ホワイト ペーパー





ユニファイド ワイヤレス ネットワークによるモバイル ビジネスの構築



今日の意思決定は、インターネット並みの速さで行われます。情報へのリアルタイム アクセスを提供することが IT の新たな課題であり、ビジネスに持続可能な競争力を生むチャンスの源泉でもあります。市場の要求に応えるために、ビジネスは意思決定者と従業員の生産性を高める情報の流動性を必要としています。モビリティは、情報へのリアルタイム アクセスを達成し、リソースと個人の間の隔たりを埋めてより高い生産性を実現します。

ビジネスの成功と失敗は、従業員が意思決定をどれだけ効率的に行うかに左右されます。したがって、企業は、企業の期待以上の成果を出すために必要な情報に従業員がアクセスできる環境を用意する必要があります。モビリティを活用すれば、従業員はビジネス アプリケーション、サービス、およびツールに、場所と時間に関係なくアクセスできます。また、企業では既存のビジネス プロセスで革新的なビジネス アプリケーションとサービスを利用して、リアルタイムの付加価値を提供できます。

課題

ワイヤレス ネットワーキングは、今日のビジネス モビリティ戦略の中核です。ワイヤレス ネットワーキングによって職場環境が一変したことに伴い、魅力的な新しいアプリケーションを導入し、モビリティ サービスを安全でスケーラブル、かつ確かな方法で従業員に提供できるようになりました。ワイヤレス ゲスト アクセスはその一例で、モビリティ サービスによって外部パートナー、サプライヤ、契約業者、およびゲストとの連携の取り方が再構築され、ビジネス プロセスが向上しました。モビリティ サービスを最大限に活かすために、企業は安全で確かなワイヤレス インフラストラクチャを必要としています。企業のワイヤレス ネットワークは、既存の有線ネットワークに統合してビジネス プロセスを簡素化し、総所有コスト(TCO)を削減する一方で、新しいビジネス要件に対応できる高い柔軟性も必要です。

ワイヤレス インフラストラクチャは、既存の有線ネットワークの利点を活用して、革新的なモビリティ サービスおよびアプリケーション用のプラットフォームにする必要があります。有線ネットワークとワイヤレス ネットワークを統合することで、企業は個々の構成要素の価値を合計した以上の価値を持つ、単一のネットワークを作成できます。モビリティによって成果を上げるには、転送とアクセスの独立性を維持したまま、ビジネス アプリケーションおよびサービスを各個人にまで広げる必要があります。

シスコシステムズでは、広範なテストと分析を行って、ワイヤレス インフラストラクチャを構築する最善のアプローチを明確にしています。シスコはエンタープライズ ネットワーキングの第一人者として、エンタープライズクラスのデータ ネットワーク構築における過去 10 年の実績に基づいて、ワイヤレス ネットワークが有線ネットワークと同じレベルで動作するようにサポートします。

インフラストラクチャ統合の目標は、新しいアプリケーション用のプラットフォームとして機能するか運用効率を高めることにより、ビジネスの価値創造をサポートすることです。統合の利点を最大限に発揮するには、複数のレイヤにわたる取り組みが必要です。コンポーネントや製品の統合は必要ですが、それだけでは決して完全なソリューションではありません。真の統合とは、テクノロジーのレイヤを越えてネットワーク サービス、ネットワーク アプリケーション、ビジネス プロセス(管理とサポート、経営、調達なども)を取り込むことです。この統合により、資本コストと運用コストの削減、セキュリティおよび管理フレームワークの単一化、アプリケーション サポートの向上などが達成され、従業員の生産性が向上します。

ソリューション

Cisco Unified Wireless Network は、有線ネットワークとワイヤレス ネットワークを統合し、安全でスケーラブルかつ管理しやすいモビリティ サービス用プラットフォームを企業に提供するソリューションです。この革新的なソリューションは、ハードウェア、ソフトウェア、サービスなどのすべてのレベルで統合を実現します。シスコ ワイヤレス ソリューションでは、包括的なアプローチによってアプリケーション層からクライアント デバイスに至るまでモビリティを達成します。

Cisco Unified Wireless Network では、モビリティ サービス、地球規模のネットワーク管理、ネットワーク統合、モビリティ プラットフォーム、クライアント デバイスという 5 つの要素が相互に結び付けられています(図 1)。Cisco Unified Wireless Network のコンポーネントの詳細については、資料「Cisco Unified Wireless Network の概要」を参照

図 1 検出された不正なアクセス ポイントを物理的に取り除くためにマップに表示

図 1 検出された不正なアクセス ポイントを物理的に取り除くためにマップに表示
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モビリティは、単なるワイヤレス テクノロジーではありません。ユーザによるリソースへのアクセスがプレゼンスによって行われ、場所やネットワークに依存しない状況で使用できる機能の集合体です。真のモビリティを実現するためには、有線ネットワークとワイヤレス ネットワークを完全に統合する必要があります。この統合により、リソースは、流動性、信頼性、およびセキュリティを維持したまま、さまざまな種類のネットワーク間を移動できるようになります。このホワイト ペーパーでは、有線ネットワークとワイヤレス ネットワークを統合する利点について、ビジネスと技術的な観点から説明します。

WLAN の中央集中化

ビジネスのお客様は、中央集中型コントローラベースの WLAN ネットワークへのアーキテクチャの移行を受け入れつつあります。中央集中型コントローラベースの WLAN では、アクセス ポイントはシステム全体のポリシー インテリジェンスに関して中央の管理デバイスに依存します。このアーキテクチャの利点は、スケーラビリティの向上、管理の向上、セキュリティの強化、総所有コストの削減などです。中央集中型コントローラベースのワイヤレス アーキテクチャを、統合された有線およびワイヤレス LAN と組み合わせると、非統合の中央集中型コントローラベースの WLAN よりもスケーラビリティとコスト効果がさらに向上します。

非統合 WLAN アーキテクチャ

非統合ワイヤレス ネットワークとは、有線ネットワークとほとんど統合されていないコントローラベースの WLAN ソリューションです。非統合ワイヤレス ソリューションには、現在利用しているデータ ネットワーキング プロバイダー製のものも、そうでないものもあります。現在利用しているデータ ネットワーキング プロバイダー以外のサプライヤ製 WLAN を導入すると、有線およびワイヤレス ネットワーク全体でコード、管理、およびユーザ インターフェイスに相違が生じ、統合ソリューションと比較して得られる利点が少なくなります。この場合、有線ネットワークとワイヤレス ネットワークは切り離されたままで、2 つの間のインターフェイスは標準イーサネット接続です(図 2)。

図 2 非統合 WLAN アーキテクチャ

図 2 非統合 WLAN アーキテクチャ


統合 WLAN アーキテクチャ

有線とワイヤレスが統合されたアーキテクチャでは、通常、同じテクノロジー プロバイダー製の有線インフラストラクチャとワイヤレス インフラストラクチャが必要です。統合アーキテクチャの場合、制御および管理機能は有線ネットワークのスレッドに直接配置されます。このアーキテクチャでは、ユーザ インターフェイスと管理インターフェイスが統合されているため、有線ネットワークで標準機能として提供される多くのサービスをワイヤレス ネットワークに拡張できます(図 3)。

図 3 統合 WLAN アーキテクチャ

図 3 統合 WLAN アーキテクチャ


非統合アーキテクチャも統合アーキテクチャもコントローラベースに分類できますが、非統合アーキテクチャは有線ネットワークとの統合が欠けているため、提供されるモビリティ サービスの効果は低下します。

統合された有線およびワイヤレス ネットワークの利点

ワイヤレス接続は、エンタープライズ モビリティを実現する上の重要な要素です。ただし、すべてのタイプのワイヤレス接続が同じであるとは限りません。ビジネスではミッションクリティカルなアプリケーションをサポートするためにワイヤレス インフラストラクチャを使用するので、ビジネスクラスのワイヤレス ネットワークを構築することが不可欠です。有線ネットワークを統合したワイヤレス アーキテクチャには、非統合アーキテクチャにはない多くの利点があります。このホワイト ペーパーでは、この後、主な利点について解説します。

機能パリティ

シスコは、ビジネスのニーズを満たすネットワークを提供しています。今日のネットワークは接続を提供するだけではなく、ビジネス アプリケーション用のプラットフォームとして機能するために必要なインテリジェンスも備えています。ネットワークにインテリジェンスを組み込むことは、ビジネスで要求される迅速な変化に対応できる柔軟なネットワークを構築する上で重要なことです。そのために、多くのビジネスは複数ベンダーの機器で構成される異種ネットワークを展開してきました。ワイヤレスおよび有線ネットワークのためにさまざまなベンダーをサポートすることで、企業はいくつもの機能とサービスを習得および管理しなければならないという問題を抱えていました。このようなアプローチではコスト効果は望めません。統合アプローチは、有線ネットワークとワイヤレス ネットワークの両方で機能を使用できる優れたソリューションです。

シスコがネットワーク統合と機能パリティを実現した分野の好例は、セキュリティ分野です。Network Admission Control(NAC; ネットワーク アドミッション コントロール)は、シスコがリードする業界イニシアティブです。NAC を備えたネットワークは、害を与える恐れのあるトラフィックがネットワークの他の部分で問題を発生させる前に、そのようなトラフィックを検出して検疫することができます。また、シスコの自己防衛型ネットワークの一部である NAC は、Cisco Unified Wireless Network 全体でサポートされ、有線エンドポイントかワイヤレス エンドポイントかに関係なく、ネットワーク全体に関して 1 種類の方法で、ネットワークへの脅威を未然に防ぐことができます。

統合管理

ネットワーク管理にも、有線テクノロジーとワイヤレス テクノロジーを統合する利点があります。企業は管理の複雑さを軽減しようとしており、すべてのドメインに関して統合された管理ビューがあれば、統合ネットワーク ポリシーを保守し、アラートをより迅速に検出して対応できるようになります。中央集中型管理ソリューションでは、トレーニング コストが削減され、IT 管理者はインターネットワークの問題をより柔軟に管理できます。

ワイヤレス RF ドメインにはいくつかの特殊な特性があり、そのために、ワイヤレス RF ドメインの管理は有線ネットワークの管理よりも複雑です。この複雑さは、絶えず変化している RF 環境の性質と、ほとんどの企業にインハウスの RF 専門家が不在であることに関係しています。

Cisco Unified Wireless Network では、一連の RF 専用管理ツール(ダイナミックなチャネル割り当て、RF 干渉緩和、クライアント ロード バランシング、電力送信制御など)をサポートすることで、RF 管理の複雑さを軽減しています。これらのツールでは、ワイヤレス ネットワークを視覚的に把握できます。この可視性により、ネットワーク管理者は、有線ネットワークとワイヤレス ネットワーク両方のパフォーマンス、使用状況、および信頼性に関する統計情報を単一のインターフェイスで確認できます。これらの機能を組み合わせると、継続的に自動のサイト調査サービスが行われるため、ワイヤレス ネットワークが最適なカバレッジとキャパシティを提供していることを確認できます。

革新的なモビリティ サービス

モビリティに対する統合アプローチの最大の利点の 1 つとして、革新的な新しいモビリティ サービスを作成できることがあります。シスコは、Cisco Unified Wireless Network の一部として、有線ネットワークとワイヤレス ネットワークの組み合わせによる強みを活かした一連のモビリティ サービスを提供しています。シスコのモビリティ サービスには、ロケーション サービス、WLAN による音声通信、セキュリティ、ゲスト サービスなどがあります。

ロケーション サービス

ワイヤレス ネットワーキングの重要な利点は、物理的にどこに存在するリソースとユーザであってもネットワークにアクセスできることです。ワイヤレス ネットワークにアクセスするリソースとユーザの場所を把握することは、ますます重要になっています。Wi-Fi デバイスの物理的な場所を追跡できることは、リアルタイム資産追跡、ロケーションベースのセキュリティ、ビジネス ポリシーの適用、強化されたネットワーク管理などの革新的な各種アプリケーションを生み出します。Cisco Unified Wireless Network では、数千台のデバイスを同時に WLAN インフラストラクチャ内から直接追跡するロケーション サービスをサポートしています。ロケーション サービス ソリューションにより、アクセス ポイントの範囲内に存在するすべてのアクティブな Wi-Fi デバイスの場所を監視できます。

一部のロケーション機能は有線テクノロジーとワイヤレス テクノロジーを統合していなくても使用できますが、ソリューションの全体的な価値は統合によって大幅に高まります。たとえば、複数の施設を持つ大病院を考えます。医師がそれぞれの患者の病室を訪ねているとします。この医師はタブレット PC を携帯し、患者のカルテと画像にリアルタイムにアクセスします。この医師が一般病棟から集中治療室に移動すると、ロケーション対応ネットワークはその動きを検知して基盤のデータ ネットワークにその QoS(Quality-Of-Service)設定を調整するように指示し、この医師の帯域幅の優先順位は最高レベルになります。これによって、最大サイズの画像ファイルでも確実に配信されることになります。

ロケーション サービスとプレゼンス アプリケーションを組み合わせると、通信品質をさらに向上させることができます。ワイヤレス ロケーションと IP コミュニケーション プラットフォームを統合することで、ユーザの接続場所と接続方法に基づいて、必要なときにいつでも確実にユーザに到達することができます。病院の例をもう一度考えてみます。現在のロケーション サービスでは、病院内でのコールは、対処が必要な患者の最も近くにいる医療スタッフに、WLAN による音声通信によって転送できます。ただし、その医療スタッフが対応可能であるかどうかをシステムは判断できません。ロケーションとプレゼンスを組み合わせた統合ネットワークでは、両方のパラメータを照合することにより、患者の最も近くにいる医療スタッフだけでなく、対処可能な中で最も近くにいる医療スタッフも特定できるようになっています。医療スタッフは自分のプレゼンスを定義し、現在の状態として以下のようなレベルを送信することができます。

  • 対応可能
  • 手が離せないが、患者への対応ではない
  • 患者への対応で手が離せない
  • 休憩中

このようにさまざまなレベルのプレゼンスを基に、プレゼンス情報とロケーション情報を組み合わせてコール転送をより効率的に行うことができます。時間が重視される環境では、このような付加機能によって患者は必要な治療を迅速に受けることができます。

音声サービス

音声、データ、およびワイヤレス ネットワークを統合することで、企業では既存の構内ベースのテレフォニー システムの機能を拡張して、ワイヤレス テレフォニーのサポートを追加できます。テレフォニー システムは、従来のデスクトップ電話に対するのと同じ方法で Wi-Fi ハンドセットを認識します。これによって、ユーザには電話をかけたり受けたりする間のモビリティも提供されるので、ボイスメールのやり取りが減少するとともに、構内ベースのテレフォニー システムの使用範囲が拡大することで、生産性が向上します。

有線ネットワークに統合された Voice-over-WLAN システムには、さらなる利点として、コールを搬送するトランスポートに関係なく、単一のコントロール ポイントでコールの品質を保証できる点が挙げられます。この密接に統合されたインフラストラクチャでは、コールは異なるネットワーク サブネット間をローミングできるだけでなく、有線ネットワークとワイヤレス ネットワークの間でのローミングが促進されます。これを具体的に説明するために、グローバル セールス マネージャを例に考えます。会議室から自分のオフィスに戻る途中、このセールス マネージャの元に非常に大きな取引が完了間近のクライアントから電話がかかってきたとします。IP コミュニケーション システムは、このセールス マネージャがデスクにいないことを認識し、コールを Voice-over-Wireless フォンに自動的に転送します。セールス マネージャは、歩きながらこのコールを受けます。オフィスに戻ると、コールを自分のデスクトップ電話に透過的に転送し、両手を自由に使って自分のコンピュータの情報にアクセスし、取引を完了できます。

セキュリティ サービス

企業や IT の幹部は、有線ネットワークとワイヤレス ネットワークの統合により、ネットワーク セキュリティを扱う際の信頼性を向上させることができます。統合ネットワークでは、セキュリティ ポリシーをネットワーク全体に均等に適用できます。すべてのネットワークが接続された状態になると、各ネットワークはそれぞれの周囲で発生している事象を認識し、ネットワーク インテリジェンスを使用してリスクを緩和できます。

モビリティおよびワイヤレス テクノロジーにおいては、従来の境界ベースのセキュリティでは不十分です。プライベート ネットワークとパブリック ネットワークの間を移動するモバイル デバイス数の大幅な増加に伴い、クライアント デバイス レベルとリソース レベルからセキュリティを適用する必要性が高まってきています。Cisco Unified Wireless Network は、シスコ自己防衛型ネットワークと統合されているため、各クライアントはネットワークに安全かつクリーンにアクセスできるように管理されます。

シスコは、ネットワークの完全性を維持する上でセキュアなクライアントが果たす重要な役割を認識しています。モバイル クライアントの急増により、ウイルスに感染したクライアントや悪意のあるクライアントがもたらすネットワークへの脅威が大幅に増えています。Cisco Unified Wireless Network の一部である Cisco Compatible Extensions プログラムでは、クライアントに起因するセキュリティ侵犯のリスクを緩和するために必要なセキュリティ機能を、クライアント デバイスに確実に搭載できます。Cisco Compatible Extensions が約束する安全かつシンプルな接続は、厳密なテストを通じてサードパーティとの相互運用性が確認されており、その結果、今日の Wi-Fi シリコン チップセットの 95 パーセントはシスコと互換性があります。

不正なアクセス ポイントは、企業ネットワークの完全性に対する深刻な脅威となります。ネットワーク管理システムが不正なアクセス ポイントを検出した例を考えてみます。不運なことに、不正なアクセス ポイントが検出されたのは午前 3 時で、ネットワーク管理者は全員、自宅で就寝中です。しかし、システムは不正なアクセス ポイントがトラフィックをそのまま通過させることを許可せず、トラフィックを隔離します。朝、出社したネットワーク管理者は、このアクセス ポイントからのトラフィックを物理的な有線ポートでブロックするようにネットワークに指示し、別のスタッフに脅威を物理的に除去するように伝えます。

ゲスト サービス

企業では、顧客、ベンダー、パートナー、その他の訪問者にゲスト アクセスを提供する必要があります。ゲスト ネットワーキングとは、ユーザのプロファイルに基づいて特別なアクセス権を割り当てるネットワーク機能です。システムでは、外部の従業員の役割に基づいて、付与される特権をカスタマイズできます。たとえば、コンサルタントにサプライヤよりも多くのネットワーク特権を付与できます。ワイヤレスでは、物理ポートからの接続が抽象化されるため、ゲスト サービスを簡素化できます。

ワイヤレス対応ノート PC やその他のハンドヘルド デバイスがあらゆる場所に存在することを前提とした場合、ワイヤレス ネットワークはゲスト サービスを提供するのに最適なプラットフォームです。有線およびワイヤレス統合ネットワークでは、ゲストはすべてのタイプのネットワークについて 1 つのプロファイルを保持するだけでよいため、ゲスト サービスの品質が向上します。企業のナレッジ管理システムを強化するために管理コンサルタントが雇われた例を考えてみます。このコンサルタントはさまざまな従業員から情報を収集するため、企業内で高いモビリティを必要とします。コンサルタントは自分のデスクに戻ると、企業サーバに格納されているデータと新しいデータを比較する必要があります。コンサルタントがログインすると、ネットワークによってそのコンサルタントのステータスが認識されて、適切なアクセス権が割り当てられます。このような方法により、ユーザ プロファイル、時刻、および探しているコンテンツの種類に基づいて、ネットワーク リソースへのアクセスを許可または拒否できます。

外部のゲストは、複数のプロジェクトで作業したり、さまざまな関係者と連絡を取ることがあるため、部署間を移動するなど、企業内でのモビリティが高いことがあります。提供されるサービスをゲストの場所と接続タイプに基づいて自動的に調整する統合ネットワークを使用することで、IT 部署は移動、追加、および変更の減少によってコスト削減を達成できます。

スケーラビリティ

ワイヤレス ネットワークで使用する RF は、管理が必要な有限のリソースです。Radio Resource Management(RRM; 無線リソース管理)により、RF の管理の複雑さが軽減され、ワイヤレス媒体をスケーラブルかつ効率的に使用できます。RRM では、以下の一連のワイヤレス管理ツールによって周波数帯の効率が向上します。

  • アクセス ポイント間での動的なクライアント ロード バランシング
  • 自動干渉検出および回避
  • アクセス ポイント チャネルの自動割り当て
  • アクセス ポイントへの動的な電力送信制御
  • 自動サイト調査および再キャリブレーション ツール

すべての従業員のために適切なネットワークのカバー範囲と帯域幅を確保するには、建物やキャンパス全域に複数のアクセス ポイントを用意する必要があります。ワイヤレス ネットワークで、ビジネス アプリケーションの革新に必要な幅広いモビリティ サービスをサポートするには、オフィス空間の 3,000 平方フィートごとに 1 つのアクセス ポイントが必要です。ワイヤレス ネットワークを既存の有線ネットワークに統合すると、WLAN で(ゲスト、契約業者、追加管理などから)追加のトラフィックが発生しても基本データ ネットワークで処理し、その場合も継続的にネットワークのパフォーマンスを統合ビューで確認できるので、IT 管理者は安心することができます。
有線とワイヤレスを完全に統合すれば、アクセス ポイントとコントローラの制御および管理をネットワークのコアに一元化できます。この中央集中型制御により、ワイヤレス システムの管理に必要なオーバーヘッドと時間が大幅に軽減されます。IT 管理者は、個々のコントローラやアクセス ポイントを管理するのではなく、単一の管理ポイントから個々の各種ワイヤレス コンポーネントを管理できます。ワイヤレス管理をネットワーク コアに統合することで、シスコでは 1 つのインターフェイスから 80,000 以上の WLAN クライアントを管理できます。

ワイヤレス コンポーネントを有線インフラストラクチャに統合することで、企業は既存インフラストラクチャへの投資をより効果的に活用できます。この統合により、サポートの労力、機器処理のための電力、物理的なワイヤリング クローゼットのラック スペースなど、リソースをより効率的に使用できるようになります。たとえば、Cisco Unified Wireless Network を採用すると、複数のネットワーク コンポーネント(データ スイッチ、ワイヤレス コントローラなど)をサポートする状態から、サービス統合型ルータ向け Cisco Catalyst® 6500 Series Wireless Services Module(WiSM; ワイヤレス サービス モジュール)や Cisco Wireless LAN Controller Module(WLCM; ワイヤレス LAN コントローラ モジュール)などの、有線インフラストラクチャに統合された単一のネットワーク コンポーネントに移行することができます。

ビジネスクラスのワイヤレス

Cisco Unified Wireless Network は、ビジネスクラスの復元力と信頼性に対してシスコが定めている厳しい基準を満たしています。ビジネスにおいては、ミッションクリティカルなアプリケーションのワイヤレス ネットワークへの依存度がますます高まっているため、ネットワークのアップタイムを維持することが不可欠です。シスコはネットワーク コンポーネントの品質テストを特に重視しているため、各製品は優れた性能を発揮します。

また、シスコはワイヤレス ソリューションを強化することにより、アクセス ポイントとコントローラの間の自動フェールオーバーによるネットワークの復元力を向上させています。コントローラで障害が発生すると、アクセス ポイントは次に使用可能なコントローラと自動的に通信します。同様に、システムは何らかのアクセス ポイント障害を検出すると、隣接するアクセス ポイントに対して、カバレッジ ギャップを回避するために電力送信を増やすように指示します。

ワイヤレスおよび有線のシスコ ネットワークの統合の中核にあるのは、Cisco Catalyst 6500 シリーズ WiSM と Cisco WLCM です。シスコ スイッチおよびサービス統合型ルータはきわめて高いアップタイムを提供するため、非常に過酷な環境のネットワークであっても突然中断することはありません。Cisco Catalyst 6500 シリーズ WiSM と Cisco WLCM では、Cisco Catalyst スイッチと Cisco サービス統合型ルータが提供する高いサービス レベルを使用するため、ワイヤレス ネットワークは、基盤の有線ネットワークと同じレベルのアップタイムを確実に提供します。

TCO

IT への支出に対する企業の見方は、過去数年で大きく変化しています。現在、多くの企業経営者は IT への投資を、効率の向上、生産コストの削減、および顧客への新たなアプローチを通じて競争優位性を確立できる戦略的な投資であると考えています。企業は IT への投資が業績に与える影響の大きさに気付き始めています。

統合モビリティ プラットフォームが非統合ソリューションと比較して優れている点を評価する最も適した方法は、それぞれのソリューションが TCO に与える影響を調べることです。非統合 WLAN では、TCO は削減されません。Cisco Unified Wireless Network などの統合ソリューションでは、2 つの別々のシステム(有線システムとワイヤレス システム)を統合して同じ機能を両方のシステム全体に拡張できるため、TCO が確実に削減されます。

TCO の分析は、資本コストと運用コストに分類できます。通常、テクノロジーの取得価格は、製品寿命全体における総コストから見るとわずかな額であり、テクノロジーとその成熟度に応じて一般的には 20 〜 35 パーセントです。表 1 に、有線およびワイヤレス統合モビリティ プラットフォームによって TCO が削減される点を、非統合ワイヤレス ネットワークと比較して示します。

表 1 有線およびワイヤレス統合アーキテクチャによるコスト削減
コスト削減の種類 利点
資本コスト
  • 大量購入による資本コストの削減
  • 既存のネットワーク コンポーネント(ルータ、スイッチ、セキュリティ デバイス)に実装するため、追加の機器による支出が発生しない
運用コスト
  • サプライヤが少数であるため、調達管理が向上 ・ トレーニング コストの削減
  • 複数ベンダーの間での不整合が発生しないため、問題を迅速に解決
  • 経験豊富な単独のパートナーによる迅速な実装
  • 単一の中央集中型インターフェイスによるネットワーク管理の向上
  • 中央集中型ネットワーク管理によるサポート要員コストの削減
  • ネットワークの計画されたダウンタイム、突然のダウンタイムの減少
  • アクセス ポイント設定の一元化によるネットワークの迅速な追加、移動、および変更


まとめ

モバイル デバイスの急増と、いつでもどこでも業務を遂行する必要性が高まるなかで、ビジネスは「モバイル時代」に突入しました。モビリティという概念から、個人を中心にしたトランザクション モデルが生まれました。現在、リソースはモバイル化され、誰がいつ、どこで、どのような方法を使用してもアクセスできるようになっています。

企業はモビリティを活用することにより、新しいネットワーク サービス、ビジネス関連アプリケーション、および生産性向上を通じて価値を創出できます。Cisco Unified Wireless Network は、新しいモバイル ワールドに向けてシスコのエンタープライズ クラスのネットワークを統合します。有線ネットワークとワイヤレス ネットワークの統合により、企業はネットワークを簡素化して TCO を削減するだけでなく、さらに重要なこととして、より優れた新しいビジネスのあり方を発見できるようになります。ビジネスの新しい波はモバイルです。シスコは、この最新のビジネス変革の最前線にお客様を導きます。