シスコ ユニファイド コンピューティング システム 導入事例
日立建機株式会社
3D CAD でデスクトップ仮想化、使いものになる時代が来た 日立建機株式会社

日立建機の開発・設計部門が、 3D CAD 業務でデスクトップ仮想化を大量導入した。これはおそらく、性能とコストを両立させる GPU仮想化機能を採用した、国内初の事例だ。

世界有数の建設機械メーカー、日立建機。海外売上高比率が約 75% に達する同社は、名実ともにグローバル企業といえる。純国産技術によって国内初の油圧ショベルをつくった開発力は、同社の国際展開を支える競争力の源泉となっている。

この日立建機の設計部門が、 3D CAD 業務のためにデスクトップ仮想化を大量導入した。これはおそらく、2013 年秋に正式サポートが開始された GPU 仮想化( vGPU )機能を採用した、国内初の事例だ。 3D CAD のようにグラフィック性能要件の厳しい業務は、デスクトップ仮想化に最も適さないとされてきた。日立建機の導入事例は、 vGPU 機能の登場によって、本格的設計業務におけるデスクトップ仮想化が、性能・コストの両面で実用段階に入ったことを明確に示している。

日立建機は、茨城県土浦市に開発・設計部門を置いている。運用してきたワークステーションは400台。このうちの約100台を、インテルR XeonR プロセッサーを搭載した Cisco Unified Computing System ( Cisco UCS )、 NVIDIA GRID 、CitrixR XenDesktopR の組み合わせによるデスクトップ仮想化に移行した。

この VDI 導入を進めたのは、同社の開発支援センタ デジタルエンジニアリング推進部(以下、 DE 推進部)。開発・設計部門のうち、3D CAD を使った設計業務のための IT 支援を行っている。

直接のきっかけは、 Windows XP のサポート終了だ。400台の 3D CAD ワークステーションの半数が、OS として Windows XP を搭載しており、日立建機としては、何らかの形で新 OS に移行する必要があった。だが、同社は別の問題で、数前から頭を悩ませていた。デスクトップ仮想化は、これを解決するための手段として導入されたと、 DE 推進部 主任技師の須賀田稔明氏はいう。

ワークステーションとそれに必要なスペース、効率化できないか

日立建機では、 3D CAD ワークステーションを CAD 共用スペースに配置、設計者は空いているワークステーションで 3D CAD の業務を行ってきた。しかし、設計者が増えてきたことで、この運用が難しくなってきた。設計者が増えれば、3D CAD ワークステーションの利用ニーズは増える。だが、個人机のスペースを確保するため、逆に CAD 共用スペースを徐々に縮小せざるを得なくなっていった。このため、個人机に置かれるワークステーションが増えてきた。

3D CAD ワークステーションを、個人が占用するのでは利用効率が低く、コストの点で問題がある。このため、 DE 推進部では、少ない台数のワークステーションを何らかの形で遠隔的に共有する手段はないかと、過去約2年にわたり模索してきた。

「まず、ディスプレイやキーボード、マウスの出入力インターフェースを延長するような製品を試したが、ワークステーションを共有する手段にはなり得なかった。次に一般のサーバ上で Hyper-V を使って仮想化を行い、その上で仮想デスクトップを動かして、これをリモートデスクトップで遠隔的に使うということもやった。しかし、この形ではグラフィック性能が貧弱だ。このため、重くない図面の作成・閲覧にしか使えなかったが、それでも場所を取らない手軽な CAD 環境として必要に迫られた」 と、 DE 推進部 技師 田端聡氏は説明する。

その後、 XenDesktop や VMware Horizon といったデスクトップ仮想化( VDI )製品で、サーバに搭載したグラフィックスカードの処理能力を仮想デスクトップから活用できるようになったことを知った。だが、 VDI 製品におけるグラフィックスサポートは、当初 「パススルー」 と呼ばれる方式が主流だった。これは1仮想デスクトップに対し、サーバに搭載した物理 GPU を1つ割り当てて使うもの。搭載 GPU 数を超える台数の仮想デスクトップはサポートできず、コストの点で導入に至らなかった。

だがシトリックスはその後、 Citrix XenDesktop の新バージョンで、 GPU 仮想化( vGPU )機能を提供すると発表。GPU カードとしては、 NVIDIA の 「 GRID K1 」 「 GRID K2 」との組み合わせをサポートするとした。

vGPU は、各 GPU を複数の仮想デスクトップで論理分割して使う手法。各仮想デスクトップはネイティブドライバでGPU を使うため、性能はパススルーに比べれば劣るものの、コスト効率を大幅に向上できる。

Citrix XenDesktop と NVIDIA GRID による vGPU 機能は、2013年の夏に Tech Preview が開始、同年秋に正式リリースとなった。これを Tech Preview 開始前の非常に早い段階から Cisco UCS との組み合わせで検証し、国内市場に紹介してきたのがシスコシステムズの日本法人だ。

シスコとシトリックスの本社は強固なパートナーシップで結ばれていて、 Cisco UCS は XenDesktop の開発・検証プラットフォームとして使われている。2社は NVIDIA GRID を使った vGPU についてもノウハウを共有しており、パフォーマンス検証も活発に行ってきた。日本国内においても2社のエンジニアの関係は深く、ユーザ組織にとっての仮想デスクトップの最適な利用環境を実現する構成について、相互協力を進めてきた。

シスコ、シトリックス、 NVIDIA の3社は、こうした活動の成果を2013年11月の共同セミナーで披露した。田端氏はこれを聞いて、とうとう性能、コストともに要件を満たせるソリューションが現れたと直感。その後は国内であまり例のないくらいのスピードで、導入に向けた作業が進んでいった。

2013年12月には社内に検証環境を構築し、日立建機で使用してきた CAD ソフトウェアを用い、実際に近い作業を繰り返して性能や運用性を検証。ワークステーションと比べて遜色のない使用感が得られるとの判断を基に、社内手続きを経て調達プロセスに入り、構築・検証を終えて運用を開始したのは2014年4月と、まさに Windows XP サポート終了ぎりぎりのタイミングとなった。

仮想デスクトップを導入して分かった想定外のメリット

VDI の導入により、設計室のスペースは大幅に節約できることになった。設計者の間での評判も上々という。設計者は自分の机を離れることなく、手元の一般業務用 PC 1台で、本格的な 3D CAD 業務を行えるようになった。特に、仮想デスクトップ画面で 3D CAD 図面を表示し、画像をキャプチャして、一般業務用PCのデスクトップ画面で作成している設計資料に簡単に貼り込めるといった、日常業務の効率アップを実感するユーザが出てきているという。

VDI には、物理的な場所の壁を越えられるというメリットもある。日立建機では、ユーザからの要望に応える形で、遠隔から VDI を使い始めた例がすでにあるという。

日立建機には数々の製造拠点があるが、その1つに大型ショベルやダンプトラックを製造している常陸那珂臨港工場がある。これらの製品の開発・設計担当者は、設計部門のある土浦工場で業務をしている。だが、 「現物を見ないとよい設計ができない」 という理由から、一部のメンバーが臨港工場に移った。これらのメンバーから 3D CAD を遠隔的に使いたいというリクエストがあり、利用が始まっているという。

須賀田氏と田端氏が今後に向けて大きな期待を寄せるもう1つのポイントは、ワークステーションの運用管理プロセスの改善だ。例えばワークステーション上のアプリケーションを全台についてバージョンアップしたいとする。従来なら設計室に行って、1台ずつ手作業でバージョンアップを実施する。だが、台帳に記録されているのとは別の場所に移動したなどの理由で、作業漏れが発生することがある。だが、今後は仮想化されたワークステーションに関していえば、基準となるシステムイメージについて手作業によるバージョンアップを一度済ませれば、基本的には これを複製するだけで、短時間のうちに作業を終えることができる。

次のプロジェクトは中国の開発拠点における VDI 導入

国内設計部門に続き、 DE 推進部では2014年10月のカットオーバーを目指して、中国の開発拠点での VDI 導入を進めている。

中国の開発拠点では、現地市場向け製品を設計しているのに加え、日本およびグローバル向け製品にかかわる設計業務の一部を担当している。ここでは、設計データの不正持ち出し防止が、重要な課題となってきた。

対策として DE 推進部では、データ暗号化ソフトウェアを採用し、すべての設計データが、保存時に自動的に暗号化されるようにしている。しかし、 CAD はデータの入出力が複雑で、一般的なオフィス用途向けに開発されたこの暗号化ソフトでは対応しきれなかった。 DE 推進部では、この製品にカスタマイズを加えて使ってきた。しかし、 CAD ソフトのバージョンアップなどに伴って追加的な修正が必要となり、メンテナンスコストが掛かるという悩みを抱えていた。

DE 推進部ではデスクトップ仮想化がデータ持ち出し防止に有効であるという点を早くから認識しており、国内設計部門における導入を踏まえて、即座に中国での導入に取り掛かった。 VDI のためのサーバを中国拠点に設置して運用。仮想デスクトップ環境の管理は、日本から遠隔的に実施することになる。中国における導入でも Cisco UCS 、 NVIDIAGRID 、 Citrix XenDesktop の組み合わせを採用する。このような海外での IT システム導入で、日立建機はシスコのグローバルなサポート体制を活用できることになる。

VDI 利用を積極的に拡大し、効率アップへ

日立建機の設計部門における VDI 利用は、まだ始まったばかりだ。だが、須賀田氏は、 「今後こうした方向に進むことは分かっている」 と話す。利用が進むにつれ、 VDI だからこそのメリットや利用シーンが、今後さらに広がってくる可能性がある。 DE 推進部では、稼働状況を見ながら運用ノウハウを蓄積し、徐々に設計部門の各種部署に対し、積極的な活用を働きかけていきたいという。

Cisco UCS は、一般的なサーバと異なり、集約的な管理に向けた設計となっているため、将来における拡張の際に役立ってくれるだろうと DE 推進部では期待している。また、 3D CAD VDI ではネットワークを流れるトラフィックの量が気になるため、シスコのノウハウを生かしながら注意深い運用を進めていきたいという。

常に新技術をいち早く提供してきたシスコは、 3D CAD VDI でも 「使える技術」を早くから開拓、関連ベンダーと協力してユーザ組織が安心して使える環境を整備してきた。この取り組みが、今回の日立建機における国内初の導入事例につながっている。



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インテル® Xeon ® プロセッサー

インテル® Xeon ® プロセッサー搭載
業界最高水準のパフォーマンスを実現
Cisco Unified Computing System

導入ソリューション

  • Cisco Unified Computing System

導入前の課題、検討事案

  • 設計・開発部署の CAD ワークステーションで使ってきた Windows XP のサポート終了に伴い、対策が求められた
  • CAD ワークステーションの利用効率向上や、情報漏えい対策を迫られていた
  • 上記の理由により、社内エンジニアが 3DCAD を快適に動かせるような仮想デスクトップ( VDI )・ソリューションを求めていた

導入効果

  • Windows XP が延長サポート終了に間に合う形で、約100台のワークステーションのデスクトップ仮想化( VDI )への移行が完了した
  • 3D CAD ワークステーションの仮想化により、CAD 共用スペースを大幅に節約できた
  • VDI 導入により、 3D CAD 関連業務の効率が向上した
  • 中国拠点に VDI を導入し、技術情報管理を強化できることになった
日立建機 開発支援センタ DE 推進部 主任技師 須賀田 稔明 氏

日立建機 開発支援センタ DE 推進部 主任技師
須賀田 稔明 氏

日立建機 開発支援センタ DE 推進部 技師 田端 聡 氏

日立建機 開発支援センタ DE 推進部 技師
田端 聡 氏

日立建機株式会社 Hitachi Construction Machinery Co., Ltd.

日立建機株式会社
Hitachi Construction Machinery Co., Ltd.

本社所在地
〒 112-0004 東京都文京区後楽二丁目 5 番 1 号
設立
1970 年 10 月 1 日
資本金
815 億 7,659 万円
URL
http://www.hitachi-kenki.co.jp/