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西日本旅客鉄道株式会社
モバイルIPネットワークが
旅客鉄道業務に革新をもたらす!


[目次]
[モバイルIPネットワークの概要]
[シスコによるモバイルIPネットワーク構想の提案]
[実証実験によって無線LANの有効性を確認]
[シスコ製品だから構築できた高性能無線LAN環境]
[鉄道業務の変革を支えるシスコのソリューションとサポート体制]
 西日本旅客鉄道株式会社では、近未来の旅客鉄道事業のあり方についてさまざまなアイディアを持ち、その実現に向かって数多くの技術開発に取り組んでいる。今回紹介するモバイルIPネットワークは、変革を求められている業務形態の改善に即効性を持つ処方箋として、社内はもとより他業種の企業からも大きな期待が寄せられている。シスコのソリューションだからこそ構築できた、新世代のモバイルIPネットワークシステムを紹介しよう。

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モバイルIPネットワークの概要
 西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)が構築したモバイルIPネットワークは、鉄道業務の形態を一新する可能性を秘めた画期的なソリューションだ。ネットワーク構成自体はシンプルだが、従来の無線LANのネットワークとは一線を画す。それは、列車に設置されたアクセスポイントと沿線に設置された無線LANブリッジにより本社ネットワークに接続され、高速移動する列車車内においても無線LAN環境を構築しているということだ。
 このモバイルIPネットワークにより、列車の運行状況から遅延情報、信号や踏切の状態といった情報がリアルタイムで本社から列車や駅へ送られるようになる。乗務員や駅員は運転席に設置された液晶モニターやPDAのような情報端末を携帯し、最新情報を入手することが可能になるのだ。現場の職員すべてが本社との情報交換を即時に行えることにより、情報の共有化と乗客に対する正確で迅速な情報伝達が実現できるのである。
 モバイルIPネットワーク構想は、JR西日本特有の車両の運用方法によって生まれたといえる。JR西日本で使用している車両は、線区ごとに使用車両が固定されてはいない。言い換えれば、決まった路線を決まった色の電車が走るというわけではない。そのため、どの線区にどの車両が乗り入れても混乱なく使えるネットワークでなければならない。列車無線は、線区ごとに無線チャンネルと周波数を振り分けている。だがIPネットワークの場合、線区が変わるごとにIPアドレスの設定を変えるというのは現実的ではない。
 そこで注目された技術がモバイルIPという手法だ。情報端末にIPアドレスを振り分けることで、車両や線区が変わってもネットワークに混乱は生じない。鉄道という独自性を考えた場合、その通信ネットワークにはモバイルIPが最適な技術であるとJR西日本は判断したのである。また、今後のIP化を考慮して、JR西日本では当初からIPv6にも対応した環境を作り上げている。

*線区乗り入れとはJR宝塚線・琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線・JR東西線などの1本の列車が複数の線区を走っている状態をいう

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シスコによるモバイルIPネットワーク構想の提案
 これまで列車に対する情報伝達は、運転席と車掌室内に設置された列車無線か、駅で渡される指示書で行われており、十分な情報をリアルタイムで入手するのが困難な状況だった。一方、携帯電話の普及により、乗客は車内でも駅でも情報をすばやくキャッチできるようになった。事故や故障による列車遅延情報について、乗客のほうが乗務員や駅員よりも早く、かつ詳しい情報を入手している場合もある。乗務員や駅員も緊急連絡のために業務用の携帯電話を所有している。しかし、携帯電話では基本料金を含め膨大な通信コストがかかること、また事故発生時などは乗客による携帯電話の利用が集中し、つながりにくくなるというデメリットがある。
「そこで、情報伝達をスムーズに行う方法はないかと技術部で検討を重ねてきました。そして、2年ほど前に無線LANの実験を行いたいという提案があったのです。本来は具体的な目的を定め、それを実現するためにはどのような技術を導入すべきかを考えるのが通常でしょう。しかし今回は、走行中の列車に情報を送信できるツールが本当にあるのだろうか、という観点から無線LANの実験を始めました」と鉄道本部技術部技術主幹の石井順氏は語ってくれた。

鉄道本部技術部技術主幹 石井順氏
       
鉄道本部技術部技術主幹
石井順氏

 石井氏が言うように、今回のモバイルIPネットワークの実証実験は事業としてではなく、あくまでも将来を見据えた技術開発の一環として行われた。
「これまで列車のような高速移動体においては検証例がないため、無線LANが移動体伝送として成立するかどうかはまったく不明でした。我々としても無線LANに関して、これまでさまざまな調査を行ってはきました。しかし、電波伝搬的に適したソリューションがなかなか見つからなかった。そんなとき、シスコからモバイルIPネットワーク構想の提案があったのです。それは、我々にとって十分検討に値する内容でした」と鉄道本部技術部の森崇氏は言う。こうして、実際に列車を走行させての実証実験が行われることとなった――。

鉄道本部技術部 森崇氏
       
鉄道本部技術部
森崇氏

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実証実験によって無線LANの有効性を確認
 2002年2月、保守用車両を使用して、無線LANによるデータ通信実験がスタートした。川西池田から宝塚までの6.5kmの区間にCiscoBR350による無線LANブリッジを13局設置し、保守用車両にもBR350等を搭載して、時速30kmで低速移動時のローミング試験が行われた。この低速移動実験では、ICMPパケットのRTT(ラウンドトリップ時間:パケットが送信元から宛先まで行き、再び戻ってくるまでに要する時間)や、ハンドオーバー(エリア内を移動することで生じる、基地局の切り替えをスムーズに行う動作)の時間などの計測を行い、それらの数値が許容範囲内であることが確認された。この実験で、JR西日本はシスコの無線LAN技術が鉄道事業分野でも十分使用できるという実感を得たのである。

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線路脇に設置された無線LANブリッジ。写真のように駅ホームにおいても入念な実証実験が行われた。画面は「通告券伝送システム」

  同年9月、実証実験は次の段階に入った。通常運行している車両を使用し、実験速度も時速120kmにアップした。そしてこの高速移動実験でも、時速30kmでの低速移動実験と変わらぬ成果を確認することができた。また、車内においてIP電話の使用が可能であるという結果も得られた。IP電話を使用すれば、必要な情報を目的の車両の乗務員にだけ伝えることができるメリットがある。
 さらに次の段階では列車にモバイルルータ(Cisco 2651を使用して構築)を設置し、車内での無線LAN環境が構築できていることを確認した。

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列車内に設置されたCisco2651とAP350。列車を運行し、さまざまな環境下で実証実験を行った Photo
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 2003年3月には、テスト区間を伸ばし、JR宝塚線の尼崎から新三田までの間で実証実験を行った。距離にして約35km、走行時間約40分の区間に85局の無線LANブリッジを設置。市街地や開けた場所、山間部やトンネルなど、試験フィールド(検証環境)としては十分な区間を設定し、さまざまな環境下での高速移動実験を行っている。その結果、トンネル内でも良好な通信状態が保てることが実証された。また今回の実験では実稼働時の4線区乗り入れを仮想し、あえて4セグメントで試験を行っている。今後はIPv6も含めた広範囲でのモバイルIPネットワークの実証実験を進めていく予定だ。

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シスコ製品だから構築できた高性能無線LAN環境
 現在JR宝塚線で実験中のモバイルIPネットワークシステムの構成を見てみよう。その構成は、線区に設置された無線LANブリッジと、車両内のアクセスポイント、そして各線区とJR西日本本社を結ぶネットワークで構築される。
本社と線区を結ぶのは、従来使用していた光ケーブルだ。本社のネットワークと線区の光ケーブルのスイッチにはCatalyst2950を使用。線区の無線LANブリッジにはBR350を使用するが、線区のスイッチとBR350はDSLで結ばれている。結果、新たに専用線を敷設する必要がなくなり、大幅なコスト削減が実現した。
 車両内には実験のためにCisco2651が搭載されているが、将来の本格導入をふまえ広域で実証実験を行う際にはCisco1700シリーズを導入する予定だ。車両内にはAP350が設置され、情報端末と無線LANで結ばれる。車両と各無線LANブリッジはL2ローミングで接続され、高速移動時にも途切れることのないネットワーク網が構築されている。このネットワークはシスコ製品なしには実現しなかったといって過言ではない。その性能を森氏はつぎのように評価している。
「たしかに、シスコ製品は他社製品に比べ高価かもしれません。しかし無線LAN製品に関しては、際立った性能を保持しているのも事実です。将来的に、ネットワークを業務用と乗客の方への開放用を分けるとした場合、VLANが無線LANのレイヤーで必要になります。有線が万一途切れた際には無線LANで中継を行うなど、冗長性やVLANに関してシスコ製品は綿密な計算と熟考に基づいて作られていると感じます。また、CatalystはIOSに関してユーザービリティが優れていると思います。他社の無線LAN製品も購入して比較検討しましたが、Aironetは他社製品との価格差を補ってあまりある性能を有している。そう判断し、無線LANにはAironetを採用しました」
 無線LAN技術は急速な進化を遂げている。85局の無線LANブリッジすべてを常に最適な状態で運用するため、JR西日本ではCiscoワイヤレスLANソリューションエンジンを導入した。今後さらに無線LANブリッジを増設したり、新機種を導入することになったとしても柔軟に対応することができる。

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JR西日本本社内に設置されたシスコ機器

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JR西日本のモバイルIPネットワークシステム。線区に設置された無線LANブリッジと、車両内のアクセスポイント、そして各線区とJR西日本本社を結ぶネットワークで構築される

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鉄道業務の変革を支えるシスコのソリューションとサポート体制
 将来的には米原から姫路まで、南側は和歌山くらいまで、アーバンネットワークと呼ばれる主要線区の沿線に無線LANのネットワーク網を構築するという青写真を描いている。そのための第一歩として、2003年度中に大阪近郊のネットワーク構築を行う予定だ。
「このモバイルIPネットワークにより、現場での仕事の仕方、ひいては鉄道業務のあり方そのものが変わるのではないかと考えております。たとえば、文字と画像、音声を組み合わせた詳細な情報を乗務員に提供することができる。逆に、走行中の列車から事故を発見した場合などには、乗務員がその情報を本社に送ることもできる。これにより、より迅速な事故処理や復旧が可能になるはずです。今回のネットワーク構築は無線LANが移動体伝送として成立するか否かという実験からスタートしたものですが、さまざまな可能性が広がって、自分たちでも驚くほど面白いものになっています。シスコのサポートによって、我々が描いた夢が現実のものとなろうとしているのです」と石井氏はモバイルIPネットワークの将来について語ってくれた。
 JR西日本のモバイルIPネットワークは、従来の業務形態の変革と顧客である乗客へのサービスレベルを一気に向上させるインパクトを秘めている。将来的には、DSLから光ケーブルによる駅との接続等、旅客鉄道業界において世界的にも最先端のネットワークになると考えられる。そして、その実現のためにJR西日本は今後もさまざまな技術開発と研究を続けていく。シスコはその技術開発の一翼を担い、JR西日本のネットワークを将来にわたりサポートする。

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西日本旅客鉄道株式会社
1987年4月1日、日本国有鉄道の民営化に伴い発足。「常に安全で正確な輸送の提供」を第一目的とし、最新技術とシステムの導入、乗務員の知識と技能の向上などに取り組む。今回、乗客へのサービス向上と業務形態の抜本的な変革を目指し、モバイルIPネットワークを構築した。


*本内容は取材時の状況に基づき作成されております。
 現在の状況とは異なっている場合がございますので、予めご了承ください。

return to top 更新日:2003年6月3日
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