2017.1  第 5 号 特集記事-1

トッド ナイチンゲール

「Cisco Meraki」記者説明会レポート
~クラウドでネットワーク運用をシンプル化する Cisco Meraki
その最新ポートフォリオと日本市場へのアプローチ~

ここ数年で急速に進みつつある、企業におけるクラウド活用。クラウドサービスを社内で活用するため、オフィスフロア全域へのWi-Fi導入を行う等、社内ネットワークの再整備も進みつつあります。ここでぜひ考えたいのが「ネットワーク機器もクラウドで管理できないか」ということ。これによってネットワークの運用管理は、驚くほどシンプルになるからです。このようなニーズに応えているのがCisco Meraki。それではCisco Merakiは現在どのようなポートフォリを持ち、日本市場ではどのように展開されているのでしょうか。2016年11月18日に記者説明会が開催されたので、その概要を紹介します。

シンプルさが高く評価され、世界中で数多くの組織が導入

トッド ナイチンゲール
Cisco Meraki
シニア バイス プレジデント 兼 ジェネラル・マネージャー
トッド ナイチンゲール

「1990 年代は記憶に頼って車を運転し、友人に連絡する時も電話番号を憶えておく必要がありました。しかし現在では Google Map がナビゲートを行い、電話も相手を選ぶだけ。このようなことが可能なのは、私が持っているスマートフォンが、常にネットワークにつながっているからです」。

このように話を始めたのは、Cisco Meraki でシニア バイス プレジデント 兼 ジェネラル・マネージャーを務めるトッド ナイチンゲール。彼はこれまで 15 年にわたってネットワークと無線の分野で技術部門を率いてきた経験を持ち、シスコに買収される前の Meraki Inc. に入社後は、戦略とソリューション アーキテクチャ チームを管轄してきた人物です。

「テクノロジーのパワーによって、私たちの個人生活はシンプルで便利になりました。しかし企業や学校、政府機関では、この爆発的なテクノロジーを本当に活用できているでしょうか。テクノロジー活用のハードルに、多くの組織が苦戦しているように見えます」。 このハードルを解消するのが Cisco Meraki の使命だとトッド。強力なテクノロジーをシンプルな形で提供し、これまで活用が進まなかった領域に、新たなパワーをもたらしていくと言います。「特に日本では、この 1 年でクラウド活用が急速に進みました。現在では日本の組織のうち 77 %が、何らかの形でクラウドを使用しています。これは私どもにとっても、大きなチャンスをもたらすはずだと期待しています」。

cisco insight 日本で加速するクラウドの導入

それでは Cisco Meraki は、どのようにしてパワフルなテクノロジーをシンプル化しているのでしょうか。トッドはここで「Cisco Digital Network Architecture(DNA)」の概要を説明します。シスコは「仮想化」「自動化」「分析」「クラウドサービスの管理」で構成される Cisco DNA というオープンなプラットフォームを提供。これによって、多様なソリューションを実現できるようにしています。Cisco Meraki もこの Cisco DNA に基づき、ネットワークのクラウド管理によって IT 運用をシンプル化しているのだと説明します。

cisco insight Cisco Digital Network Architecture

Cisco Merakiでは、各ネットワーク機器がクラウドサービスと接続され、管理情報がやり取りされます。管理者はWebブラウザで利用できる「Meraki Cloud Dashboard(ダッシュボード)」にアクセスし、機器の設定や稼働状況の確認、トラフィックの状態などを、グラフィカルなインターフェースで集中的に行うことができます。以前のネットワーク危機管理は、キャラクターベースのコマンドラインで行うのが一般的でしたが、Cisco Merakiではコマンドラインを使う必要はありません。管理機能にアクセスするためにtelnetやSSHを使う必要もなく、管理コンソールを接続するためのシリアルポートすら存在しません。

このようなシンプルさは世界中で高く評価され、すでに数多くの企業や学校がCisco Merakiを活用しています。その規模も多岐にわたっており、小規模なIT部門しか持たないところから、大規模なIT組織を擁するところまで、様々な組織での導入が進んでいると言います。Cisco Merakiは日本市場でも急成長しています。この1年で新規顧客数の成長率は、400%に達しているのです。

cisco insight 日本での成長が加速化しています

「Meraki が初めての製品として Wi-Fi アクセスポイントを出荷したのは 2006年でしたが、当初からダッシュボードをテクノロジーの中核に位置づけていました」とトッド。その後、製品ポートフォリオを拡大し、4年前にシスコがに買収してされてからも新製品をリリースしていますが、この基本姿勢は変化していないと語ります。
それでは現在のCisco Merakiには、どのような製品がラインアップされているのでしょうか。

製品ラインアップを段階的に拡大、日本語化されたダッシュボードも提供

cisco insight Cisco Meraki 製品群

ず紹介したいのが、Wi-Fiアクセスポイントの「Meraki MR」です。これは複雑なエンタープライズ環境での利用を想定して設計されており、複数のアンテナで通信品質を向上させる MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)や、子機側の位置や距離を判別して電波を最適化するビームフォーミング、複数のチャネルを結合して通信速度を高めるチャネルボンディング等、高度なテクノロジーが採用されています。これによって、ビジネス アプリケーションに求められる高い通信速度と信頼性を実現しています。

次にリリースされたのが、セキュリティ アプライアンス「Meraki MX」と、「Meraki MS」スイッチです。Meraki MXは、セキュリティ アプリ制御や次世代ファイアウォール、コンテンツ フィルタリング、自動VPN等の機能を装備する、包括的なUTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)製品です。これによって高いセキュリティを確保しながら、WAN 帯域の最適利用が可能になります。Meraki MSは、全ポートがPoE(Power over Ethernet:イーサネットポートによる給電)に対応可能なギガビット アクセス スイッチ。ネットワーク全体の可視化や管理のシンプル化、導入コスト削減などを実現し、クラウドのメリットを最大限に引き出せるようにします。

シスコによる買収後も、モバイル端末管理ツール「Meraki Systems Manager(SM)」や、VoIP(Voice over IP)で通話できる電話端末「MCコミュニケーションズ」(日本での発売は未定)をリリース。そして直近では、セキュリティカメラ「Meraki MV」の提供も開始しています。

「Meraki MVはCisco Merakiの歴史の中でも、特にエポックメイキングな製品だと言えます」とトッド。これによってクラウドのパワーを、本当の意味でフルに引き出すことが可能になるからだと言います。カメラを設置してネットワークに接続するだけで利用を開始でき、NVR(Network Video Recorder)やDVR(Digital Video Recorder)といった機器を設置する必要もありません。設定・管理はクラウドで行うことができ、革新的なモーション分析機能も搭載。セキュリティカメラを驚くほどシンプルに導入できるのです。

これら全ての製品を集中的に管理するのがダッシュボードです。これはすでに日本語対応も行われており、日本のユーザーも簡単に利用できるようになっています。記者説明会では日本語化されたダッシュボードのデモも行われたので、ここでその一部を簡単に紹介します。

cisco insight Cisco Merakiデモ

この画面は、Wi-Fi アクセスポイントの設定画面です。全ての管理項目が日本語で記述され、SSID 毎の設定内容が一目でわかるようになっています。

cisco insight Cisco Merakiデモ

次は Wi-Fi アクセスポイントのアクセス制御の設定画面です。誰でもアクセスできる「非暗号化」や、WPA2等の「暗号化」、MACアドレスによる制御等が選択できます。また認証ページ(Splashページ)をどのように表示するかも選択できます。

cisco insight Cisco Merakiデモ

認証方法として「Facebook Wi-Fi」を利用できるのも、Meraki MRの大きな特長です。これによって、FacebookのIDを利用して、シンプルに公衆無線LANを提供することが’できます。また、利用者の属性情報も取得可能になるので、将来のサービス提供に活用することが出来ます。

cisco insight Cisco Merakiデモ

ネットワークの利用状況も直感的に把握できます。この画面では、特定アクセスポイントのトラフィックの推移(上の時系列グラフ)、アプリケーション別のトラフィック(右側の円グラフ)、端末毎のトラフィック量の一覧(下の表)が表示されています。各端末のリンクをクリックすると、その端末がどのようなアプリケーションで帯域を消費しているのかも把握できます。

cisco insight Cisco Merakiデモ

CMX ロケーション分析の画面では、アクセスポイントを設置した場所への訪問者数の推移や、1日あたりの滞在時間、リピート訪問率等を把握できます。このような情報を店舗のマーケティング等に活用することで、アクセスポイントの設置をビジネスメリットにつなげていくことが可能になります。

日本市場により根ざした事業展開を推進

眞崎 浩一
シスコシステムズ合同会社
執行役員 エンタープライズネットワーク事業担当
眞崎 浩一

トッドのプレゼンテーションと一連のデモの後、シスコシステム合同会社 執行役員の眞﨑 浩一が登壇し、日本市場におけるCisco Merakiの取り組みについて解説。眞﨑は創業期のソフトバンクで営業企画部門の責任者を務め、その後米国に渡り、伊藤忠商事の新規ビジネス開発の責任者としてITベンチャーとの協業や新規事業開発等を経験した後、9年前にシスコに入社しました。ICT業界で30年以上にわたる経験を有する人物です。

cisco insight Merakiのポジショニング

「Meraki のポジショニングですが、シスコが以前から提供してきたオンプレミス製品に対し、クラウド管理に特化した製品という位置づけになります。Merakiは新たな選択肢であり、オンプレミスと組み合わせたハイブリッドな活用も可能です。このMerakiの利用を日本で広げていくため、製品、販売、マーケティングの3分野において、日本市場により根ざした事業展開を進めています」。

cisco insight Cisco Meraki日本市場により根ざした事業展開

まず「製品」に関する取り組みとしては、ダッシュボードの日本語化が最も重要だと指摘。「これは過去2年間日本で Meraki を販売する中で、お客様やパートナーから最も望まれていたものであり、このニーズに対応するため全く手を抜くことなく、徹底的な日本語対応を行いました」と語ります。

次に「販売」に関しては、営業組織の強化やサポートチームの拡充が行われています。この1年間で、営業組織は 2.5倍、サポートチームは2倍に増員しているのです。また販売チャネルも拡大しており、業種別ソリューションの展開も進められています。その中で特に重視しているのが、ホテル・レストラン・観光、リテール・小売・多店舗、文教の3分野です。これらの分野では、様々な場所に設置された多数のアクセスポイントを一元管理したいというニーズが高い上、そのためのIT専任者を確保しにくいという課題を抱えているからです。

cisco insight Cisco Meraki日本市場における販売戦略

「マーケティング」では「See Try Buy(見て、試して、ご購入)」という戦略に基づく取り組みを推進。この戦略はグローバルに展開されているものですが、日本では会場を用意して参加者に集まってもらうオンサイトセミナーや、インターネットを介したオンラインセミナーを定期的に開催して「Meraki を見てもらい」、セミナー参加者には無償でアクセスポイントを提供することで「お試ししてもらい」、実際に効果を確かめてから「ご購入いただく」という流れで販売を行っていると説明します。

cisco insight Cisco Merakiマーケティング戦略

さらに眞崎は日本国内における導入事例も紹介。玉川聖学院とダイヤモンドダイニングのケースを取り上げ、それぞれの課題とソリューション、効果について説明しました。

cisco insight Cisco Meraki事例 玉川聖学院

まず玉川聖学院のケースは、Meraki MRとSMを活用した端末管理の事例です。最近では学校でもタブレット等の導入が急速に進んでおり、そのためのWi-Fi環境整備も行われるようになっています。しかし学生の多くは個人所有のスマートフォンを持ち歩くようになっており、Wi-Fiへのアクセスを不用意に解放してしまうと、授業中に不適切なサイトにアクセスしてしまう危険性もあります。玉川聖学院ではこの問題を解決するため、アクセスポイントからスイッチ、セキュリティまでフルスタックでMeraki製品を導入、Meraki SMのMDM(モバイルデバイス管理機能)を活用することで、Wi-Fi利用をきめ細かく制御しています。これによってゲームや SNSの利用に制限をかけながら、一定のルールに基づいた先進的なICT教育を実現しているのです。

cisco insight Cisco Meraki事例 Diamond Dining

ダイヤモンドダイニングのケースは、レストラン来店客の滞在時間を長くすることを目的とした、外国人観光お客向けのフリーWi-Fiの事例です。レストランではドリンク類の利益率が高く、来店客の滞在時間が長いほどドリンク類のオーダーが増え、利益も増大する傾向があるからです。フリーWi-Fiの提供方法としては、Facebook Wi-Fiを採用。わずか1ヵ月で70店舗への展開を実現し、実際に顧客単価も上昇、Facebook Wi-Fiから得られた顧客属性データのマーケティング活用も可能になっています。

眞﨑の説明の後、再びトッドが登壇。「Cisco Meraki はこれからも日本への継続的な投資を行い、製品の日本語化やポートフォリオの拡充、販売パートナー支援などを通じて、日本市場にコミットし続けていきます」と締めくくりました。