シスコ ワイヤレス LAN ソリューション 導入事例
徳島県
災害時の情報通信手段を強化するため公設公営の大規模な公衆無線 LAN 環境を整備
ビジネスや観光への活用も促進 徳島県

徳島県は、県内の ICT インフラの構築と、それを活用した施策の展開を積極的に進めていることで知られる。全県 CATV 網構想による全市町村で利用可能なブロードバンド環境の実現、また集落再生プロジェクトの一環として ICT を活用したサテライト オフィスの誘致など数々の取り組みは全国からも注目を集めている。平成 27 年(2015 年) 4 月からは公衆無線 LAN サービスを新たに開始し、災害時だけでなく平時も活用できる公設公営の無線 LAN インフラを構築した。そこにシスコ ワイヤレス LAN ソリューションが採用されている。

経緯
災害時の情報通信基盤として公衆無線 LAN の整備が必要
ビジネスや観光など地域活性化への貢献も図る

徳島県が平成 27 年 4 月から本格運用を開始した公衆無線 LAN サービス「Tokushima Free Wi-Fi」は、「Wi-Fi(わいわい)王国 とくしま整備事業」として進められたプロジェクトで、総務省の「平成 25 年度地域公共ネットワーク等強じん化事業費補助金」を活用している。主たる目的は災害時の情報提供手段を強化することであり、県内の通信手段の多様化という側面を持つ。同時に、ここで整備した無線 LAN 環境を地域活性化や観光サービスの一環としても活用し、県民はもとより、徳島県を訪れる国内外のビジネスマンや観光客の利便性向上、地域や施設の付加価値向上にも役立てていくことを目標としている。

具体的には、県内の避難所や防災拠点など 112 ヵ所に無線 LAN アクセス ポイントを設置し、それらを集中管理するシステムを構築。さらに認証や位置情報取得などシステム周りの基盤整備と、サービス案内や利用告知のためのホームページ構築を行っている。採用されたシスコ ソリューションは、屋内および屋外用の無線 LAN アクセス ポイント、ワイヤレス コントローラ、運用管理システム、認証システムの多岐に渡っており、技術的な一貫性と将来性のある環境を実現している。

徳島県庁の住吉孝次氏は、今回の取り組みのポイントを次のように話す。

「防災目的で構築、展開するものとして、災害時に何があっても使えるよう、センター機器や回線を二重化したうえで、センターから末端のアクセス ポイントに至るまで集中管理と死活監視できるようにしています。
県内では商業施設などで民間の無線 LAN サービスが利用できるところが平成 24 年から平成 26 年までの 2 年間で約 2 倍に増えていましたが、事前の登録が難しく、また有料であることから、誰でも簡単に無料で使える公衆無線 LAN サービスが必要と考えていました。防災インフラとしてはもちろん、外国人観光客の方々には無料の無線 LAN サービスは必須になってきており、ビジネスや観光を含めた交流人口の拡大という点からも公衆無線 LAN 環境の充実は不可欠だったのです。
徳島県ではシステムをすべてオンプレミスで構築し、公設公営のインフラとして展開しています。他の自治体では無線 LAN 環境の整備を民間事業者のサービスを活かす形で対応しているところが多いので、ここは当県の取り組みの大きな違いです。ここまで公設公営にこだわった環境は、全国でも珍しいと思います。」

同県では以前から地域の再生と活性化に向けた施策の一環として、公衆無線 LAN の普及に関する協議会を設置し、官民共同で展開を進めていた。今回の事業はその延長線上にあるものとして捉えられている。徳島県庁の上田恵理氏は、次のように話す。

「徳島集落再生プロジェクトという過疎地域の活性化に関するプロジェクトを県として策定しまして、その中に公衆無線 LAN の普及が含まれていました。そこで 『徳島公衆無線LAN推進協議会』 を発足させて、県内の市町村(自治体)と民間企業が構成員となって活動してきたのです。県として県内全域への整備を平成 25 年に決めたことと、総務省から防災目的の地方交付金が補正予算として計上されることになったタイミングが重なり、正式に事業としてスタートしました。」

プロセス
ミッション クリティカルな要件と仕様を満たすものとして
シスコ ソリューションが採用されることに

国の補正予算に基づく公共事業として、総合評価落札方式による工事入札で業者選定が行われた。入札公告は平成 26 年 5 月に出され、同年 7 月に構築業者ならびに導入製品が決定したとのこと。公告の前には多数のベンダーからヒアリングを行い、県としての要件を取りまとめた資料の作成などを進めていったと住吉氏は話す。

「総務省から予算の公募が行われたのが平成 26 年 1 月下旬で、そこが実質的なプロジェクト開始時期となりましたので、およそ半年ほどで検討から決定まで進めたことになります。防災基盤というミッション クリティカルなものですから、製品 (ソリューション)、ツール、センター側のシステムの仕様、運用監視体制、導入する機器の調達経路、そして物理的な工事に関する技術仕様など、さまざまな項目を総合的に判断し、プロジェクト チームでまとめ上げていきました。総務省の予算を使う事業なので、特定のメーカーに偏った仕様を作ることはできませんでした。集中管理や Wi-Fi 認証の仕組みなどを一から作り上げていくのは大変ですが、全体の舵取りはうまくできたのではないかと思います。」

入札を経て決定した構築ベンダー(ジョイント ベンチャー)が同県の仕様書に基づいて製品選定を行い、その結果、無線 LAN アクセス ポイント、ワイヤレス コントローラ、運用管理システム、認証システムのいずれもシスコ ソリューションが採用されることになった。住吉氏は、工事入札という点も踏まえて、次のように話す。

「事前にヒアリングしたメーカーの中には、自社のクラウド サービスの使用が前提であったり、独自のハードウェア構成になっていたりするものがありました。そうなると、公正な入札の条件とならないケースがあり、採用は難しいと感じたのは確かです。公設公営、オンプレミスの構築にこだわったのは、こうした面も考慮しています。こちらの要件を満たすものとして、結果的にすべてシスコ ソリューションで揃うことになりましたが、VPN 管理の機能など技術的な仕様も一貫性が保たれ、システム構築の負担やネットワークのコストが抑えられるというメリットも生まれました。」

民間のサービスでは避難所や防災施設への無線 LAN アクセス ポイント設置は行われないことが多く、今回の事業で県として設備を整えた。市町村の施設も半分ほどが対象になったが、自治体との調整には少し時間を要したと上田氏は話す。

「ネットワーク回線の運用費(ランニング コスト) を各施設に負担していただく必要があったのです。一般的なビジネス回線サービスと比べて金額は抑えたものの、小さな自治体にとっては負担であることは変わらないので、ていねいにご説明して理解していただきました。」

Tokushima Free Wi-Fi をアピールするステッカーとのぼり
このステッカーやのぼりがある場所で、Tokushima Free Wi-Fi をいつでも利用できる。

Tokushima Free Wi-Fi をアピールするステッカーとのぼり
このステッカーやのぼりがある場所で、Tokushima Free Wi-Fi をいつでも利用できる。

多言語に対応したサービス案内のホームページ徳島県総合地図提供システムでは、Wi-Fi マップとハザード マップを重ね合わせることも可能

多言語に対応したサービス案内のホームページ
徳島県総合地図提供システムでは、Wi-Fi マップとハザード マップを重ね合わせることも可能
※画像をクリックすると、大きな画面で表示されますpopup_icon

システム構成図

システム構成図
※画像をクリックすると、大きな画面で表示されますpopup_icon

効果〜今後
安全性と利便性を両立したサービスとして展開
地方創生の基盤としても活用を進める

「Tokushima Free Wi-Fi」は、平成 27 年 3 月にテスト運用を開始し、4 月から正式に運用をスタートした。公設の無線 LAN インフラとしては非常に大規模な構成で、設置した無線 LAN アクセス ポイントの位置情報はシステムとして管理しており、ホームページ上で地図情報と重ね合わせて確認することができる。

平時の運用では、専用の SSID を選択してアクセスし、メール アドレスを入力すればすぐ利用できるシンプルさ、わかりやすさが好評とのこと。スポーツの試合やイベントなどが催される徳島県鳴門総合運動公園と藍場浜公園では、一時的に利用できる SSID を発行して、多数の来場者のアクセスに対応することもできる。すべての通信はデータセンター経由でインターネットにつなぎ、フィルタリングなどセキュリティ対策を集中的に行うが、大規模災害時にはスマートフォンからのワンタッチ操作で認証を不要とし、アクセス経路を即座に切り替えられる仕組みを備え、運用性にも配慮した環境を実現している。

サービスの告知などを行うホームページは多言語表記に対応し、必要なときに必要な情報を適切に得られるように配慮と工夫がなされている。こうした公設公営ならではの取り組みには、また別のメリットもあると住吉氏は話す。

「セキュリティ対策の一環で、ログの取得と管理、追跡ができる仕組みを構築することは、今回のもう 1 つのポイントでした。民間のサービスを活用した展開の場合、ほぼログを取得することはできませんが、ここではすべて自前の機器で構築したので、考えられるすべてのログを取得し、セキュリティ対策に必要な情報として活用できます。今後はビッグデータとしての活用も進んでいくことが予想されますので、そのための基盤としても有効だと考えています。行政だからできるインフラ、サービスとして、民間とは一線を画したものになったと言えるでしょう。」

今後は観光施設への無線 LAN アクセス ポイントの追加設置なども進め、県としてさらに「Tokushima Free Wi-Fi」をアピールしていきたいと考えている。同県は集落再生プロジェクトとしてサテライト オフィスの誘致を行っていることも有名で、ここを拠点としてビジネスを展開する企業も増えている。そうしたユーザ層に向けても、今回整備した公衆無線 LAN 環境は有効だと住吉氏は話し、これからさらに訴求していきたいと意欲を見せる。

「徳島県では 『vs東京』 というコンセプトを立ち上げて、地方創生の活動を積極的に行っています。そのなかでも、Wi-Fi がどこでも使えることの魅力や意義を PR していくことを考えています。国の施策として、Wi-Fi とテレワークはセットとして捉えられている面があり、そこをいかに充実させていくかは地方にとって課題です。今後国の方針が定まり、満たすべき要件が変わっていく際にも対応できるよう、今回のインフラとシステムは整備しました。セキュリティ、利便性、子供の安全を守るといったことを意識し、またユニバーサル デザインという部分にも配慮しながら運用していきます。
ここで構築、運用したノウハウを基に、このシステムを 1 つのパッケージとして横展開できるようになれば、さらにメリットが生まれると思っています。」

徳島県共通コンセプト「VS東京」のポスター

徳島県共通コンセプト「VS東京」のポスター



導入ソリューション

災害時の情報通信基盤となる大規模な公設公営の無線 LAN 環境を構築し、平時はビジネスや観光分野でも活用して地方創生(地域活性化)に貢献

ワイヤレス LAN

  • Cisco Aironet 2700 シリーズ  高密度対応無線 LAN アクセス ポイント 216 台
  • Cisco Aironet 1500 シリーズ  屋外無線 LAN アクセス ポイント 58 台
  • Cisco 5500 シリーズ ワイヤレス コントローラ

セキュリティ、運用管理

  • Cisco Identity Services Engine(ISE)
  • Cisco Prime Infrastructure(PI)
  • Cisco モビリティ サービス エンジン(MSE)
  • Cisco Unified Computing System(UCS)
  • Cisco ASA 5545-X 次世代ファイアウォール

ネットワーク

  • Cisco Catalyst 4500-X シリーズ スイッチ
  • Cisco Catalyst 3560-C シリーズ  コンパクト スイッチ 112台

導入前の課題、検討事案

  • 県内における災害時の情報通信手段強化のため、無線 LAN 環境の構築を検討していた。
  • 地域活性化の取り組みとして、ビジネス分野や観光分野で無線 LAN サービスの展開を進めていた。
  • 誰もが簡単、安全かつ無料で使える公衆無線 LAN サービスの必要性が高まっていた。

導入効果

  • 県内の避難所や防災施設をもれなくカバーする、大規模な無線 LAN 環境を構築した。
  • すべてのアクセス ポイントを集中管理し、位置情報も把握、マッピングできるシステムを実現した。
  • 平時はすべての通信をデータセンター経由でインターネットにつなぎ、セキュリティ対策を集中的かつ効率的に行う環境を実現した。
  • メール アドレスの登録だけですぐに使える高い利便性を提供している。
徳島県政策創造部 地域振興局 地域創造課 情報企画担当主査兼専門員住吉 孝次様

徳島県
政策創造部 地域振興局
地域創造課 情報企画担当
主査兼専門員
住吉 孝次様

徳島県政策創造部 地域振興局地域創造課 集落再生室集落再生担当主任主事上田 恵理様

徳島県
政策創造部 地域振興局
地域創造課 集落再生室
集落再生担当
主任主事
上田 恵理様

※徳島県政策創造部地域振興局地域創造課は、平成 27 年 5 月から徳島県政策創造部地方創生局地域振興課に改組されている。

徳島県

徳島県

人口
763,256 人(平成 26 年 12 月)
世帯数
308,196 世帯
(推定、平成 26 年 12 月)
面積
4,146km2

「鳴門の渦潮」 「剣山」 「吉野川」などの豊かな自然、伝統文化、食材など豊かな資源を持ち、同時に CATV(光ファイバ網)普及率で 3 年連続全国 1 位(88.3%、平成 26 年 3 月現在) を誇るなど ICT の利活用にも積極的に取り組んでいることで知られる、四国の東部に位置し、全面積の約 8 割を山地が占める。東は紀伊水道に面し、香川県(北)、愛媛県(西)、高知県(南)の四国各県とも接する。認知度向上、ブランド イメージ確立を図るため、「vs東京」というコンセプトを策定し、地方創生、日本創生につながる創造と発信を行っている。