2016.11  第 4 号 特集記事-2

高橋 慎介

「Cisco Start」記者発表会レポート
~パートナーと共に順調に販売を伸ばしてきた Cisco Start
新たに 3 つの戦略を掲げトータルブランドの実現を目指す~

2015年9月に「Cisco Start」が発表されてから約1年。日本の中小企業のニーズを満たすことを目的にリリースされたこのラインアップは、着実に導入が広がっています。それではシスコは「Cisco Start」の展開をこれまでどのように進め、この1年間でどれだけシェアを拡大したのでしょうか。そして今後の戦略は。9月28日に「Cisco Start」に関する記者発表会が開催されたので、その概要をここで紹介します。

市場シェアが大幅に拡大、SOHOルータシェアが9%から16%に

「Cisco Start」が発表されてから早くも1年が経過しました。シスコは 2016年4月にも Cisco Startに関する2回目の記者発表会を行い、ラインアップの拡充を発表。今回はそれに続く、3回目の記者発表会となります。
会場ではシスコシステムズ合同会社 専務執行役員 パートナー事業統括の高橋 慎介が登壇し、Cisco Startのコンセプトを改めて説明。IT人材が不足している従業員数100人以下の中小企業にフォーカスし、セキュリティや運用管理の課題を解決することで、中小企業を積極的に支援していくと述べました。

高橋 慎介
シスコシステムズ合同会社
専務執行役員 パートナー事業統括
高橋 慎介

「中小企業の中には、管理機能が十分ではない”アンマネージド”のネットワーク機器を使い続けているところが少なくありません。その結果、実際のネットワーク構成がどのようになっているのか把握することが困難になっており、セキュリティ面でも問題に直面するようになっています。このようなお客様が手軽に導入できるマネージド製品を提供することで、中小企業が IT化がさらに推進され、競争力強化にも貢献できると考えています」。

cisco insight 販売パートナーの拡大

このようなコンセプトと、設計段階から中小企業を意識した製品群が高く評価され、販売パートナーの数も急速な勢いで増大しています。Cisco Startが発表された直後の 2015年10月はわずか80社だったパートナーが、現在では1757社にまで増えているのです。その活動エリアも、首都圏だけではなく全都道府県を網羅。全国のパートナーを通じて販売、サポートを行える体制ができています。その中にはミッドレンジ以下のネットワーク機器を、シスコ製品に統一しようと考えているインテグレーターも存在すると高橋は言います。

cisco insight マーケットシェアの拡大

このような”勢い”は、マーケットシェアにも反映されています。大企業向けのネットワーク機器市場において、シスコは企業向けルータ、スイッチ、無線LANのいずれにおいてもトップシェアを獲得していましたが、最近では中小企業向けのネットワーク機器のシェアも急速に増大しているのです。例えばSOHOルータ市場では、昨年の9%から16%へとシェアを拡大。Cisco Startの中核製品である「Cisco 841MJ」が、価格性能比の高さを武器に売上増加を牽引しました。さらにこのルータ導入を契機に、イーサネットスイッチや無線LANの導入へと広がるケースも増えていると言います。
具体的な導入事例としては、株式会社オナガメガネと医療法人社団 石橋内科広畑センチュリー病院のケースが紹介されました。

cisco insight ユーザー事例 製造 オナガメガネ様

オナガメガネは「100%日本製」にこだわる福井県のメガネ卸売ですが、販売管理ネットワークが老朽化し、セキュリティ面の不安を抱えていました。ここにCisco Startルータを導入することで、全国から安全かつリアルタイムに在庫情報へアクセス可能な、新たな販売管理ネットワークを構築。営業の機動力を高めることで、販売機会損失の解消が目指されています。

cisco insight ユーザー事例 医療 石橋内科広畑センチュリー病院

石橋内科広畑センチュリー病院は、「患者様の求める手作りの医療」を理念とし、急性期治療を終えた患者の寝たきりの防止と家庭復帰の支援という明確な目的を持って、多数の専門スタッフが一人一人の患者が必要としている医療と介護を提供しています。ここでは複数ベンダーのネットワーク機器が混在していたため、院内ネットワークの全体像が把握しにくくなり、問題発生時の対応も困難になっていました。そこで Cisco Startシリーズで機器を一新し、対応ベンダーも一本化。安定した院内ネットワーク基盤を確立することで、患者への対応に専念できる環境を整備しています。

これに引き続き、ディストリビュータの1社であるダイワボウ情報システム株式会社の取締役販売推進本部長 松本 裕之氏によるビデオメッセージも披露。「戦略に共感して取り扱いを始めましたが、販売は着実に伸びています。これからもこの市場を活性化するため、シスコには中小企業にとってわかりやすい製品とメッセージを期待しています」と語りました。

中小企業のニーズに合わせた Cisco Catalyst の新モデルを投入

このように約 1 年間、順調にビジネスを伸ばしてきた Cisco Startですが、今後はどのような取り組みを進めていくのでしょうか。「今回発表する新たな戦略は、大きく3つあります」と高橋は説明します。

cisco insight Cisco Startシリーズ

第1は新製品の追加です。世界中の企業、組織のネットワークを長年にわたって支え続けてきた「Cisco Catalystシリーズ」の中小企業向け製品が、新たにリリースされることになったのです。  「これまでのCisco Catalystシリーズは最低でも10万円以上の価格でしたが、今回 市場想定価格4万円台から購入可能なCisco Catalyst 2960Lを市場投入します。しかも単にリーズナブルな価格だけではなく、日本の中小企業のニーズに合わせた設計になっており、機能も充実しています」。

cisco insight Cisco Startシリーズ

Cisco Catalyst 2960L はギガビット対応のアクセススイッチであり、今回は合計で8モデルを発表。最小構成のものは8ポートモデルであり、その上に16ポート、24ポート、48ポートのモデルがラインアップされています。またいずれのモデルでも、PoE(Power over Ethernet:2003 年にIEEE 802.3afで標準化されたイーサネットケーブルで給電を行う規格)非対応版と、PoE+(2009 年に IEEE 802.3atで標準化された PoE 規格)対応版を用意。奥行きは全て30cm 以下と、コンパクトなサイズになっています。
48ポートPoE+対応モデル以外の7モデルは、全てファンレスの静音設計です。騒音を立てないため、静かなオフィスでも快適に使用できます。動作時温度は -5 ℃~ 55 ℃に対応しており、省エネのために暑くなりがちなオフィス環境での利用にも配慮。またオプションとしてマグネットシートも用意され、デスク横や壁面などの金属面に貼り付けた設置も行えます。
「ここで注目していただきたいのが、16ポートモデルの存在です」と高橋。日本企業は欧米とは異なり、10~12人分の机で構成された「島型オフィス」になっていることが多く、最小構成の 8 ポートでは不足するケースが多いのだと指摘します。「このポート数なら島型オフィスに最適な形で設置できます。PoE+対応モデルをお選びいただければ、IP電話を島電話として設置し、直接接続することも可能です」。
IOS(ソフトウェア)は「Enhanced LAN Lite」を採用。これは、隣接デバイスを見つけ出してネゴシエーションを行う通信プロトコル LLDP-MED(Link Layer Discovery Protocol - Media Endpoint Discovery)や、複数のスイッチを組み合わせて1つの IPアドレスで使用できるようにするスタッキング機能、日本企業でよく使われているWeb認証機能などを装備した、高機能なソフトウェアです。
設定は Web ベースのグラフィカルな管理画面で、簡単に行うことができます。初期セットアップ作業はウィザードによって、わずか5ステップで完了。またUSBポートも装備しています。ベンダーが事前に設定内容をUSBメモリに格納し、これをUSBポートに挿入して電源を投入すれば、ユーザによる初期セットアップも不要になります。IT技術者がいない企業への導入も、安心して行うことができるのです。

また成長戦略におけるデジタル化の重要度についての質問では、69%が非常に重要、27%が概ね重要を回答しており、合計すると96%になっています。ほとんどの人が、成功するにはデジタル化が必須だと考えているわけです。さらに、デジタル化の成功は強固なサイバーセキュリティ対策にどれだけ依存するかという質問には、64%が非常に重要、32%が概ね重要と回答しており、ここでも合計96%となっています。つまりサイバーセキュリティをきちんと担保しなければデジタル化は成功せず、デジタル化を成功させなければ成長できないと、ほとんどの企業が認識していることになります。

会場ではこの後、製品開発担当者による初期セットアップのデモが行われ、日本語表示されたグラフィカルでわかりやすいウィザードによって、実際に5ステップで設定が完了する様子が披露されました。

エントリーモデルを拡充し、業種別ソリューションの展開も開始

第2の新戦略は、エントリーモデルの拡充です。無線LANでは、最新規格に対応した「Cisco Aironet 1830/1850シリーズ」と、小規模向けの「Cisco Wireless Access Point(WAP)」をリリース。スイッチでは「Cisco SG350シリーズ」をリリースしています。また Cisco Start エントリーモデル製品向けの設定・管理ソフトである「Cisco FindIT」も発表されました。

cisco insight Cisco Startシリーズ

Cisco Aironet 1830/1850シリーズは、ギガビットクラスの通信が可能な無線LANアクセスポイントです。IEEE 802.11ac Wave1よりも高速な IEEE 802.11ac Wave2 に対応しており、Cisco Aironet 1830 シリーズは最大867Mbps、Cisco Aironet 1850シリーズは最大1.7Gbps のデータレートを実現しています。高速データ通信はデータ転送時間を短縮するため、ユーザの快適性を高めるだけではなく、端末のバッテリ駆動時間も延長できると言われています。
またいずれのシリーズもPoE+によってCisco Catalystからの給電が可能。2.4GHzと5GHzのデュアルバンドをサポートしており、クライアント密度とトラフィックタイプ(データ通信だけなのか音声も使用するのか)を指定するだけで、RFパラメータを最適化する機能も装備しています。Active Directory等の認証サーバと連携した認証や、ゲストユーザ用ネットワークの設も可能。設定作業は日本語GUIで行えるようになっています。
Cisco StartではこれまでもCisco Aironet 1700シリーズを提供していましたが、これとの最大の違いは無線LANコントローラ内蔵モデルを用意している点にあります。Cisco Aironet 1700シリーズは別途無線 LAN コントローラを設置する必要がありましたが、Cisco Aironet1830/1850シリーズは内蔵コントローラで最大25台のアクセスポイントを集中的に管理、制御できます。

cisco insight Cisco Startシリーズ

Cisco WAPは簡単設定、安心サポート、低価格で導入できる無線LANアクセスポイントのエントリー製品。2.4 GHzと5GHzのデュアルバンドをサポートし、一部のモデルを除きIEEE 802.11ac Wave1に対応しています。またPoE/PoE+もサポートし、設定作業も日本GUIで簡単に行うことが可能。シスコが提供するスモールビジネスサポートセンター(SBSC)による製品購入前後のサポートも受けられます。この製品で特に注目したいのが、エントリー製品でありながら、クラスタリング技術によるシングルセットアップが可能なことです(一部のモデルを除く)。無線LANコントローラを使用せずに、マスターノードの最新の設定情報を、全てのアクセスポイントに転送、反映することが可能なのです。ファームウェアのアップグレードも、マスターノードから一括制御できます。万一マスターノードがダウンした場合でも、他のノードが自動的に新たなマスターノードとして機能するようになっています。

cisco insight Cisco Startシリーズ

Cisco SG350シリーズは、同じくエントリーモデルのマネージドスイッチです。Cisco Start ではこれまでCisco SG300が提供されていましたが、その後継モデルに位置づけられます。この製品にも日本語GUIが提供されており、SBSCのサポートも受けられます。

cisco insight Cisco Startシリーズ

Cisco FindITはオンプレミス型のネットワーク管理ソフトウェアです。遠隔地にあるサイトに Probeソフトウェアを導入して各サイトの情報を収集、これをManagerソフトウェアに集約することで、ネットワーク全体のトポロジーを自動生成します。管理対象機器のOSバージョンやシリアル番号、MACアドレス等のインベントリ情報を自動収集する他、障害発生も自動的に検知、販売終了やサポート終了等もチェックし、該当する場合にはアラートが表示されるようになっています。11月に英語版がリリースされることになっており、日本語サポートも予定されています。

cisco insight Cisco Start文教セレクション

最後に、第3の戦略として紹介されたのが、業種別ソリューションの展開です。顧客の視点から、業種特有のネットワーク課題に対応するソリューションを提供する計画です。その第一弾が「Cisco Start文教セレクション」です。総務省の調査によれば、学校での無線LAN導入率は27%にとどまっていますが、高い品質と運用性を実現し、セキュリティも確保できるソリューションを提供することで、2020年に向けた教育の情報化を加速することが目指されています。

cisco insight Cisco Start文教セレクション

「業種別ソリューションはこの後も段階的に拡充していく計画です」と高橋。また単なる製品・ソリューションの提供にとどまらず、販売パートナー向けサポート窓口の設置や、トレーニングプログラム、プロモーションプログラムの提供など、販売網支援も強化していくと言います。「最終的な目標は、中小企業が必要とするIT関連製品やサービスを網羅した、トータルブランドの実現です。シスコは Cisco Start によって、シンプル、スマート、セキュアといったコンセプトを軸としたソリューションを、今後も積極的に展開していきます」。

cisco insight Cisco Start

Cisco Start 特設サイト
www.cisco.com/jp/go/start