データセンター ユーザ事例

日本無線株式会社、Cisco UCSを活用した環境配慮型次世代IT基盤を構築

日本無線株式会社社内の物理サーバ約 300 台を Cisco UCS を活用したNTTデータの「BizXaaS」で仮想化統合へ高電圧直流給電との組み合わせにより環境配慮型の次世代 IT 基盤を実現

システムエレクトロニクスの総合メーカーとして、幅広い事業をワールドワイドで展開している日本無線株式会社。ここでは約300台に上る物理的な社内サーバが、NTTデータの総合クラウドサービス「BizXaaS」で仮想化統合されつつある。プラットフォームには NTTデータの社内システムで利用・管理の実績がある、仮想化環境に最適化されたCisco UCS(Unified Computing System) を選択。初年度の計画では、約 100 台のサーバを、わずか 7 台のブレードサーバ(論理的に1台のブレードシャーシ)に集約することとした。このシステムで特に注目したいのが、高電圧直流給電(HVDC)を採用していることだ。これによって給電ロスを10 〜 20 %削減し、環境配慮型の IT 基盤を実現。今後は順次残りのサーバも新システム へと統合していく一方、HVDC 活用のノウハウを社外に提供していくことも視野に入っている。

仮想化と合わせて、さらなる消費電力削減を追求
給電方式を高電圧直流へ

データセンターの消費電力をいかにして抑制するかが、IT を活用する多くの企業にとって、重要な経営課題になりつつある。消費電力の増大は CO2 排出の増大につながり、環境を悪化させる要因になる。その一方で電力コストも増大する。東日本大震災以降、この課題の重要性はさらに高まったといえるだろう。 その解決手段として注目されているのが、サーバの仮想化統合だ。高性能サーバを採用し、その上で複数の既存サーバを仮想化して稼働させれば、データセンターの機器総数を大幅に減らすことができ、消費電力も抑制できるからである。しかしこのレベルに止まらず、さらなるエネルギー効率向上に向けた取り組みも始まっている。この領域で先手を打ったのが日本無線株式会社である。

同社は 1915 年に創立された、システムエレクトロニクスの総合メーカー。PHS や ETC などの最先端通信機器から、公益性の高い自治体の防災情報システム、世界中の海で愛用されるマリンレジャー製品まで、幅広い事業をワールドワイドで展開している。その基盤となっているのは、長年にわたる無線通信システムの開発で培われてきた、総合的な技術力だ。 それでは日本無線は、どのような手段でエネルギー効率向上を達成したのか。答えは直流給電の活用である。社内サーバの仮想化統合に際しては、 IT 基盤の構築・運用で豊富な経験と実績を持つNTTデータの BizXaaS を採用し、プライベートクラウドを構築。プラットフォームには直流給電に対応した Cisco UCS を採用、NTTデータ先端技術と共同開発した高電圧直流給電(HVDC)を組み合わせた。これによって AC-DC 変換に伴うロスを最小化。HVDC 給電システムの採用は、商用システムとしては国内初だ。

このプロジェクトに着手したきっかけについて、日本無線株式会社で IT 推進部長を務める馬場 肇氏は次のように説明する。「日本無線では 2010 年 12 月にシステムの棚卸しを行った結果、約 300 台のサーバが社内に点在し、そのうち約 4 割が導入から 5 年以上経過していることが判明しました。また部門毎で管理されているサーバの数が多く、データバックアップや保守の体制も、見直す必要があったのです」 この問題を解決するため、日本無線の IT 推進部はサーバの統合化方針を策定。それを 2011 年 3 月 11 日の午前中に経営陣に提案し、承認を受ける。時まさに東日本大震災発生の直前。驚くべきことはその提案内容が、その後の日本の状況を見通したかのような内容だったことである。

直流給電対応への積極性を評価し
NTTデータの提案を採用

「この時点で意識されていた課題は大きく 4 点ありました」と馬場氏は振り返る。 まず第 1 は TCO の削減だ。社内のサーバの多くが老朽化しており、更新の必要性が高まっていたが、そのまま更新を進めていくと膨大な費用がかかってしまう。これを抑制することが求められた。

サーバへの高電圧直流給電を支える日本無線の「FRESH HVDC」。交流で受電した電力を高電圧直流に変換し、一気にサーバラックへと送り込む。交流/直流変換が1回しか発生しないため、エネルギー利用効率を高められる。

サーバへの高電圧直流給電を支える日本無線の「FRESH HVDC」。交流で受電した電力を高電圧直流に変換し、一気にサーバラックへと送り込む。交流/直流変換が1回しか発生しないため、エネルギー利用効率を高められる。

第 2 は運用効率化。サーバが複数の場所に設置されており、運用管理も分散化、負担が重くなっていた。また物理サーバをそのまま使う方法では、急なサーバ要求に応えることも難しくなっていた。 第 3 は災害対策(DR)の実現だ。バックアップ体制がしっかりしていないと、広域災害発生時にビジネスが止まってしまう危険性がある。このような事態は回避しなければならない。

そして第 4 が環境への配慮である。「消費電力を最小化するために、HVDCシステムの導入に踏み切りました 」と馬場氏は言う。 2011 年 4 月にはこれらの内容を盛り込んだ RFP を作成し、5 月 16 日に複数の IT ベンダーに提示。2011 年 7 月には約 10 社の提案の中から、NTTデータが提案した BizXaaS の採用が決定する。その最大の理由は NTTデータのもつ豊富な経験と実績、そして、HVDC への対応に積極的だったことだ。

「NTTデータは以前から直流給電サーバを提供しており、直流給電に関するノウハウも、NTTデータ先端技術の経験や開発を通じて蓄積しています」と言うのは、日本無線に対するシステム提案を行った、NTTデータの寺田 康苗氏だ。このノウハウについて、今回のサーバ給電技術を提供した NTTデータ先端技術の村 文夫氏は、次のように説明する。 「直流給電はスイッチをオフにするタイミングでアーク(放電現象)が発生しやすく、交流給電に比べて感電や火災のリスクが高い。これが直流給電のなかなか普及しない原因になっています。しかしこのような問題も、きちんとした設計と実装を行えば回避できます。私どもは“中点アース”という方法と、わずか 3 つの部品で構成されるアーク防止メカニズム、さらにラック内をDC48V以下の安全電圧で配線をする事によって、交流給電よりも安全な直流給電を実現しました。これらは今回のシステムでも活かされています」

今回構築されたシステムの給電方式。HVDC によってサーバラックまで高電圧直流給電が行われ、ラック内で電圧変換してサーバへと給電されている。停電時のバックアップを行うバッテリーとも、ダイオード 1 本というシンプルな構成で接続されている。

今回構築されたシステムの給電方式。HVDC によってサーバラックまで高電圧直流給電が行われ、ラック内で電圧変換してサーバへと給電されている。停電時のバックアップを行うバッテリーとも、ダイオード 1 本というシンプルな構成で接続されている。
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サーバシステムの構成。7 台の Cisco UCS B200 M2 ブレードサーバに、約 100 台のサーバが仮想化統合されている。この他に Cisco UCS C シリーズを採用した DR サイト用のサーバシステムも用意されている。

サーバシステムの構成。7 台の Cisco UCS B200 M2 ブレードサーバに、約 100 台のサーバが仮想化統合されている。この他に Cisco UCS C シリーズを採用した DR サイト用のサーバシステムも用意されている。
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その一方で「すべてのサーバ構築・運用を自社で行うのに比べ、コスト的にもメリットがあった点も評価しました」とも馬場氏は言う。また NTTデータのシステム構築・運用ノウハウを活用することで、サーバ統合をより円滑に実現でき、社内の運用負担が軽減することも、採用を後押しすることになったと説明する。 2011 年 8 月にはシステム構築作業に着手し、9 月には機器導入を開始、12 月にはパイロットシステムが完成する。ここで約 20 台分のサーバの仮想化統合が行われ、試験運用を実施。2012 年 1 月から本格的なサーバ移行が始まっている。

約100 台分のサーバをブレード 7 台に集約
消費電力の削減効果は 70 %以上

Cisco UCS の前面。上部に Cisco UCS 6248 × 2 台、その下のブレードシャーシにCisco UCS B200 M2 × 7 台が格納されている。

Cisco UCS の前面。上部に Cisco UCS 6248 × 2 台、その下のブレードシャーシにCisco UCS B200 M2 × 7 台が格納されている。

仮想化統合のための物理サーバには、NTTデータの提供する直流給電サーバとCisco UCSを採用。現在 7 台のUCS Bシリーズブレードサーバが稼働しており、この上で 初年度計画の約100 台分のサーバが仮想化統合される。DRサイト用のサーバには、Cisco UCS C シリーズ ラックサーバを採用。現在は試験運用のため本番サーバと同じ社内データセンターで稼働しているが、将来は社外のデータセンターにハウジングする計画だ。

それではなぜ NTTデータは、仮想化統合用のサーバに Cisco UCS を提案したのか。理由の 1 つは、シスコも直流給電対応に積極的だったことだと、寺田氏は説明する。「2011 年 5 月に提案を行う際にシスコに話を持ちかけたのですが、すぐに対応を約束してくれました」 これに加え「Cisco UCS はすでに BizXaaS で数多くの実績があるため、自信を持って提案できます」と言うのは、NTTデータの福見 哲夫氏だ。「今回一緒にシステムを構築した NTTデータ先端技術も、Cisco UCS に関するノウハウを蓄積しています。また他社のサーバ製品に比べてメモリー容量が大きく、ブレードサーバからのラックオブトップのネットワークケーブリング・環境設定までシンプルで、さらにサーバ・ネットワークの一括した仮想化設定が行いやすいなど、仮想化統合に最適な特徴も備えています」

Cisco UCS の背面。黒いケーブルとコネクターによって、DC給電されている。

Cisco UCS の背面。黒いケーブルとコネクターによって、DC給電されている。

サーバへの給電は次のように行われている。まず日本無線の HVDC 給電システムで交流電源を 340V の直流高電圧に変換、それをサーバラック内の集中配電システムへと引き込む。ここで電圧を安全なレベルに変換し、各サーバへと配電。給電から配電までの間を高電圧にするメリットは「電流を抑制できるため細い線でつなげることと、長距離の給電が可能になること」だと村氏は説明する。今回のシステムも、給電システムは 1 階、サーバルームは 2 階と、フロアをまたいだ給電を実現していると言う。 サーバの仮想化統合によって物理サーバの台数を減らしたことで、単純に物理サーバを更新するケースに比べ、消費電力は 70 %以上削減されるだろうと期待されている。HVDCおよび関連する直流給電サーバ機材などによって、交流給電と比較して10 〜 20 %の電力効率化をもたらすはずだと馬場氏は指摘する。また停電時のバックアップとして利用されるバッテリーとの接続もシームレスになり(AC 給電の場合には切り替え処理が発生するが、DC 給電では切り替え処理は不要になる)、太陽光パネルなどの再生エネルギー源との接続が容易になる点も大きなメリットだと、村氏は説明する。

「最近ではどのデータセンターも、電力と電力設備維持のコストが高くなっており、これが総コストの半分以上を占めるケースも珍しくありません」と寺田氏。直流給電システムはこのコストを下げる上で、今後重要な技術になると指摘する。

運用性も向上し災害対策の実現も容易
この経験を社外にも積極的に提案

もちろんサーバ統合のメリットは、消費電力削減だけではない。運用性も飛躍的に向上している。

「工場では年 2 回計画停電を実施していますが、以前は多くのサーバを手動でシャットダウンする必要がありました。管理担当者もサーバ毎に異なっていたため、これが大変な作業だったのです。しかし新しいシステムではこの作業も簡単に行えます。また新しいサーバが一時的に必要になった場合でも、すでにUCSで設定済み環境をコピー、再利用することができ、サーバ・ネットワークごとの細かい設定を行うことなく、簡単に仮想マシンを立ち上げられます」(馬場氏)。 サーバ集約で台数が減ったため、設置スペースが削減されたことも見逃せない。約100 台分の仮想マシンの運用に必要なラック数は、ストレージも含めわずか 2 本。DR 用のサーバシステムは 1 本のラックに収まっている。

今後は段階的に対象サーバを広げ、最終的に 300 台全てを仮想化統合する計画だ。その一方で今回のシステム構築ノウハウと HVDC システムを、社外に提供することも視野に入っている。 「将来は HVDC をビジネスの柱にしたい」と言うのは、日本無線HVDC推進プロジェクトチーム担当部長の伊東氏。海外展開まで視野に入れれば、グローバル調達可能な Cisco UCS がいち早く HVDC に対応したことは、大きな意味を持つと説明する。

最後に両氏はこう締めくくった。「私どもが実現した環境配慮型の IT 基盤は、他の企業様にとっても参考になるはずです」(馬場氏)。「NTTデータグループやシスコと協力しながら、ぜひHVDCを活用した環境配慮型のIT基盤広めていきたいと考えています」(伊東氏)。

日本無線株式会社

株式会社NTTデータ
所在地 : 本社事務所: 東京都杉並区荻窪 4-30-16
藤澤ビルディング
三鷹製作所:東京都三鷹市下連雀5-1-1
創立 : 1915 年(大正 4 年)12 月
資本金 : 147 億 400 万円
従業員数 : 単独 2,851 名/ 連結 3,766 名
(2011年3月現在)
売上高 : 単独 996 億 3,700 万円 連結 1,077億 500 万円
(2011年3月期)

無線通信システムを製造販売する老舗メーカー。システムエレクトロニクスの総合力を発揮しながら独自の発展を遂げ、PHS や ETC などの最先端の通信機器から、公益性に優れた自治体の防災情報システム、世界中の海で愛用されるマリンレジャー製品まで、幅広い領域でワールドワイドな事業を展開している。また環境への取り組みも積極的に推進。エネルギー効率の高い高電圧直流給電システムを、プライベートクラウド向けに提供する取り組みも行っている。

導入の背景/課題

  • 社内に約300台のサーバがあり、その多くが老朽化していたため、更新の必要があった。またサーバが各部門に散在し、運用管理も個別に行われていた。
  • 物理サーバをそのまま更新するのでは膨大なコストがかかることが判明。また運用体制の見直しや、災害対策(DR)の実現、消費電力の削減も必要だと判断された。
  • これらの課題を解決するため、サーバの仮想化統合に向けた検討を開始。消費電力の削減を徹底するため、サーバへの給電を直流(DC)で行うことにした。
  • 新システムの構築・運用については、システムインテグレーターとして豊富な経験と実績を持ち、直流給電への対応に積極的だった NTTデータの BizXaaS を採用、仮想化統合のための物理サーバには直流給電に対応した Cisco UCS を選択した。

     

導入ソリューション

  • Cisco Unified Computing System(UCS)  
    • Cisco UCS 5108 ブレードサーバ DCシャーシ
    • Cisco UCS B200 M2 ブレードサーバ  
    • Cisco UCS 6248 ファブリック インターコネクト
    • Cisco UCS 2104ファブリック エクステンダ  
    • Cisco UCS Manager
    • Cisco UCS C200 M2ラックマウントサーバ(DR サイト用)
  • Cisco MDS 9124 マルチレイヤ ファブリック スイッチ
    (2012 年 3 月現在)

導入効果

  • Cisco UCS を活用した仮想化統合によって、約100 台の物理サーバをわずか7台に集約する。これによってサーバ設置のスペースと消費電力が削減できる。
  • 高電圧直流給電(HVDC)によって、エネルギー効率がさらに10〜20 %向上した。
  • システムの物理構成がシンプルになると共に、仮想サーバ群を一括でバックアップできるようになったため、DR サイト用システムの実現が容易になった。
  • システム構築・運用に BizXaaS を採用したことで、NTTデータのノウハウを活用でき、社内の運用・管理における作業負担を軽減できた。

     

日本無線株式会社   IT 推進部長   馬場 肇 氏

「消費電力を最小化するために HVDCシステムの導入に踏み切りました。私どもが実現した環境配慮型の IT 基盤は、他の企業様にとっても参考になるはずです」


日本無線株式会社
IT 推進部長
馬場 肇 氏

日本無線株式会社   HVDC推進プロジェクトチーム   担当部長 伊東 厚 氏

「将来は HVDC をビジネスの柱にしたい。NTTデータグループやシスコと協力しながら、ぜひHVDCを活用した環境配慮型のIT基盤を広めていきたいと考えています」


日本無線株式会社
HVDC推進プロジェクトチーム
担当部長 伊東 厚 氏

株式会社NTTデータ   基盤システム事業本部   課長代理 寺田 康苗 氏

「最近ではどのデータセンターも、電力と電力設備維持のコストが高くなっています。直流給電システムはこのコストを下げる上で、重要な技術になります」


株式会社NTTデータ
基盤システム事業本部
課長代理 寺田 康苗 氏

株式会社NTTデータ   基盤システム事業本部   主任   福見 哲夫 氏

「Cisco UCS はすでに BizXaaS で数多くの実績があるため、自信を持って提案できます。また仮想化統合に最適な特徴も備えています」


株式会社NTTデータ
基盤システム事業本部
主任
福見 哲夫 氏

NTTデータ先端技術株式会社ソリューション事業部グリーンコンサルティングビジネスユニット開発グループ長村 文夫 氏

「私どもは交流給電よりも安全な直流給電を実現しました。これは今回のシステムでも活かされています」


NTTデータ先端技術 株式会社
ソリューション事業部
グリーンコンサルティングビジネスユニット
開発グループ長
村 文夫 氏