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シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションで実現する在庫およびゾーン管理アプリケーション

ソリューション概要





シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションで実現する在庫およびゾーン管理アプリケーション



概要

「在庫」とは、企業が保有している物品や資材の一覧のことです。これらの物品や資材の性質は、業種によって大きく異なります。たとえば、製造施設では、在庫とは倉庫にある製造済みの製品を指すのに対し、小売店では商品を指します。その他の分野、たとえば医療分野では、医療機器などの物品のみにとどまらず、看護担当者や患者などの人にも、在庫の定義が及ぶ場合があります。特に、迅速な看護サービスを実現するために、看護担当者を施設に常駐させる場合は、人を在庫として扱う必要性が高まります。対象となる「在庫」の実際の性質にかかわらず、どのような業種であっても、財務上の目的(費用追跡)および会計上の目的(減価償却)に加え、生産性(利用可能性)の向上という目的のために、在庫を追跡および管理する必要があります。

シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションは、次のような問題に対応できる、資産とリソースに関する情報をビジネス プロセスに提供します。

  • 資産とリソースはここにあるのか。
  • 資産とリソースはどこにあるのか。
  • 資産とリソースはどのような状態なのか。
  • 資産とリソースの利用状況はどうなっているのか。
  • 資産とリソースはネットワークのどこにあるのか。

この文書では、「ここに資産とリソースはあるのか」という問いに対し、シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションがどのようにして情報を提供し、ゾーンおよび在庫管理アプリケーションを実現するのかについて、重点的に説明します。「ゾーン」とは、企業によって定義された監視対象領域を指します。次の図は、シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションがサポートしているさまざまなアプリケーションを示しています。

図 1.	在庫の追跡(資産とリソースはここにあるのか)

図 1. 在庫の追跡(資産とリソースはここにあるのか)


ビジネス上の課題

現在、ほとんどの業界で、費用抑制の圧力、厳しい規制環境、応答速度の向上に対する顧客の要求といった問題に直面しています。効率性を改善するためにプロセスの自動化を目指す企業にとって、資産を適切に活用するためにも、資産とリソースの可視性を高めることが早急に必要です。何かを探すという作業は、どの企業でも主に人の手によって行われるため、時間がかかるうえに、間違いを起こしやすいプロセスです。必要なときにリアルタイムでそうした資産が探せないために、迅速な対策や意思決定をできず、収益や売上高に悪影響が及んでいます。

ここ数年、主に社外にいる従業員が会社のリソースに接続できるようにするため、WLAN テクノロジーを Wi-Fi デバイスと合わせて実装する企業が増加しています。この文書では、在庫およびゾーン管理アプリケーションによって資産の可視性の向上を図る追加的なソリューションについて説明します。企業は、Cisco Unified Wireless Network への投資を拡大することによって、ここで取り上げているソリューションのメリットを享受できます。

ソリューションの概要

シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションは、受信信号強度インジケータ(RSSI)や到着時間差(TDOA)、チョークポイントなど、Cisco Unified Wireless Network と連携して機能するテクノロジーで構成されています。これらのテクノロジーにより、在庫およびゾーン管理アプリケーションが、屋内、天井の高い場所、および屋外で、資産やリソースの場所を特定できるようになります。

  • RSSI:RSSI では、資産またはリソースから発信される Wi-Fi 無線信号の強度を入力データとして使用するアルゴリズムに基づいて、資産またはリソースの場所が計算されます。このテクノロジーは、主に屋内や障害物の少ない RF 環境で資産の場所を特定するために使用されます。Wi-Fi 無線機は、車椅子などの資産に付けられたタグ デバイスに取り付けることも、エンド ユーザが携帯するタブレット PC などのクライアント デバイス自体に組み込むこともできます。
  • TDOA:TDOA テクノロジーは、屋外や、障害物の多い RF 環境(天井の高い倉庫など)で主に使用される別のアルゴリズムを基盤として、コンテキスト アウェアネスを実現します。シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションでは、このテクノロジーを使用して、タグが付けられたフォークリフトや車などの資産(屋外の駐車場に保管されている場合がある)の場所を特定します。
  • チョークポイント:チョークポイント テクノロジーを使用するには、チョークポイントを検知できるタグを資産またはリソースに付ける必要があります。資産、つまりタグがチョークポイントに近づくと、Wi-Fi ネットワークに信号が送られます。チョークポイントとタグの間で通信が行われることにより、あらかじめ定義されたゾーンへの資産の出入りを認識することもできます。

在庫またはゾーンの管理に、RSSI、チョークポイント、TDOA のうちどのテクノロジーを使用するかは、対象となるビジネス上の課題の性質によって異なります。シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションによって提供される位置データへのアクセスは、企業が使用しているビジネス アプリケーションに、オープン API を通じて統合できます。

以降では、次の図 2 に示すさまざまな業種について、これらのテクノロジーの適応性やメリットを示すビジネスのシナリオを例として示します。

図 2 業種別の在庫/ゾーン管理

図 2 業種別の在庫/ゾーン管理


医療

ビジネス上の課題:病院の場合は、集中治療室(ICU)に最低限の人数の医師が待機していることを、看護師が確認できると便利です。医師の人数がこの下限を下回った場合、看護師は必要な人数を維持するために、警告を発する必要があります。この場合、医師は看護師による追跡対象となる「在庫」、監視対象の「ゾーン」は ICU です。

さらに、病院では、輸液ポンプなどの高価な医療機器(在庫)の安全性を確保し、これらの機器を有効に使用するための手段が必要です。これを実現するには、倉庫を「ゾーン」として定義し、このゾーンを監視して、医療機器のゾーンへの出入りを追跡します。輸液ポンプが手入れのために指定した時間内に倉庫に戻っていない場合は、担当スタッフに警告を発し、ポンプが盗難に遭ったのか、別の場所にあるだけなのかを、担当スタッフが判断できるようにする必要があります。

さらに、病棟をゾーンとして定義することにより、患者が付き添いや許可なしで病棟を出ていないかどうか、看護師が追跡することもできます。

ソリューション:病院などが前述のビジネス上の課題に対処するには、シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションを使用して、Wi-Fi クライアント デバイス(ノートブック コンピュータ、デュアルモード携帯、Wi-Fi PDA など)、またはタグとして機能するバッジを通じて、医師を追跡します この情報を企業のディレクトリに統合することにより、必要なときに適切なタイミングで、医師に簡単に連絡できるようになります。また、Cisco Context Aware Mobility ソリューションを基盤としたゾーンまたは在庫管理アプリケーションを使用すると、高価な機器や患者にタグを付けることにより、これらの機器や患者を監視することもできます。

メリット:医療分野におけるゾーンまたは在庫管理アプリケーションの重要なメリットとしては、病院のスタッフや資産の有効利用、および高価な医療機器や患者のセキュリティ対策の向上が挙げられます。これにより、コスト管理の徹底と看護サービスの向上という総合的なメリットを得ることができます。

製造業

ビジネス上の課題:製造施設は、一般に面積が広く、屋内と屋外の両方にまたがっています。また、天井が高く、RF に対する障害物)金属機器や工業用ファンなど)があるため、RF 環境は厳しいものになります。製造業におけるゾーン管理アプリケーションの例をわかりやすく示すため、これらの施設は、主に安全上の目的で、保管されている機器のコスト、およびその運用に必要な一連のスキルに応じた「ゾーン」によって特徴付けることができます。核施設などでは、スタッフの安全を確保するため、一部の「ゾーン」を適切な許可がない場合は立ち入り禁止にすることもできます。さらに、施設の面積が広い場合は、工場を有効に利用するため、工場管理者が適切な数のスタッフや専門機器(半導体施設のスペクトラム アナライザなど)が揃っていることを確認できるようにする必要があります。

ソリューション:障害物の多い RF 環境にある製造施設でも、コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションを使用して、施設内で利用できる専門機器や在庫を追跡できます。資産にタグを付けることにより、工場管理者は施設内の資産の場所を視覚的に確認できます。また、シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションでは、前述のような「ゾーン」を作成して、許可のない侵入を防ぐことができます。さらに、在庫またはゾーン管理アプリケーションと、Cisco Context-Aware Software を使用する状態の追跡などの別のアプリケーションを組み合わせることにより、在庫の状態(温度や湿度など)を追跡することもできます。

メリット:製造施設では、ゾーン管理により、許可を得ていないゾーンへの侵入を厳格に管理することで、規制および安全上の要件を満たすことができます。

教育

ビジネス上の課題:教育機関の場合、管理対象の「在庫」の例として、コンピュータ ラボのサーバや、1 日のほとんどをキャンパスで過ごすスタッフや学生が挙げられます。特に緊急時におけるスタッフや学生の安全は、教育機関にとって最優先事項です。このため、教育機関では、学部、建物、さらには学生寮ごとに「ゾーン」を定義して、スタッフや学生の場所を迅速に特定し、簡単に通信できるようにすると便利です。また、教室をゾーンに指定して、授業に出席している学生を教職員が自動的に追跡できるようにすることもできます。

ソリューション:教育機関では、シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションを使用して、前述のようなゾーンを定義できます。学生や教職員が使用する Wi-Fi クライアント デバイスを追跡することにより、緊急避難時に取り残された学生がいる場合に、管理スタッフがリアルタイムで認識することができます。また、IT スタッフが シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションを使用してコンピュータ ラボの「ゾーン」を監視することにより、セキュリティが侵害された場合に警告を発することができます。

メリット:ゾーンおよび在庫管理アプリケーションにより、あらかじめ定義されたゾーン内の資産、教職員、およびスタッフの正確な位置情報を取得できます。これにより、教育機関では、資産、教職員、スタッフをより正確に追跡して、安全性とコミュニケーションを向上させることができます。

小売業

ビジネス上の課題:小売業界において、ゾーンまたは在庫管理は、顧客サービスや顧客満足度に直接影響する可能性のある重要なアプリケーションです。小売店では、特定の売り場に買い手が存在するかどうかを認識して、買い手の Wi-Fi デバイスに自動的に製品情報と宣伝をプッシュできると便利です。また、スキャナや、再利用可能な梱包用の箱やフォークリフトなど、高価な資産が利用できる状態かどうかを確認して、盗難や不適切な扱いを防止したり、在庫レベルが低下して販売機会を逃す可能性がないかどうか、在庫を追跡する必要があります。小売店で在庫またはゾーン管理を実現するには、店内の倉庫または特定の売り場をゾーンとして定義します。

ソリューション:シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションを使用すると、前述のようなゾーンを定義して、商品に許可なく触れたり、商品を移動したりすることを防ぐことができます。また、倉庫から出される商品を追跡して、在庫レベルが許容可能なレベルを下回った場合に警告を発することもできます。さらに、買い物客が使用する Wi-Fi クライアント デバイス(PDA、デュアルモード携帯など)を追跡して、その買い物客の店内での位置に応じて関連情報をプッシュすることもできます。シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションによって実現されるプレゼンスなどの他のアプリケーションと組み合わせると、販売員が販売部長の場所を特定して適切なタイミングで連絡を取って警告を報告したり、顧客にサービスを提供したりできるほか、状態の追跡を使用して、商品のステータスを確認することもできます。

メリット:シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションで実現できる在庫またはゾーン管理アプリケーションを利用して顧客満足度と安全性を向上させることにより、小売店は大きなメリットを得ることができます。

展開に関する考慮事項

ここでは、企業が在庫およびゾーン管理アプリケーションを実装する際の展開に関する考慮事項をいくつか示します。

これらのアプリケーションを展開する前に、まずゾーンを定義する必要があります。ゾーンとは、「ここに資産はあるのか」、つまり資産がゾーン内にあるのかどうかという問いを受けて、資産の利用可能性を追跡する場所となる特定の領域を指します。ゾーンには、大学のキャンパスから、製造施設の倉庫内にある特定の棚に至るまで、さまざまな大きさの場所を指定できます。

ここでは、比較的広いゾーン、たとえば複数階の病院の 5 階で、資産の利用可能性に関する情報が必要な場合について考えます。このシナリオにおける最低限のネットワーク要件は、この定義済みのゾーン内で確実に WLAN に接続できるようにすることです。これにより、WLAN に接続できない場所があるために資産の視覚化に影響が及ぶ事態を防ぐことができます。資産に組み込まれた Wi-Fi 無線機(タグまたはクライアント デバイス)は、5 階のワイヤレス ネットワークと対話し、資産がそこにあることを示します。資産がこのゾーンを出ると、ネットワークはその資産からの信号を受信できなくなるため、その資産がゾーン内にはないと推測します。どちらの場合も、ビジネス アプリケーションは、「ここに資産はあるのか」という問いに対する答えを得ることができます。この展開では、ゾーン内で使用できる基本的なデータ ネットワーク接続を使用します。その際、ネットワークに対する変更は、ほんのわずかで済むか、特に変更を加える必要がない場合もあります。このため、企業は、簡単で費用効率のよい方法で、ゾーンおよび在庫管理アプリケーションのメリットを得ることができます。

資産がゾーンを出入りしたときに、ビジネス アプリケーションに対してより迅速に通知する必要がある場合、たとえば病院の病棟などでは、病棟の出入口にチョークポイントを展開して、タグが通過したときに資産情報を取り込むことができます。また、ゾーンの面積が非常に狭い場合、たとえば倉庫の棚やラックなどでも、チョークポイントを使用できます。このような場合、棚に設置されたチョークポイントによって、その棚に資産があるかどうかに関する情報が提供されます。

さらに、「ここに資産はあるのか」という問いに加え、「資産は(ゾーン内の)どこにあるのか」という問いに対する答えも必要な場合は、場所をより正確に特定できるよう、RF 展開を最適化する必要がある場合もあります。たとえば、医師がゾーン内にいない場合は、「資産はどこにあるのか」という問いに対する答えとして、医師がいる可能性のある最も近くのゾーンに関する情報が示されるようにします。また、屋内では、RSSI ベースのロケーション トラッキングを展開して、資産が存在するゾーン内の具体的な場所を特定することもできます。天井の高い場所、屋外、およびより障害物の多い RF 環境では、TDOA 受信機を使用して、より正確な資産の位置情報を取得できます。位置の正確な特定に対するニーズが高まってきているため、位置情報をより正確に計算できるよう、アクセス ポイントの展開密度も、ニーズに応じて設計する必要があります。

これまでに説明した在庫またはゾーン管理アプリケーションのすべての展開シナリオは、状態の追跡や資産の追跡など、他のアプリケーションを活用するための基本的な実装としても使用できます。

在庫およびゾーン管理ソリューションのコンポーネント

在庫およびゾーン管理ソリューションの一般的なコンポーネントには、次のようなものがあります。

  • Cisco Context-Aware Software:複数のワイヤレス ネットワークからのコンテキスト情報を取得、保存、および分析する Cisco モビリティ サービス エンジン上のソフトウェアです。Cisco Context Aware Softwareは、アプリケーションの要件に応じ、次のような要素と連携してロケーション トラッキングを行います。
    • TDOA 受信機:主に屋外または障害物の多い RF 環境で使用され、タグの場所を計算します。
    • チョークポイント:チョークポイントは、Wi-Fi とは異なる周波数を使用し、ビジネス アプリケーションの対象となるゾーンに展開されます。チョークポイントは、近くに来たタグの励振器として機能します。これらのタグは、WLAN 経由で Cisco モビリティ サービス エンジンに通知と取り込んだコンテキスト データを送信します。
  • モバイル資産:シスコのテクノロジー パートナーが製造したデバイスまたはタグであり、Cisco Compatible Extensions Programで認定されたものです。
  • Cisco Unified Wireless Network :Cisco Unified Wireless Network は、Cisco AironetR アクセス ポイント、Wireless LAN Controller、および Wireless Control System から構成される大規模ネットワーク展開のためのソリューションです。
  • Cisco モビリティ サービス エンジン(MSE):Cisco モビリティ サービス エンジンは、Context Aware Software を搭載する、Cisco Unified Wireless Network のコア コンポーネントです。Simple Object Access Protocol/Extensible Markup Language(SOAP/XML)をベースとするアプライアンス ベースのオープン API プラットフォームにより、ネットワークに対応したコンテキスト アウェア情報をビジネス アプリケーションに統合することを可能にします。

シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションは、Context Aware Software を搭載した Cisco モビリティ サービス エンジンを基盤としており、企業向けアーキテクチャ Service-Oriented Networking Architecture(SONA)の構成要素です。これにより、日常業務を効率化するプラットフォームとして、適応力に優れ、迅速な対応が可能でインテリジェントなネットワークを構築できます(図 3)。

図 3 シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションのアーキテクチャ

図 3 シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションのアーキテクチャ


関連情報

シスコ コンテキスト アウェア モビリティ ソリューションの詳細については、次の URL を参照してください。
http://www.cisco.com/jp/go/contextaware/
シスコ モビリティ ソリューションの導入事例については、次の URL を参照してください。
http://www.cisco.com/web/JP/solution/netsol/mobility/success.html
Cisco オープン API の詳細については、次の URL を参照してください(Cisco パートナーのみ)[英語]。
http://www.cisco.com/cgi-bin/dev_support/access_level/product_support
Cisco モビリティ サービス エンジンの詳細については、次の URL を参照してください。
http://www.cisco.com/jp/go/mse/
Cisco Unified Wireless Network の詳細については、次の URL を参照してください。
http://www.cisco.com/jp/go/unifiedwireless/