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医療現場を革新していく
ギガビットネットワーク
[目次]
- ◆ [病院内ネットワークによる新しい試み]
- ◆ [セキュリティポリシーの違いでネットワークを分割]
- ◆ [シスコに対する信頼と期待]
2001年9月に東京大学医学部附属病院が新しい入院棟を開設した。その際に次世代を見据えた新しいネットワークシステムを導入することとなり、基幹部分にはシスコのLANスイッチが採用された。電子カルテを含む最先端の環境を整えた極めて注目度の高い事例といえる。医療や研究用のみならず、患者へのインタラクティブな環境をも整えた新しい病院内ネットワークシステムとシスコのLANスイッチの使われ方について紹介しよう。
| 病院内ネットワークによる新しい試み |
病院内のネットワークを新規に導入する際、既存の施設をそのままに新たにネットワークだけを敷設する場合と、システムの将来的な発展性を考慮し、新築時に余裕を持ったネットワークを構築する場合がある。
現在、病院を新築する際には光ファイバーのネットワークを巡らし、すべての診察室と医師や看護士が勤務する場所を十分な帯域のネットワークで結ぶのが通例になっている。東京大学医学部附属病院も入院棟を新築するにあたり、すべてのフロアにネットワークを張り巡らせた。入院棟のすべてのフロアにネットワークを張り巡らしたのには、いくつかの目的があってのことだった。それは診療上の目的であり、また研究用としての使用を考慮したものでもある。
このネットワークの構想について、東京大学大学院教授の大江和彦氏はこう語っている。
「院内で発生する診療データを発生した時点でデジタルデータ化して蓄積し、診療にフィードバックするとともに、患者さんへの説明にも活用していきます。もちろん研究者は新しい治療法の発見につなげていくわけです。理想をいえば、患者さんがベッドサイドで病院のメインコンピュータにアクセスすると前日や当日の自分の容態を知ることができるようにしたいと思っています。また、患者さんにその病気に関する情報提供をインタラクティブに行えるようになるといいと考えています。病院内ネットワークの進歩が、医療のあり方や患者さんの意識までも変えていくことになるのではないでしょうか」
| セキュリティポリシーの違いでネットワークを分割 |
医療の効率化と医療事故防止に効果の高い電子カルテ化を進めるにあたり、ネットワークは必要不可欠なものだ。検査の指示や処方せんをワークステーションの端末から入力することで、そのデータはネットワークを介して大型コンピュータに一括して蓄積される。それにより、過去の処方せんの内容や患者の診療データを医療スタッフがいつでもワークステーションで見たり、手元の端末で過去のデータを迅速に引き出すことができる。またX線やCTスキャン、MRIなどの検査機器で得た大量の画像や情報を端末で見ることができるように、帯域が広くて安定したネットワークが必要だ。
ワークステーションの端末から入力したデータは、ネットワークを介して大型コンピュータに蓄積される
東京大学医学部附属病院は大学病院であるため、研究者が研究目的で使用するコンピュータをネットワークに接続することも必要となる。そのため、すべての研究者の部屋にもネットワークを張り巡らせた。そうすることにより研究室で研究をしているときに患者の容態を問い合わせたり、時にはその場で指示を入力したりといったこともできるようにしてあるのだ。ただし、病院内で診療目的に使用するネットワークと研究目的のネットワークは目的が違うため、同じネットワークにすることはできない。とはいえ、2つのネットワークがどこかでつながっていなければ意味がない。そこで、東京大学医学部附属病院では、目的の違うネットワークをうまく組み合わせて動かす形を取っている。
また、東京大学医学部附属病院の新入院棟では新たな試みも行っている。有線で入院患者用のすべてのベッドに回線を設置し、患者がベッドサイドで情報端末を使えるネットワーク環境を導入したのである。将来的には、医療スタッフが病室のPCで医療画像を示して患者に説明しながら診療を行うことも考えられており、病室には将来に備えて光ファイバー網も敷設済みだ。もちろん患者用のネットワークも診療や研究用とは別系統のネットワークを構築している。
新入院棟では患者がベッドサイドで情報端末を使えるネットワーク環境を導入した
さらに、病棟のどこにいてもすぐに端末で検査結果を見たり指示を出したりするための検索ができるよう、診療用ネットワークとして802.11bの無線LANも設置してある。つまり、新入院棟には現状で考え得る病院内ネットワークのすべてが設置してあるのだ。
このように病院の中ではいろいろな用途で、さまざまなネットワークが使われることになる。当然、セキュリティに関しては細心の注意を払わなくてはならない。東京大学医学部附属病院では診療用ネットワーク、研究用ネットワーク、患者用ネットワークそれぞれのセキュリティポリシーを変えることでセキュリティ要件を満たしている。
また、画像が大量に流れても、それが他のネットワークを圧迫しないように、通信の目的に応じて最適な帯域割り当てを行うQoSで一定の容量を確保したセグメントを作らなければいけない。ただし、この3つの目的別のセグメントでは流れるデータ量が固定されているわけではない。その時々で必要とする回線容量が異なるため、太い幹線を引いておいて、それをVLANとQoSを組み合わせながら柔軟に対処できる設計にしてあるのだ。
| シスコに対する信頼と期待 |
この先進のネットワークシステムにおいて、シスコ製品は一番重要な基幹部分に使用されている。東京大学医学部附属病院は国の機関であるため、ネットワークの構築も入札制度で行われる。そのため、病院側が個別の機器の選定を行うことはないが、機器の選定については決められた予算の中で最大のパフォーマンスを発揮できるということが最重視された。東京大学医学部附属病院新病院整備企画室兼医療機器・材料管理部助手の美代賢吾氏は、ネットワークを構成する機器について重要視した点を以下のように語ってくれた。
「スピードはもちろんですが、一番重視したのは安定して動かせるネットワーク構成とそれを構築できる機器でなければならないという点です。電子カルテになると紙がなくなるため、ネットワークが止まるということは非常に大きな問題となります。予算には限りがありますから、完全二重化のネットワークを構成するのは難しいことでした。そこで普段は2つのネットワークがそれぞれ100パーセントで稼働していて、片側に異常が発生したら50パーセントで全体をカバーするといった負荷分散を行える構成を考えたのです」
東京大学医学部附属病院
新病院整備企画室
兼医療機器・材料管理部助手
美代賢吾氏
冗長性を持ち、かつ負荷分散をして全体が動くシステムを構成するための機器として、シスコのLANスイッチが選ばれたのである。
ネットワークの構成は図の通りで、安全性に配慮した形になっている。コアになるLANスイッチとしてCatalyst6509が2台あり、各フロアにCatalyst3548がギガスタックで接続され、それがもう1つのCatalyst6509に戻ってきているという構成だ。それ以外にもCatalyst6509から各フロアに画像用のネットワークを構成する。Catalyst3548から4本のFECでスタッフステーションのCatalyst2924へ接続され、各フロアの96ポート分を診療用、研究用、患者用、動画用にVLANで振り分けている。VLANで設定しているため、その時々で各VLANに割り振るポート数を簡単に設定し直せるようになっているのも特徴といえよう。これが片側のフロアの構成で、1フロアにこの構成が2つあるという緻密なネットワークシステムなのだ。
シスコ機器で構築された緻密なネットワーク
病院に限らず一度ネットワークを敷設したら、少なくとも基幹部分は5年以上使うことになるため、機器選定の際にはサポートの継続性が保証されていることも重視された。シスコ製品とソリューションに対する信頼性も大きなポイントとなったのである。また、ネットワークの構成を考えるうえでもシスコの果たした役割は大きかったようだ。技術面を含めた綿密な話し合いがあってこそシステム構築は迅速に行えるわけだが、今回シスコは打ち合わせ内容にあった適切な技術者が同席している。このシスコの対応について、美代氏は「こちらからの質問にも迅速に答えてもらうことができ、非常に参考になりました」と語っている。
冗長性を持ち、かつ負荷分散をして全体が動くシステムを構成するための機器として、シスコのLANスイッチが選ばれた
すでにネットワークは完成し、実際に稼働を始めている。だが、「病院の情報システムには完成形がないのです」と大江氏は言う。現時点で計画しているものに関しては、今年の夏から後半くらいには完成する予定だ。しかし、その頃にはつぎの計画が進行しているため、病院として目指すシステム設計は終わりなくつづくことになるのだ。
「来年春には病棟のカルテをすべて電子化したいと思っていますし、そのつぎは外来のカルテも電子化していく予定です。それと併せて、病院内すべてでフィルムがなくなり、医療画像としてデジタル化されるなど、つぎつぎと新しいプロジェクトが走りつづけていくことになります。フィルムの電子化が一息つくかどうかという頃には病院と研究室向けに動画像の配信サービスを行う予定で、終わりが見えないのが実状なのです。ネットワークもそうした新しい医療システムに対応してもらいたいし、大いに期待しています」と大江氏は医療ネットワークに対する期待を語ってくれた。
東京大学医学部附属病院 1858年(安政5年)、神田お玉池種痘所の開設に端を発し、現在に至るまで140年余にわたり地域の中核病院としての役割を担うとともに、日本ならびに国際社会における医学・医療の進歩に貢献する。2001年9月、高い医療を適切な形で、安全に、かつ快適な環境で提供するために、新たに建築した入院棟に最新のネットワーク環境を整えた。
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/
更新日:2002年6月28日
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