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シスコのAironetが築く
病院内の新時代ネットワーク
[目次]
- ◆ [電子カルテを効率よく運用するための無線LAN]
- ◆ [他社製品との比較を行ったうえでシスコのAironetを導入]
- ◆ [広い用途に対応できるAironet]
病院という特殊な環境下では、ネットワーク導入においてスペックはもちろんだが、それ以上にネットワークのフレキシビリティが重視されはじめた。宮崎医科大学附属病院は、ネットワーク導入にあたりシスコのAironetを選択、現在病院内で活用をはじめている。
この宮崎医科大学附属病院で使用しているネットワークシステムを、無線LANならでのフットワークの良さを活かした導入事例として紹介しよう。
| 電子カルテを効率よく運用するための無線LAN |
病院で現在使用されているカルテは、担当医や看護師による手書きのものが多い。しかし、パソコン上に診察結果や投薬記録、検温などの患者の健康状態をデータとして取り込み一覧表示を行える電子カルテ化の実験が終わり、すでに電子カルテの本格的な導入を行っている病院も現れた。電子カルテ化によって検査や診療、調剤など、病院内のさまざまなセクションをオンライン化することか可能となり、部門間での情報共有によってデータの取り違えや情報誤認による事故の防止にも役立つと期待されている。
医療事故などの危機管理にも
電子カルテは有効に機能する
電子カルテの導入により、病院の情報システム側には、いつ、誰に、どの薬を投与するというデータが記録されているので、それらを照合して医療事故が起きないように管理することができるようになる。昨今問題となった、患者を取り違えて注射をするというようなミスの防止に非常に役立つことは間違いなく、患者側にとっては医療機関に対する安心感と信頼感が増すことになるだろう。さらに将来、宮崎医科大学附属病院では電子カルテ化による新たな危機管理システムを構築したいと考えている。それは輸液や輸血、患者に投与する薬を管理するバーコード、患者が装着するリストバンドのバーコード、スタッフのIDカードのバーコード、この3種のバーコードをPDA端末などで照合し、より徹底した危機管理を行うというものだ。
実際に医師や看護師といった医療スタッフは、カルテを持ち運び患者の様態と併せて電子カルテを見ながら診療や検温、投薬といった作業を行うことになる。しかしながら、電子カルテは個別のコンピュータに入れて持ち運ぶのでは、その意味は薄れてしまう。オンライン上にあって、常に医療スタッフや事務スタッフが見ることができなければいけない。各病室に情報コンセントを設置して、そこにノートパソコンを接続するという方法もないわけではないが、すべての病室に情報コンセントを新設するのは、入院棟の新築時ならともかく現在使用している病室では不可能に近い。また、そのたびにネットワーク接続をやり直すというのも手間がかかってしまう。
「電子カルテがなかなか普及しなかった背景には、ネットワークの対応が難しかったという問題があります。電子カルテの構想が持ち上がった時点で、有線のLANでは電子カルテの導入が難しいことは分かっていました。しかし、病院内LANの構築を考えたときには、無線LANは夢の世界でしかなかったんです」と、電子カルテシステムの研究をつづけてきた宮崎医科大学附属病院医療情報部の荒木賢二教授は語る。
宮崎医科大学附属病院
医療情報部
荒木賢二教授
| 他社製品との比較を行ったうえでシスコのAironetを導入 |
宮崎医科大学附属病院の病院内無線LANシステムは2002年3月に導入され、5月末から本格運営に入っている。無線LANの導入は当初から電子カルテを実用化するためのもので、無線LAN以外は考えられていなかった。無線LAN導入以前に、情報処理センターと病院内が100ベースのEthernet設置されているが、これは事務系とナースステーションを結ぶもので、病室付近での使用は想定されていない。
ソリューションはシスコAironet350シリーズを67台導入。67台の中の54台が病院側に、13台がキャンパス側に設置されている。病院とキャンパスは無線LANのシステムが独立しており、病院内でのシステム運用は電子カルテ用としての使用に限定されている。同じ無線LANとはいえ、病院とキャンパスで2種類導入したようなイメージとなっている。一見同じようではあるが、目的や使用方法が違い、セキュリティポリシーもまったく違ったものとなっているのである。
シスコAironet350シリーズは、さまざまな電子機器によって頻繁に発生するマルチパスの伝播に対処する高度な信号処理や、ネットワークパフォーマンスを妨害する周囲のノイズや干渉を解決するインテリジェントなフィルタリング機能を持っている。事実上、有線接続と同等の接続状態を享受できる最高のスループットを実現しているのである。
宮崎医科大学附属病院でも、この点を高く評価してAironetの導入を決定した。導入前のシステム検討時には他社製品との比較を行っているが、実際に病院内でテストを行ったところ、到達範囲やローミングなどにおいてシスコの優位性が認められた。
シスコAironetは有線接続と同等の接続状態を享受できる最高のスループットを実現する
「電子カルテを導入している他の病院の例では、シスコではないメーカーの無線LANで、ローミングがうまくいっていないというような話を聞いたことがあります。当病院で実証テストを行ったときは、Aironetでなんの問題もなかったので安心して導入できました。コストの差を凌駕してしまうほど性能の差が大きかったのです」と荒木教授はAironetを高く評価している。
医療の現場では、医療スタッフは病棟でノートパソコンを台車に乗せて忙しく移動していく。そのため、ひとつのアクセスポイントからつぎのアクセスポイントへの移行がスムーズにいかなくてはならない。そのときのローミングがうまくいかなければ電子カルテにした意味がなくなってしまうため、信頼性や安定性には極めてシビアにならざるを得ない。無線LANの難しいところは到達範囲が環境によって異なり、現場で実際にテストをしてみなければスペックの見極めが難しいことだ。シスコは今回病院側の許可を得て、スタッフ立ち会いのもとデモ機を病院内に持ち込んでテストを行った。そして、アンテナの設置数が少なくてすむなど、その高い性能を実証したのである。
「テストをやるとき大事なのは、距離だけではないということがよく分かりました。単純に距離だけをみるのならマップ上に円を描けばすみますが、何らかの遮蔽物があって陰になっているところや、多くの医療機器が設置されているICU(集中治療室)は速度が落ちるなど、条件によって難しい部分があるのです」と荒木教授は無線LANならではのアンテナの設置場所を実証することの大事さを語っている。アクセスポイントを1メートル動かすだけで死角がなくなることもあり、かなりの事前調査が必要なのである。また、ノートパソコンの向きによっても違ってくるので運用面での指導も必要となってくる。宮崎医科大学附属病院ではこうした運営面に関して運用管理部という部署を作り、病院内のスタッフへのレクチャーを行っている。
無線LANを既存の電子カルテネットワークシステムに追加設置したことにより、病院ではベッドサイドでの診療行為が可能になった。キャンパスでは講義室や会議室に無線LANを設置し、教職員や学生が自由に使えるようにしたことにより、大学教育におけるネットワークを用いた講義や演習を容易にした
| 広い用途に対応できるAironet |
無線LANで大事なことは、有線のネットワーク以上に不特定の人にアクセスポイントを提供することになるため、セキュリティをより堅牢にする必要があることだ。宮崎医科大学附属病院で、患者の個人情報をネットワーク上に載せることになるため、セキュリティは非常に頑強となっている。
前述のように病院とキャンパスのネットワークは別系統となっているが、同じ敷地内にあるためネットワークの共用化も可能ではある。しかしセキュリティを鑑み、あえてネットワークを分け、外部からだけではなく病院とキャンパスのネットワーク間にもファイアウォールを設置している。病院のネットワークはセキュリティが非常に厳しく管理されているが、キャンパス側は比較的緩く、スタッフ以外の学生でも利用できるようになっている。キャンパス側のネットワークに無線LANを導入したのは、何か特定の目的があるわけではない。ユビキタス環境――、つまりいつでもどこでも情報が電子化されていて、アクセスが容易にできる環境を作ろうということで、キャンパスにも無線LANを設置したのである。このことによって会議や授業で使う資料をまとめてWeb上にあげておくことや、過去の資料を迅速に調べることもできるようになった。資料のデータベース化による会議のペーパーレス化を推進し、会議の効率化にもつながることになる。また、病院内の資料もアクセス権を設定しておけば見ることができるようになるので、授業でのネットワーク使用頻度も今後増えていく可能性が高い。
近い将来、入院患者へのサービスとして、無線LANによるインターネット接続サービスも考えられている。特にメールの送受信は多くの患者が望んでいることで、早期のインターネット接続サービス導入が望まれている。しかし、電子カルテと同じネットを患者に使わせるのはシステムの保安上好ましいことではない。そのときはさらに新たなネットワークが必要となる可能性が高い。その場合も、ネットワーク構築のコストや維持を考えれば、当然無線LANを使用することとなるだろう。
こういった同一地域内での、無線LANを使用した2系統あるいは3系統のネットワークは、セキュリティポリシーや運用面の違いによって今後増えていくことになるだろう。そうしたさまざまな使い方にも、Aironetとシスコのソリューションは的確に対応することができる。そして、ネットワークそのものだけではなく、医療現場の革新をもシスコのソリューションは担っていくのである。
宮崎医科大学附属病院 医師養成教育機関として1977年10月に開設。地上7階、総病床数616を有する宮崎県における中核的医療機関であり、1994年には特定機能病院の指定を受ける。最新の医療機器と優秀な医療スタッフが揃い、医療内容の高度化、多様化に加え、時ととも変わる疾病構造の変化にも、適切に対応できる体制を整えている。2002年5月、病院内無線LANシステムの本格運営をはじめる。
更新日:2002年6月28日
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