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IP Next-Generation Networks

キャリア クラスの IP 次世代ネットワークの構築

キャリア クラスの IP 次世代ネットワークの構築

このホワイト ペーパーでは、IP Next-Generation Network(NGN)環境をサポートする IP ネットワーク要件について説明します。キャリア クラス IP は今後、IP NGN および関連するサービスの開発に不可欠な要件となります。キャリア クラス IP により従来の標準的なサービスがどのように変化していくかを具体的に理解していただくために、キャリア クラス テレフォニーを従来型の回線交換から IP に移行するシナリオを示します。この移行におけるキャリア クラス IP のさまざまな側面について説明し、全体像を浮き彫りにします。

はじめに

サービスプロバイダー ネットワークの構築方法は、基本となる部分で変化してきています。この変化に共通のテーマは、新しい基盤技術である IP による、インフラストラクチャとサービスの統合、およびサービス項目の統合です。シスコシステムズは、サービス プロバイダーの移行を成功に導くために、この移行のためのフレームワーク アーキテクチャを開発しました。Cisco(R) IP NGN と呼ばれるこのフレームワークには、シスコによる複数のテクノロジーと主要な専門分野におけるノウハウが含まれています。

サービスプロバイダーが現在使用している配信手段の多くが、変更の対象となります。この変更の中には、顧客とは無関係に、ネットワークのエッジやコアでさまざまなアプローチを実行することによって完全に解決できるものもありますが、サービスの配信方式や、配信可能なサービスの種類、および特定のサービスに対応するパフォーマンス レベルとサービス保証について、大幅な変更や拡張が必要となるものもあります。このような変更内容の一部を、以下に示します。これらはいずれも Cisco IP NGN フレームワークに含まれています。

  • ビデオ サービス ― ブロードバンド環境では、テレビ番組や、さまざまな種類のオン デマンド番組を IP で受信することが一般化しています。この傾向は今後も続き、対話型ビデオ サービスも含まれるようになります。
  • ブロードバンド ネットワーキング ― ブロードバンドは急速に普及していますが、単なるアクセス方式としての用途から、ネットワークで接続されたホーム環境の実現という用途への移行は、始まったばかりです。
  • ワイヤライン データ サービス ― 大部分のビジネス データ サービスでは、ラストマイルのフレームリレーまたは ATM サービスが引き続き使用されています。IP インフラストラクチャは、これらのサービスに加えてその他のサービスを同じ IP インフラストラクチャで提供し、配信に関する同一の顧客要件を満たすことができます。
  • テレフォニー サービス ― これまで、従来のキャリア テレフォニーからパケット テクノロジーへの移行が行われてきましたが、従来の回線交換ベンダーがパケット ベースの音声ソリューションを提供している現在、この移行には飛躍的な進展が見込まれています。さらに、固定およびモバイル音声サービスの統合も始まろうとしています。
  • ワイヤレスおよびモバイル サービス ― モバイル サービスが固定音声サービスと統合されると、モバイル ハンドセットは音声、ビデオ、データを統合したマルチメディア ウィンドウへと進化し、この通信デバイスでリアルタイム ビデオやオンライン ゲームを楽しめる条件が整います。

サービスプロバイダーのアプリケーションおよびテクノロジーの多くは、ノード レベルでもネットワーク レベルでも、「キャリア クラス」であることが基本条件とされる環境から出発しています。既存のサービスがパケット ネットワークに統合されると、これらの要件が既存のサービスに加えられるため、IP インフラストラクチャはノード レベルでもネットワーク レベルでも、同じキャリア クラスの要件を満たす必要があります。

IP ネットワークは特定のアプリケーションまたはサービスに限定せず、複数の異なるテクノロジーおよびサービスにも対応できるインフラストラクチャにならなければなりません。多くの場合、これを同じノードで実現することが要求されます。それと同時に、それぞれのサービスに固有の要件も満たす必要があります。

このような厳しい要件を満たすには、IP NGN ネットワークは広範囲に及ぶ機能を提供しなければならず、調和の取れた完全なサービス スイートを実現するために、機能によっては相互に矛盾した性質を備えている場合があります。IP NGN インフラストラクチャの運用環境には、関連するすべてのサービス コンポーネントおよび属性が含まれます(図 1)。

図 1 理想的な IP NGN ネットワークの特性

図 1 理想的な IP NGN ネットワークの特性
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従来は別個だった複数のネットワークを 1 つに融合することにより、このような幅広い要件を満たすためには、当然のことながら多数のテクノロジーおよびプラットフォームが関与します。IP を共通分母として、特定のサービスや機能を処理するプラットフォームが多機能なエッジを構成し、共通の IP/オプティカル コアを中心に収束します。各アプリケーションおよびテクノロジーには、IP インフラストラクチャに関してそれぞれ固有の要件があります。

図 2 に示すように、IP NGN の中枢部は、現在すでにサービスプロバイダーによって実現されている次の 3 分野の基本的な統合です。

  • アプリケーションの統合 ― 新しい革新的な IP データ、音声、およびビデオ サービスを 1 つのブロードバンド インフラストラクチャに統合します。
  • サービスの統合 ― プロバイダーは現在、音声、ビデオ、データ、およびモビリティ サービスを組み合わせた「移動時のトリプル プレー」の配信に向けて移行中です。サービスの統合には、ネットワークのアクセスと制御が含まれます。これは特定のテクノロジーにとらわれることなく、あらゆるネットワーク メディア(モバイル、無線、ケーブル、DSL、またはイーサネット)とシームレスに互換性があります。
  • ネットワークの統合 ― プロバイダーは現在、複数のサービス専用ネットワークを展開、管理、保守している状態から、1 つのネットワーク(ほとんどの場合、IP Multiprotocol Label Switching [IP MPLS] ベースのネットワーク)ですべてのサービスを配信する体制へ移行しつつあります。
図 2 Cisco IP NGN アーキテクチャの概要

図 2 Cisco IP NGN アーキテクチャの概要
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IP NGN の基盤には、セキュアなネットワーク レイヤ(顧客要素、アクセス/アグリゲーション、インテリジェントな IP MPLS エッジ、およびマルチサービス コア コンポーネントで構成)と、その上下に重なった転送要素および相互接続要素があります。

図 3 に示すように、IP MPLS コア ネットワークは IP NGN アーキテクチャの基盤を形成します。このアーキテクチャが有効であるためには、IP/MPLS コアがキャリア クラスの要件を満たすことが前提となります。この資料では以降、従来の IP/MPLS コアから IP NGN キャリア クラス IP/MPLS コアへの移行について説明します。

図 3 Cisco IP NGN のセキュアなネットワーク レイヤ

図 3 Cisco IP NGN のセキュアなネットワーク レイヤ
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キャリア クラス IP

IP NGN アーキテクチャに要求される機能を提供するには、多くのネットワークで最初のステップとして、NGN のサービス要件を満たすために必要な要素が揃っているかどうかを確認する必要があります。IP への移行が予定されている従来のサービスには、見かけ上ほとんど欠点のないサービス品質を備えているものがあり、サービスの配信に現在使用されているネットワークも、あらゆる面でキャリア クラスとみなされる機器で構成されています。統合 IP インフラストラクチャも、同様にキャリア クラス IP でなければなりません。

IP ネットワークを真のキャリア クラスにするための厳しい要件を示す例として、公衆交換電話網(PSTN)テレフォニーというサービス要素を IP に統合する場合について検討してみましょう。PSTN テレフォニーに限らず、すべてのサービスを継承するために IP NGN が満たさなければならない要件は、次の 5 つのカテゴリに分類されます。

  • サービス要件 ― 過去に継承したもの(テレフォニーで)または特定のサービスに関する一般的な要件に基づいて、サービスを透過的に配信するためにインフラストラクチャに要求されます。これらの要件は、サービスプロバイダーごとに異なる場合があり、また、同様のサービスの異なる階層によっても異なることがあります。
  • ネットワーク要件 ― ネットワーク固有の要件であり、特定のサービスに結び付く場合や、IP NGN インフラストラクチャの全体的なパフォーマンス目標に基づく場合があります。
  • セキュリティ要件 ― 統合型ネットワークでは、従来よりもはるかに厳密なセキュリティが要求されます。セキュリティ インフラストラクチャおよびポリシーの一環として、サービスまたはサービス ノードへのアクセスを制限するための要件が必要です。
  • 運用要件 ― 従来、時分割多重(TDM)または TDM のようなアーキテクチャで提供されていたサービスには、適切なトラッキングとトラブルシューティング、ヘルス モニタリング、および予防的なパフォーマンス モニタリングに関する、厳密な運用要件があります。IP NGN 環境では、従来の IP 環境とは異なる種類のデータ トラッキングが要求されます。
  • ネットワーク設計 ― ネットワークが上記の要件をすべて満たせるかどうかは、ネットワークの設計によって大きく左右されます。多くの場合、設計上の判断は、費用対効果の分析に基づいて行われます。重要なのは、このような判断を意識的に行うことです。

5 つのカテゴリについて個別に説明しますが、これら全部が揃って初めて、希望どおりのネットワーク動作が実現されます。上記のカテゴリすべてが、キャリア クラス IP の基盤です。

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キャリア クラスの IP テレフォニーに関するサービス要件

ここで説明するサービス アーキテクチャおよび関連するキャリア クラス要件は、一般的に PSTN の近代化または PSTN の変換と呼ばれています。シスコのシナリオでは、エンド ツー エンドの IP アーキテクチャ全体ではなく、コア トランスポートだけが IP に基づいています。それでも、テレフォニー要件を満たすために必要なネットワーク特性は、エンド ツー エンド IP アーキテクチャにほぼ当てはまります。

伝送手段として IP を使用することは、移行に関する単なるアーキテクチャ上の変更だけでなく、中央集中型の回線交換テレフォニー アーキテクチャから、分解されたソフト スイッチ ベースのアーキテクチャ(別名、分割アーキテクチャ)への移行を意味します。既存の回線交換型のテレフォニー ネットワークを保有する多くのサービスプロバイダーにとって、この移行は、統合環境への第一歩です(図 4)。

図 4 PSTN の変換

図 4 PSTN の変換
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PSTN の近代化によってサービスプロバイダーが得られる利点は、次のとおりです。

  • 多数のネットワークを 1 つのネットワークに移行
  • 高度で柔軟な伝送
  • 標準化されたオープン アーキテクチャ
  • 回線交換リソースの消費量の減少
  • 集中的なコール ロジックのある、分解されたアーキテクチャ(必要となるスマートなネットワーク要素が少ない)

これらの利点はいずれも、サービスプロバイダーにとって効率的な資産運用と、所有コストの削減につながります。


テレフォニー要件

通話料が秒単位で課金される以上、不快なユーザ エクスペリエンスは許されません。音声回路が中断されると、顧客はエコーやノイズなどの問題に気づき、反応します。どのような種類の障害でも、サービスプロバイダーに 0.5 ドルの収益をもたらすはずの通話が、カスタマー ケア センターに苦情が寄せられるために 20 ドルのコストを発生させる結果になります。したがって、多くのサービス プロバイダーが顧客の満足度を高め解約を防ぐという点で、音声品質を競合上のアドバンテージとみなしています。また、音声品質がよければ、コストが高くつく顧客からの苦情を最小限に抑えられるので、収益性を確保するための手段でもあります。

キャリア クラスのテレフォニー要件は、コールの確立と切断に使用するシグナリングと、テレフォニー通信に使用する実際のメディア(音声、FAX、およびモデム)により課せられます。シグナリング プロトコルとメディア ストリームでは、細かい要件に違いがあるとはいえ、どちらのトラフィック タイプでもそれぞれ独自の厳しい要件が IP ネットワーク上で適用されます。


テレフォニー シグナリングの要件

シグナリング要件は、テレフォニー アーキテクチャのさまざまなエンティティ間で使用するプロトコルによって課せられる要件です。これらのエンティティとしては、ソフトスイッチ、メディア ゲートウェイ、および銅集積ユニットがあります(図 5)。

図 5 テレフォニー アーキテクチャの進化

図 5 テレフォニー アーキテクチャの進化
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要件はシグナリング方式ごとに異なります。最近のシグナリング プロトコルの多くは IP 環境での使用を前提に設計されているので、遅延やパケット損失への対応力や許容性に優れています。ただし、大部分のネットワークでは、旧来のプロトコルや独自仕様のプロトコルが依然として使用されています。これらのプロトコルの多くは、ポイント ツー ポイント TDM 回線で動作するように設計された V.5.x に先行する独自仕様プロトコルであり、最悪の場合には、SONET/SDH に直接統合されています。言うまでもなく、遅延やジッタなどに関する要件が非常に厳しくなっています。TDM ベースの機器のモデルによっては、200 ms を超えるシグナリング接続の損失が許容されない場合があります。200 ms を超えるとシグナリング タイムアウトになり、該当する データリンク コントロール(DLC)ノードに接続していた加入者へのサービスが中断されます。


テレフォニー メディアの要件

IP ネットワークがメディア(音声、FAX、およびモデム)の要件をどの程度まで満たせるかによって、セッションが確立している間のユーザ エクスペリエンスが決まります。IP ネットワークがメディア要件を満たせない場合、音声品質が低下し、FAX およびモデム コールが失敗します。

音声品質の計測方法としては、Mean Opinion Score(MOS)と呼ばれる主観的な基準による手動での方法と、ITU-T G.107(R 値)に従った数学的な方法があります。多くのサービスプロバイダーは、MOS 4(または R 値 80)より上の音声品質をキャリア クラスとみなしています。ほとんどの回線交換電話網では、MOS スコアが 4 よりもかなり上です。国によっては、サービスプロバイダーが当局に低品質を報告することが義務付けてられている場合もあります。

テレフォニー トラフィックを専用のテレフォニー ネットワークから共有型の IP ネットワークに移行する場合、音声品質に影響が出ないようにする必要があります。IP 環境での良好な音声品質に関する主な要件は、次のとおりです。

  • 遅延 ― エンド ツー エンド(口から耳)の遅延が 150 ms を超えないこと。
  • 遅延変動(ジッタ) ― ジッタによって残りの遅延バジェットを超える遅延時間が追加されないこと。
  • パケット損失 ― コーデック、サンプル サイズ、トラフィックの廃棄方法、およびパケット損失を隠す機能の有無によって左右されます。テレフォニーのパケット損失は、0.1% を超えてはなりません。

使用する圧縮方式に応じて、音声品質に対する遅延、ジッタ、およびパケット損失の影響は異なります。原則として、これらの基本要件が満たされてない場合には、圧縮率が高い(結果的にコール単位での帯域使用量が少ない)ほど、音声品質への影響が大きくなります。図 6 に、遅延とパケット損失が音声品質にどのように影響するかを示します。

図 6 遅延とパケット損失による音声品質への影響(G.113 でのデータ損失)

図 6 遅延とパケット損失による音声品質への影響(G.113 でのデータ損失)
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パケット損失(%) G.711PLC なし *(R 値) G.711PLC ありランダム損失 *(R 値) G.711PLC ありシーケンシャル損失 *(R 値) G.711PLC なし(MOS) G.729 *(R 値)
0 0 0 0 4.42 11
1 25 5 5 3.55 15
2 35 7 7 1.38 19
3 45 10 10 - 23
5 55 15 30 - -

* G.113 の場合

伝送品質のもうひとつの重要な側面は、音声だけでなく、FAX やモデム トラフィックもネットワークの伝送サービスを使用し、なおかつ、これらのサービスに関連するアプリケーション(クレジット カード処理など)が中断に対して非常に影響されやすいという点です。

パケット損失の多くは、キャパシティ プランニング、Quality-of-Service(QoS)実装(ネットワーク関連)、および QoS 機能(ノード関連)といったネットワークのプロビジョニングに原因がありますが、遅延を構成する成分の中には、これらに影響されるものもあれば、影響されないものもあります。したがって、ネットワークの遅延特性を正しく確認する必要があります。この確認を行わないと、良好な音声品質は良くても偶発的にしか達成されず、トラブルシューティングが非常に難しくなります。

まず、遅延がどこで、どれだけ発生しているかを理解することが必要です。ネットワーク全体を対象にこの情報を記録したものを、遅延バジェットといいます。図 7 に、遅延が発生する可能性のある場所を示します。遅延の種類としては、固定的で設定不可能な遅延もあれば、固定的で設定可能な遅延もあり、さらには変化する可能性のある遅延(したがってバジェットが必要なもの)もあります。

図 7 遅延参照モデル

図 7 遅延参照モデル
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遅延バジェットが確立されると、IP ネットワークの設計に関するさまざまな判断を行うことができます。


ネットワーク要件

テレフォニーの要件を満たすには、現在の IP ネットワークに必ずしも存在しない、一定のアトリビュートを IP ネットワークに持たせる必要があります。ネットワーク レベルの要件は、次の 3 つのカテゴリに分類できます。

  • ネットワークのアベイラビリティ ― 変化する状況下で、特定の加入者サービスを提供するネットワーク サービスが使用可能であることを保証します。サービス アベイラビリティと考えることもできます。
  • QoS ― ネットワーク要素またはネットワーク ノードは、ネットワーク インフラストラクチャを介して転送されるアプリケーションに、信頼性のある適正なレベルの QoS を保証できなければなりません。
  • 予測可能なパフォーマンス ― 新規のサービスに必要な機能を提供する場合、既存のサービスおよび加入者のパフォーマンスが影響されないようにする必要があります。パフォーマンスが予測不可能であれば、サービスプロバイダーがネットワーク全体でサービスの計画や実装を行うことはできません。

PSTN テレフォニー サービスに求められるのは、いつでも使用可能であるということです。ネットワークの性質は違っていても、期待される役割とサービスに要求される条件は、IP ネットワークでも同じです。

IP ネットワークは冗長に設計されている場合が多く、アベイラビリティに関しては優秀な数値を示しますが、そのことは必ずしも、トール品質のテレフォニーに適しているとか、あるいはそれを提供する能力があるということにはなりません。重要なのは、負荷やストレスがかかったり、障害が発生した場合など、どのようなネットワーク条件下でも、遅延、ジッタ、およびパケット損失に関する要件を満たしているということです。この理由から、既存のネットワーク要素、ネットワーク トポロジー、保護および復旧方式が、すべてキャリア クラスのテレフォニー要件を満たしている必要があります。

1 秒未満のサービス復旧がキャリア クラス テレフォニーの最低基準であるとよく言われますが、前述したように、200 ミリ秒未満の復旧が要求されるシグナリング方式が存在します。IP 機器を選択したり、ネットワークを設計したり、保護および復旧方式を決定したりするときは、このことを考慮する必要があります。

回線交換テレフォニー環境では、リソースが衝突するとコールが確立されないので、エンド ツー エンドで適切なリソースを確保できない場合、コールは拒否されます。IP 環境では、リソース衝突の処理方法が異なります。この処理の結果は、確立しようとするコールだけでなく、確立後のコールにも影響する場合があります。

マルチサービス環境では、品質を保証するために、テレフォニー トラフィックを優先順位付きで取り扱うことが重要です。テレフォニー トラフィックそのものはバーストを発生させませんが、ほかのトラフィック タイプが引き起こした輻輳によってサービス レベルが低下するようなことがあってはなりません。したがって、予測可能なサービス パフォーマンスを達成するには、すべてのネットワーク要素を通じて一貫した厳密な QoS と低遅延処理が必要です。

IP サービスを提供する従来のネットワーク要素は、有効な機能が多いほどパフォーマンスが低下するのが一般的です。プラットフォームによっては、トラフィックの送信元および宛先の数がともに増えたり、システムのライン カードが中央の共有リソースをめぐって競合する場合にも、パフォーマンスが低下します。これはサービス プロバイダーにとって厄介な状況を引き起こすことがあります。スムーズに動作していたサービスでも、加入者が少し増えたり、新しいライン カードを搭載したりすると、その分だけ負荷が増大した結果、突如として重大な問題が起こる可能性があるからです。不適切なプラットフォームを使用すると、キャリア クラスの機能に支障をきたすおそれがあるので、プラットフォームの選択は重要です。基本的に必要なのは、ハードウェア ベースのフォワーディングを採用し、コントロール プレーンとフォワーディング プレーンの区別があるプラットフォームです。

要約すると、ネットワークは常に使用可能でなければならず、キャリア クラスのテレフォニー サービスをはじめとする IP NGN 環境のサービスを常に提供できる状態でなければなりません。


セキュリティ

テレフォニー サービスの安定した動作を保証するうえで、セキュリティは基本的な考慮事項です。ワーム、ウイルス、DoS 攻撃(サービス拒絶攻撃)といった脅威によって、ネットワークやサービスの安定性が損なわれることがあってはなりません。ネットワークの安定性を確保するには、次のように、複数の異なる分野に対応する戦略が必要です。

  • ネットワーク要素のセキュリティ ― 強力なセキュリティは、ノード レベルから始まります。すべてのネットワーク要素が、自分自身のリソースとサービスを十分に保護しなければなりません。
  • ネットワークおよび IP スプーフィングの防御 ― インフラストラクチャ セキュリティを提供するには、内部サブネットへのアクセスの禁止、IP スプーフィングの防御、DoS の防止とトラッキングなどが必要です。IP スプーフィング(登録済みおよび未登録のアドレス スペースの使用)は、悪意のあるアクティビティで最もよく使われる伝送手段です。
  • コントロール プレーンの保護 ― コントロール プレーンの動作を保護することは、全体的なネットワーク動作の安定性を確保するうえで不可欠です。この保護には、ネットワークの内外からの攻撃が存在するため、内部および外部の保護ポリシーが含まれます。
  • サービスの保護 ― サービス固有のセキュリティ ポリシーを有効にすることは、脅威を抑制するうえで効果的です。サービス固有のノードまたはセグメントに対する、ネットワークのほかの部分からのアクセスを制御することができれば、高度な保護がただちに達成されます。

従来は個別のネットワークで提供していたサービスを IP ベースのインフラストラクチャで提供する場合、セキュリティは以前とはまったく違った問題になります。TDM ネットワークが攻撃に対して免疫があったというわけではありません。両者の違いは、IP ベースのネットワークおよびホストへの攻撃に関する悪意のある知識が、はるかに広く普及しているという点です。ただし、セキュリティに対する認識が、IP 業界では旧世代の多くの機器ベンダーと比較して非常に高いことも事実です。

サービスプロバイダーにも、この問題についてのリスクと対策について十分な認識を持つことが求められています。ほかの面ではキャリア クラスとしての条件を備えているネットワークでも、セキュリティが脆弱であれば、もはやキャリア クラスではありません。


運用

大部分の IP ネットワークと従来のテレフォニー ネットワークには、管理についての基本的な違いがあります。テレフォニー ネットワークの管理はコールのレベルまで極めて細かく管理され、すべてのコールの記録が残されます。IP ネットワークでは、このようにリソースが個々のコールに割り当てられるわけではないので、低レベルのトラブルシューティングなどの機能を提供するには、別のアプローチが必要となります。

  • 予防的なヘルス モニタリング ― IP ネットワークは現在のネットワークの応答能力と健全度に関する情報をテレフォニー OSS に提供する必要があります。こうすることで、テレフォニーのコントロール プレーンが新しいコール用に適切なルートを選択し、必要に応じて確立済みのコールを再ルーティングできるようになります。また、音声品質に関連する条件(遅延、ジッタ、パケット損失など)についても提供する必要があります。
  • データおよび統計情報の収集 ― ネットワークに問題が発生した場合、その状態とそれが及ぼす可能性のある影響について正しく理解するために、ボリュームや QoS クラス別パフォーマンスなどに関連する統計情報が利用できる必要があります。
  • システムの統合 ― テレフォニー OSS は通常 アンブレラ OSS 機能を提供しますが、IP ネットワークからのデータ フローなどの情報も管理できなければなりません。したがって、テレフォニー OSS が IP ネットワークとの関係においても完全に機能できるように、エレメント マネジメント システム(EMS)やメディエーション プラットフォームなど、潜在的に必要な機能を統合することは必須となります。

PSTN 変換アーキテクチャにおいてこの機能を提供することにより、テレフォニー OSS は引き続きテレフォニー サービスの主要な情報源であるとともに、プロビジョニング ツールであり続けることができます。IP ネットワーク機器には、適切なモニタリングおよび統計収集機能を確保する必要があります。これらの機能がないと、テレフォニー OSS のモニタリング機能にギャップが生じ、インフラストラクチャの IP コンポーネントのトラブルシューティングや計画を行う能力が損なわれます。


ネットワーク設計

ネットワーク設計は、IP ネットワークがキャリア クラスの要件を満たすための基盤となります。設計段階では、前述した分野すべて(サービス、ネットワーク、セキュリティ、および運用)の要件を考慮し、全要素を透過的に盛り込む必要があります。

キャリア クラスの IP ネットワークの基本的な設計目標は、どのような運用条件下でも確定的なネットワーク動作を可能にすることです。このことがテレフォニーの場合に何を意味するかについて、この資料で説明してきました(ただし、設計の詳細はそれぞれの組織で異なります)。IP NGN の構築では、ネットワークでサポートされるサービスすべてに、一連の同じ要件を定義することになります。それにより、NGN はあらゆるサービス要件を満たすことができます。最も厳しい要件を満たすことができれば、新しいサービスや顧客に接続してネットワークを拡張した場合にも、要件は緩やかになるため、すべて満たすことができます。

さまざまな選択を行う例として、図 8 にテレフォニー サービス用の標準的なネットワーク ドメインを示します。ドメインごとに、さまざまな機能を実行するために各種のテクノロジーが使用されています。この図は簡略化されていますが、設計上の判断が複雑であることがわかります。

図 8 IP テレフォニー ネットワークの設計

図 8 IP テレフォニー ネットワークの設計
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たとえば、IP ネットワークはサービス アベイラビリティに影響を及ぼすことなく、潜在的な問題を検出して中断を回避できなければなりません。アプリケーションが中断を認識することさえなく、ネットワークが問題を解決できれば理想的です。これを達成するためのアプローチは、IP ネットワークと IP/MPLS ネットワークでは異なります。さらに、これら 2 種類のネットワークに適用されるパフォーマンス パラメータは、サポートするサービスにより異なります。

ネットワークの設計段階で行う選択によって、IP ネットワークがキャリア クラスの要件を満たせるかどうかが決まります。したがって、最初にあらゆる事実を収集しておき、将来的な変更が最低限の中断で行えるような設計アプローチを採用することが重要です。ノードでサポートするサービスによっても、ネットワーク要素の選択が左右されます。

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まとめ

IP NGN は、サービスプロバイダーのインフラストラクチャおよび IP ネットワークの構築方法を根本的に変えます。サービスによって設計が左右される度合いが従来よりも大きくなります。また、以前のサービスおよびネットワークから継承されるサービス レベル要件を順守する必要があります。キャリア クラス IP NGN の構築は、従来の IP ネットワークの構築方法とは根本的に異なります。

パケット テクノロジーを基盤とする次世代インフラストラクチャの設計では、最初からキャリア クラスのパフォーマンスを要件として考慮しなければなりません。次世代インフラストラクチャを正しく実現するには、プラットフォームの選択から OSS の統合まで、設計上のあらゆる判断に、キャリア クラスのパフォーマンスを反映させる必要があります。

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