RPR および RPR+ の概要
ここでは、RPR および RPR+ を使用したスーパーバイザ エンジンの冗長構成の概要について説明します。
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「スーパーバイザ エンジンの冗長構成の概要」
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「RPR の動作」
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「RPR+ の動作」
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「スーパーバイザ エンジンの設定の同期化」
スーパーバイザ エンジンの冗長構成の概要
(注) • Release 12.2(18)SXD より前のリリースでは、冗長スーパーバイザ エンジンがスタンバイ モードにある場合、冗長スーパーバイザ エンジンの 2 つのギガビット イーサネット インターフェイスは常にアクティブです。
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Supervisor Engine 720 の Release 12.2(18)SXE 以降のリリースでは、インストールされているすべてのスイッチング モジュールに DFC がある場合、 fabric switching-mode allow dcef-only コマンドを入力して両方のスーパーバイザ エンジンでイーサネット ポートをディセーブルにします。これにより、すべてのモジュールが dCEF モードで動作することが保証され、冗長スーパーバイザ エンジンへのスイッチオーバーが簡略化されます(CSCec05612)。
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Supervisor Engine 2 の Release 12.2(18)SXD 以降のリリースでは、インストールされているすべてのスイッチング モジュールに DFC がある場合、 fabric switching-mode allow dcef-only コマンドを入力して冗長スーパーバイザ エンジンでイーサネット ポートをディセーブルにします。これにより、すべてのモジュールが dCEF モードで動作することが保証されます(CSCec05612)。
Catalyst 6500 シリーズ スイッチは、プライマリ スーパーバイザ エンジンが故障した場合に冗長スーパーバイザ エンジンに処理を引き継ぐことにより、耐障害性を強化することができます。Catalyst 6500 シリーズ スイッチは、次の冗長モードをサポートします。
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RPR ― 2 分以上のスイッチオーバー時間をサポートします。
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Route Processor Redundancy plus(RPR+) ― 30 秒以上のスイッチオーバー時間をサポートします。
次のイベントが発生すると、スイッチオーバーが行われます。
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アクティブ スーパーバイザ エンジンでのハードウェア障害
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スーパーバイザ エンジン間のクロック同期損失
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手動スイッチオーバー
RPR の動作
RPR は次の機能をサポートします。
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自動スタートアップおよびアクティブ スーパーバイザ エンジンと冗長スーパーバイザ エンジン間の bootvar の同期化
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スーパーバイザ エンジンのアクティブ ステータスまたは冗長ステータスを検出および決定するハードウェア信号
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アクティブ スーパーバイザ エンジンから冗長スーパーバイザ エンジンへ、60 秒間隔でクロック同期化を実行
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冗長スーパーバイザ エンジンは、起動してもすべてのサブシステムが稼働するわけではなく、アクティブ スーパーバイザ エンジンが故障した場合に、完全に動作可能になります。
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故障した装置の代わりに動作可能なスーパーバイザ エンジンが、冗長スーパーバイザ エンジンになります。
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Fast Software Upgrade(FSU)のサポート(FSU の実行を参照)。
スイッチの電源投入時に、2 つのスーパーバイザ エンジン間で RPR が稼働します。最初に起動したスーパーバイザ エンジンが RPR アクティブ スーパーバイザ エンジンになります。MSFC および PFC は完全に動作可能になります。冗長スーパーバイザ エンジン上の MSFC および PFC はリセットされますが、動作可能にはなりません。
スイッチオーバーが行われると、冗長スーパーバイザ エンジンが完全に動作可能になり、次の動作が行われます。
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すべてのスイッチ モジュールの電源が再びオンになります。
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MSFC 上の残りのサブシステム(レイヤ 2 およびレイヤ 3 プロトコルを含む)が起動されます。
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Access Control List(ACL; アクセス制御リスト)がスーパーバイザ エンジンのハードウェアに再度プログラミングされます。
(注) スイッチオーバー時には、一部のアドレス ステートが失われ、ダイナミックに再確認したあとで復元されるので、トラフィックが一時中断されます。
RPR+ の動作
RPR+ モードを使用すると、冗長スーパーバイザ エンジンは完全に初期化および設定され、スイッチオーバー時間が短縮されます。冗長スーパーバイザ エンジンがオンライン状態になると、アクティブなスーパーバイザ エンジンは冗長スーパーバイザ エンジンのイメージ バージョンをチェックします。冗長スーパーバイザ エンジン上のイメージがアクティブなスーパーバイザ エンジン上のイメージと一致しない場合は、RPR 冗長モードが使用されます。
RPR+ を使用すると、冗長スーパーバイザ エンジンが完全に初期化および設定されるので、アクティブなスーパーバイザ エンジンが故障した場合、または手動によるスイッチオーバーが実行された場合に、スイッチオーバー時間が短縮されます。
スイッチの電源投入時に、2 つのスーパーバイザ エンジン間で RPR+ が稼働します。最初に起動したスーパーバイザ エンジンがアクティブ スーパーバイザ エンジンになります。MSFC および PFC は完全に動作可能になります。冗長スーパーバイザ エンジン上の MSFC および PFC はリセットされますが、動作可能にはなりません。
RPR+ は、RPR に次の利点を追加して強化したものです。
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スイッチオーバー時間の短縮
設定に応じて、スイッチオーバー時間が 30 秒以上になります。
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搭載されたモジュールはリロードされない
スタートアップ コンフィギュレーションと実行コンフィギュレーションの両方が、アクティブ スーパーバイザ エンジンから冗長スーパーバイザ エンジンへ絶えず同期化されるため、搭載されたモジュールはスイッチオーバー中にリロードされません。
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冗長スーパーバイザ エンジンの Online Insertion and Removal(OIR; ホットスワップ)
RPR+ を使用すると、メンテナンスするときに冗長スーパーバイザ エンジンの OIR を実行できます。冗長スーパーバイザ エンジンを取り付けると、アクティブなスーパーバイザ エンジンが冗長スーパーバイザ エンジンの存在を検出し、冗長スーパーバイザ エンジンを完全に初期化されたステートに移行させ始めます。
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OIR イベントの同期化
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redundancy force-switchover コマンドによる手動でのスイッチオーバーの開始
スーパーバイザ エンジンの設定の同期化
ここでは、スーパーバイザ エンジンの設定の同期化について説明します。
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「RPR スーパーバイザ エンジンの設定の同期化」
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「RPR+ スーパーバイザ エンジンの設定の同期化」
(注) SNMP を通じて行われた設定変更は、冗長スーパーバイザ エンジンと同期化されません。SNMP を通じてスイッチを設定したあと、running-config ファイルをアクティブ スーパーバイザ エンジンの startup-config ファイルにコピーして、冗長スーパーバイザ エンジンの startup-config ファイルの同期化を引き起こし、RPR+ により冗長スーパーバイザ エンジンおよび MSFC をリロードします。
RPR スーパーバイザ エンジンの設定の同期化
RPR モードの動作時には、2 つのスーパーバイザ エンジン間で startup-config ファイルおよび config-register コンフィギュレーションがデフォルトで同期化されます。スイッチオーバー時には、新しいアクティブ スーパーバイザ エンジンが現在の設定を使用します。
RPR+ スーパーバイザ エンジンの設定の同期化
RPR+ モードを使用している場合、次の動作が設定の同期化を引き起こします。
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冗長スーパーバイザ エンジンを最初にオンラインにすると、アクティブなスーパーバイザ エンジンから冗長スーパーバイザ エンジンへ、startup-config ファイルがコピーされます。この同期化により、冗長スーパーバイザ エンジン上にある既存のスタートアップ コンフィギュレーション ファイルが上書きされます。
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通常の動作中に設定が変更されると、冗長運用によりアクティブなスーパーバイザ エンジンから冗長スーパーバイザ エンジンへの差分同期が実行されます。冗長運用により、アクティブなスーパーバイザ エンジンから冗長スーパーバイザ エンジンへ、ユーザが入力した CLI(コマンドライン インターフェイス)コマンドが行単位で差分同期化されます。
冗長スーパーバイザ エンジンが完全に初期化されている場合でも、コンフィギュレーション ファイルが変更されたときに変更の差分を受け取れるように、アクティブなスーパーバイザ エンジンとの相互通信だけは行います。冗長スーパーバイザ エンジンでは CLI コマンドを入力できません。
スーパーバイザ エンジンの冗長構成に関する注意事項および制約事項
ここでは、スーパーバイザ エンジンの冗長構成に関する注意事項および制約事項について説明します。
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「冗長構成の注意事項および制約事項」
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「RPR+ に関する注意事項および制約事項」
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「ハードウェア設定時の注意事項および制約事項」
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「コンフィギュレーション モードに関する制約事項」
冗長構成の注意事項および制約事項
RPR および RPR+ 冗長モードには、次の注意事項および制約事項が適用されます。
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Release 12.2(18)SXD より前のリリースでは、冗長スーパーバイザ エンジンがスタンバイ モードにある場合、冗長スーパーバイザ エンジンの 2 つのギガビット イーサネット インターフェイスは常にアクティブです。
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Supervisor Engine 720 の Release 12.2(18)SXE 以降のリリースでは、インストールされているすべてのスイッチング モジュールに DFC がある場合、 fabric switching-mode allow dcef-only コマンドを入力して両方のスーパーバイザ エンジンでイーサネット ポートをディセーブルにします。これにより、すべてのモジュールが dCEF モードで動作することが保証され、冗長スーパーバイザ エンジンへのスイッチオーバーが簡略化されます(CSCec05612)。
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Supervisor Engine 2 の Release 12.2(18)SXD 以降のリリースでは、インストールされているすべてのスイッチング モジュールに DFC がある場合、 fabric switching-mode allow dcef-only コマンドを入力して冗長スーパーバイザ エンジンでイーサネット ポートをディセーブルにします。これにより、すべてのモジュールが dCEF モードで動作することが保証されます(CSCec05612)。
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スーパーバイザ エンジンを冗長構成にしても、スーパーバイザ エンジンのミラーリングやロードバランスは行われません。スーパーバイザ エンジンのうちの 1 台だけがアクティブになります。
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SNMP を通じて行われた設定変更は、冗長スーパーバイザ エンジンと同期化されません。SNMP を通じてスイッチを設定したあと、running-config ファイルをアクティブ スーパーバイザ エンジンの startup-config ファイルにコピーして、冗長スーパーバイザ エンジンの startup-config ファイルの同期化を引き起こし、RPR+ により冗長スーパーバイザ エンジンおよび MSFC をリロードします。
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スーパーバイザ エンジンのスイッチオーバーは、障害のあるスーパーバイザ エンジンがコア ダンプを完了したあとに行われます。コア ダンプには最大で 15 分間かかります。スイッチオーバー時間を短縮するには、スーパーバイザ エンジンでコア ダンプをディセーブルにします。
RPR+ に関する注意事項および制約事項
RPR+ には、次の注意事項および制約事項が適用されます。
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冗長スーパーバイザ エンジンが処理を引き継いでスイッチが回復するまで、ネットワーク サービスは中断されます。
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Forwarding Information Base(FIB; 転送情報ベース)テーブルはスイッチオーバー時に消去されます。その結果、ルート テーブルの再コンバージェンスが行われるまで、ルーティング対象トラフィックは中断されます。
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スタティック IP ルートはコンフィギュレーション ファイル内のエントリから設定されるため、スイッチオーバー中も維持されます。
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アクティブなスーパーバイザ エンジン上で維持されるダイナミックなステート情報は、冗長スーパーバイザ エンジンに同期化されないため、スイッチオーバー時に失われます。
次に、スイッチオーバー時に失われるダイナミックなステート情報の例を示します。
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フレーム リレー Switched Virtual Circuit(SVC; 相手先選択接続)
(注) フレーム リレーでスイッチングされる Data Link Connection Identifier(DLCI)設定はコンフィギュレーション ファイル内に保存されているため、フレーム リレーでスイッチングされる DLCI 情報はスイッチオーバー中も維持されます。
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中断されたすべての PPP(ポイントツーポイント プロトコル)セッション
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すべての Asynchronous Transfer Mode(ATM; 非同期転送モード)SVC 情報
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中断されたすべての TCP、およびその他のコネクション型レイヤ 3 およびレイヤ 4 セッション
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BGP セッション
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Automatic Protection System(APS; 自動保護システム)ステート情報
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両方のスーパーバイザ エンジンで同じバージョンの Cisco IOS ソフトウェアが稼働している必要があります。両方のスーパーバイザ エンジンで同じバージョンの Cisco IOS ソフトウェアが稼働していない場合は、冗長スーパーバイザ エンジンが RPR モードでオンライン状態になります。
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スーパーバイザ エンジンの冗長構成は、デフォルト以外の VLAN(仮想 LAN)データ ファイル名または場所をサポートしません。冗長スーパーバイザ エンジンを搭載したスイッチに、 vtp file file_name コマンドを入力しないでください。
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冗長スーパーバイザ エンジンを取り付ける前に、デフォルト設定に戻すには no vtp file コマンドを入力します。
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スーパーバイザ エンジンの冗長構成では、VLAN データベース モードで入力された設定をサポートしていません。RPR+ 冗長構成には、グローバル コンフィギュレーション モードを使用します( 第15章「VLAN の設定」 を参照)。
ハードウェア設定時の注意事項および制約事項
冗長運用を行うには、次の注意事項および制約事項に従う必要があります。
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スーパーバイザ エンジンおよび MSFC で実行する Cisco IOS は、スーパーバイザ エンジンおよび MSFC ルータが同一である冗長構成をサポートします。スーパーバイザ エンジンおよび MSFC ルータが同一でない場合、片方が最初に起動されてアクティブになり、もう一方がリセット状態で保留されます。
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各スーパーバイザ エンジンが単独でスイッチを稼働させるためのリソースを備えているスーパーバイザ エンジンのすべてのリソース(すべてのフラッシュ装置を含む)が重複している必要があります。
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スーパーバイザ エンジンごとに個別のコンソール接続を行ってください。コンソール ポートに Y 字ケーブルを接続しないでください。
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両方のスーパーバイザ エンジン内のシステム イメージが同じである必要があります(冗長スーパーバイザ エンジンへのファイルのコピーを参照)。
(注) 新たに取り付けられた冗長スーパーバイザ エンジン上で Catalyst OS(オペレーティング システム)がインストールされている場合は、アクティブなスーパーバイザ エンジンを取り外して、冗長スーパーバイザ エンジンのみが搭載されている状態でスイッチを起動します。最新のリリース ノートの手順に従って、Catalyst OS から冗長スーパーバイザ エンジンを変換してください。
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startup-config のコンフィギュレーション レジスタが自動起動用に設定されている必要があります( ブート フィールドの変更を参照)。
(注) ネットワークからの起動はサポートされていません。
Release 12.2(17b)SXA より前のリリースでこれらの要件が満たされると、スイッチで RPR+ モードがデフォルトで機能します。
コンフィギュレーション モードに関する制約事項
スタートアップ同期プロセス中は、設定に関して次の制約事項が適用されます。
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スタートアップ(一括)同期中は、設定を変更できません。このプロセス中に設定を変更しようとすると、次のメッセージが生成されます。
Config mode locked out till standby initializes
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スーパーバイザ エンジンのスイッチオーバー時に設定を変更した場合、その変更内容は失われます。