ダウンロードホワイトペーパーモビリティ サービス アーキテクチャの設計はじめに真のビジネス モビリティを提供するために、IT 部門は、ネットワークの統合、新たに登場するモバイル デバイスの管理、およびモバイル アプリケーション開発の実現に重点を置いた実践的なアプローチを採用する必要があります。また、各種の新しいモビリティ アプリケーションをサポートするためには、既存のワイヤレス ネットワークを進化させなければなりません。さらに、これらのアプリケーションは、複数のネットワークにまたがって導入できること、あらゆる規模の企業に対応できることが要求されます。 このような移行を実現するには、アプリケーション レイヤをネットワーク レイヤから切り離すことでワイヤレス LAN をモビリティ ネットワークとして扱うことができるようにします。これにより、Wi-Fi、イーサネット、携帯電話、WiMAX、RFID などから構成されるネットワークをまたがったモバイル アプリケーションの提供が可能になります。モビリティ アーキテクチャが進化を続ける中で、Cisco® 3300 シリーズ モビリティ サービス エンジン(MSE)は重要な役割を担っています。モビリティ サービス エンジンに組み込まれているオープン API により、幅広いエコシステム パートナーが、ネットワーク インテリジェンスにアクセスして業種別モビリティ ソリューションを開発できます。 ワイヤレス アーキテクチャの進化初期のエンタープライズ ワイヤレス ネットワークの開発では、主に 802.11 テクノロジーを使用して、企業ネットワークへの基本的な接続をユーザに提供していました。図 1 に示すように、アクセス ポイント(AP)はスタンドアロン システムであり、ワイヤレス クライアントと企業のバックボーン ネットワークとの間のゲートウェイとして機能していました。アクセス ポイントとアクセス ポイントの間では通信や調整は行われず、各アクセス ポイントは独立したシステムとして管理されていました。ネットワークの規模が拡大するにつれて、この点が、ネットワークを管理するうえで大きな問題となり、ワイヤレス テクノロジーの採用に制約を課していました。ワイヤレス クライアントの場合、アクセス ポイントとのそれぞれのやりとりは独立したシステムとして扱われるため、コンテキストを共有できませんでした。クライアント ローミングなどの簡単な処理の実行が困難であることもよくありました。ユーザがアクセス ポイントをローミングする場合、企業のバックボーン ネットワークへの接続を再確立するために、非効率的でコストのかかる通信が繰り返されました。
図 1. スタンドアロン ワイヤレス システム エンタープライズ ワイヤレス ネットワーク開発の次の段階では、図 2 に示すように、ワイヤレス コントローラを組み込んだ 802.11 の Unified Wireless Network が導入されました。ユニファイド ワイヤレス ネットワークにより、スタンドアロン ワイヤレス システムに存在したいくつかの大きな問題が解決されました。まず、ワイヤレス コントローラに接続されているすべてのアクセス ポイントにおいて管理プレーンとコントロール プレーンの集約が実現しました。これにより、企業ネットワーク内において多数のアクセス ポイントの配備と管理が容易になりました。これまでとは違い、アクセス ポイントを協調的に管理できるようになったため、オフィス、病院、生産現場などで動的なワイヤレス環境によって引き起こされる問題を解決するのに役立ちました。さらに、ワイヤレス コントローラにより、クライアントのセキュリティ コンテキストを保存できるようになりました。クライアントがアクセス ポイント間をローミングしたとき、コントローラによってセキュリティ コンテキストが保持されるため、時間のかかるクライアント再認証処理が必要ありません。このため、クライアントとワイヤレス ネットワークの両方で負荷が軽減され、両方のシステムのパフォーマンスおよびスケーラビリティが改善されました。
図 2. Unified Wireless Network システム エンタープライズ ネットワーク開発の最も新しい段階は、Unified Wireless Network アーキテクチャ上で展開されます。管理プレーンとコントロール プレーンの技術が統合され、ネットワーク エッジに位置する、WiMAX、アクティブ RFID、パッシブ RFID、イーサネットなどの一連の新しいネットワーク アクセス技術に適用されます(図 3 を参照)。Unified Wireless Network アーキテクチャは、拡大して複数のネットワーク アクセス手段を取り入れることができるため、すべてのネットワークに対して総合的にサービスを提供することが重要になってきています。ネットワークおよび管理プレーンとコントロール プレーンが統合されると、各ネットワークの性質が異なるために従来は作成が困難とされていた新しいモビリティ サービスの提供が可能になります。
図 3. モビリティ サービス アーキテクチャ 以降では、モビリティ サービス アーキテクチャの詳細と、その最も重要な要素について説明します。 モビリティ サービス アーキテクチャモビリティ サービスとは、ネットワーク内のさまざまな場所からのインテリジェンスを統合する一連の付加価値ネットワーク サービスであり、ビジネス モビリティ アプリケーションの提供を可能にし、また最適化します。従来、このようなインテリジェンスはネットワークのあらゆる場所に拡散し、サービスのプロビジョニングと管理を複雑にしてきました。サービス、コントロール プレーン、データ プレーンの組み合わせによっても複雑さは増し、ネットワークでは安定したパフォーマンスを維持しつつ新しいサービスに対応することが難しくなります。モビリティをネイティブにサポートするネットワークの設計を企業が開始するにあたって、サービス、コントロール プレーン、およびデータ プレーンを統合することは、モバイル アプリケーションをサポートするネットワークの柔軟性と規模を狭めることになります。 この解決策は、中央集中型のサービス アーキテクチャに求めることができます。最適なモバイル アプリケーション パフォーマンスのためのインテリジェンスをネットワークが提供するためには、モビリティ サービスが不可欠です。しかし、モビリティ サービスをサービス エンジンで集中管理するためには、コントロール プレーンやデータ プレーンとは切り離されている必要があります。サービスを集中管理すると、スケーラビリティ、プロビジョニングと管理の向上などの点でメリットがあります。また、集中型サービス アーキテクチャでは、サービスとネットワークの間の直接的なつながりがなくなり、Wi-Fi、イーサネット、WiMAX、携帯電話などのさまざまなネットワークにまたがってサービスを拡張できます。 モビリティ ネットワークで多種類のアプリケーションをサポートすることへの要求はますます高まっています。モビリティ サービスの真の価値は、ネットワークおよび関連アプリケーションからのリアルタイムの情報を提供し、アプリケーションのパフォーマンスを高める能力にあります。ネットワーク インテリジェンスとアプリケーション インテリジェンスがこうして相互作用することで、提供可能なモビリティ ソリューションの種類が充実および拡大し、相乗効果となります。ただし、サービス デリバリにとって重要なポイントは、ネットワーク インテリジェンスおよびアプリケーション インテリジェンスにアクセスするための標準的なインターフェイスをサードパーティ アプリケーションが確実に実装することです。Cisco モビリティ サービス エンジンは、Simple Object Access Protocol/Extensible Markup Language(SOAP/XML)をベースとしたオープン API をサポートします。 これにより、モビリティ アプリケーションのエコシステム パートナーに対して、モビリティ サービスへのノースバウンド アクセスを提供します。サービス インテリジェンスが制御ネットワークからモビリティ サービス エンジン内に集中化されることで、IT 部門は、基盤となる実稼働ネットワークの中断を心配せずに API へのアクセスを開放できます。 Cisco モビリティ サービス エンジンでは、1 つ以上のモバイル サービス ソフトウェア インスタンスを実行できます。図 4 に、モビリティ サービス エンジン アーキテクチャの概要を示します。
図 4. Cisco モビリティ サービス アーキテクチャの概要 モビリティ サービスは、MSE 上で実行されるソフトウェア インスタンスであり、次の特徴があります。
従来の WLAN アーキテクチャの限界従来のワイヤレス LAN はワイヤレス データの配信を最適に行うように設計されています。WLAN コントローラを使用するとスケーラブルで高パフォーマンスなワイヤレス接続を確保できます。しかし、WLAN コントローラなどの従来の WLAN 機器では、新たに登場する幅広いモビリティ アプリケーションに対応するためにビジネスが必要とするサービスを十分にサポートすることができません。WLAN アーキテクチャは、広範囲のワイヤレス接続を安定して供給するという点では優れており、これは特に電子メール、Web 閲覧、ファイル転送などのモバイル データ アプリケーションにとっては重要なことです。このアーキテクチャの主な設計意図は、モバイル デバイスやワイヤレス アクセス ポイントなどの要素を展開し管理する際の運用面での影響を抑えつつ、ワイヤレス パケットのスループットを最適化することにあります。 従来の WLAN アーキテクチャの中心には WLAN コントローラがあり、このコントローラによって、すべてのネットワーク要素に対するリアルタイムの管理とネットワークの最適化が実現されます。WLAN コントローラの主要な機能は、ネットワークの運用状況を中央で管理しポリシーを適用することであり、サービス デリバリ プラットフォームとして最適に機能するようには設計されていません。従来のコントローラは高パフォーマンスのデータ パスを提供するように機能し、制御処理用に用意されている CPU は一定の水準を満たすのものにすぎません。メモリと保存容量が大きいものはほとんどなく、オペレーティング システムも通常は、データ パス制御用に最適化されたものです。 加えて、従来の WLAN アーキテクチャでは、ビジネスが必要とするモビリティ アプリケーションのサポートを提供することができません。まず第一に、WLAN を別の用途に使用しようとしても、他のネットワーク アクセス テクノロジーを組み込むことはできず、対象は Wi-Fi のみに限られます。これらのネットワークは閉じられたプラットフォームであり、サードパーティのアプリケーション開発をサポートする標準のインターフェイスはありません。したがって、新しいアプリケーションやサービスをネットワークに組み込むにはかなりの開発工数が必要になります。第二に、WLAN のみのネットワークから成るアーキテクチャでは、複数のネットワーク環境を集中管理することも、多種多様なネットワークを対象としたスケーラブルなサービスやアプリケーションを提供することもできません。 アプリケーションとサービスをコントロール プレーンから切り離し、モビリティ ネットワークに進化させることで初めて、IT 部門は必要とされるサービスを本当に提供することができます。真のモビリティ ネットワークは中央集中型のサービス デリバリを実現するものです。ここではサービスを使用可能にするために、モジュールによるアプローチをとることができます。この方法により、サービスの対象をネットワーク内の複数の場所、さらには多種多様なネットワークに広げることができます。 Cisco モビリティ サービス エンジンは、従来のワイヤレス ネットワークの拡張機能として、WLAN コントローラと直接統合されます。この環境では、コントローラのリソースをすべて安定的な信頼性の高いパケット配信に使用できると同時に、モビリティ サービス エンジンによってサービスを使用可能にし、対象範囲を拡大できます。したがって、ビジネスはアプリケーション要件の変化により迅速に対応できるようになります。 まとめると、モビリティ サービス アーキテクチャが従来の WLAN アーキテクチャより優れている点は、次の特徴にあります。
モビリティ サービス ソフトウェアCisco モビリティ サービス エンジンは、ソフトウェア スイートとして読み込まれる各種サービスをサポートするよう設計されたプラットフォームです。ここでは、主なモビリティ サービス ソフトウェアの一部について説明します。 Context-Aware ソフトウェアContext-Aware ソフトウェアは、場所、温度、可用性、使用アプリケーションといった詳細なコンテキスト情報を取得し、ビジネス プロセスに統合します。機能的には、Context-Aware ソフトウェアは、複数の種類のネットワーク アクセスを扱うモビリティ サービスの典型的な例です。 コンテキスト位置情報を使用するアプリケーションとサーバの場合、主に重要なのはクライアント側の情報です。その情報がどのように特定されたか、基になるネットワークにクライアントがどのように接続されているかは関係ありません。Context-Aware アプリケーションおよびサービスでは、モビリティ サービス API 経由でコンテキスト情報(ネットワーク クライアントの位置情報など)から成る単一の統合ビューが提供されます。Context-Aware Service では、コンテキスト情報を照会するだけでなく、移動、包含、欠落など、コンテキストに即した詳細なイベント トリガに基づいて非同期イベントを登録できます。コンテキスト アウェア情報を使用するアプリケーションやサーバは、さまざまなテクノロジーに分散している複数の異なる API に書き込む必要がなくなります。Cisco モビリティ サービス エンジンで実行されているコンテキスト アウェア サービスによって、Context-Aware アプリケーションおよびサービスの構築作業が簡単になりました。 Cisco モビリティ サービス エンジン上でサービスを実行すると、個々のスイッチやワイヤレス コントローラ上で実行するよりも、よりスケーラブルなネットワーク設計が可能になります。この理由は、ワイヤレス アクセス ポイントから成るネットワークの場所情報の特定方法にあります。典型的なエンタープライズのワイヤレス展開では、「ワンフロア」などの物理的な領域に多くのアクセス ポイントが展開されています。図 5 にあるように、冗長性とスケーラビリティの目的で、これらのアクセス ポイントは、単一のワイヤレス コントローラではなく、複数のワイヤレス コントローラに接続されています。 ![]() 図 5. ロケーション サービス用のワイヤレス コントローラとアクセス ポイントの展開 図 5 に示すノート型 PC の場所を計算するには、Context-Aware ソフトウェアが実行されている MSE では、1 つのワイヤレス コントローラと通信するアクセス ポイント群だけを対象にするのでなく、クライアント周囲に位置する物理的な環境のアクセス ポイントと通信するすべてのコントローラ(1 〜 4)から情報を収集する必要があります。このため、Context-Aware ソフトウェアは、複数のワイヤレス コントローラからすべてのアクセス ポイントの測定を集約するアプリケーションまたはサーバで実行する必要があります。 さらに、コンテキスト コンシューマがコンテキスト アウェア情報を利用できるようにするため、場所の計算は高速(数秒)で実行する必要があります。このタスクのために調整された専用のプラットフォームがあれば、コンテキスト情報を使用する高性能アプリケーションのニーズを満たす、よりスケーラブルなサービスを実現できます。 Adaptive Wireless IPS サービスAdaptive Wireless Intrusion Protection System(IPS)サービスも、セキュリティ インテリジェンスを MSE で集中管理することのメリットを持つモビリティ サービスの例です。Adaptive Wireless IPS サービスは、各ワイヤレス コントローラから収集した RF 情報の照合と分析を行い、IPS サービスが不正デバイスや不正アクセス ポイントといった異常を検出できるようにします。不正なアクセス ポイントは、セキュリティ違反を招くおそれがあります。図 6 に、フロアのそれぞれの部分でアクセス ポイントが RF 環境を監視している様子を示します。各アクセス ポイントは別々のワイヤレス コントローラに接続されており、これらのワイヤレス コントローラはワイヤレス IPS サービスに接続されています。 ![]() 図 6. ワイヤレス コントローラによる不正なアクセス ポイントの検出 各ワイヤレス コントローラには部分的なネットワーク ビューしかないため、Adaptive Wireless IPS サービスが実行されている MSE は、セキュリティに関するすべての問題を検出するために必要な分析を提供できる場所に配置します。さらに、侵入防止機能を集中管理することにより、Wi-Fi、イーサネット、WiMAX などの複数のネットワーク アクセス テクノロジーにまたがる拡張性が提供されます。 将来のサービスモビリティ サービス アーキテクチャは、新しいモビリティ サービスを製品ラインに迅速かつ簡単に追加できるように設計されています。MSE テクノロジーに投資するお客様にとって、新しい要件および新しい機能に簡単に適応できるアーキテクチャを採用することは非常に重要です。お客様の側およびお客様のデバイスのモビリティが高まるにつれて、MSE アーキテクチャで支えられたアプリケーションおよびネットワークのモビリティ対応が強化されます。クライアント プロビジョニング、モバイル インテリジェント ローミングなどの新しいモビリティ サービスが利用可能になる予定であり、MSE 製品ラインがさらに拡充されます。 モビリティ サービス インターフェイスモビリティ サービス アーキテクチャの重要な設計項目の 1 つとして、サービス コンポーネント間に安全でスケーラブルなインターフェイスを導入していることが挙げられます。 モビリティ サービス アーキテクチャのインターフェイスは 3 つのカテゴリに分けられ、それぞれがネットワークの特定の領域またはレイヤに対応します。 各カテゴリにおいて一貫した設計を提供することが、設計上の重要な目標です。インターフェイスの各カテゴリでは、次のガイドラインに従っています。 共通の認証と承認原則
メリット
効率性の向上原則
メリット
共通オブジェクト モデル原則
メリット
共通のセマンティクスと動作原則
メリット
共通のシンタックスとスタイル原則
メリット
CAPWAP: ワイヤレス コントローラからアクセス テクノロジー間このインターフェイス カテゴリでは、ワイヤレス コントローラと一連のアクセス テクノロジーとの間の管理プレーン、コントロール プレーン、データ プレーンの通信を提供します。アクセス テクノロジーの例としては、エンドポイント デバイスとのインターフェイスをとるアクセス ポイントがあります。図 7 に示すように、ワイヤレス コントローラと多数のアクセス ネットワークとの間のプロトコルは、IETF の CAPWAP(Control and Provisioning of Wireless Access Points)ワーキング グループによって開発されているプロトコル「RFC 3990」に基づいています。
図 7. CAPWAP プロトコル インターフェイス ワイヤレス コントローラとアクセス テクノロジーの間で共通のプロトコルが使用されている場合、ネットワーク管理者はネットワーク デバイスを一貫した方法で管理できます。プロトコルによって、セキュリティ機能、構成機能、および監視機能において一貫した動作が実現するからです。新しいアクセス テクノロジーで CAPWAP 標準が採用されると、IT 部門では、独自に開発されたソリューションの制約を受けることなく、一貫した方法でネットワークを統合できます。 NMSP: モビリティ サービス エンジンからワイヤレス コントローラおよびスイッチ間このインターフェイス カテゴリでは、モビリティ サービス エンジンとワイヤレス コントローラとの間の管理プレーンおよびデータ プレーンの通信を提供します。図 8 に示すように、MSE とワイヤレス コントローラとの間のプロトコルは、ネットワーク モビリティ サービス プロトコル(NMSP)に基づいています。
図 8. NMSP プロトコル インターフェイス MSE とワイヤレス コントローラの間の、あらゆるサービスレベルの情報の通信に対応した共通の単一プロトコルです。各ワイヤレス コントローラは各自が提供するサービスを、接続可能な任意の MSE に通知します。MSE はワイヤレス コントローラに接続したときに、情報を取得するサービスを登録します。モビリティ コントローラで共有される情報はサービス別に分類されます。これにはロケーションの測定値、統計データ、セキュリティ コンテキスト データなどが含まれます。ワイヤレス コントローラでは、個々の MSE によって使用されるサービスおよびその MSE に送信される情報の種類を認識できるため、そのサービス コンシューマに合わせて自身のパフォーマンスを自動的に調整します(図 9 を参照)。
図 9. 異なるサービスおよびコントローラが設定された複数の MSE オープン API: モビリティ サービス エンジンからアプリケーション間図 10 に示すように、このインターフェイス カテゴリでは、MSE で実行されているサービスの管理とこれらのサービスへのデータ アクセスを提供します。モビリティ サービス API は、モビリティ サービスと通信するアプリケーションの管理とこのようなアプリケーションへのデータ アクセスを提供するインターフェイスです。
図 10. モビリティ サービス API モビリティ サービス API は、外部アプリケーションとモビリティ サービスを利用するサーバの間の最重要インターフェイスです。これはサービス管理のインターフェイスであると同時に、サービス コンシューマに提供されるリアルタイムのインターフェイスでもあります。モビリティ サービス API の主な目的は、サービス コンシューマに対するサービスおよびサービス データを一貫した方法で表現することです。コントローラやアクセス ポイントなどの共通オブジェクトについて、個別の認証および承認メカニズム、共通の関数の実行方法を定めた個別のスタイル ガイド、個別のデータ表現を備えた個々のサービスの代わりに、モビリティ サービス API では、このデータの一貫したビューが提供されます。これにより、アプリケーション インテグレータが MSE で複数のサービスを使用することを検討する際にタスクが簡単になります。また、ネットワーク管理者にとっては、サービスの管理が容易になります。たとえば、個々のサービスに適合させたポリシー管理を行う代わりに、一連のサービスに対して同じ方法でアクセス制御のポリシーを適用できます。 サービス管理モビリティ サービス アーキテクチャには、ネットワーク コンポーネント、モビリティ サービス エンジン、ネットワークで実行されるサービスを含む管理ソリューションが組み込まれています(図 11)。構成、障害分析、および監視のための統合管理ソリューションを提供することにより、企業のアドミニストレータは、サービスごと、またはサービスを提供するネットワーク コンポーネントごとに個別の製品をインストール、学習、または保守する必要がありません。
図 11. WCS 管理システム 統合された管理システムを使用することにより、管理者は、特定の MSE で実行されているサービスの構成、特定のサービスの開始または停止、各サービスの状態の表示を行うようにモビリティ サービス エンジンを設定できます。それぞれのサービスについて、管理者は、単一の管理システムの設定可能なパフォーマンス パラメータを使用して、そのサービスを提供しているさまざまなネットワーク コンポーネント全体にわたる動作を管理できます。管理システムの統合されたサービス ビューを利用して、管理者は、実行するサービスの選択と、そのサービスが存在するネットワークの特定を簡単に行うことができます。 スケーラビリティモビリティ サービス アーキテクチャのスケーラビリティは基本的な要件であり、スケーラビリティによって、高可用性とクラスタリングという 2 つの重要な項目に対応することができます。 高可用性サービスおよびそのサービスを提供するネットワーク コンポーネントの高可用性は、重要な要件です。以降では、モビリティ サービス アーキテクチャによって高可用性を実現するためのさまざまな方法について説明します。 コントローラの高可用性 可用性を高めるために一般的に行われている方法に、複数のアクセス ポイントが交互に異なるコントローラで終端されるようにアクセス ポイントを配置するというやり方があります。この配置は、通常、"ソルト アンド ペッパー" 配置と呼ばれます(図 12)。
図 12. ソルト アンド ペッパー配置 別の方法として、主コントローラ(コントローラ 1)が何らかの理由でダウンした場合に備えてホット スタンバイ機能を提供するバックアップ コントローラを用意して、コントローラの高可用性を実現する方法があります(図 13)。この場合、アクセス ポイントは、ソルト アンド ペッパー配置の場合と同様にコントローラ 1 から副コントローラ(コントローラ 2)に切り替えます。ただし、コントローラ 2 はコントローラ 1 がダウンする前に既に同期されているため、コントローラ 1 の引き継ぎをすばやく簡単に行うことができます。
図 13. コントローラの高可用性ペア モビリティ サービス エンジンの高可用性 MSE の高可用性により、特定の MSE で実行されているサービスが常にアクティブであり、エラーによるダウンタイムがほとんど発生しないようにすることができます。MSE の高可用性には複数のレベルがあります。 最初のレベルは、単一のハードウェア装置内で実現します。この装置には、ハードドライブと電源の両方について冗長性が必要です。 2 つ目のレベルは、複数のハードウェア装置間で実現します。図 14 に示すように、ホット スタンバイ機能を使用して、物理的なシステムおよびそのシステムで実行されているサービスを二重化します。この例では、2 つのシステム間ですべてのサービス データがリアルタイムで同期されています。これにより、物理的な装置の一方がダウンしても、MSE を使用しているモビリティ コントローラおよびアプリケーションは、サービスの提供と利用を継続できます。
図 14. MSE のホット スタンバイ 管理システムの高可用性 管理システムの高可用性を実現することにより、システムに障害が発生した場合でもサービスを管理できます。図 15 に示すように、管理システムでホット スタンバイ プロトコルを実行して、1 次管理システムでエラーが検出されると直ちにバックアップ管理システムですべてのサービスおよびネットワーク管理データが利用できるようにします。バックアップ管理システムがアクティブになると、モビリティ コントローラ、MSE を含むすべてのネットワーク コンポーネントは、管理を行う新しいサーバを自動的に認識します。
図 15. 管理システムのホット スタンバイ クラスタリングMSE クラスタリングを行うと、サービスの数を増やし、サービスが動作するネットワークの規模を拡大できます。アプリケーションやクライアントは、これらのサービスが複数の物理 MSE によって提供されていることを意識せずにサービスを受けることができます。図 16 に示すように、ネットワーク内のモビリティ サーバの数が増えると、ネットワークおよびネットワーク サービスのユーザがこれらのモビリティ サーバをどのようにしてマッピングするかが設計上の重要な問題になります。
図 16. ネットワークのスケーラビリティの問題 図 17 に示す MSE クラスタリングを導入すると、複数の MSE 間でのサービスの管理が簡単になります。このアーキテクチャでは、マスタ MSE が、1 つ以上のサービスを実行しているスレーブ MSE の管理を調整します。
図 17. MSE クラスタリング アーキテクチャの概要 まとめビジネスはモバイルの時代です。IT 部門では、このビジネスの変化に対応するために、新たに登場するモビリティに関する課題に応える必要があります。ワイヤレス LAN を真のモビリティ ネットワークに進化させることにより、新たに登場するモバイル デバイスの管理、単一のコントロール インターフェイスによる複数ネットワークの統合、モビリティ アプリケーションの開発のためのオープン プラットフォームの構築に備える必要があります。Cisco モビリティ サービス エンジンを導入すると、サービスの使用可能化と提供を集中管理できます。ワイヤレス LAN コントローラは、その主要なタスクであるデータ プレーンの効率的な管理を実行できます。Cisco モビリティ サービス エンジンは、各種のネットワークからコンテキスト情報、侵入防止情報などのサービス インテリジェンスを取得できるソフトウェア スイートをサポートすることにより、サービス デリバリに対してモジュール式アプローチをとります。このサービス インテリジェンスの集中管理により、API の論理的なアクセス ポイントが提供され、サードパーティのエコシステムは、本来のネットワーク インテリジェンスに基づく業種別ソリューションを開発できます。WLAN を真のモビリティ ネットワークに進化させる以外に、従業員、パートナー、お客様、および資産を対象としたビジネス モビリティを実現する方法はありません。 |

