ATA 191 Analog Telephone Adapter は電話機とイーサネット間のアダプタであり、通常のアナログ電話を IP ベースのテレフォニー ネットワークで動作できるようにします。ATA 191 は 2 つの音声ポートをサポートし、それぞれに独立した電話番号を使用できます。また RJ- 45 10/100BASE-T データ ポートも備えています。
Session Initiation Protocol(SIP)は、インターネット プロトコル(IP)を介してリアルタイムのコールおよび電話会議を行うための Internet Engineering Task Force(IETF)標準です。SIP は ASCII ベースのアプリケーション層制御プロトコル(RFC3261 で定義)です。マルチメディア セッションの確立、維持、および終了、または 2 つ以上のエンドポイント間のコールに使用されます。
他の Voice over IP(VoIP)プロトコルと同様に、SIP はパケット テレフォニー ネットワークにおけるシグナリングとセッション管理の機能に対応します。シグナリングは、ネットワーク境界を越えてコール情報を伝送する機能です。セッション管理は、エンドツーエンド コールの属性を制御するために使用されます。
![]() (注) | ATA 191 の SIP は RFC2543 に準拠しています。 |
Session Initiation Protocol(SIP)は次の機能を提供します。
ターゲット エンドポイントの可用性を判別します。ターゲット エンドポイントが使用できない場合、SIP は着信側がすでに通話中か、割り当てられた呼び出し回数内に応答しなかったかを判別します。その後、ターゲット エンドポイントが使用できない理由を示すメッセージを返します。
ターゲット エンドポイントの場所を判別します。SIP は、アドレス解決、名前のマッピング、コール リダイレクトをサポートします。
ターゲット エンドポイントのメディア機能を判別します。SIP はセッション記述プロトコル(SDP)を使用して、エンドポイント間で共通する最下位レベルのサービスを判別します。電話会議は、すべてのエンドポイントがサポートするメディア機能のみを使用して確立されます。
発信側エンドポイントとターゲット エンドポイントの間のセッションを確立します。コールを確立できる場合、SIP はエンドポイント間のセッションを確立します。SIP は、別のエンドポイントを会議に追加したり、メディアの特性やコーデックを変更したりするなど、コール途中での変更もサポートします。
コールの転送および終了を処理します。SIP は、1 つのエンドポイントから別のエンドポイントへのコール転送をサポートします。コールの転送中に、SIP は転送元と新しいエンドポイント(転送元によって指定される転送先)との間でセッションを確立します。また、SIP は転送元と転送先との間でセッションを終了する機能も担います。コールが終了した時点で、SIP はすべての通話者間でセッションを終了します。会議は 2 人以上のユーザで構成でき、マルチキャスト セッションまたは複数のユニキャスト セッションを使用して確立できます。
SIP はピアツーピア プロトコルです。セッションでのピアはユーザ エージェント(UA)と呼ばれます。ユーザ エージェントは、次のいずれかの役割として機能します。
通常、SIP エンドポイントは UAC と UAS の両方の働きをしますが、トランザクションごとにいずれか一方としてだけ機能します。エンドポイントが UAC として機能するか、UAS として機能するかは、要求を開始した UA によって決まります。
アーキテクチャの観点からは、SIP ネットワークの物理コンポーネントは、クライアントとサーバの 2 つのカテゴリに分類することもできます。次の図は、SIP ネットワークのアーキテクチャを示しています。
![]() (注) | SIP サーバは、Lightweight Directory Access Protocol(LDAP)サーバ、データベース アプリケーション、拡張マークアップ言語(XML)アプリケーションなど、他のアプリケーション サービスと対話できます。これらのアプリケーション サービスは、ディレクトリ サービス、認証サービス、課金サービスなどのバックエンド サービスを提供します。 |
プロキシ サーバ:プロキシ サーバは、クライアントからの SIP 要求を受信し、クライアントに代わってそれらの要求を転送する中間デバイスです。プロキシ サーバは SIP メッセージを受け取り、それをネットワーク内の次の SIP サーバに転送します。プロキシ サーバは、認証、許可、ネットワーク アクセス コントロール、ルーティング、信頼性の高い要求再転送、セキュリティなどの機能を備えています。
リダイレクト サーバ:SIP 要求を受信し、要求からアドレスを抽出し、そのアドレスにマッピングできる他のアドレスがアドレス テーブルに含まれるかどうか確認した後、アドレス マッピングの結果をクライアントに返します。リダイレクト サーバは、メッセージの次の行き先となる 1 つ以上先のホップに関する情報をクライアントに提供します。クライアントはネクスト ホップ サーバまたは UAS に直接接続します。
登録サーバ:現在位置の登録を求める、UAC からの要求を処理します。登録サーバは、多くの場合リダイレクト サーバやプロキシ サーバと同じ場所に置かれます。
ATA 191 は小型で設置しやすいデバイスです。次の図は、ATA 191 の上部および背面パネルを示しています。
2 つの RJ-11 FXS(Foreign Exchange Station)ポート:ATA 191 には、標準的なアナログ電話機すべてに対応する 2 口の RJ-11 ポートがあります。各ポートは音声コールまたは FAX セッションのいずれかをサポートし、両方のポートを同時に使用できます。
ATA 191 は、WAN ネットワーク ポートとして RJ- 45 10/100BASE-T データ ポートが 1 つ装備しており、PC などのイーサネット対応デバイスをネットワークに接続できます。このポートを使用して、ネットワーク スイッチまたは Cisco Unified Communications Manager を実行しているコンピュータに接続します。
![]() (注) | ATA のネットワーク ポートは、全二重モードや速度について自動でネゴシエーションします。10/100 Mbps の速度および全二重をサポートしています。 |
項目 |
説明 |
||
---|---|---|---|
電源 LED |
緑色で点灯:システムが正常に起動しており、使用の準備ができています。 緑色でゆっくりと点滅:システムが起動中です。 緑色で 3 回すばやく点滅してから繰り返し:システムが起動に失敗しました。 消灯:電源はオフです。 |
||
ネットワーク LED |
緑色で点滅:WAN ポートを介してデータを送信/受信中です。 消灯:リンクがありません。 |
||
電話 1 LED 電話 2 LED |
緑色で点灯:オンフックです。 緑色でゆっくりと点滅:オフフックです。 緑色で 3 回すばやく点滅してから繰り返し:アナログ デバイスの登録に失敗しました。 消灯:ポートが設定されていません。 |
||
問題レポート ツール(PRT)ボタン |
問題レポート ツールを使用して問題レポートを作成するには、このボタンを押します。
|
||
問題レポート ツール(PRT)LED |
オレンジ色で点滅:PRT は問題レポートのデータを準備しています。 オレンジ色ですばやく点滅:PRT は PRT サーバに問題レポート ログを送信中です。 5 秒間緑色に点灯してから消灯:PRT レポートは正常に送信されました。 赤色で点滅:PRT レポートのエラーが発生しました。LED を消灯するには、PRT ボタンを押します。消灯してから再度押すと、新しい PRT レポートがトリガーされます。 |
問題レポート ツール(PRT)ボタンは、ATA の上部パネルにあります。PRT ボタンを押すとログ ファイルが準備され、ネットワークのトラブルシューティングに使用するサーバにアップロードされます。
アナログ電話のユーザには、ATA デバイスの PRT ボタンを押して PRT ログ ファイルの処理を開始するよう指示できます。
ATA から PRT ログ ファイルをアップロードするための HTTP サーバを設定します。
ニーズに最適なカスタマー サポート用アップロード URL を設定し、ATA に適用します。
項目 |
説明 |
---|---|
リセット |
ATA を再起動するには、ペーパー クリップなどを使用し、このボタンを短く押します。 出荷時のデフォルト設定にリセットするには 10 秒間押し続けます。 |
電話 1 |
RJ-11 電話ケーブルを使用して、アナログ電話や FAX 装置に接続します。 |
電話 2 |
RJ-11 電話ケーブルを使用して、2 番目のアナログ電話や FAX 装置に接続します。 |
ネットワーク |
イーサネット ケーブルを使用してネットワークに接続します。 |
DC 5V 電源 |
付属の電源アダプタを使用して電源に接続します。 |
Name Signaling Event(NSE)ベースおよび re-INVITE ベースのパススルーにより、G.711a/u コーデックを使用して FAX 通信を転送できます。
Transport Layer Security(TLS)は、インターネット上の電子メールなど、データ通信をセキュリティ保護する暗号化プロトコルです。TLS の機能はセキュア ソケット レイヤ(SSL)と同等です。
T.38 FAX リレー機能を使用するとデバイスは FAX 機を使って IP ネットワーク経由でファイルを送信できます。一般的に FAX は受信時にイメージに変換されてから、T.38 FAX デバイスに送信されます。送信先の T.38 FAX デバイスがイメージを受信すると、イメージをアナログ FAX 信号に変換します。
音声ゲートウェイを使って設定された T.38 FAX リレーは、FAX 信号を復号化または復調してから IP で転送します。SIP コール制御プロトコルを使用すると、初期 SIP INVITE メッセージの Session Description Protocol(SDP)エントリによって T.38 FAX リレーの存在が示されます。初期 SIP INVITE メッセージの後、コールが確立されて、音声モードから T.38 モードに切り替わります。Cisco Unified Communications 管理ページを使用すると、T.38 FAX 通信をサポートする SIP プロファイルを設定できます。
ATA 191 は T38 FAX リレー バージョン 0(G3)のみをサポートしています。
ATA では次のプロトコルもサポートされます。
Link Layer Discovery Protocol(LLDP)
Network Time Protocol(NTP)
Hypertext Transfer Protocol(HTTP)
ATA 191 は、2 つの モードの FAX サービスをサポートしています。
FAX パススルー モード:自動的な G.711A-law または G.711µ-law の切り替えを使用した受信者側の Called Station Identification(CED)トーン検出
T.38 FAX リレー モード:T.38 FAX リレー機能を使用すると、デバイスは FAX 機を使って IP ネットワーク経由でファイルを送信できます。一般的に FAX は受信時にイメージに変換されてから、T.38 FAX デバイスに送信されます。送信先の T.38 FAX デバイスがイメージを受信すると、イメージをアナログ FAX 信号に変換します。音声ゲートウェイを使って設定された T.38 FAX リレーは、FAX 信号を復号化または復調してから IP で転送します。
![]() (注) | FAX 送信が成功するかどうかは、ネットワーク条件とその条件に対する FAX モデムの許容度によって決まります。ネットワークでのネットワーク ジッタ、ネットワーク遅延、およびパケット損失率は、ある程度低い必要があります。 |
ATA を設置および設定するには、次の基本的な手順に従ってください。この手順により、ATA が導入される一般的な SIP 環境で ATA を稼働できます。