠していることで店舗の業務アプリの動作が遅延することがありますが、そういったことを回避して決済システムの処理を優先させることでお客様の満足度を向上させることが可能になります。

ファストレーンを有効化してWi-Fiの通信を最適化しているイメージ図

このファストレーン機能に関連し、会場では対応するアプリが紹介されました。いったん弓場は退場し、変わって株式会社サイエンスアーツ(旧社名 株式会社シアンス・アール) 営業本部 加納 佐有子氏が登壇して同社が提供するモバイルアプリ「Buddycom(旧名称Aldio Enterprise)」のデモが展開されました。

株式会社サイエンスアーツ
営業本部
加納 佐有子氏

他言語対応IP無線サービス「Buddycom」とは

「Buddycom」は、スマートフォンおよびタブレット用の「IP無線サービス」アプリです。スマートフォンやタブレットを無線機として利用できる。もちろん免許なども必要なく、ネットワーク環境さえあれば世界中どこでも通信でき、従来の通信機よりもコスト削減での業務効率向上が期待できます。

「Buddycom」製品ページより引用

「Buddycom」は、Wi-Fiおよび3G/4G通信でも利用できるほか、キャリアも問わず相互に接続、通信・通話ができ、同時双方向で音声によるリアルタイムグループコミュニケーションを実行できます。また、やりとりされた音声を自動的にテキスト化してログとして保存しておくことが可能です。さらに、通話音声を他言語、しかも複数の言語にリアルタイム翻訳して再生することもできるため、他国語しか使えない外国人労働者のいる現場でも、音声による正確なコミュニケーションが図れます。さらに、動画を送受信した、ユーザーの位置情報を確認しながらグループ通話ができたりもする、画期的なコミュニケーションツールです。

Buddycomの特徴(製品ページより引用)

「非常に有用なBuddycomですが、大きなポイントの1つはiOS版がシスコのWi-Fiシステムに最適化されていることです」と加納氏は説明しました。デモの終盤では、Buddycomを介して大阪のリモート会場とのコミュニケーションも図られ、会場は大きな盛り上がりをみせました。

Appleとシスコの協業によるセキュリティ機能「Cisco Security Connector(CSC)」とは

「Buddycom」のデモ後、セッションは再びAppleとシスコの共同ソリューションについての解説へと戻り、弓場が再登壇してセキュリティ面の話題へと展開していきました。

Appleとシスコの協業で生まれたセキュリティ機能、「Cisco Security Connector(CSC)」は、業界初となるiOSネイティブのセキュリティソリューションです。iOSの機能を拡張させて「Cisco Umbrella」「Cisco AMP for Endpoints」と連携させることでAppleのモバイルデバイスのセキュリティを確保するクラウドサービスです。

CSC概要

CSC概要

「本来iOSはセキュリティの高いシステムですが、デバイスからいったんネットワークに流れたデータはその限りではありません」と弓場は説明します。デバイスから外部に出たデータを盗聴される可能性は皆無ではなく、そこでCSCによって通信自体を暗号化することで公衆Wi-Fiなどでのデータ盗聴を防ぐという機能が搭載されています。また、不審なWebサイトへの接続を防ぐこともでき、その際はWebブラウザだけでなく、iOS上で発生する通信をすべて制御すると同時に、通信のログを保存して可視化することも可能になります。

CSCの動作概要図

働き方改革の推進によって、エンドユーザーがモバイルデバイスを使う状況も変化しています。自宅やカフェで企業から提供されたモバイルデバイスを使うケースも少なくありません。しかしその際も、CiscoのCloudを必ず経由することによって安全な通信が担保されることとなります。また、企業が支給したモバイルデバイスについては「カテゴリフィルター」によってSNSなど特定のWebサイトへのアクセスやアプリの通信を禁止して炎上案件を事前に防いだり、特定のデータの閲覧や保存を制限して情報漏洩を回避したりといった管理も可能となります。さらに、インシデントの発生でデバイスを紛失したり盗難されたりといった場合でも、通信ログを確認して情報漏洩の状況を確認することができるようにもなっています。ここでも、デモによって実際のCSCの動作が会場に示されていました。

CSCの動作概要図

CSCのカテゴリフィルターの動作デモ

このように、いくつものデモが交えられて終始和やかな雰囲気で進められたこのセッション。ビジネスの現場でモバイルデバイスの活用が加速していく中、今すぐ、あるいは数年先に向けてインフラを整えることが必要であることが強調されました。最後に再登壇した山口は「整えるべきインフラは、安全で信頼性の高い、高性能を常に提供できるCiscoの製品を選択することが、“成功の秘訣”です」とこのセッションを結びました。