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第 12 号 - Cisco insight

第 12 号 - 特集記事 - 2

自治体のサービス、業務の「デジタル化」はどのように進められているのか-
「Cisco 地方自治体向けセミナー」レポート

新庁舎がなくてもできる「全庁無線LAN化」の進め方-相模原市

相模原市 企画財政局企画部情報政策課 課長の二瓶 行氏は「無線LAN 化の取り組み」と題し、IT 資産のTCO(総所有コスト)の削減と、職員の生産性向上に寄与することを目的として取り組んでいる「庁内ネットワークの無線LAN 化事業」について紹介しました。

相模原市では、約 10 年前の平成 21 年度に、庁内ネットワークの障害耐性向上と、アクセス制御を目的としたネットワーク再構築事業を行いました。今回の「無線LAN 化」は、前回のネットワーク再構築から 10 年を迎えるタイミングで、自治体のIT 化や働き方改革の流れもあることから、よりTCO削減に寄与するネットワークへの刷新と職員の生産性向上に寄与することを目指すものとして準備が進められてきました。二瓶氏によれば、無線LAN 化に向けた取り組みは平成 25 年度より着手されていたといいます。庁内での無線電波状況の確認や、無線LAN 導入に対応したネットワーク管理運用基準の改定をはじめ、一部の拠点における無線LAN 導入の実証実験などを、数年かけて行ってきたそうです。特に自治体においては、事業入札のタイミングなどもあり、前年度までに調査にもとづいた綿密な計画を立てておくことが必要になると言います。同市では、平成 30 年度に本庁舎周辺や合同庁舎など 6 カ所、令和元年度に総合事務所や出先機関など 114 カ所の無線LAN 化を完了する計画です。

特に行政機関において、全面的な無線LAN 化をスムーズに進めるためのポイントとして、二瓶氏は「端末更新事業との一体的な推進」「綿密な現地調査」「TCO 削減をコミットした庁内での合意形成」の3点を挙げました。端末更新と無線LAN 化を同時に進めることで、ネットワーク設定を端末のキッティングと一緒に依頼でき、既存端末の設定変更にかかる手間を削減することができます。また、「現地調査」の際には、電波状況の調査だけでなく、建物の材質やレイアウト、アクセスポイントを設置する際の電源をどこからとるかといったことも、十分に確認しておくことが、短い作業期間の中でスムーズに機器設置を行うための重要なポイントになります。

相模原市
企画財政局企画部情報政策課 課長
二瓶 行氏

また、庁内での合意形成にあたっては、「無線LAN 化に必要な機器が低価格化しており、有線機器を単純に更新するのとほぼ同程度の経費で無線化が可能」という点と、今後の人事異動などの際に、「LAN 整備にまつわる作業が大きく削減できる」点を合わせて訴求したといいます。二瓶氏は「単年度ではなく、長期でのTCO(導入から廃棄までの経費総額)が削減できるという点で合意しておくことが重要になる」と述べました。

二瓶氏は、無線LAN 化による間接的な効果として「工夫次第でフリーアドレスやクリーンオフィスが実現できること」「ペーパーレス会議が自然発生的に実施されるようになったこと」「机に縛られない働き方が可能になったことで、庁内にテレワークへの意識が醸成され始めたこと」などを挙げます。今後は、新たに導入された無線LAN 環境をフル活用し、本格的なテレワークの実現に向けたデスクトップ仮想化環境やシンクライアントの導入、より本格的なペーパーレス環境を目指した複合機や認証機能付きプリンタの導入、更なる働き方改革への取り組みを進めるためにウェブ会議や遠隔窓口実現の可能性検討なども進めたいと考えているそうです。

「全庁の無線LAN 化事業は、機器更改などのタイミングを見て行えば、特別な費用負担を考えなくても実施できます。近年では、新庁舎建設のタイミングと合わせて全庁無線LAN 化を行う自治体も多いですが、既存の庁舎であっても、事前の調査を十分に行えば実現は可能です。そして、導入後はLAN ケーブルからの解放だけではないメリットも多くあることを実感しています」(二瓶氏)

行政機関が「共通基盤」を活用するメリットとは-ネットワンシステムズ

続いての講演は、ネットワンシステムズ 東日本第1事業本部 第1営業部 営業第3チーム マネージャーの三好 智之氏が行いました。ネットワンシステムズでは、埼玉県が整備を進めている庁内統合基盤(プライベートクラウド)の構築と運用にあたり、パートナーとしてサポートを行っています。三好氏は、その概要と、自治体で「統合基盤」を持つことのメリットについて紹介しました。

埼玉県では、サーバ群を、障害や災害に強いシステム基盤に置くと同時に、システムの導入や拡張のスピードが向上するといったクラウドのメリットを生かした運用を目指されています。また、システムを「自庁内」「県内のデータセンター」「県外のプライベートクラウド」のどこに設置するかを、要件に応じて柔軟に検討できるインフラを整備されている点も大きな特徴だといいます。

埼玉県における庁内システムの基本方針としては「セキュリティの向上」「庁内情報システムの集約」「利便性の向上」「運用の効率化」の4つがあり、ネットワンシステムズでは、そのすべてについてトータルなサポートを行っています。

例を挙げると、セキュリティ向上の施策としては、庁内ネットワークにAIによるネットワーク振る舞い検知機能を導入し、ネットワーク上を流れるデータの「振る舞い・異常性」から、リスクの高さをAI により判別・推定するため、まだ存在が広く知られていない脆弱性に対する攻撃を検知できるほか、顧客の環境内部でのトラフィックの監視を可能としています。

「庁内情報システムの集約」という点の例として、業務主幹課ごとに個別に調達され、運用管理やセキュリティ上の問題を抱えていたNAS を、クラウドベースのストレージサービスに集約する取り組みを進めています。これによって、セキュリティや信頼性が向上するほか、個別にNAS のハードウェアを調達する場合よりも、より低コストで効率的にストレージを導入できます。

「運用の効率化」にあたっては、運用業務へのRPA 導入によって、人的コストの削減や、インシデント発生時の対応スピードの向上を実現しています。ネットワンシステムズでは、システムの死活監視やアラート監視、拠点停電日のスケジュール反映といった定常業務に加え、ネットワーク上に想定外の通信が発生した場合のアラート通知や、ファイアウォールに緊急度の高い脆弱性情報が出された場合の通知といったセキュリティ関連業務をRPA で自動化し、運用コストの削減と対応の迅速化を図っています。

ネットワンシステムズでは、埼玉県やその他の自治体で成果を生んでいる「共同基盤」の事例を、他の自治体にも広く提案していく考えです。自治体内の各業務主幹や関連組織が共同で利用するプライベートクラウドは、調達および運用時のコストメリットが大きく、可用性や柔軟性にも優れます。また、専門家に運用を任せられることで、セキュリティレベルの向上も期待できます。

三好氏は「行政サービスの提供にあたっては、ソリューション視点ではなく、どのようなサービスを何のために提供したいのかという目的を最優先に、それに合ったシステムを選ぶことが重要です。今回紹介した共同基盤の構築や活用を含め、担当者のみなさんと一緒に考えながら、最適なIT環境作りをお手伝いしていきたいと考えています」と述べました。

ネットワンシステムズ
東日本第1事業本部 第1営業部 営業第3チーム マネージャー
三好 智之氏

現場と一緒に取り組んで見えた「児童相談所」のコミュニケーションが抱える課題

最後の講演は、「児童相談所における取り組み」と題して、シスコシステムズ合同会社 関東公共営業本部 アカウントマネージャーの矢部 健人が行いました。

近年、日本国内において、親による児童虐待や育児放棄による痛ましい事件が報道される機会が増えています。また、そうした事件が悲しい結果を招く過程において、警察や児童相談所、その他関係機関の間の「コミュニケーション不全」が原因のひとつになっているのではないかとの指摘もあります。また、自治体様ではこの様な社会問題に向き合い業務を日々遂行している実情があります。シスコは、ITのネットワーク分野で長い実績のある企業ですが、ネットワークは人と人、組織と組織をつなげ、その関係をより良いものにしていくテクノロジーでもあります。シスコでは、社会の子どもを取り巻く環境に対し、何らかの貢献ができないかと考え、児童相談所職員が抱える課題解決に向けた活動を、お客さまやパートナーと共に実行しています。

この活動を始めるにあたって、シスコでは、独自に児童相談所への勤務経験がある複数の人にヒアリングを行いました。そこから見えてきたのは、現場職員の過酷な労働環境でした。一つのケースを複数人で対応することから 1 人あたり 100 件以上のケースを担当することもある、そのため場合によっては土日祝日を勤務に充て、24時間体制に近い状況で業務を行っても、直接訪問ができない家庭が出てきてしまうことやその他活動が報われないこと時間を要することは珍しくないといいます。また、訪問記録や活動対応情報などを管理するシステムは存在するものの、デリケートな情報を扱う業務のため、PC の事務所外への持ち出しは厳禁とされており、システムへのデータ入力が職員の負荷になっているとのことでした。
それに加え訪問記録や活動対応情報などを管理するシステムは各県ごと更には各自治体などの管轄ごとに個別システムとなっておりシステム連携などの情報共有することができておらず多くの情報共有手段は電話、FAX などを駆使し連携業務を行っている実態も把握できました。

ヒアリングで得られた情報を吟味し、シスコでは児童相談所の現場にある課題として「人員不足」「職員同士・各機関との情報連携」「セキュアなテレワーク環境の整備」といったものがあると考えました。そのうち、特にシスコとしてサポートできる「情報連携」について、ある自治体で実証実験を行いました。シスコの提供するオンライン会議システム「Cisco TelePresence」によって、職員の労働環境、コミュニケーション環境に起こる変化と効果を把握することが目的です。

実証実験にあたっては、ICTの導入活用そのものが職員の業務負担を増やすリスクになり逆効果になり得ることを念頭に「職員および関係各所が簡単に自然に利用できること」を最重要課題としました。加えて「盗み聞きなどが発生しないような会議室の確保」「他拠点や自治体との継続的な協力関係の確立」「会議システムの安全かつ継続的な品質確保」についても配慮を行いました。

実証実験では、同一の県内にあるいくつかの児童相談所、子ども家庭支援センターをつなぎ、それらの拠点間で「Cisco TelePresence」によるミーティングが行える環境を整えました。また実証実験期間を通じて、操作トレーニングや試行会、隔月でのフィードバック会を行い、導入における課題や解決策は何かを、現場の職員とシスコが一緒になって考えるプロセスを重視しました。

約 1 年の実験導入を 5 月から開始し、既に現場からは「他の人と顔を見て話せることで温度感が伝わりやすい」「PC 画面の共有ができて便利」「紙が減った」といったポジティブなフィードバックに加え、「対応端末が各拠点に1台では足りないのではないか?」「外出先からでも会議に参加したい」「警察、病院、弁護士等の連携も、PC画面を共有しながら会議をしたい」といったリクエストも既に寄せられています。また、システムの利用方法に関するコールセンターへの問い合わせは今日現在で「 0 件」で、その点では「簡単に利用してもらう」という最重要課題については達成できる可能性が高いと考えられます。

今回の実証実験を通じて、子どもを取り巻く環境を変えていくためには、児童相談所だけでは解決困難な課題が多くあることも見えてきました。異なる自治体、管理管轄の違う団体や組織が横断的な協力体制を構築していくこと、そのための障害となっているカルチャーやプロセスを変え、新しいコミュニケーションのスタイルの選択肢を拡大していくことで「情報伝達のミスや遅れによって、最悪の結果に至るケースを少しでも減らせる可能性があり将来ICTのチカラで救えた命が一つでもあればこれ以上ない喜びではないでしょうか」と矢部は述べました。

シスコシステムズ合同会社
関東公共営業本部 アカウントマネージャー
矢部 健人

セミナーの終了後には、参加者による、シスコ東京本社のオフィスツアーが行われました。シスコで導入しているフリーアドレス環境や、ウェブ会議システムなどを実際に見ながら、そこで利用されているテクノロジーや導入の進め方などについて、活発な意見交換が行われました。