2017.1  第 5 号 特集記事-3

東 一成氏

機械学習とマーケティングオートメーションを活用した
ダイレクトマーケティングの成功パターン

機械学習やマーケティングオートメーションを活用し、精度の高いダイレクトマーケティングを実現したい。このような要望をお持ちの B2C企業は少なくないはずです。それでは具体的にどのような取り組みが必要なのでしょうか。ビッグデータ活用サービスおよびデジタルマーケティングサービスを提供する株式会社ブレインパッドの東 一成氏に、マーケティングオートメーションの活用方法や導入時の注意点、機械学習の活用パターン、デジタイゼーションがもたらすダイレクトマーケティングの最新動向等についてお聞きしました。

効果的なマーケティングの実施には自動化が不可欠

東 一成氏
株式会社ブレインパッド
ソリューション本部
マーケティングオートメーションサービス部
部長 東 一成 氏

競合に打ち勝ち、収益を高めていくには、データドリブンである必要がある。このような認識が、日本企業の経営層にも広がりつつあります。

「最近ではビッグデータと機械学習の活用をトップダウンで指示されるケースも多くなっています」と語るのは、株式会社ブレインパッド ソリューション本部マーケティングオートメーションサービス部 部長の東 一成氏。同社は2004年の創業以来、データによるビジネス創造と経営改善を支援するサービスを提供し、現在約60名のデータ分析専門家(データサイエンティスト)を擁するデータ活用のリーディングカンパニーです。
データの分析・活用を支援するビッグデータ活用サービス、自社製品をはじめマーケティングソリューションを提供するデジタルマーケティングサービスを軸に、クライアント企業のデータ活用をワンストップで支援できる体制を整えています。
「データマイニング等のデータ活用は20年前から存在しますが、現在ではチャネルやデータ量が増え、スピードも速くなっており、ツールをどのように使うかが重要になっています。増大したデータやチャネルは新たな経営資源であり、これを活かす『戦略』を実現するには、日々実行される施策の『戦術』を強化しなければなりません。マーケティングオートメーションや機械学習は、そのための重要な道具だと言えます」。

それではこれらの道具によって、ダイレクトマーケティングはどのように強化できるのでしょうか。

cisco insight 新たな経営資源を活かす戦略を実現するためのIT戦略

まずマーケティングオートメーションは、徹底的なデータ連携とキャンペーンの自動実行によって、一人で年間千以上の施策実行を可能にすると東氏。もし戦術として「手動で」「月に一度」「全員に同じ文面」のメール配信を行っているのであれば、マーケティングオートメーションを駆使した競合他社の戦術には太刀打ちできないと言います。

「効果的なダイレクトマーケティングを実現するには、あらゆる顧客のシチュエーションに応じたシナリオを用意し、適切なものを適切なタイミングで実施しなければなりません。シナリオのタイプとしては、売り手都合でのプッシュ型である『Proactive』タイプと、買い手に合わせたプル型の『Reactive』タイプがあり、後者をきちんと行うと前者の4倍の効果があると言われています。このような『顧客の動きに合わせたキャンペーン』の実行はかなり複雑になる上、数多くのキャンペーンを同時に実行する必要もあるため、人手で行うことは困難です。また顧客から嫌がられないよう、メール数の上限設定等で過度なメール配信を防止するプレッシャー管理も必要です。これらを適切に実施するには自動化が不可欠なのです」。

cisco insight 多くのキャンペーンが複雑に同時実行される

その一方で、マーケティングオートメーション導入時に混迷するケースも少なくないと指摘。導入経験のないコンサルタントが、初めて導入する顧客にヒアリングして言われた通りに作る場合には、このような状況に陥り易いと語ります。「マーケティングオートメーションでは一見簡単に見えることが実は非常に難しく、十分な経験がないと『できないこと』の判断がつきにくいという問題があります。また豊富な導入経験のある人材もまだ多くありません。まずはシンプルに実績のあるシナリオからスタートし、予測分析やレコメンデーションを組み合わせた形で、段階的に効果を上げていくことをお勧めします」。

機械学習を活用しマーケティングオートメーションをさらに強化

次に機械学習に関しては、マーケティングオートメーションを高度化する手段として活用できると語ります。

「まず、機械学習は基本的に何ができるのかを把握する必要があります」と東氏。主に分類、回帰、クラスタリング、併売分析、異常値発見が可能だと言います。「それぞれにアルゴリズムが山のようにありますが、これに関しては後で考えるというスタンスで構いません。実務への応用で重要なのは『何をやりたいのか』を明確にすることであり、これに関しては実務を知っているデータ加工の得意なSEの方が、ビジネスとデータを知らない統計の専門家よりも向いていることが多いようです」。
実際の活用パターンとしては「誰が買うかを予測して当てる」「何を買うかを予測して当てる」「同じような振る舞いのグループに分ける」の3パターンを応用し、マーケティングオートメーションに組み込んでいくことになると説明。予測モデル構築に使用するデータベースは、行数だけではなく項目数の多さが重要であり、数百~数千項目で構成されるものが必要になると言います。また、予測確率のためのスコアリングを実施するのであれば機械学習的なアプローチ、要因の発見を行うのであればデータマイニング的なアプローチが適しているとも説明します。

cisco insight 機械学習の活用パターンについて

cisco insight 予測分析のアウトプット活用

顧客とのコミュニケーションをどのように最適化するかも重要です。顧客の動きや嗜好、セグメントに合わせた形でOne-to-OneキャンペーンをReactiveに実施し続けながら、「適切なタイミング」「適切なオファー内容」「適切なプレッシャー管理」のもと、顧客との対話を重ねていくことが求められます。

最近ではモバイルデバイスの急速な普及によって、顧客自身がセンサーの塊であるスマートフォンを持ち歩くようになっており、あらゆる行動データが取れるようになっています。これらのデータをどのように活用するのかも重要なテーマだと東氏は指摘します。例えばCisco CMXを活用すれば、3点測位技術を用いたWi-Fiデバイスの位置測定によって、GPSの届かない屋内での顧客行動を数m以内の誤差で把握可能です。ここで得られた店舗入店や店舗前通過等のデータを、ECサイトでの行動やキャンペーンへの反応等と組み合わせることで、マーケティングオートメーションのためのイベントトリガーとして利用できます。

cisco insight Cisco CMXによる位置情報と連動したパーソナライズ

「例えば3日前にある商品をWebで閲覧し、その後店舗の前を通過している顧客には、閲覧商品と同一ジャンルの商品情報を店舗情報と共にパーソナライズメールとして送付するというアプローチが考えられます。ただし実際の効果はやってみないとわからないので、トライアンドエラーを繰り返しながら独自のノウハウを蓄積していく必要があります」(東氏)。

デジタル化された消費者の現実世界の行動情報を活用し、顧客とより良い関係性を構築できるか否かは、今後の事業価値を大きく左右することになるでしょう。このような環境で競争優位を確保するには、データ収集、蓄積、分析、活用の戦術強化が、極めて重要になるのです。

株式会社ブレインパッド
http://www.brainpad.co.jp/