2017.1  第 6 号 特集記事-2

シスコシステムズ合同会社 社長 鈴木みゆき

企業のパフォーマンスを高める本当に効果的な働き方変革とは?
「シスコ コラボレーション サミット 東京 2017」レポート

日本でも多くの企業が取り組みを進め、政府もその後押しをしている「働き方改革」。そのためにテレワークや在宅勤務の導入が議論されることが増えていますが、本当にそれだけでいいのでしょうか。この疑問への答えを示すために、シスコは 2017 年 4 月 13 日、「シスコ コラボレーション サミット 東京 2017 」を開催。これからの企業に本当に必要な働き方改革とはどのようなものか、複数のセッションを通じて紹介が行われました。ここではそれらのセッションの概要を紹介します。目指すべき「働き方改革」の方向性が、明確に見えてくるはずです。

日本の労働生産性は先進 7 ヵ国中最下位、働き方改革は「待ったなし」

シスコシステムズ合同会社 社長 鈴木みゆき

今回の「シスコ コラボレーション サミット 東京 2017 」は、定員500名のところ、 1,200 名の方が応募。働き方改革やコラボレーション改革への関心が浮き彫りになりました。もちろん講演会場は満員となり、約 200 名の方々が別会場で参加。さらに WebEx によるオンライン配信も行われました。

ここに最初に登壇したのが、シスコシステムズ合同会社 社長の鈴木みゆきです。
鈴木は「いまや待ったなしの働き方改革が求められています」と述べた後、シスコはそのためのインフラ整備に積極的に取り組んでいると説明。これは政府が進める働き方改革の方向とも合致すると語ります。しかし日本の労働生産性は、先進 7 ヵ国中最下位であり、本格的な取り組みが欠かせないとも指摘します。
それでは他の先進国は、これまでどのような取り組みを進めてきたのでしょうか。鈴木はその一例として、ロンドンオリンピックを契機としたロンドンの変革を紹介します。
「オリンピック期間中、混雑した交通機関を避けるため、 75% の企業がテレワークを実施しました。また43%の企業が柔軟な業務ポリシーを採用し、 72% がネットワークインフラを改善しています。これらの変革を支えたのは、安全で信頼性の高いテクノロジーの活用です。シスコは日本でも、同様の変革を牽引するためのインフラを提供したいと考えています」。

cisco insight ロンドンオリンピックを契機とした改革

日本でもテレワークを導入する動きは加速していますが、働き方改革は十分に進んでいるとは言えません、と鈴木。「今回はそのためのソリューションを紹介します」と述べた上で、サミット冒頭の挨拶を締めくくりました。

シスコシステムズ合同会社 執行役員 コラボレーション アーキテクチャ事業担当 アーウィン・マッティー

次に登壇したのは、シスコシステムズ合同会社 執行役員 コラボレーション アーキテクチャ事業担当のアーウィン・マッティー。テーマは働き方改革に対するシスコのビジョンです。
「世の中は速いスピードで動いていますが、その中でテクノロジーの活用が二極化しています」とアーウィン。消費者のIT活用が急速に進化しているのに対し、企業内 IT はゆっくりとしか変化していないと指摘します。これに対してシスコは「ユーザ体験を中心に」「クラウドに接続」「付加価値の提供」という 3 つのピラー(柱)からなる戦略を打ち出し、企業内でも消費者と同様の IT 活用が行える環境を整備し続けてきたと説明します。

cisco insight シスコの戦略


変革に欠かせない新たなユーザ体験、それを可能にする Cisco Spark 2.0

このサミットは昨年も行いましたが、その時はクラウドサービスを全面に打ち出し、それにアクセスするアプリとして Cisco Spark を提供しました。この Cisco Spark で最も重視したのがユーザ体験です。ユーザ体験が変わらなければ、変革にはつながらないからです」。
さらにアーウィンは、その変革の中でも特に重要なのが、会議体験の変革だと指摘します。
「日常的な業務にチャット等のデジタルツールを活用している企業でも、会議では事前調整をメールでやり取りしたり、資料を紙で配布するなど、アナログの世界に戻ってしまいます。会議の準備から会議後の作業まですべてデジタル化するには、テクノロジーを意識せずにアクセス可能な、統合プラットフォームが必要です。これこそがシスコが提供しているものであり、これを活用することで何ができるのかを、オープンマインドで考えていただくよう、お願いしたいと考えています」。

シスコシステムズ合同会社 コラボレーション アーキテクチャ事業 コラボレーション営業部長 石黒 佳祐

シスコはこの統合プラットフォームでさらに進化させるため、Cisco Spark 2.0 と Cisco Spark Board を発表。これらについて、シスコシステムズ合同会社 コラボレーション アーキテクチャ事業 コラボレーション営業 部長の石黒 佳祐が、アーウィンのセッションの後、具体的な説明を行いました。

cisco spark 業界最先端のコラボレーション製品群

Cisco Spark 2.0 は、メッセージング、コーリング、ミーティングの 3 つのカテゴリーをカバーした、チーム コラボレーション プラットフォームです。しかも多くの人が無料で使えるサービスとして提供されています。しかし日本ではまだ、このチームコラボレーションという考え方が、十分に根付いていないと石黒は指摘。ワークスタイル変革は長い旅になるだろうと語ります。

cisco insight チームコラボレーションという考え方

「私自身、お客様から『ワークスタイルを変革するにはどうすればいいのか』と聞かれることが多いのですが、その時の私の答えは『変えてはいけない』というものです。日本ではワークスタイルを変えたくない人がまだ多く、トップダウンで変革を進めてもうまくいきません。重要なのは、全ての従業員が自ら『変わりたい』と感じることであり、去年はそのためのアプローチとして『定着化』を重視しました。そして今年のテーマは『加速化』です。オンプレミスとクラウドを効率的に融合し、ハイブリッドクラウドによるイノベーションを起こすことで、新たなユーザ体験の提供を目指しています」。

個人の生産性向上はもう限界、これから求められるのはチームのパフォーマンス

ここで石黒は、「そもそもワークスタイル変革とは何か」という問題を提起。ワークスタイルは「ワーク」と「スタイル」に分けることができ、いま多くの企業で進められているのは「スタイル」の変革に過ぎないと指摘します。在宅勤務やテレワーク、フリーアドレス、モバイル対応などでスタイルは変化しつつありますが、仕事=ワークの生産性は、必ずしも向上してないと言うのです。

cisco insight 働き方改革「ワークスタイル」変革

 「スタイルが変化しても生産性が変わらなければ、完全な成功とは言えません。しかし個人の生産性を上げることは、もはや限界に来ています。そこで必要になるのがチームワークです。すでに欧米では、個人でパフォーマンスを出すというのは、レガシーなアプローチだと考えられています。個々人の作業パフォーマンスに加え、チームワークのパフォーマンスを生み出すことが成長への必須条件であり、ここにテクノロジーのサポートが必要になります」。

cisco insight 個人の生産性を上げることはもはや限界に

そのテクノロジーについて「組織に閉じたコミュニケーションツールでは不十分です」と石黒。組織外の人々とのコミュニケーションまでカバーしたテクノロジーでなければ、結局は電話やメールを使うことになり、形式的なやり取りを排除できないからだと言います。「外も含めてフラットかつ簡単にコミュニケートできるようになれば、生産性は一気に変わるはずだとシスコは考えています。これを可能にするのが Cisco Spark なのです」。

cisco insight 横連携コラボレーションによる新しいコミュニケーション形態

Cisco Spark ではそのために、モバイルとクラウドを組み合わせ、誰にでも簡単にモバイルから参加できる会議環境を実現。メールアドレスだけで無料で試すことができるようにしています。その最初のバージョンではすでに、テキストを書く、音声を聞く、話す、ファイル等を共有する、といった機能を提供。そして Cisco Spark 2.0 では、画面上で描くという機能が追加されています。

cisco sparkで出来ること

Cisco Spark で可能になるフラットかつ簡単なコミュニケーション

それでは Cisco Spark を導入した企業は、実際にどのような活用を行っているのでしょうか。石黒はその一例として、サツドラホールディングス株式会社の事例を紹介。代表取締役の富山 浩樹氏が札幌からサミット会場に、Cisco Spark によるビデオ会議で参加し、同社の取り組みを説明しました。

サツドラホールディングス株式会社 代表取締役の富山 浩樹氏

サツドラホールディングスは、北海道を中心に約200店舗を展開するドラッグストア事業を中核としつつ、多様な事業領域への拡大も積極的に推進している企業。社員のみならずパートナー企業の働き方もより良い方向へと導くため、 IT を積極活用しています。その一環として導入されたのが Cisco Spark であり、これをモバイルで活用するため、 iPhone や iPad の全社導入も行っていると言います。
「実際に東京のショールームで Cisco Spark を体験し、機器がシームレスにつながりスマホとの相性もよく、説明書なしでも簡単に使えると感じました」と富山氏。北海道は広いため、各地から従業員が集まるのが大変ですが、Cisco Spark の導入によってコミュニケーションの頻度を高めることが可能になったと言います。「今後は Cisco Spark を軸に、社内の仕組みや制度を作っていく計画です」。
またもう 1 つの事例として、亀田メディカルセンターのケースも紹介。 CIO の中後 淳氏と情報戦略室の太田 良二氏が登壇し、同センターの取り組みを紹介しました。亀田メディカルセンターは、千葉県鴨川市の亀田総合病院を中核として複数の施設を運営しており、約 4,000 名のスタッフが業務に従事。高いホスピタリティを追求し続けている医療機関として広く知られています。

亀田メディカルセンター CIOの中後 淳氏

「亀田メディカルセンターとシスコとの協業は 2014年に始まりました」と中後氏。そのきっかけとなったのは、 2 ヵ年計画で実施した Wi-Fi 総入れ替えプロジェクトだったと振り返ります。その後、データサイエンスチームの設立と同時にシスコのデータ仮想化ソリューションを日本で初導入。 2015 年に Cisco WebEx 、 2016 年に Cisco Spark を導入し、今年は「亀田スマホ構想」の実現に向けた取り組みを推進していると言います。

亀田メディカルセンター 情報戦略室 太田 良二氏

Cisco Spark Board はレッド・ドット・デザイン賞の「Best of the Best award」を受賞

これらの説明や事例紹介の後、壇上では Cisco Spark 2.0 を活用した会議のデモも行われました。このデモの中で、Cisco Spark 2.0 に対応した Cisco Spark Board の70インチモデルを日本初公開。これはパソコン不要、ケーブル不要で Cisco Spark での会議が行える大画面デバイスです。

cisco insight デザインで変わる「体験」

使いやすさはもちろんのこと、自然なユーザ体験を徹底的に追求したデザインになっており、ドイツの国際的なプロダクトデザイン賞である「レッド・ドット・デザイン賞( red dot design award )」において、「 Best of the Best award 」も受賞しています。この受賞は IT ベンダーが作った製品としては、異例の快挙だと言います。

デモではまず、 iPhone の画面で Cisco Spark のアプリを立ち上げ、クラウド上に用意された「チームの部屋」に入室。ここで Cisco Spark Board を立ち上げると、自動的に無線で iPhone とペアリングし、画面が表示されます。その後は iPhone を操作することで、クラウド上にあるパワーポイントや写真、エクセル等のファイルにアクセスし、Cisco Spark Board に表示。指やペンを使い、画面に線やイラストを書き込むこともできます。線の書き込みは、同時に2本まで可能。同じ画面を iPad で表示することもでき、iPadで線を書き込むことも可能です。つまりクラウドを介し、離れた場所にいる人がデジタル ホワイトボードを共有できるのです。描画のデータは全て暗号化した上でやり取りされ、クラウドにも暗号化された状態で保存。高いセキュリティも確保されています。

IoT との連携でさらに可能性が拡大、開発者コミュニティも積極的に支援

この後、開発者コミュニティと今後の Cisco Spark の広がりについて、シスコシステムズ合同会社 執行役員 最高技術責任者 兼 イノベーションセンター担当の濱田 義之が解説。 IoT と Cisco Spark を連携させることで可能性が大きく広がること、シスコが開催しているバーチャルハッカソンでも、Cisco Spark が最も人気のあるテーマになっていることが紹介されました。

シスコシステムズ合同会社 執行役員 最高技術責任者 兼 イノベーションセンター担当 濱田 義之

「このハッカソンは韓国と日本で行いましたが、日本側の提案の大半は Cisco Spark 関連のものでした。また受賞したのも、Cisco Spark からスマホを起動して写真を撮影し、Cisco Spark に送信するというものです。制作したのは東大の大学院生ですが、簡単に作ることができたそうです」。

cisco insight ハッカソンイベントの様子

その一方で開発者コミュニティの成果としては、株式会社タグキャストの「 InspectationPen 」を紹介。これはカメラと測位機能を装備したペン型デバイスであり、スマホアプリと連携させることで、位置情報の取得や写真の転送、スマホ画面に表示された地図上への写真配置等が可能です。これをさらに Cisco Spark と連携させることで、地図上の写真を関係者に伝達することができるのです。

cisco insight Inspection Pen

「ビジネスの現場では多様なアプリが利用されており、いまは人がそれらを人がつないでいますが、これからは Cisco Spark で結びつけたいと考えています」と濱田。これからの Cisco Spark は人と人をつなぐだけではなく、人とモノ・機器がコミュニケートする基盤になっていくと語ります。「しかしこれをシスコだけで実現することはできません。そのため開発者コミュニティの支援を積極的に進めており、その一環として Cisco Spark 開発環境ポータルサイトも立ち上げました。誰でも無料ですぐに開発をスタートできるので、ぜひ気軽に試してください。次回のコラボレーションサミットでは、デベロッパーサミットも共催したいと考えています」。

Cisco Spark 開発環境ポータルサイト

全てのセッションを終えた後は、セミナー会場と体験会場の2会場で、実機を使った複数のデモを展開。参加者が実際に Cisco Spark Board に触れながら、その使い勝手を確かめていました。スピーディなファイル表示やスムーズな拡大・縮小、ビデオ会議のなめらかな映像やクリアな音声、そして双方向で同時に書き込めるホワイトボード機能等を体験した人々からは、驚きの声が上がっていました。

デモ会場の様子

会議のあり方はもちろんのこと、 IoT を活用した業務プロセス改善にも貢献する Cisco Spark 2.0 。これを活用することで、人々の働き方は今後確実に変わっていくはずです。今回のコラボレーションサミットへの参加を通じて、多くの方がそのことを実感したのではないでしょうか。