アプリケーション アクセラレーションと WAN 最適化を使用して、LAN のような一貫性のあるユーザ エクスペリエンスを提供すると同時に、帯域確保のコストを削減します。使用するデバイス、接続、クラウド サービスを問わず、卓越したエクスペリエンスを提供できます。
製品概要
Cisco® Intelligent WAN with Akamai Connect は、アプリケーション エクスペリエンス(ISR-AX)サービスを提供する Cisco サービス統合型ルータに、WAN 最適化、アプリケーション アクセラレーション、およびインテリジェント キャッシュ機能を統合したスイートです。シスコのトラフィック管理機能と、Akamai 社が提供するインテリジェント HTTP キャッシュが完全に統合されて連携動作することで、高機能なアプリやユーザ接続を新たに追加しても WAN 帯域幅の使用を抑え、WAN 上におけるユーザ アプリケーションの応答時間を短縮できます。
ユーザは、どのようなネットワークからでも、帯域幅を大量に消費するアプリケーションに瞬時にアクセスできます。データ センター、プライベート クラウド、パブリック クラウド、インターネットなど、アプリケーションがホストされている場所にも左右されません。ソリューションにより、HTTP キャッシュ対応の Akamai Intelligent Platform が遠く離れたブランチ オフィスにまで拡張でき(図 1)、シスコ インテリジェント WAN(IWAN)のアプリケーション最適化機能が強化されます。Akamai Connect キャッシュは、Application Visibility and Control(AVC)、Cisco Performance Routing(PfR)、および Cisco Wide Area Application Services(WAAS)などの Cisco IWAN 機能と統合されます。Akamai Connect は、ISR-AX ポートフォリオおよび Cisco Wide Area Virtualization Engine(WAVE)アプライアンス全体で利用できるため、フルサービスのブランチ オフィス運用を実現します。
IT およびビジネスにおける課題
各業界のビジネス リーダーは、ブランチ オフィスの改革や、顧客エンゲージメントの強化、そして従業員の生産性の向上による収益の増大に取り組んでいます。たとえば小売業界では、オムニチャネルを活用してタッチ ポイントを拡大することで顧客ゲージメントを深め、顧客の固定化を図っています。学校ではテクノロジーを活用したカリキュラムの採用を進めており、医療機関では患者ケアの向上のために画像技術を採用しています。企業では、オンライン販売や新入社員向けトレーニングを提供しています。
こうした新分野のほとんどは、データ量が多くパフォーマンスに左右されやすい Web アプリケーションやメディア アプリケーションに依存しています。そのため IT 部門は往々にして、コストのかかるネットワークや帯域幅のアップグレードを頻繁に行うことなく、増大するネットワーク需要に対応するよう要求されます。
多くの組織では、パブリック クラウドかプライベート クラウドにアプリケーションを集約することで効率を高めようとしています。しかしその結果、WAN に対するトラフィック負荷が増大しています。さらに、バックホールされたトラフィックによるネットワーク効率の低下、モバイル デバイスの普及、クラウド アプリケーションへの移行によって、WAN の負荷がさらに増大しています。
アプリケーションのパフォーマンスは従業員の生産性や顧客の獲得および定着に直接影響するため、ビジネス リーダーと IT 部門は、WAN の予算を増やすことなくインフラの制約に対処し、スムーズなエクスペリエンスを実現する方法を見いだそうと連携を強めています。そこで役立つのが Cisco IWAN と Akamai Connect です。
主な機能と利点
Cisco IWAN with Akamai Connect は、従業員や顧客に高速かつ高品質なエクスペリエンスを提供すると同時に、WAN の負担を大幅に軽減することで、輻輳を低減し帯域幅を節減します(図 2)。
Akamai Connect は、Dynamic Multipoint VPN(DMVPN)によるトランスポートの独立性、PfR によるインテリジェントなパス制御、セキュアな接続、および AVC といった IWAN の機能に加えて、次の機能も提供します。
● WAN 最適化およびアプリケーション アクセラレーションによる帯域幅の最大化。ソリューションでは Akamai Connect が Cisco WAAS に統合されており、WAN 最適化コンポーネントがすべて含まれています。費用のかさむアップグレードを行うことなく、WAN リンクのトラフィックを最大限に高速化します。
◦ トラフィックの最適化。Cisco WAAS はトランスポート フロー最適化(TFO)を採用することで、パケット損失が発生する、あるいはウィンドウの初期サイズが小さいといった好ましくない WAN 環境でも、公平性を確保しながらアプリケーション パケット フローを改善します。データ冗長性排除(DRE)により、以前に確認された TCP トラフィックおよび重複するトラフィックが極めてサイズの小さい署名で置き換えられ、トラフィックが圧縮されます。セッション ベースの永続的なアダプティブ圧縮により、トラフィックは送信中にさらに圧縮されます。
◦ アプリケーション アクセラレーション。Cisco WAAS は、暗号化アプリケーションと非暗号化アプリケーションの両方にアプリケーション別のアクセラレーション機能を提供します。たとえば、Common Internet File System/Server Message Block(CIFS/SMB)プロトコル、Messaging Application Programming Interface/encrypted Messaging Application Programming Interface(MAPI/eMAPI)、Citrix ICA、HTTP や Secure HTTP(HTTPS)、SharePoint などが対象となります。
● さまざまなレベルの HTTP オブジェクト キャッシュ。これらのオプションにより、ブランチ オフィスにおける WAN トラフィックを大幅に軽減し、優れたアプリケーション パフォーマンスを実現できます。
◦ 透過的なキャッシュ。Akamai 社の高パフォーマンス HTTP オブジェクト キャッシュ技術は、HTTP ベースのコンテンツをローカルにキャッシュ保存することで、LAN と同等のパフォーマンスを提供します。この機能は、Web アプリケーションが企業のプライベート クラウドまたはパブリック インターネットのどちらに配置されていても有効です。対応コンテンツには、オンデマンドやライブの HTTP ビデオ ストリームも含まれます。ブランチ オフィスにおけるエンタープライズ ネットワークの負担を軽減しながら、高速て高画質なビデオ エクスペリエンスを提供できます。Akamai Connect は、Apple HTTP Live Streaming(HLS)、Adobe HTTP Dynamic Streaming(HDS)、Microsoft HTTP Smooth Streaming(HSS)などの最新世代のストリーミング プロトコルをサポートしています。また、Akamai 社の HTTP オブジェクト キャッシュは iOS や OS X などの Apple ソフトウェア アップデートのキャッシングをサポートしているため、エンタープライズ ネットワークの負担をさらに軽減できます。
トランスペアレント キャッシュには、Basic、Standard、Advanced の 3 つのキャッシュ プロファイルが用意されています。これらのプロファイルにより、必要なあらゆるレベルのキャッシングに対応できます。Basic キャッシュ プロファイルは最も低いレベルのキャッシュであり、HTTP ヘッダー内のクライアント キャッシュ ディレクティブに厳密に準拠します。Standard キャッシュ プロファイルはデフォルトで有効になっており、キャッシュ ディレクティブを持たないオブジェクトを対象に含めることで、キャッシュ オブジェクトの範囲を拡張します。たとえば Standard キャッシュでは、現在の応答経過時間に対して 10 % の時間だけオブジェクトがキャッシュされ、その後に更新されます。Advanced キャッシュ プロファイルを使用すると、特定の有効期限を持たないオブジェクトがキャッシュされる期間がさらに拡張され、適切な状況下でキャッシュの量を積極的に増やせます。
◦ Akamai 社の接続キャッシュ。Akamai 社独自のキャッシュ規則と Akamai Intelligent Platform のエッジ サーバを組み合わせることで、通常はキャッシュ保存できないコンテンツでもブランチ オフィス内にキャッシュ保存して配信できます。対応コンテンツには、企業独自の Web コンテンツや、Akamai Intelligent Platform によって配信される各種コンテンツが含まれます。これは Web トラフィック全体の最大 30 % に相当します。
◦ ダイナミック URL HTTP キャッシュ。Akamai 社の高性能なオブジェクト レベルのキャッシュ機能により、URL が動的に生成される HTTP コンテンツや YouTube ビデオなどの(従来では)キャッシュ保存できないコンテンツでもキャッシュ保存できます。この種のコンテンツは、店頭やデジタル サイネージで表示される製品デモや広告、従業員向けトレーニングなどの動的な用途で多用されます。
● コンテンツの事前配置。ポリシーを定義することで、独自スケジュールによりコンテンツをプロアクティブに取得できます。ピーク時間外に HTTP Web キャッシュを送信することで、ネットワークのピーク時間帯にアプリケーション パフォーマンスを改善し、ネットワーク負荷を最小限に抑えてユーザ エクスペリエンスを向上できます。用途としては、トレーニング ビデオ、製品デモ、オンライン製品カタログ、ソフトウェア アップデートなどが挙げられます。
● 一元的な集中管理。Cisco WAAS Central Manager により、WAN 最適化と HTTP キャッシュの機能を一元的に管理できます。Cisco WAAS Central Manager には、コマンドライン ツールに加え、直感的に操作できる Web ベースの管理コンソールが用意されています。機能の管理、パフォーマンスの監視、帯域幅の節約状況に関するレポートを作成できます。HTTP キャッシュによる利益と総合的な利益の両方を詳細に分析すれば、使用パターンを可視化してシステムを微調整し、最大限の効果を得られます。
表 1 に、ブランチ オフィスにおける企業目標の達成に Cisco IWAN with Akamai Connect がどのように役立つかを示します。
表 1. Cisco IWAN with Akamai Connect による主なビジネス ニーズへの対応
ビジネス ニーズ | Cisco IWAN with Akamai Connect の特長と機能 | 説明 |
IT コストを削減し WAN の帯域幅への投資を保護 | トラフィック フローを最適化し、コンテンツをローカルにキャッシュすることで WAN の負荷を軽減します。 | WAN のトラフィックを大幅に軽減します。一般的な結果は 50 ~ 60 % の削減ですが、90 % 近くに達することも少なくありません。既存の帯域幅を節約して最適化することで、費用のかさむネットワークのアップグレードが不要となるため、新しいビジネス アプリケーションの導入や、サービス提供ユーザの拡大などが可能になります。 |
ブランチオフィスの収益を拡大 | Web アプリケーションの配信スピードが約 20 倍向上し、結果として Web ページの読み込み時間が約 95 % 短縮されます。 | 一新されたブランチ オフィスのデジタル エクスペリエンスを迅速に展開できます。これにより、インタラクティブなデジタル ディスプレイ、オムニチャネル、ゲスト Wi-Fi、オンデマンド チュートリアル、情報豊富なオンライン カリキュラムなど、新たな成長の機会が広がります。 |
ユーザの満足度と生産性を向上 | 幅広い種類のコンテンツに対応し、あらゆるデバイスで LAN と同等のパフォーマンスを提供します。 | WAN の輻輳やエクスペリエンスの低下を懸念することなく、顧客と従業員の両方に向けて、ブランチ内でクリエイティブなリッチ メディア アプリケーションを展開できます。 |
オールインワン ソリューションで IT を合理化 | 妥協のないエクスペリエンスを提供するために必要なすべてのブランチ サービスをリモートで管理できます。 | ソリューションでは、アプリケーションの可視化、WAN のパス選択、アプリケーション アクセラレーションと最適化などの機能を、単一のプラットフォームとして提供します。 |
サポートされるプラットフォーム
Cisco IWAN with Akamai Connect は、Cisco WAAS に追加できる拡張ライセンスです。対応するすべての WAAS モデルで、該当の Cisco IWAN with Akamai Connect ライセンスをご利用になれます。統合ソリューションは、表 2 に挙げた WAAS プラットフォームでサポートされます。
表 2. IWAN with Akamai Connect のサポート対象 WAAS プラットフォーム
Cisco WAAS の導入 | シスコ プラットフォーム | WAAS の詳細 |
ルータ上のモジュール | ISR2911-AX ISR2921-AX ISR2951-AX ISR3925-AX ISR3945-AX | Services-Ready Engine モジュール上の Cisco WAAS |
Cisco Unified Computing System™(Cisco UCS®)モジュール上の Cisco Virtual WAAS(vWAAS) | ||
統合された WAAS | ISR4451-X-AX ISR4431-AX ISR4351-AX ISR4331-AX ISR4321-AX | ISR でネイティブに実行されている Cisco WAAS (ISR-WAAS200、ISR-WAAS750、ISR-WAAS1300、または ISR-WAAS2500) |
WAAS アプライアンス | WAVE-294-K9 WAVE-594-K9 WAVE-694-K9 | WAVE アプライアンス上の Cisco WAAS |
Cisco UCS サーバ | - | Cisco UCS® サーバ上で実行されている Cisco Virtual WAAS (vWAAS6K 以下) |
ライセンス
Cisco IWAN with Akamai Connect は、Cisco WAAS に追加する拡張ライセンスです。Cisco IWAN with Akamai Connect のライセンスは、対応する各 WAAS モデルで最適化される接続数に応じて異なります。
表 3 に Cisco IWAN with Akamai Connect のスタンドアロン ライセンスを示します。
表 3. Cisco IWAN with Akamai Connect のスタンドアロン ライセンス
Cisco IWAN with Akamai Connect | 説明 | プラットフォーム |
SL-200-AKC SL-200-AKC= | 最大 200 の WAAS 接続まで使用できる Akamai Connect ライセンス | WAVE294 ISR4321 |
SL-750-AKC SL-750-AKC= | 最大 750 の WAAS 接続まで使用できる Akamai Connect ライセンス | WAVE294 WAVE594 ISR4331 |
SL-1300-AKC SL-1300-AKC= | 最大 1,300 の WAAS 接続まで使用できる Akamai Connect ライセンス | ISR2900/ISR3900*: WAAS(SRE)、または vWAAS1300 以下のいずれかのモデル(UCS-E) |
ISR4451、ISR4431、ISR4351、ISR4331 ISR-WAAS2500 以下のいずれかのモデル | ||
WAVE594 | ||
UCS サーバ: vWAAS1300 以下のいずれかのモデル | ||
SL-2500-AKC SL-2500-AKC= | 最大 2500 の WAAS 接続まで使用できる Akamai Connect ライセンス | ISR2900/ISR3900*: WAAS(SRE)、または vWAAS2500 以下のいずれかのモデル(UCS-E) |
ISR4451: ISR-WAAS2500 以下のいずれかのモデル | ||
WAVE694 | ||
UCS サーバ: vWAAS2500 以下のいずれかのモデル | ||
SL-6K-AKC SL-6K-AKC= | 最大 6000 の WAAS 接続まで使用できる Akamai Connect ライセンス | ISR2900/ISR3900*: vWAAS6000 以下のいずれかのモデル(UCS-E) |
WAVE694 | ||
UCS サーバ: vWAAS6000 以下のいずれかのモデル |
システム要件
表 4 に Cisco UCS E シリーズおよび ISR-WAAS で vWAAS with Akamai Connect を使用するためのハードウェア要件を示します。
表 4. Cisco UCS E シリーズおよび ISR-WAAS で vWAAS with Akamai Connect を使用するためのハードウェア要件
Cisco WAAS モデル | vWAAS with Akamai Connect に必要なメモリ | WAAS with Akamai Connect に必要なディスク容量 |
vWAAS200 | 3 GB | 260 GB |
vWAAS750 | 4 GB | 500 GB |
vWAAS1300 | 6 GB | 600 GB |
vWAAS2500 | 8 GB | 750 GB |
vWAAS6000 | 11 GB | 900 GB |
ISR-WAAS200 | 2 GB | 170 GB |
ISR-WAAS750 | 4 GB | 170 GB |
ISR-WAAS1300 | 6 GB | 170 GB |
ISR-WAAS2500 | 8 GB | 360 GB |
注 1:ISR-WAAS を ISR 4451-X 上でネイティブに実行するには、メモリを 16 GB にアップグレードし、フラッシュ メモリを 32 GB にアップグレードする必要があります。また最大 2 台の 200 GB SSD ストレージ ドライブが必要です。
注 2:vWAAS を Cisco UCS E シリーズ サーバで実行するには、上記のメモリおよびディスクの要件に加えて、vWAAS インスタンスに割り当て可能な CPU コアがシステムに存在することを確認してください。この表には、VMware の最小メモリ要件である 2 GB、および vCPU のメモリ オーバーヘッドと必要メモリ量は含まれていませんが、インストールの計画にあたっては、これらの要件も考慮する必要があります。一般に、Cisco UCS E シリーズ サーバに vWAAS モデルをインストールして実行するには、デフォルトの 8 GB 以上のメモリが必要です。
発注情報
発注情報については、最寄りのシスコの代理店にお問い合わせください。
シスコのサービスとサポート
Cisco IWAN with Akamai Connect のサポートは、Cisco WAAS のサポートに含まれています。シスコは、お客様の成功を支援する幅広いサービス プログラムを用意しています。これらのサービスは、スタッフ、プロセス、ツール、パートナーをそれぞれに組み合わせて提供され、お客様から高い評価を受けています。ネットワークへの投資を無駄にすることなく、ネットワーク運用を最適化し、ネットワーク インテリジェンスの強化や事業の拡張を進めていただくために、シスコのサービスをぜひお役立てください。シスコ サービスの詳細については、シスコ テクニカル サポート サービスおよびシスコ アドバンスド サービスを参照してください。
詳細
Cisco IWAN with Akamai Connect の詳細については、https://www.cisco.com/c/ja_jp/solutions/enterprise-networks/intelligent-wan-akamai/index.html を参照するか、最寄りのシスコ代理店にお問い合わせください。