デバイス モビリティの概要
デバイス モビリティにより、モバイル ユーザはサイト間をローミングし、ローカル サイトのサイト固有の設定を受け入れることができます。この機能が設定されている場合、 Cisco Unified Communications Manager はローミング デバイスの IP アドレスとデバイス モビリティ設定の IP サブネットを照合し、デバイスの物理的な位置を判別します。これにより、適切なデバイス プールを割り当てることができます。この動的に割り当てられたデバイス プールからの設定によって、そのデバイスの [電話の設定(Phone Configuration)] の設定がオーバーライドされ、新しい電話のロケーションに対して音声品質とリソースの割り当てが適切なものになります。
ローミング モバイル デバイスの場合、この機能によりネットワーク リソースの使用効率が向上します。
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モバイル ユーザが別の場所に移動する際には、コール アドミッション制御(CAC)により、移動先のロケーションにとって適切な帯域幅割り当てでビデオ品質と音声品質を確保できます。
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モバイル ユーザが PSTN コールを発信すると、電話はローカル ゲートウェイにルーティングされます。それ以外の場合、PSTN コールは最初に IP WAN 接続経由でホーム サイトにルーティングされ、その後ホーム サイトの PSTN ゲートウェイにルーティングされます。
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モバイル ユーザがホーム ロケーションにコールする場合、Cisco Unified Communications Manager は、リージョンに適切なコーデックを割り当てることができます。
サイト固有の設定
ローミング デバイスの場合、Cisco Unified Communications Manager は、動的に割り当てられたデバイス プールからの値で、デバイス設定の次のデバイス プール パラメータをオーバーライドします。
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Date/Time Group
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Region
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Location
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Network Locale
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SRST Reference
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Connection Monitor Duration
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Physical Location
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Device Mobility Group
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Media Resource Group List
ネットワークが米国外のロケーションにまたがる場合、デバイス モビリティ グループを設定すると、電話ユーザのローミング先に関係なく、設定済みのダイヤル プランをユーザが使用できるようになります。デバイスが移動中であっても、同じデバイス モビリティ グループに保持されている場合は、Cisco Unified Communications Manager は次のデバイス プール パラメータも上書きします。
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AAR Group
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AAR Calling Search Space
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Device Calling Search Space
電話機がホーム ロケーションに戻ると、ローミング デバイス プールの関連付けが解除され、ホーム ロケーションから設定がダウンロードされ、デバイスがリセットされます。デバイスはホーム ロケーションの設定を使用して登録されます。
![]() (注) |
Cisco Unified Communications Manager は、必ず、電話レコード内の Communications Manager Group 設定を使用します。デバイスは、ローミング中でも、必ず、そのホーム ロケーションの Cisco Unified Communications Manager サーバに登録されます。電話のローミング中には、帯域幅割り当て、メディア リソース割り当て、地域の設定、AAR グループなどのネットワーク ロケーション設定だけが変更されます。 |
設定
この機能は、システム レベルとデバイス レベルの両方で有効にする必要があります。システム レベルでは、この機能は次のコンポーネントを使用します。
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物理ロケーション:デバイス プールの物理ロケーション。適切なデバイス プールを割り当てる目的で、登録中にデバイス登録ロケーションが [デバイスモビリティ情報(Device Mobility Info)] のサブネットと照合されます。
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デバイス プール:メディア リソース、地域、および SRST 参照などのロケーション固有のデバイス設定。ローミング デバイスの場合、デバイスの物理ロケーションに一致するデバイス プールが割り当てられます。
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デバイス モビリティ グループ:ダイヤリング パターンが類似しているサイトの論理グループ。たとえば、世界規模のネットワークを所有する企業は、個々の国を表すグループを設定できます。デバイス モビリティ グループ設定は、デバイスが同じ地理的エンティティ内を移動するかどうかを決定します。その主な目的は、ユーザが自分のダイヤル プランを維持できるようにすることです。
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デバイス モビリティ情報:この情報には、システムで提供されるローミング デバイスのサブネットと、このいずれかのサブネットに登録されるローミング デバイスに割り当て可能なデバイス プールが含まれます。
デバイスでこの機能を使用できるようにするには、デバイス レベルでこの機能をオンにする必要があります。

デバイス プールの割り当て
この項では、デバイス モビリティが有効な際に、Unified Communications Manager がどうデバイス プールを割り当てるかについて説明します。デバイスがローミングするかどうかに応じて、デバイスにはローカル サイトのデバイス プールが割り当てられるか、またはホーム サイトのデバイス プールが使用されます。
初期化の後に、デバイス モビリティ機能は次のプロセスに従って動作します。
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モバイルとしてプロビジョニングされている IP フォンの電話デバイス レコードが作成され、電話がデバイス プールに割り当てられます。電話機が Unified Communications Manager に登録され、登録プロセスの一環として IP アドレスが割り当てられます。
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Unified Communications Manager は、デバイスの IP アドレスを、[デバイスモビリティ情報の設定(Device Mobility Info Configuration)] ウィンドウでデバイス モビリティ用に設定されたサブネットと比較します。最適な組み合わせでは、IP サブネット マスクでの最大ビット数を使用します(最長一致ルール)。たとえば、IP アドレス 9.9.8.2 は、サブネット 9.9.0.0/16 ではなくサブネット 9.9.8.0/24 と一致します。
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電話機レコードのデバイス プールが、一致するサブネットのデバイス プールと一致する場合、電話はホーム ロケーション内にあると見なされ、ホーム デバイス プールのパラメータを保持します。
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電話機レコードのデバイス プールが、一致するサブネットのデバイス プールと一致しない場合、電話はローミングであると見なされます。次の表に、デバイス モビリティとシステム応答の考えられるシナリオについて説明します。
表 1. デバイス モビリティのシナリオ シナリオ
システム応答
電話デバイス プールの物理ロケーション設定が、対応するサブネットに関連付けられているデバイス プールの物理ロケーション設定と一致する。
(注) 電話がサブネット間を移動した可能性がありますが、物理ロケーションと関連サービスは変更されていません。
システムは電話がローミング中であると見なさず、ホーム ロケーション デバイス プールの設定を使用します。
対応するサブネットに 1 つのデバイス プールが割り当てられており、サブネット デバイス プールがホーム ロケーション デバイス プールと異なり、物理ロケーションが異なる。
システムは電話がローミング中であると見なします。一致するサブネットのデバイス プールのパラメータを使用して登録されます。
物理ロケーションが異なり、一致するサブネットに複数のデバイス プールが割り当てられている。
システムは電話がローミング中であると見なします。新しいデバイス プールがラウンド ロビン ルールに従って割り当てられます。ローミング デバイスがサブネットに登録されるたびに、使用可能なデバイス プールのセットの次のデバイス プールが割り当てられます。
ホーム デバイス プールに対して物理ロケーションが定義されているが、対応するサブネットに関連付けられているデバイス プールには物理ロケーションが定義されていない。
物理ロケーションは変更されず、電話はホーム デバイス プールに登録されたままになります。
ホーム デバイス プールに対して定義されていない物理ロケーションが、一致するサブネットに関連付けられているデバイス プールに対して定義されている。
システムは、定義されている物理ロケーションに電話がローミング中であると見なし、一致するサブネットのデバイス プールのパラメータを使用して電話が登録されます。
サブネットが更新または削除される。
残りのサブネットを使用して、ローミングとデバイス プールの割り当てに関するルールが適用されます。
![]() (注) |
デバイスの IP アドレスと一致するデバイス モビリティ情報エントリがない場合、デバイスはホーム ロケーションのデバイス プール設定を使用します。 |
デバイス モビリティ グループの動作の概要
デバイス モビリティ グループを使用して、デバイスが地理的実体内の別のロケーションに移動する時点を把握できます。これにより、ユーザは各自のダイヤル プランを使用できます。たとえば、米国と英国にそれぞれ個別のデバイス モビリティ グループを設定できます。電話機が異なるモビリティ グループに移動した場合(たとえば、米国から英国へ)、Unified Communications Manager は、ローミング ロケーションではなく電話レコードにあるコーリング サーチ ス ペース、AAR グループ、および AAR CSS を使用します。
デバイスが同じモビリティ グループ内の別のロケーションに移動する場合(米国内の Richardson から米国内の Boulder へ移動する場合など)、CSS 情報はローミング デバイス プール設定から取得されます。この方法では、ユーザが PSTN 接続先をダイヤルすると、ユーザはローカル ゲートウェイにアクセスすることになります。
次の表は、さまざまなシナリオでシステムにより使用されるデバイス プール パラメータについて説明します。
シナリオ |
使用するパラメータ |
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ローミング デバイスが同一デバイス モビリティ グループ内の別のロケーションに移動する。 |
[ローミング用デバイスプール(Roaming Device Pool)]:[はい(yes)] [ロケーション(Location)]:ローミング用デバイス プールの設定 [地域(Region)]:ローミング用デバイス プールの設定 [メディア リソース グループリ スト(Media Resource Group List)]:ローミング用デバイス プールの設定 [デバイス CSS(Device CSS)]:ローミング用デバイス プールの設定([デバイスモビリティ CSS(Device Mobility CSS)]) [AAR グループ(AAR Group)]:ローミング用デバイス プールの設定 [AAR CSS]:ローミング用デバイス プールの設定 |
ローミング デバイスが異なるデバイス モビリティ グループ内の別のロケーションに移動する。 |
[ローミング用デバイスプール(Roaming Device Pool)]:[はい(yes)] [ロケーション(Location)]:ローミング用デバイス プールの設定 [地域(Region)]:ローミング用デバイス プールの設定 [メディア リソース グループリ スト(Media Resource Group List)]:ローミング用デバイス プールの設定 [デバイス CSS(Device CSS)]:ホーム ロケーションの設定 [AARグループ(AAR Group)]:ホーム ロケーションの設定 [AAR CSS]:ホーム ロケーションの設定 |
デバイスが移動したが、デバイス モビリティ グループは、ホーム デバイス プールにも、ローミング用デバイス プールにも定義されていない。 |
デバイスは移動中のため、ローミング用デバイス プールの設定([デバイス モビリティ コーリング サーチ スペース(Device Mobility Calling Search Space)]、[AAR コーリング サーチ スペース(AAR Calling Search Space)]、および [AAR グループ(AAR Group)] など)を取得します。 |