サイトの調査
機器を設置する前に、無線サイトの調査を推奨します。サイト サーベイでは、干渉、フレネル ゾーン、 または物流の問題などの問題を明らかにします。適切なサイト調査には、メッシュ リンクの一時的なセットアップや、アンテナの計算が正確かどうかを判別する測定などが含まれます。穴を開けたり、ケーブルを設置したり、機器を取り付けたりする前に、それが正しい場所かどうかを確認します。
(注) |
電源が準備できていないときは、Unrestricted Power Supply(UPS)を使用してメッシュ リンクに一時的に電源を入れることを推奨します。 |
調査前チェックリスト
サイト調査の前に、次のことを確認します。
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ワイヤレス リンクの長さはどのくらいか?
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ライン オブ サイトはクリアか?
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リンクが稼働する最小の許容データ レートは?
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これは、ポイントツーポイントのリンクか、ポイントツーマルチポイントのリンクか?
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正しいアンテナがあるか?
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アクセス ポイントの設置場所は、アクセス ポイントの重量を支えられるか?
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両方のメッシュ サイトの場所にアクセスできるか?
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(必要であれば)適切な権限はあるか?
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パートナーはいるか? 屋根や塔の上では、単独では決して調査や作業を行わないでください。
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オンサイトに出向く前に 1500 シリーズを設定したか? 設定やデバイスの問題を先に解決しておくと、作業は常に楽になります。
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作業を遂行するための適切なツールや機器があるか?
(注)
調査を行うときには、携帯電話や携帯の送受信兼用無線機があると便利です。
屋外サイトの調査
WLAN システムを屋外に設置するのは、屋内にワイヤレスを配置する場合とは異なるスキル セットが必要です。天候による災害、雷、物理的セキュリティ、その地域の規制などを考慮に入れなければなりません。
メッシュ リンクの適合が成功するかどうかを判別する際には、そのメッシュ リンクに対し、どの無線データ レートでどのくらい遠くまでの伝送を期待しているのかを定義してください。ワイヤレス ルーティングの計算にはデータ レートが直接は含まれないため、同じメッシュ全体を通して同じデータ レートを使用することを推奨します。
メッシュ リンクの設計には、次の値を推奨します。
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MAP の配置について、街路の上では、高さ 35 フィートを超えられません。
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MAP は、地面に向かって下向きに取り付けられたアンテナと一緒に配置されます。
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一般的な 5 GHz の RAP から MAP までの距離は、1000 ~ 4000 フィートです。
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RAP は、一般的には塔か高い建物に設置します。
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一般的な 5 GHz の MAP から MAP までの距離は、500 ~ 1000 フィートです。
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MAP は、一般的には低い建物の上か街灯に設置します。
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一般的な 2.4 GHz の MAP からクライアントまでの距離は、500 ~ 1000 フィートです(アクセス ポイントのタイプによって異なります)。
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クライアントは、一般的にはラップトップ、スマート フォン、タブレット、CPE です。ほとんどのクライアントは 2.4 GHz 帯域で動作します。
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2.4 GHz 帯もバックホールに使用できるリリース 8.2 以降では、2.4 GHz 帯を使用することで到達距離を若干改善できます。ただし、同時にスループットが低下する可能性があります。
見通し(Line of Sight)の判別
リンクが成功するかどうかを判別する際には、そのリンクに対し、どの無線データ レートでどのくらい遠くまでの伝送を期待しているのかを定義する必要があります。非常に近い、1 キロメートル以内のリンクは、クリアなライン オブ サイト(LOS)(障害物のないパス)があれば容易に到達できます。
メッシュ電波は 5 GHz 帯域で非常に高い周波数であるため電波波長が小さく、電力が同じであれば、低い周波数の電波ほど電波は遠くへ行きません。この高い周波数範囲によって、メッシュはライセンス不要の使用に対して理想的なものになっています。高ゲイン アンテナを使用して電波を特定の方向にしっかり電波を向かせない限り、電波が遠くまで届かないためです。
この高ゲイン アンテナ設定は、RAP を MAP に接続する場合にだけ推奨します。メッシュ リンクが 1 マイル(1.6 km)に限定されているため、メッシュの動作を最適化するのに、全方向性アンテナが使用されます。地球の屈曲は 9.6 km(6 マイル)ごとに変化するため、ライン オブ サイトの計算には影響しません。
天候
フリー スペース パスのロスとライン オブ サイトの他に、天候によってもメッシュ リンクの質は低下する場合があります。雨、雪、霧、多湿環境は見通し(Line of Sight)に多少の影響を与え、若干の損失(「レイン フェード」や「フェード マージン」とも呼ばれる)を生みますが、それによるメッシュ リンクへの影響はわずかです。安定したメッシュ リンクを確立したのであれば、天候が問題になることはありませんが、リンクが開始できないほど弱い場合は、悪天候でパフォーマンスが低下したりリンクのロスが引き起こされたりします。
理想的にはライン オブ サイトが必要ですが、何も見えないような吹雪ではライン オブ サイトが認められません。また、嵐で雨や雪が問題になるかもしれない一方、その逆の天気によって別の条件が引き起こされる可能性も多々あります。たとえば、アンテナはおそらくマスト パイプ上にあり、嵐がマスト パイプまたはアンテナ構造に吹き付けていて、その揺れによってリンクが行ったり来たりしたり、アンテナの上に氷や雪の大きな塊ができたりします。
フレネル ゾーン
フレネル ゾーンは、トランスミッタとレシーバの間の目に見えるライン オブ サイト周辺の虚楕円です。無線信号はフリー スペースを通って目的の場所に到達するため、フレネル エリアに障害物を検出して信号の質が低下することがあります。最高のパフォーマンスと範囲は、フレネル エリアに障害物がない場合に達成されます。フレネル ゾーン、フリー スペース ロス、アンテナ ゲイン、ケーブル ロス、データ レート、リンク距離、トランスミッタ電源、レシーバ感度、およびその他の変動要因は、メッシュ リンクがどのくらい遠くまで行くかを判別する役割を持ちます。図 1 に示すように、フレネル エリアの 60 ~70 % に障害物がなければ、リンクを確立できます。
図 2 は、障害物のあるフレネル ゾーンを示しています。
パス沿いの特定の距離におけるフレネル ゾーンの半径(フィート)は、次の方程式で計算できます。
F1 = 72.6 x (d/4 x f) の平方根
値は次のとおりです。
F1 = 最初のフレネル ゾーン半径(フィート)
D = パスの全長(マイル)
F = 周波数(GHz)
通常、最初のフレネル ゾーンの 60 % のクリアランスが推奨されるため、上の公式を 60 % のフレネル ゾーン クリアランスで表すと、次のようになります。
0.60 F1= 43.3 x (d/4 x f) の平方根
これらの計算は、平坦地に基づいたものです。
図 3 は、ワイヤレス信号のフレネル ゾーンにある障害物の除去を示しています。
ワイヤレス メッシュ配置のフレネル ゾーン サイズ
可能な最小周波数 4.9 GHz におけるフレネル ゾーンの最大サイズの概算を求める場合、最小値は周波数ドメインによって異なります。記載している最小の数値は、米国の Public Safety のために割り当てられた使用可能帯域で、1 マイルの最大距離の場合、クリアランス要件のフレネル ゾーンは、9.78 フィート = 43.3 x 平方根 (1/(4*4.9)) です。このクリアランスは、ほとんどのソリューションで比較的簡単に達成できます。たいていの配置では、距離は 1 マイル(1.6 km)より短く、周波数は 4.9 GHz より大きいと想定され、フレネル ゾーンはより小さくなります。すべてのメッシュ配置では、フレネル ゾーンを設計の一部として考慮する必要がありますが、ほとんどの場合、フレネル クリアランス要件が問題になることはないと考えられます。
隠しノードの干渉
メッシュ バックホールは、メッシュ内のすべてのノードに同じ 802.11a チャネルを使用しますが、これによって WLAN バックホール環境に隠れノードが発生することがあります。
図 1 は、次の 3 つの MAP を示します。
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MAP X
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MAP Y
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MAP Z
MAP Y と MAP Z にとって、MAP X が RAP に戻るルートの場合、MAP X と MAP Z の両方が同時に MAP Y にトラフィックを送信する可能性があります。RF 環境のため、MAP Y は MAP X と MAP Z の両方からのトラフィックが見えますが、MAP X と MAP Z は互いが見えません。これは、キャリア検知多重アクセス(CSMA)メカニズムでは、MAP X と MAP Z が同じ時間ウィンドウ中に送信するのを止められないことを意味します。これらのフレームのどちらかが 1 つの MAP に向かうと、フレーム間のコリジョンによって破損し、再送信が必要になります。
すべての WLAN で何らかの時点で隠しノード コリジョンが生じる可能性がありますが、MAP の修正された特性によって、重負荷や大きなパケット ストリームなどのトラフィック条件では、隠しノードのコリジョンがメッシュ WLAN バックホールの永続的な機能になります。
メッシュ アクセス ポイントは同じバックホール チャネルを共有するため、隠しノードと露出ノードは、ワイヤレス メッシュ ネットワークに付きものの問題になっています。Cisco メッシュ ソリューションでは、ネットワークのパフォーマンス全体に影響するこれら 2 つの問題を、できるだけ多く探し出して軽減しています。たとえば、AP1500 には少なくとも 2 つの無線があります。1 つは 5 GHz チャネルのバックホール アクセス用で、もう 1 つは、2.4 GHz クライアント アクセス用です。また Radio Resource Management(RRM)機能は 2.4 GHz 帯で動作しますが、これによって、セルの調整と自動チャネル変更が可能であり、メッシュ ネットワーク内のコリジョン ドメインを効果的に削減できます。
この他にも、これら 2 つの問題をさらに軽減するためのソリューションがあります。コリジョンを減らして高負荷条件での安定性を向上させるため、802.11 MAC では、コリジョン発生が認識されたときに指数関数バックオフ アルゴリズムが使用され、競合ノードが指数関数的にバックオフしてパケットを再送信します。理論上、ノードが再試行すればするほど、コリジョンの可能性は小さくなります。実際には、競合するステーションが 2 つだけあって、隠しステーションにはなっていなければ、コリジョンはおそらく、ほんの 3 回も再試行するだけで、無視できるものになるでしょう。もっと多くの競合ステーションがある場合には、コリジョンが増加すると考えられます。そのため、同じコリジョン ドメインに数多くの競合ステーションがある場合、再試行制限回数を多くし、最大コンテンション ウィンドウを大きくする必要があります。さらに、ネットワーク内に隠しノードがある場合には、コリジョンは指数関数的には減らないものと考えられます。この場合、隠しノードの問題を軽減するために、RTS/CTS 交換が使用できます。
優先される親の選択
MAP に対して優先される親を設定できます。この機能を使用すると、細かい制御が可能になり、メッシュ環境でリニア トポロジを適用できます。AWPP を省略し、優先される親への移行を強制できます。
優先親の選択基準
子 AP は、次の基準に基づいて優先親を選択します。
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優先される親は最良の親です。
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優先される親には少なくとも 20 dB のリンク SNR があります(他の親はどんなに優れていても無視されます)。
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優先される親には 12 dB ~ 20 dB の範囲内のリンク SNR がありますが、他の親が非常に優れていることはありません(つまり、SNR が 20 % 以上優れている)。SNR が 12 dB 未満の場合、設定は無視されます。
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優先される親はブラックリストに掲載されません。
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優先される親は、12 dB ~ 20 dB の範囲内の(DFS)のため、サイレント モードになりません。
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優先される親は同じブリッジ グループ名(BGN)に属します。設定された優先される親が同じ BGN に属さず、他の親が利用可能でない場合、子はデフォルトの BGN を使用して親 AP に join します。
優先される親の設定
優先親を設定するには、次のコマンドを入力します。
(Cisco Controller) > config mesh parent preferred AP_name MAC
値は次のとおりです。
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AP_name は、指定する必要がある子 AP の名前です。
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MAC は、指定する必要がある優先される親の MAC アドレスです。
(注)
優先される親を設定する場合、目的の親に対して実際のメッシュ ネイバーの MAC アドレスを指定してください。この MAC アドレスはベース AP の MAC アドレスで、最後の文字が f になります。たとえば、ベース AP の MAC アドレスが 00:24:13:0f:92:00 の場合、優先される親として 00:24:13:0f:92:0f を指定する必要があります。これが、メッシュ ネイバー関係に使用される実際の MAC アドレスです。
次に、MAP1SB アクセス ポイントの優先される親を設定する例を示します。00:24:13:0f:92:00 は、優先される親の MAC アドレスです。
(Cisco Controller) > config mesh parent preferred MAP1SB 00:24:13:0f:92:0f
コントローラの GUI を使用して優先される親を設定する手順は、次のとおりです。
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[Wireless] > [Access Points] > [AP_NAME] > [Mesh] を選択します。
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[Preferred Parent] テキスト ボックスに優先される親の MAC アドレスを入力します。
(注)
[Preferred Parent] の値をクリアするには、[Preferred Parent] テキスト ボックスで何も入力しないでください。
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[Apply] をクリックします。
(注) |
優先される親が入力されると、その他のメッシュ設定は、同時に設定できません。変更を適用してから 90 秒間待ってから、他のメッシュの変更を行えます。 |
関連コマンド
優先親の選択に関連するコマンドは次のとおりです。
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設定された親を削除するには、次のコマンドを入力します。
(Cisco Controller) > config mesh parent preferred AP_name none
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子 AP の優先親として設定された AP に関する情報を取得するには、次のコマンドを入力します。
(Cisco Controller) > show ap config general AP_name
次に、MAP1SB アクセス ポイントの設定情報を取得する例を示します。00:24:13:0f:92:00 は優先親の MAC アドレスです。
(Cisco Controller) > show ap config general MAP1
Cisco AP Identifier.............................. 9
Cisco AP Name.................................... MAP1
Country code..................................... US - United States
Regulatory Domain allowed by Country............. 802.11bg:-A 802.11a:-A
AP Country code.................................. US - United States
AP Regulatory Domain............................. 802.11bg:-A 802.11a:-A
Switch Port Number .............................. 1
MAC Address...................................... 12:12:12:12:12:12
IP Address Configuration......................... DHCP
IP Address....................................... 209.165.200.225
IP NetMask....................................... 255.255.255.224
CAPWAP Path MTU.................................. 1485
Domain...........................................
Name Server......................................
Telnet State..................................... Disabled
Ssh State........................................ Disabled
Cisco AP Location................................ default location
Cisco AP Group Name.............................. default-group
Primary Cisco Switch Name........................ 4404
Primary Cisco Switch IP Address.................. 209.165.200.230
Secondary Cisco Switch Name......................
Secondary Cisco Switch IP Address................ Not Configured
Tertiary Cisco Switch Name....................... 4404
Tertiary Cisco Switch IP Address................. 3.3.3.3
Administrative State ............................ ADMIN_ENABLED
Operation State ................................. REGISTERED
Mirroring Mode .................................. Disabled
AP Mode ......................................... Local
Public Safety ................................... Global: Disabled, Local: Disabled
AP subMode ...................................... WIPS
Remote AP Debug ................................. Disabled
S/W Version .................................... 5.1.0.0
Boot Version ................................... 12.4.10.0
Mini IOS Version ................................ 0.0.0.0
Stats Reporting Period .......................... 180
LED State........................................ Enabled
PoE Pre-Standard Switch.......................... Enabled
PoE Power Injector MAC Addr...................... Disabled
Power Type/Mode.................................. PoE/Low Power (degraded mode)
Number Of Slots.................................. 2
AP Model......................................... AIR-LAP1252AG-A-K9
IOS Version...................................... 12.4(10:0)
Reset Button..................................... Enabled
AP Serial Number................................. serial_number
AP Certificate Type.............................. Manufacture Installed
Management Frame Protection Validation........... Enabled (Global MFP Disabled)
AP User Mode..................................... CUSTOMIZED
AP username..................................... maria
AP Dot1x User Mode............................... Not Configured
AP Dot1x username............................... Not Configured
Cisco AP system logging host..................... 255.255.255.255
AP Up Time....................................... 4 days, 06 h 17 m 22 s
AP LWAPP Up Time................................. 4 days, 06 h 15 m 00 s
Join Date and Time............................... Mon Mar 3 06:19:47 2008
Ethernet Port Duplex............................. Auto
Ethernet Port Speed.............................. Auto
AP Link Latency.................................. Enabled
Current Delay................................... 0 ms
Maximum Delay................................... 240 ms
Minimum Delay................................... 0 ms
Last updated (based on AP Up Time).............. 4 days, 06 h 17 m 20 s
Rogue Detection.................................. Enabled
AP TCP MSS Adjust................................ Disabled
Mesh preferred parent............................ 00:24:13:0f:92:00
共同チャネルの干渉
隠しノードの干渉以外に、同一チャネルの干渉もパフォーマンスに影響する可能性があります。同一チャネルの干渉は、同じチャネルの隣接する無線がローカル メッシュ ネットワークのパフォーマンスに干渉するときに発生します。この干渉は、CSMA によるコリジョンまたは過度の遅延という形で現れます。いずれの場合でも、メッシュ ネットワークのパフォーマンスが低下します。適切なチャネル管理をすれば、ワイヤレス メッシュ ネットワーク上の同一チャネルの干渉は最小化できます。