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SRP(Spatial Reuse Protocol)テクノロジ

目次

  [1. はじめに]

  [2. バックグラウンド]

  [3. SRPのパケットフォーマット]

  [3.1 SRPバージョン2.0の汎用ヘッダのフォーマット]

  [3.2 SRPバージョン2のデータパケットのフォーマット]

  [3.3 SRPバージョン2.0の制御パケットのフォーマット]

  [3.4 フレーミング]

  [4. SRPパケットの処理手順]

  [4.1 パケット処理の概要]

  [4.2 スペース再利用]

  [4.3 受信側のパケット処理]

  [4.4 マルチキャスティング]

  [4.5 送信側のパケット処理]

  [4.6 パケットの優先度]

  [4.7 トポロジ検出]

  [4.8 リング選択 ]

  [5. SRPフェアネスアルゴリズム(SRP-fa)]

  [5.1 SRP-faの概要]

  [5.2 SRPオペレーション]

  [my_usage]

  [FWD_RATE]

  [allow_usage]

  [アルゴリズム]

  [6. インテリジェント保護スイッチング(IPS)]

  [6.1 保護スイッチングとトラフィックラッピング]

  [6.2 IPSリクエストタイプ]

  [6.3 パスインジケータ]

  [6.4 SONET/SDHオーバーヘッドバイトの取扱い上の注意]

  [6.5 IPSイベント階層]

  [6.6 IPSの状態]

  [6.7 IPSプロシージャ]

  [6.8 IPS状態遷移の規則]

  [6.9 IPSの例]

  [正常な稼動状況]

  [単一のファイバ障害]

  [二重のファイバ障害]

  [複数のファイバ障害]

  [信号低下とファイバ障害]

  [障害の解除]

  [7. パススルー]

  [8. ネットワーク管理]

  [9. クロックと同期 ]

  [10. SRP製品]

  [10.1 Cisco 12000インターネットルータのラインカード]

  [10.2 Cisco 7500ポートアダプタ]

1. はじめに



 SRP(Spatial Reuse Protocol)は、リングベースのメディアで使用するためにシスコが開発したプロトコルです。「Spatial Reuse Protocol」(スペース再利用プロトコル)という名称は、パケット処理の際にスペースを再利用することから付けられました。SRPは、シスコのDPT(Dynamic Packet Transport)ファミリ製品のなかで使われているテクノロジです。DPTは、次世代トランスポート技術で、オプティカル伝送におけるパケット通信に最適化されています。このオプティカル伝送技術は、IPルーティングの帯域幅効率と充実したサービス機能に、光ファイバリングの豊富な帯域幅と自己復旧機能とを組み合わせ、既存のソリューションにはない優れたコストと機能を実現します。

 この技術資料では、SRPとリング技術について、リング帯域幅制御および保護スイッチングを実現するMACレイヤの定義やアルゴリズムを含めて説明します。また、実装およびすでに出荷されているシスコ製品についても紹介します。このテクノロジが活用されたアプリケーション、経済的側面、およびネットワークの計画と展開については、別の技術資料で解説しています。

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2. バックグラウンド



 SRPは、双方向の二重逆回転リングトポロジを使用します。図1に示されているように、これらのリングはそれぞれ「内側リング」と「外側リング」と呼ばれています。どちらのリングも、同時にデータとSRP制御パケットの両方を伝送します。SRP制御パケットは、後で詳しく説明するように、トポロジ検出、保護スイッチング、および帯域制御といったタスクを処理します。また制御パケットは、対応するデータパケットとは逆方向に伝播されます。つまり、外側リングで伝送されるデータパケットに対応する制御パケットは、内側リングで伝送されます(図1参照)。

図1:4ノードのSRPリング
図1:4ノードのSRPリング

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3. SRPのパケットフォーマット



 このセクションでは、SRPが使用するパケットのフォーマットについて説明します。パケットには、データパケットと制御パケットの2種類があります。最大転送単位(MTU)は9216オクテット、最小転送単位は55オクテットです。ただしシスコの現在の実装では、MTUは4470オクテットとなっています。

3.1 SRPバージョン2.0の汎用ヘッダのフォーマット



 SRPバージョン2.0の汎用ヘッダサイズは16ビット(2オクテット)です(図2参照)。

図2:SRPバージョン2の総称ヘッダ
図2:SRPバージョン2の総称ヘッダ
 

 SRPバージョン2.0のヘッダにある各フィールドは、以下のとおりです。

表1:SRPリング識別子
0 外側リング
1 内側リング

表2:モード値
説明
000 - 010 予約済み
011 ATMデータセル
100 制御メッセージ(ホストに渡す)
101 制御メッセージ(ホスト用にローカルでバッファリング)
110 使用パケット
111 データパケット

3.2 SRPバージョン2のデータパケットのフォーマット



 SRPバージョン2.0のデータパケットのフォーマットを図3に示します。

図3:データパケットのフォーマット
図3:データパケットのフォーマット
 

 データパケットは、汎用ヘッダと以下のフィールドから構成されます。

表3:SRPのプロトコルタイプ
プロトコルタイプ
0x2007 SRP制御
0x0800 IPバージョン4
0x0806 ARP

 各データパケットのオーバーヘッドは、16オクテット(ヘッダ)+4オクテット(FCS)になります。

3.3 SRPバージョン2.0の制御パケットのフォーマット



 SRPバージョン2.0の制御パケットの構造を図4に示します。

図4:制御パケットのフォーマット
図4:制御パケットのフォーマット
 

 制御パケットは、汎用ヘッダと以下のフィールドから構成されます。

表4:SRPの制御タイプ
制御タイプ 説明
0x00 予約済み
0x01 トポロジ検出
0x02 IPSメッセージ
0x03 - 0xFF 予約済み

 各制御パケットのオーバーヘッドは、22オクテット(ヘッダ)+4オクテット(FCS)になります。

 モードビットが1xxに設定されていると、データパケットを意味する111以外であれば、このパケットはSRP制御パケットです。制御パケットはポイントツーポイントで送信され、隣接ノードによって排除されます。現在の実装では、制御パケットはポイントツーポイントで送信されるため、DAは0x000000000000に設定されます。すべての制御パケットは、TTLが0x1、優先度が0x7に設定されて送信されます。制御パケットには、次の2種類があります。

 SRPバージョン2には、以下の3種類の制御パケットがあります。

 これらの3種類の制御パケットについて、この後で詳しく説明します。


注意:図4に示した制御パケットのフォーマットは、トポロジ検出およびIPSパケットによって使用されます。使用率パケットは、異なるパケットフォーマットを使用しますが、これについては「5. SRPフェアネスアルゴリズム(SRP-fa)」で説明します。

3.4 フレーミング



 SRPはメディアに依存しないMACレイヤプロトコルです。当初の実装では、SONET/SDHフレーミングを使用します。SRPパケットは、SONET/SDHフレームに挿入されます(図5参照)。

図5:SONET/SDHのSRPパケットへのマッピング
図5:SONET/SDHのSRPパケットへのマッピング
 

 現在、SONET/SDHフレーミングのみがサポートされています。将来的には、他のフレーミングタイプもサポートされる予定です。SONET/SDHフレーミングにより、SONET/SDHまたはWDM機器とのインターワーキングが可能になります。連結されたペイロードのみがサポートされることに注意してください。この技術資料の「9. クロックと同期」には、SRPをADM、WDMトランスポンダ、または直接ダークファイバに接続するための要件が説明されています。

 図6は、IPデータパケットのSRPへのマッピングとSONET/SDHフレーミングの適用を示しています。

図6:SONET/SDHにマッピングされるSRPのペイロード
図6:SONET/SDHにマッピングされるSRPのペイロード
 

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4. SRPパケットの処理手順



 ここでは、SRPノードのパケット処理手順について説明します。この節は、下記のセクションに別れています。

4.1 パケット処理の概要



 リングパケットフローのハイレベルビューを図7に示します。

 SRPインタフェースあたり2つのSRP MACがあります。近隣したSRP MACを「メイト」と呼びます。それぞれのSRP MACは、外側Rx/内側Txまたは外側Tx/内側Rxと示されたファイバのペアに接続されます。外側Rx/内側TxはSide A、外側Tx/内側RxはSide Bと示されています。

 SRPリングを形成するためのノードの接続は、FDDIリングを形成するためのノードの接続に似ています。1台目のルータのSide Aが2台目のルータのSide Bに接続します。このようにして、すべてのノードが接続されます。図8に、リングノードのパケット処理のハイレベルビューを示します。

図7:リングのパケットフロー
図7:リングのパケットフロー

 
図8:ノードのパケットフロー
図8:ノードのパケットフロー
 

 着信したパケットは、そのノード宛であるかどうかが調べられます。パケットがそのノード宛であれば、受信されてホストに渡され、処理されます。パケットがそのノード宛でなければ、転送バッファに置かれて、引き続き循環します。転送バッファのパケットと、そのノードから送信されたパケットは、SRPフェアネスアルゴリズム(SRP-fa)に従って、発信リング上で送信がスケジュールされます。このアルゴリズムについては、「5. SRPフェアネスアルゴリズム(SRP-fa)」で説明します。

4.2 スペース再利用



 SRPという名前は、リングのパケット処理手順におけるスペース再利用(spatial reuse)の機能に由来しています。トークンリングやFDDIといった従来のデータリングは、送信元でのパケット排除やトークン処理を利用して、リングアクセスを制御していました。パケットは、リングを1周まわってから送信元によって排除されます。SRPの場合、ユニキャストパケットについては宛先ノードがパケットを排除します。ノードは共有トークンを待たずにパケットを同時に送信するため、リングの他の部分で帯域幅が増大する可能性があります(図9参照)。ただし、マルチキャストパケットは送信元で排除されます。

図9:スペース再利用(spatial reuse)プロシージャ
図9:スペース再利用(spatial reuse)プロシージャ
 

4.3 受信側のパケット処理



 着信したパケットに対しては、以下の6通りの方法で処理が行われます。

 受信側のパケット処理のハイレベルビューを図10に示します。

図10:Rx側のパケット処理
図10:Rx側のパケット処理
 

 受信側のパケット処理では、以下が行われます。

 図11に示されているように、CAMはステータスビットと送信元アドレスプールから構成されます。送信元アドレスプールには、SAビットとMACアドレスが含まれます。SAビットは、関連するMACアドレスが送信元アドレスと宛先アドレスのどちらであるかを示すために使用されます。このビットがセットされていれば、そのMACアドレスは送信元アドレスです。ステータスビットは、転送するかどうかを決める際に使われます。

図11:SRPバージョン2.0 CAMのフォーマット
図11:SRPバージョン2.0 CAMのフォーマット

 CAMには、以下のフィールドがあります。

4.4 マルチキャスティング



 SRPはIPマルチキャストを直接サポートします。IPマルチキャストは、クラスD IPアドレス(最初の4ビットが [1110]
に設定されたアドレス)を使用します。残りの28ビットは、マルチキャストグループIDになります。IPマルチキャストがリング上で伝送されるためには、クラスDマルチキャストアドレスが適切な48ビットMACアドレスにマッピングされる必要があります。最初の3バイトが00:00:5EになっているMACアドレスブロックは、マルチキャスト用に予約されています。最初のバイトのビット1はマルチキャストビットとして指定されており、マルチキャストパケットではセット状態になっている必要があります。最後に、クラスD IPアドレスの下位の23ビットが、MACアドレスの残りの23ビットに直接マッピングされます。このマッピングは、リング上にマルチキャストパケットを供給したノードが行います。

図12:マルチキャストアドレス
図12:マルチキャストアドレス

注意:SONET/SDHメディアの場合、各バイトの最初がMSBというネットワーク順序になっているため、マルチキャストビットは宛先アドレスの8番目のビットになります。

 マルチキャストがオンになっているノードは、CAMのなかに“0100.5E00.0000 mask 0000.007F.FFFF”というエントリを作成します。そのノードに到着したすべてのマルチキャストパケットは、受信され、レイヤ3に渡されて処理されます。ユニキャストパケットと異なり、マルチキャストパケットは送信元で排除されます。マルチキャストパケットは、受信後も引き続き循環するため、転送バッファに置かれます。

4.5 送信側のパケット処理



 図13に、送信側プロセスのハイレベルビューを示します。

図13:送信側のパケット処理
図13:送信側のパケット処理
 

 送信側のパケット処理では、以下が実行されます。

4.6 パケットの優先度



 SRPは、送信キューと転送バッファのパケット優先順位設定および優先パケットの迅速な処理をサポートします。これは、遅延制限およびジッタ制約が厳しいために速やかに処理される必要があるリアルタイムアプリケーション(音声など)、ミッションクリティカルなアプリケーション、および制御トラフィックをサポートするためです。SRP MACヘッダの優先度フィールドは、パケットをリングに供給するノードによって設定されます。ノードでは、IPヘッダのToS(Type of Service)フィールドのprecedence(優先)ビット値を、SRP MACヘッダの優先度フィールドにマッピングします。

 IPには8レベル(3ビット)の優先度がありますが、SRPの優先度キューは2つのみ(高と低)です。これに対処するために、ノードは設定可能な優先度しきい値を利用して、高/低優先度の送信/通過キューのいずれにパケットを置くかを決定します。ノードを通過するパケットに対しては、SRP MACヘッダの優先度フィールドを調べて、設定された優先度しきい値に基づいてパケットを高優先度または低優先度に設定して転送バッファに置きます。そして、後述の送信側パケット処理アルゴリズムによって出力スケジューリングが決定されます。

 またスケジューラは、以下の原則にしたがって高/低優先度の通過パケットと高/低優先度の送信パケットから次に送信するパケットを選択します。

 この規則により、以下の順番でパケット処理が実施されます。

  1. 高優先度の通過パケット

  2. ホストからの高優先度の送信パケット

  3. ホストからの低優先度の送信パケット

  4. 低優先度の通過パケット

 ただしパケット優先度の階層は、低優先度の通過キューの深さにしきい値を設定することによって変更できます。次のような状況が発生しないように、この処理が必要になることがあります。

  1. ローカルに供給されたトラフィックにサービスを提供している間、転送バッファがオーバーフローしないようにする。

  2. 低優先度の通過トラフィックが、ローカルに供給された低優先度トラフィックのために長く待ち過ぎることがないようにする。

 高優先度の通過パケットは、常に最初に送信されます。高優先度の送信パケットは、低優先度の転送バッファの深さが高しきい値未満である限り、送信されます。低優先度の送信パケットは、低優先度の転送バッファの深さが低しきい値未満であり、MY_USAGEがALLOW_USAGE未満である限り、送信されます。他に送信できるものがない場合は、低優先度の通過パケットが送信されます。

 送信側パケットのスケジューリングについて、以下のまとめます。

While (true) {
 if 転送バッファに高優先度の通過パケットがある
  高優先度の転送バッファパケットを送信する
 else if 低優先度転送バッファの深さ > 高しきい値
  低優先度の転送バッファパケットを送信して、FWD_RATEカウンタを増加する
 else if 送信キューに高優先度の送信パケットがある場合
  高優先度の送信パケットを送信する
 else if 低優先度の転送バッファの深さ > 低しきい値
  低優先度の転送バッファパケットを送信して、FWD_RATEカウンタを増加する
 else if MY_USAGE >= ALLOW_USAGE
  低優先度の転送バッファパケットを送信して、FWD_RATEカウンタを増加する
 else if 送信キューに低優先度の送信パケットがある
  低優先度の送信パケットを送信して、MY_USAGEカウンタを増加する
 else if 転送バッファに低優先度の通過パケットがある場合
  低優先度の通過パケットを送信して、FWD_RATEカウンタを増加する
}

 MY_USAGE、FWD_RATE、およびALLOW_USAGEはSRP-faが使用するカウンタです。これらのカウンタについては、「5. SRPフェアネスアルゴリズム(SRP-fa)」で解説します。

4.7 トポロジ検出



 トポロジ検出は、SRPリング選択およびネットワーク管理機能で重要な役割を担っています。リング上の各ノードは、定期的に(設定可能な間隔で)トポロジ検出パケットを外側リング上に送り出します。トポロジ検出パケットを受信するノードは、自分のMACバインディング情報を追加します。この情報は、ノードのMACアドレスとリングステータス情報(ノードがラップしているかどうか)から構成されます。パケットが更新されると、リング上の次のノードに渡されます。リングラップがある場合は、トポロジ検出パケットはラップに従います。トポロジ検出パケットがラップに従っているときは、パケットはラップから抜け出すまで更新されません。

 最終的には、トポロジ検出パケットは送信元に戻り、ここで受信されて、リングから排除されます。トポロジ検出パケットは、外側リング上で受信される必要があります。同一のトポロジ検出パケットを2つ連続して受信した場合は、ノードはトポロジマップを構築します。このトポロジマップには、リング上の各ノードのホップカウント情報、MACアドレス、ラップ、およびホスト名が含まれます。「4.8 リング選択」では、リングパスを選択するためにトポロジマップ情報がどのように使用されるかが説明されています。トポロジ検出パケットのフォーマットを図14に示します。

 表5は、トポロジ検出パケットのMACタイプのフォーマットを示しています。

表5:MACタイプ(8ビット)
ビット 説明
0 予約済み
1 リングID
0 - 外側リング
1 - 内側リング
2 ラップステータス
0 - ノードはラップされていない
1 - ノードはラップされている
3 - 7 予約済み

 

 トポロジ長フィールドは、MACタイプ/MACアドレスバインディングから開始するトポロジメッセージの長さを示す16ビットフィールドです。

図14:SRPトポロジ検出パケット
図14:SRPトポロジ検出パケット
 

4.8 リング選択



 リング選択は、ARPを使って行われます。

図15:ARPオペレーション
図15:ARPオペレーション

 ARPおよびリング選択の手順について以下に説明します。

 上記のプロシージャは、ユニキャストパケットに適用されます。マルチキャストパケットの場合も、同じハッシュアルゴリズムを使ってDAがハッシュされ、その結果が'0'の場合は外側リングが選択され、それ以外の場合は内側リングが選択されます。あるいはスタティックARPを使用して、動的リング選択プロセスを無効にすることができます。これは、特定のリングだけでトラフィックを送信したい場合に利用します。


注意:SRPの当初の実装では、シングルサブネットアプローチを使用します。このアプローチでは、外側リングと内側リングの両方が同じIPサブネットになります。シングルサブネットアプローチでは、リングラップ後のリング選択が迅速に再最適化されてルートフラップを回避します。リングラップは下位層のプロシージャによって処理されるため、レイヤ3ルーティングには透過的になります。

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5. SRPフェアネスアルゴリズム(SRP-fa)



 トークンリングやFDDIといった既存のデータリング技術とは異なり、SRPはリングアクセスを制御するためにトークンを使用しません。代わりに、リング上の各ノードは、SRPフェアネスアルゴリズム(SRP-fa)という分散型伝送制御アルゴリズムを実行します。SRP-faは、SRPリング上で以下の目標を達成するための基本メカニズムです。

5.1 SRP-faの概要



 リング上の各ノードは、リングに送信したり転送するパケット数を監視しています。この監視と評価は、パケットが送信/転送されるたびにパケット長をカウンタに追加し、一定間隔で特定の割合をカウンタから減らすことで行われます。

 ノードに輻輳が発生すると、その送信使用率カウンタ(my_usage)の値を、逆のリングを通してアップストリームノードにアドバタイズします。フィードバックを安定させるために、使用率カウンタにはローパスフィルタ機能が適用されます。使用率情報を受信すると、アドバタイズされた使用率値を超えないように、アップストリームノードで送信レートが調整されます。つまり、リングにパケットを送信する速度を減速します。アドバタイズされた使用率値を受信したノードでも輻輳が発生している場合は、その送信使用率の最小値とアドバタイズされた使用率を伝達します。輻輳は、低優先度の転送バッファの深さが輻輳しきい値に達すると、検出されます。

 SRP-faは、低優先度パケットにのみ適用されます。高優先度パケットはSRP-fa規則に従わず、十分な転送バッファスペースがある限り、いつでも送信できます。高優先度パケットは、リングに供給される前に、CAR(Committed Access Rate)のような機能を使ってレートを制限することができます。

 SRPバージョン2.0では、使用率情報は別のパケットとして送信されます。このパケットのフォーマットは、図16に示すとおりです。

図16:SRP使用率パケットのフォーマット
図16:SRP使用率パケットのフォーマット
 

5.2 SRPオペレーション



 各ノードには、パケット転送の決定を支援するために、2つのカウンタと2つのしきい値変数があります。

 2つのしきい値変数は以下のとおりです。

 my_usageは、そのノードからリングに供給された低優先度パケットの量をカウントします。allow_usageは、ノードの現在の最大送信使用率を制御するしきい値として機能します。MAX_USAGEはノードごとのパラメータで、SRP-faによって伝達されるリング帯域幅の可用性には関係なく、ローカルで送信する低優先度パケットの上限を設定します。allow_usageは、MAX_USAGEから減っていきます。fwd_rateは、リングにフォワーディングされるパケットの量をカウントします。輻輳が発生していない場合は、すべてのノードは定期的にallow_usageを更新します。

 ノードが輻輳を検出すると、ローパスフィルタ済みのmy_usage値(lp_my_usage)のアドバタイズを開始します。ヌル以外の使用率値(received_usage)を受信したノードは、アドバタイズされる値にそのallow_usageを設定します。

 輻輳の発生していないノードがヌル以外のreceived_usageを受信すると、通常はアップストリームの近隣ノードにreceived_usageを伝達します。それ以外の場合は、ヌル使用率値(すべて1)を送信します。例外は、ローカルの再利用の機会が検出された場合です。ローパスフィルタ済みのfwd_rate(lp_fwd_rate)をallow_usageと比較することで、さらにスペースを再利用すること(spatial reuse)が可能になります。lp_fwd_rateがallow_usage未満の場合は、アップストリームの近隣ノードにヌル値が伝達されます。

 輻輳の発生しているノードは、lp_my_usageとreceived_usageの小さいほうの値を伝達します。

 コンバージェンスは、リング上のノード数とノード間の距離に大きく左右されます。シミュレーションによれば、数百マイルのリングで100 msec以内でコンバージェンスが行われます。

my_usage

 my_usageは、ノードによって供給された低優先度パケットを測定します。このカウンタは、ノードから発信された低優先度パケットがリングに挿入されるたびに増加します。my_usageは高優先度パケットについての測定はしません。

my_usage = my_usage + PAK_LEN

 PAK_LENは、SRPヘッダ、DA、SA、プロトコルタイプ、ペイロード、およびCRCを含むパケットのデータバイト数です。

 高優先度の送信トラフィックは、SRP-faによってレートが制御されません。高優先度の送信トラフィックのレートは、CAR(Committed Access Rate)のようなレイヤ3機能を使用して制御してください。フェアに割り当てられた割合以上の帯域幅を使用しているノードのレートは、allow_usageパラメータによって制限されます。超過した分のパケットは、my_usageが減少するまで(後述)、またはフェアネスアルゴリズムによってallow_usageしきい値が更新されるまで、送信キューにバッファリングされます。

 my_usageは減少間隔(DECAY_INTERVAL)ごとに定期的に減少します。これによってパケット送信のクレジットを時間をかけて蓄積し、リング上の最近の使用状況を反映させることができます。

my_usage =

 AGECOEFFはエージング係数です。

FWD_RATE

 fwd_rateは、ノードによって転送された低優先度の通過パケット(つまり、アップストリームまたはダウンストリームのノードから発信されたトラフィック)を測定します。fwd_rateカウンタは、低優先度の通過パケットがリングに挿入されるたびに増加します。fwd_rateは高優先度の通過パケットは測定しません。

fwd_rate = fwd_rate + PAK_LEN

 過度の通過トラフィックは、ノードによってレート制限されません。その代わりに、そのトラフィックの送信元に対してフェアネスメッセージを生成します。fwd_rateは減少間隔(DECAY_INTERVAL)ごとに定期的に減少します。これによってパケット転送のクレジットを時間をかけて蓄積し、リング上の最近の使用状況を反映させることができます。

fwd_rate =

allow_usage

 allow_usageは、フェアネスアルゴリズムによって決定される、ノードがリングに送信できるローカル送信パケットの最大数です。allow_usageしきい値は、減少間隔(DECAY_INTERVAL)ごとに定期的に更新されて、現在のリングトラフィック状況を反映します。allow_usageの値の決定方法については、この後でさらに説明します。

アルゴリズム

 ここでは、faについてさらに詳しく説明します。

表6:変数
tb_low_depth 低優先度の転送バッファの深さ
my_usage ホストによって送信されるバイト数のカウンタ
lp_my_usage ローパスフィルタ済みのmy_usage
my_usage_ok ホストがパケットの送信を許可されていることを示すフラグ
fwd_rate MACによってフォワーディングされたバイト数のカウンタ
lp_fwd_rate ローパスフィルタ済みのfwd_rate
congested 転送バッファが輻輳しきい値を超えているためにトラフィックを送信できないノード
received_usage 受信された使用率情報

表7:定数
MAX_USAGE このノードで許可される最大使用率を示す設定可能な値
DECAY_INTERVAL OC-12c/STM-4の場合は8000バイト、OC-48c/STM-16の場合は32,000バイト
AGECOEFF = 4 my_usageとfwd_rateのエージング係数
LP_MY_USAGE = 512 my_usageのローパスフィルタ
LP_FWD_RATE = 64 fwd_rateのローパスフィルタ
LP_ALLOW = 64 allow_usageの自動インクリメントのためのローパスフィルタ
NULL_RECEIVED_USAGE すべて1のreceived_usage
TB_LOW_THRESHOLD 低優先度のホストパケットは全く送信できない転送バッファの深さ
MAX_LINE_RATE AGECOEFF×DECAY_INTERVAL:OC-12c/STM-4の場合は32,000、OC-48c/STM-16の場合は128,000
MY_SA ノードのMACアドレス

 

 使用率パケットが受信されると、以下が実行されます。

 以下はクロックサイクルごとに更新されます。

 以下はDECAY_INTERVALごとに計算されます。

 SRP-faプロシージャは、以下のように要約できます。

 SRP-faの簡単な例を図17に示します。

図17:SRP-faの例
図17:SRP-faの例
 

 リング上には5つのノードがあります。Node_2、Node_3、およびNode_4は、外側リングを通してNode_1にトラフィックを送信します。Node_4が1秒目に送信を開始し、Node_3が2秒目、Node_2が3秒目に送信を開始します。各ノードはフルラインレートで送信します。

 図18は、Mil3, Inc.(http://www.mil3.com)によってOPNET Modeller上で実行されたSRP-faのシミュレーション結果を示しています。この例では、ゼロ~1秒以内に送信しているノードはありません。1秒目に、Node_4がローカル供給パケットのリングへの送信を開始します。送信しているノードはこのノードのみであるため、フルラインレートで送信することができます。2秒目に、Node_3が自身のローカル送信パケットを送信したいとしています。Node_3は、送信する前に、Node_4にフェアネスメッセージを送信してそのトラフィックを減速させる必要があります。Node_4がそのトラフィックを減速すると、Node_3は送信を開始できます。帯域幅がNode_3とNode_4によって共有されていることに注意してください。3秒目に、Node_2が自身のローカル供給パケットを送信したいとしています。ここでも、Node_2は送信する前にNode_3とNode_4にフェアネスメッセージを送信して、それらのトラフィックを減速するように依頼する必要があります。Node_3とNode_4がそのトラフィックを減速すると、Node_2は送信を開始できます。これで、帯域幅はNode_2、Node_3、およびNode_4によって共有されます。

図18:SRP-faシミュレーション結果
図18:SRP-faシミュレーション結果
 

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6. インテリジェント保護スイッチング(IPS)



 インテリジェント保護スイッチング(IPS)は、強力な冗長機能を備えたSRPリングに提供します。この機能によってSRPリングは、障害が発生した部分のトラフィックをラッピングすることで、機器やノードの障害から自動的に回復することができます。IPSはSONET/SDHリングのAPS(Automatic Protection Switching)に類似した機能を提供しますが、以下のような重要な拡張機能を備えています。

6.1 保護スイッチングとトラフィックラッピング



 IPSによってリングは、障害を回避してトラフィックをラッピングすることで、機器やノード障害から自動的かつ迅速に回復することができます。障害に隣接するノードはリングをラップしてリングを障害から復旧します。それから、中間ノードはデータおよびIPS制御パケットを目的の宛先に通過させます。図19に例を示します。

図19:IPSの例
図19:IPSの例

 ノードAとBからのパケットは、(1)と示された1ホップのパスを使って伝送されます。次に、ノードAとBの間のファイバが切断されたと仮定します。この場合は、どちらのノードも後述のIPSプロシージャを使ってリングをラップします。そしてノードAとBからのパケットは、右側の図のマルチホップパスを使用します。パケットを受信した各中間ノードは、そのパケットヘッダが逆のリングのリングIDを持っていることから、転送バッファを経由してパケットを転送します。ノードBによってパケットがラップされて外側リングに戻されると、通常のプロシージャにしたがって宛先で排除されます。

 ノードの内部的なリングラップ処理を図20に示します。

図20:リングラップ時のパケットフロー
図20:リングラップ時のパケットフロー

 IPSは、K1/K2オーバーヘッドバイトを利用するSONET/SDHリングとは異なり、保護スイッチングシグナリングに明示的なSRP制御パケットを使用します。IPS制御パケットのフォーマットを図21に示します。

図21:IPSパケットフォーマット
図21:IPSパケットフォーマット

 表8はIPSバイトフォーマットを示しています。

表8:IPSバイトフォーマット
ビット 説明
0 - 3 IPSリクエストタイプ
1111 - 保護ロックアウト(LO)[未サポート]
1101 - 強制スイッチ(FS)
1011 - 信号エラー(SF)
1000 - 信号低下(SD)
0110 - 手動スイッチ(MS)
0101 - 復旧待機(WTR)
0000 - リクエストなし(0)
4 パスインジケータ
0 - ショート(S)
1 - ロング(L)
5 - 7 ステータスコード
010 - 保護スイッチ完了[トラフィックラップ済み(W)]
000 - アイドル(0)

 

6.2 IPSリクエストタイプ



 IPSリクエストは、(トリガするイベントをノードが検出した後で)自動的に開始することも、手操作で(たとえば、ネットワークオペレーターがCLIコマンドを入力して)開始することもできます。それぞれのリクエストタイプについて以下に説明します。

6.3 パスインジケータ



 パスインジケータフィールドで指定されるIPSメッセージには、以下の2種類があります。

 IPSパケット(ロングおよびショートパスメッセージの両方)がラップされることはありません。

6.4 SONET/SDHオーバーヘッドバイトの取扱い上の注意



 IPSリクエストはネットワークイベントの結果として発生します。これらのネットワークイベントの一部は、以下のようにSONET/SDHオーバーヘッドバイトを監視することで検出されます。

6.5 IPSイベント階層



 IPSは複数の同時イベントを処理するために(たとえば、SDに応じてすでにリングがラップされている場合のSFの処理など)、保護スイッチングイベント階層(SONET APS階層をモデルとする)を提供します。以下に階層を示します。

  1. FS(最高優先度)
  2. SF
  3. SD
  4. MS
  5. WTR
  6. リクエストなし(アイドル)(最低優先度)

 IPS保護リクエストの階層は以下のとおりです。

  1. リクエスト >= SF かつ < FS は共存できます。
  2. リクエスト < SF は他のリクエストと共存できません。
  3. ノードは、最高優先度のショートパスリクエストと自己検出されたリクエスト(障害)を常に優遇します。
  4. < SFのタイプのリクエストが複数ある場合は、ロングパスシグナリングを完了するための最初のリクエストが優先されます。
  5. 外側リングと内側リングの両方に< SFのタイプの2つの等しいリクエストがある場合は、ノードは外側リング上のリクエストを選択します。

6.6 IPSの状態



 IPSメッセージは、隣接ノード間でポイントツーポイントのメッセージとして送信され、内側リングと外側リングの両方で送信されます。各ノードはIPSメッセージ処理状態マシンおよび状態遷移に対応する一連の規則を実装しています。状態は以下のように定義されます。

 メッセージ通過と状態遷移の詳細を、図22に示します。ここでは、ノード間のIPSメッセージを示すために、メッセージフォーマットに対して4つの要素から成る簡略表記 {R, S, W, P}(R = リクエスト、S = 送信元、W = ラップ状態、P = パスインジケータ)が使用されています。

図22:IPSの状態
図22:IPSの状態

6.7 IPSプロシージャ



 以下に、IPSの重要なコンセプトについて簡単に説明します。

6.8 IPS状態遷移の規則



 図22に示したIPSの状態遷移について、それぞれの状態におけるイベントとメッセージの処理プロシージャについてまとめます。

6.9 IPSの例



 IPSメッセージと状態遷移をより分かりやすく説明するために、以下に詳細な障害シナリオをいくつか示します。これらの例で使用されているメッセージフォーマットは、前述した {R, S, W, P} の形式の4つの要素から成るフォーマットで、R - リクエストタイプ、S - 送信元アドレス、W - ラップ状態、P - パスインジケータを表します。

正常な稼動状況

 図23に示されているように、最初は全ノードがアイドル状態になっています。アイドルIPSメッセージ {0, Self, 0, S)が両方のリングで送信されます。

図23:正常な稼動状況
図23:正常な稼動状況

単一のファイバ障害

 単一のファイバ障害が発生した場合は、以下の処理が行われます。

図24:単一のファイバ障害
図24:単一のファイバ障害

二重のファイバ障害

 二重のファイバ障害が発生した場合は、以下の処理が行われます(図25参照)。

図25:二重のファイバ障害
図25:二重のファイバ障害

複数のファイバ障害

 二重のファイバ障害が発生した場合は、以下の処理が行われます(図26参照)。

図26:複数のファイバ障害
図26:複数のファイバ障害

信号低下とファイバ障害

 図27は二重のファイバ障害の2番目の例を示します。これについて以下に説明します。

図27:信号低下とファイバ障害
図27:信号低下とファイバ障害

障害の解除

 ラップ済み状況の原因となった障害が解除されると、以下の処理が実行されます(図28を参照)。

図28:障害解除
図28:障害解除

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7. パススルー

 ここで説明されているパススルーモードは、IPSパススルー状態とは異なります。

 ソフトウェア関連の障害などが発生すると、ルータはレイヤ3フォワーディング機能が一時的に制限された状態になることがあります。しかし電源はオン状態であるため、MACレイヤはファイバリングにパケットを転送することになります。このような場合は、ノード障害によるリングラップやリングパーティショニングを回避するための処置が必要です。SRPインタフェースは、自動プロシージャ(たとえば、ウォッチドッグタイマの満了)またはCLIコマンドによって、パススルーモードに入ります。パススルーモードでは、以下のようになります。

 その代わりに、下記の図29に示されているように、ノードに入るすべてのパケットは、単純にMACレイヤを通して対応する送信ファイバに転送されて、リング上で継続して循環します。

図29:SRPパススルーモード
図29:SRPパススルーモード

 パススルーモードを終了するには、まず、SRP MACがパススルーモードに入る原因となった状況が解除される必要があります。

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8. ネットワーク管理



 SRP製品はRFC 2558で定義されているSONET MIBを実装しており、現在のアラームステータスとパフォーマンス監視情報、および履歴パフォーマンス監視情報を提供します。現在および直前の24時間について15分間隔で、以下のような情報が収集されて提供されます。

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9. クロックと同期



 SRPインタフェースは、Cisco PoS/SDH(PoS)インタフェースと同様に、以下の2種類のモードで動作できます。

 これによってユーザーは、以下に接続することが可能になります。

 クロック要件には、いろいろな種類があります。それぞれの場合について、ここで解説していきます。SRPはリングトポロジですが、クロックについてはポイントツーポイントで実行され、リング全体に対しては実行されないことに注意してください。

 SRPインタフェースがADMに接続されている場合は、クロックはADMから供給されます。クロックは受信側で回復されて、送信側にループされます。そのため、ループ型時間供給と呼ばれます。図30はADMに接続されたSRPインタフェースを示しています。内側の矢印(緑、または白黒モードでは薄く表示)はクロックパスを、外側の矢印(青、または白黒モードでは濃く表示)はデータパスを示します。

図30:ADMへのSRP接続
図30:ADMへのSRP接続

 図31に示されているように、SRPインタフェースがWDMシステムまたは直接ファイバに接続されている場合は、WDMシステムやファイバからはクロックが提供されないため、SRPインタフェースがクロックを提供する必要があります。

図31:SRPのWDM接続または直接ファイバ接続
図31:SRPのWDM接続または直接ファイバ接続

 それぞれのSRPインタフェースには、±20ppmの精度の局部発振器が装備されています。この発振器は、送信側で必要とされるクロックの生成に使用されます。これによって中央クロック供給元の必要がなくなります。ノード間のクロック周波数の差異は、各ノードの出力に少量のアイドル帯域幅を挿入し、ノードが遅くなった場合は挿入するアイドル帯域幅の量を減らすことで対処します。

 PoSの場合と同様に、SRPはBITS(Building Integrated Timing Supply)インタフェースはサポートしません。

 図32に示されているような混在接続もサポートされています。

図32:ADM、WDMシステム、および直接ファイバへのSRP接続
図32:ADM、WDMシステム、および直接ファイバへのSRP接続

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10. SRP製品




10.1 Cisco 12000インターネットルータのラインカード



 Cisoc 12000 インターネットルータのSRPラインカードは、シングルSRPリング密度、つまりラインカードあたり1つのSRPリングを提供します。それぞれのリングは2つのファイバから構成され、各ファイバはOC-12c/STM-4で動作します。GSRラインカードはTTM-48エンジンを使用します。SRPラインカードの動作には、フルファブリックが必要です。SRPラインカードのオプティカルオプションを表9に示します。

表9:SRPラインカードのオプティカルオプション
  コネクタタイプ 動作波長 送信パワー 受信パワー 合計リンクバジェット 最小到達距離
マルチモード SC 1310 nm -14 dBm(最大)
-20 dBm(最小)
-14 dBm(最大)
-26 dBm(最小)
6 dBm 2 Km
シングルモード、IR SC 1310 nm -8 dBm(最大)
-15 dBm(最小)
-8 dBm(最大)
-26 dBm(最小)
13 dBm 15 Km
シングルモード、LR SC 1310 nm +2 dBm(最大)
-3 dBm(最小)
-8 dBm(最大)
-26 dBm(最小)
25 dBm 40 Km
シングルモード、LR SC 1550 nm +2 dBm(最大)
-3 dBm(最小)
-31 dBm(最大)
-28 dBm(最小)
25 dBm 25 dBm

 

 SRP MACは、実際にはインタフェースあたり2つのSRP MACチップから構成されています。図33に示されているように、それぞれのMACには、転送バッファ、CAM、およびSkystoneフレーマが関連付けられています。

図33:SRPラインカード
図33:SRPラインカード

 SRP MACは現在、高性能ハードウェアソリューションと柔軟なソフトウェアアップグレード/変更機能を結合するために(たとえば、MACレイヤプロトコルの変更やSRP-fa、IPSのアルゴリズムの変更を可能にするために)、FPGA上に実装されています。MACはソフトウェアダウンロードによってプログラムすることが可能です。

 SRPラインカードのフロントパネルには、以下のような情報提供およびデバッギングのための7つのLEDが装備されています。

10.2 Cisco 7500ポートアダプタ



 SRPポートアダプタは、VIP2-50をベースとするデュアルワイドのシングルリングソリューションです。つまり、1つの2ファイバリングで、それぞれのファイバがOC-12c/STM-4で動作します(図34参照)。

図34:SRPポートアダプタ
図34:SRPポートアダプタ

送信側

 送信側PCIチップの主要な機能は、発信パケットのインテリジェントなキューイングとスケジューリングです。SRPフェアネスアルゴリズムによってローカル送信トラフィックが許可されると、リングへのパケットのバーストは、VIP2-50のトラフィック処理キャパシティに制限されません。これは、2層型のキューイング構造を提供しているためです。パケットはVIPキューから取り出され、Tx PCIキューは常にフル状態になります。したがって、トラフィックはリング上にバーストすることができ、パケット優先度は、リングの帯域容量に見合ったレートでTx PCIキューからDRRスケジューリングによって管理されます。送信側のパケットフローを図35に示します。

図35:Tx側
図35:Tx側

受信側

 受信側PCIチップの主要な機能は、SRPリング上のルータから到着したバーストトラフィックをインテリジェントに処理すること(最高2×622 Mbps)、そしてVIP 2-50のトラフィック処理機能です(約200 Mbps)。そのために、外側リング用の3つのキューと内側リング用の3つのキューに分割された受信側バッファ、WREDベースのエンキュー決定によって実施されるパケット優先度、およびDRRによるスケジューリングが提供されています。受信側のパケットフローを図36に示します。

図36:Rx側
図36:Rx側


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更新日:2001年5月2日