シスコ コンテント デリバリ アプリケーション

リアルタイム ビデオ サービスと分散アーキテクチャ

ホワイトペーパー





リアルタイム ビデオ サービスと分散アーキテクチャ


概要

顧客がエンターテイメント性の高いコンテンツを求めるようになるにつれ、サービス プロバイダーも、その役割を基本的なアクセス プロバイダーから、より進化した「エクスペリエンス プロバイダー」へと変わっていく必要があります。つまり、ビデオ、音声、データといった一連のサービスを、時や場所、デバイスを選ばずに顧客の好みに応じて配信できるようにしなければなりません。卓越したビデオ エクスペリエンスを実現するには、ビデオ ヘッドエンドでエクスペリエンスを効果的に「定義」するツール、加入者に転送されるエクスペリエンスを「保存」するための次世代アプリケーション対応ビデオ ネットワーク、そして意図したとおりに顧客の家庭でエクスペリエンスを「実現」する高性能のデバイスが必要です。

加入者向けに卓越したビデオ エクスペリエンスが必要となったことで、新世代のビデオ技術の開発が進み、これまで以上にパーソナライズされたインタラクティブなビデオ コンテンツが登場しています。実際、TV 市場に参入するサービス プロバイダーの数も増えており、パーソナライズされたオンデマンドのエンターテイメントを提供できるかどうかが競争上の重要な鍵となりつつあります。実際、サービス プロバイダーはオンデマンド コンテンツを提供することで、1 ユーザ当たりの平均収益(ARPU)の増加や顧客ロイヤリティの向上、顧客流出の低減を見込んでいます。今後、PC やテレビ、ネットワーク接続された自宅、モバイル機器などを使って「すべてをオンデマンド」でコンテンツにアクセスできるようになれば、パーソナライズされたオンデマンドのエンターテイメントがあらゆるタイプのサービス プロバイダーにとって中核的な要件となるはずです。ただし、新しいオンデマンド ビデオ技術は、サービス プロバイダーの大きなポテンシャルである一方、これまでにない技術的課題を提示することも事実です。

これまでリアルタイム ビデオ サービスのソリューションといえば、コンテンツの保管とストリーミングの両方に集中アーキテクチャを採用する方法が一般的でした。このアーキテクチャでは、ビデオ サーバが全国、地方、ローカルのいずれのヘッドエンドに設置されていても、アプリケーションは全タイトルについて非リアルタイム、階層的配信をサポートするという前提で集中化されています。

このホワイトペーパーでは、さらに効果的なコンテンツ管理、つまりコンテンツをタイトル ユニットよりもきめ細かに、リアルタイムかつオンデマンドで配信する方法について説明します。このアーキテクチャは、より高度なキャッシング アプローチの利点を活かし、集中コンテンツ保管の利点(コンテンツ管理の設備と運用コストの削減)と分散ストリーミングのメリット(効率的で費用対効果に優れた帯域幅管理)をサービス プロバイダーに提供します。また、エンドツーエンドで遅延を短縮し、新世代の加入者が求める多種多様なコンテンツを無制限に保持できます。さらに、「ロングテール」コンテンツ(ニッチまたはユーザが作成したコンテンツ)をミキシングしなおすという各種の高度なサービスを実現できるのもこのアーキテクチャの特長です。この場合、深層に格納されるコンテンツのサブセグメントには、遅延の少ないアクセスが必要とされます。シスコ コンテント デリバリ システムは、上に述べた分散ビデオ アーキテクチャを活かし、これまでにないビデオ エクスペリエンスの創造と配信を可能にします。シスコ コンテント デリバリ システムを採用することで、サービス プロバイダーはより効率的でスケーラブルな、費用対効果に優れたソリューションを実現することができます。

リアルタイム ビデオ サービスの進化

現在、サービス プロバイダーは、加入者に提供するサービス、これらのサービスをサポートするネットワーク、そして加入者がサービスにアクセスする際に使用するデバイスをすぐにでも変えていかなければならない状況にあります。加入者によるコンテンツへのアクセスと双方向性への期待が高まるにつれて、サービス プロバイダーの役割は基本的なアクセス プロバイダーから、より進化した「エクスペリエンス プロバイダー」へと変わりつつあります。これは、真の「常時接続」を加入者に提供することであり、家庭の内外で、顧客の好きな時間にどのデバイスからでもビデオ、音声、データなどのサービスにアクセスできることを意味します。

サービス プロバイダーがこの進化の流れの中で成功するためには、ビデオの効果的な配信が重要となります。魅力的なビデオ サービスを提供するためには、ビデオの帯域幅消費を効果的に管理し、加入者が望む多様なコンテンツを、すべての地域、すべてのデバイスにわたって常に高品質で提供する必要があります。

これまでビデオ サービスは、ブロードキャスト コンテンツを配信するサービスと考えられてきました。このパラダイムの中では、サービスのすべての要素が集中的に設定されて管理されます。コンテンツ オーナーは、「コマーシャル」を随所に挿入した「番組」を、予想されるコンテンツの視聴者のタイムゾーン(北アメリカの場合、太平洋、山岳部、中央、東部など)に合わせて配信するチャネルを定義します。一日の時間は「プライム タイム」と「非プライム タイム」に区別され、コンテンツとコマーシャルはそれにしたがってカスタマイズされます。コンテンツ オーナーは視聴率調査機関などのサービスを利用してチャネルの人気度を評価、分類します。広告主は「人気度」に応じて売上を高めます。さらに最近では、技術革新(デジタル広告の挿入規格である SCTE35、SCTE30、DVS 629 など)によって、サービス プロバイダーは街区や地域などのレベルでパーソナライズされた広告コンテンツを配信できるようになっています。

このパラダイムは何十年にもわたってビデオ サービスの主流でしたが、近年になってビデオ オンデマンド(VoD)と呼ばれる新しいタイプのビデオ サービスが登場しました。VoD は個人に対して提供するサービスで、加入者がそれぞれに表示するコンテンツのタイプとタイミングをコントロールします。オンデマンド コンテンツの量は急速に増大しており、(無料と有料合わせて)わずか数千時間だったものが、今日では数万時間にもおよんでいます。映画やテレビが始まって以来作られたビデオがオンデマンド コンテンツとして配信される潜在的な可能性を考えると、サービス プロバイダーが保管すべきコンテンツ ストアの量は、これからも拡大していくことが予想できます。

通常、ほとんどの事業者は、ビデオ サービス ブロードキャストと VoD の 2 つのタイプをそれぞれ個別のサービスと考えています。この 2 つは、共通のエッジ分配インフラストラクチャ(同軸ケーブル、無線、デジタル加入者回線、ファイバーなど)やディスプレイ装置(最近までは TV に限られていました)を共有するのにも関わらず、事業者はこれら 2 つのサービスを実装するためのインフラストラクチャを別々に何年もかけて構築してきました。

ところが、人気が高まりつつあるビデオ サービスの新機能が、こうした状況を別なものに変えようとしています。それが「ポーズ(休止)」機能です。これは、加入者がポーズ ボタンを押すと、ブロードキャスト サービスからオンデマンド サービスに切り替わるという機能です。加入者がもう一度ポーズ ボタンを押すと、ライブ プログラムより数秒あるいは 30分間遅れたコンテンツを観ることができます。このポーズ機能は多くの加入者の心をつかむようになっただけでなく、サービス プロバイダーにとっても収益のための魅力的な機会となります。たとえば広告で、再生ポイントがわずか数秒後(ライブ広告の時間フレーム内)である場合、システムは同じゾーンの広告を再生します。しかし、広告がライブではなく、ライブ時の広告が加入者のゾーンに適合していない場合、パーソナライズされた広告を代わりに挿入することができます。いずれにしても、かつては個別に提供されていたブロードキャストと VoD の 2 つのサービスは、今や 1 つのサービスとして結びついているのです。すべてのサービスを配信する統合型アーキテクチャのためのプロジェクトがすでに始まってます。

ポーズ機能は、一般にはデジタル ビデオ レコーダ(DVR)と呼ばれ、タイムシフト TV のマスマーケットで急速に採用されています。この数年間で DVR を利用するユーザは徐々に増えています。DVR の主な魅力は、加入者自身が表示するコンテンツをコントロールできるということです。この機能の利点は加入者とコンテンツ オーナーの両者にあります。今日のような忙しい社会では、ブロードキャストの時間割にしたがってコンテンツを観ることのできないユーザが多いためです。ポーズ機能により、コンテンツ オーナーはより多くの視聴者を獲得し、加入者はより多くの好みのコンテンツを表示する(見つけ出す)ことができます。また、加入者はさらに多くのタイムシフト TV 広告も見ることができます。実際、加入者は非常に注意深くなっており、早送りや巻き戻しで個人的に興味のあるトピックに関する広告を止めて再生しています。

タイムシフティングは直線的なコンテンツ ストリームを操作する機能で、線形のプログラム ストリームをリアルタイムで休止、再スタートさせることができます。現在、一部のコンテンツに対してタイムシフティング サービスを提供しているサービス プロバイダーもいます。たとえば番組の開始時間に間に合わなかったユーザに番組の最初から視聴できるようにするといったものです。またタイムシフティング機能には、記録したコンテンツをセットトップ ボックス以外の PC やハンドヘルド、その他のデバイスに配布して従来の DVR サービスを補完できるという利点もあります。ただし、タイムシフティングに関しては「適正使用」の問題もあるため、サービス プロバイダーはコンテンツの使用権についてコンテンツ オーナーと交渉する必要が出てくる可能性があります。

最近、コンテンツ オーナー(ディズニーや ABC など)は、コンテンツをブロードキャストから 24 時間以内(または、タイムワーナー ケーブルの「Start-Over」サービスのように瞬時)に見られるようにすると発表しました。これは、多くのコンテンツ オーナーが新たな現実を受け入れ始めたことを示しています。つまり、顧客は好きなときに好きなデバイスを使ってコンテンツを表示したいというニーズを持ち、それに対してお金を払っているということです。またタイムシフト機能は、加入者がライブでも記録されたものでも(そして前のチャプターや次のチャプター、あるいは前のエピソードや次のエピソードといった顧客中心型のサービスについても)、すべてのコンテンツについて休止、巻き戻し、早送りをしたいというユーザのニーズに応えます。固定的なスケジュールに基づいて 250~500 のブロードキャスト チャネルを加入者に送り出す時代は終わりました。新たに登場するビデオ パラダイムを、パーソナライズされた何十億ものチャネルの時代と捉える人もいるでしょう。

最後に、サービス プロバイダーは Video 2.0 の登場を新しいパラダイムと見ています。すなわちビデオはもはや中央の配信業者からダウンロードされる一方向の接続ではなく、インタラクティブで共同使用するものとなっています。Web 2.0 はインターネットを静的な発行型コンテンツのリポジトリから動的な双方向のコミュニケーション手段へと変貌させました。そこではコンテンツの消費者がコンテンツの創作者となり、新しいタイプのコンテンツやコミュニティ、インタラクションを開始しています。急激に成長した YouTube はわずか数ヶ月間で1日当たりのビデオ ストリーム数がゼロから 1 億 2,000 万になり、消費者のビデオ コンテンツに対する新しい考え方と、企業がこの変化を利用できれば大きなビジネス チャンスになり得ることを浮き彫りにしました。

こうしたさまざまなリアルタイム ビデオ サービスはコンテンツの保管にとってどのような意味があるのでしょうか。答えは簡単です。ストレージへの要求は加入者のニーズに応じて急速に増大するということです。そして加入者にとって重要なことは、見つけたコンテンツは「今すぐ」求めることができ、しかも画像の遅延はほとんどないことです。

プロやアマチュアがコンテンツを生産するための技術やコストの壁が次第に低くなるにつれ、サービス プロバイダーはコンテンツ プロデューサーとして迅速かつ継続的に成長できるチャンスを迎えています。テキスト(ブログ)、オーディオ(ポッドキャスト)、写真(Flickr)の利用人口はすでに大幅に増加しています。ユーザのビデオ作成は人気が出始めたばかりですが、ビデオ コンテンツがすでに急成長していることは、最近の Google による YouTube の買収からも明らかです。今後、大量に生産される Video 2.0 のコンテンツやサービスが急成長すれば、すでに議論されているコンテンツの成長よりも、さまざまな規模のオーダーによってオペレータのストレージ要件が増大する可能性の方が高いと言えます。

増大するストレージ要件

タイムシフティングと VoD という 2 つの技術革新は、ストレージの拡張を促進させる要因となります。どの事業者あるいは加入者のシナリオにも、いずれかの機能(ほとんどの場合両方の機能)が盛り込まれています。この 2 つの要素は完全に別のものではありません。アナリストの推測によれば、ブロードキャスト コンテンツの中には長期保管用の VoD ライブラリに取り込まれるものや、すでに VoD ライブラリにあるという理由で廃棄されるものもあります。

「ロングテール」コンテンツの概念に使用されている DVD や書籍販売に関する興味深い調査 1を見ると、ビデオ コンテンツの主要な成長要因を発見することができます。この調査では、「店舗型」ストアにおける「売れ筋」商品の傾向と「経費のかからない」インターネット ストアにおける「拡張型」在庫とを比較しています。調査対象として Rhapsody、Amazon、Netflix があがっています。詳細は割愛しますが、この分析によれば、「経費のかからない」在庫シナリオの場合、総売上の 20~30 パーセントが、ネットを使用しない「店舗型」の競合企業では取り揃えるのがむずかしい「拡張型」在庫で占められています。この所見は、タイムシフティングまたは VoD サービスを取り入れ、ロングテール在庫を持つことで、かなりの売上を期待できることを示唆しています。

タイムシフティングだけでも大量のコンテンツが生み出されます。500 チャネルを提供するサービス プロバイダーの場合、コンテンツは 1 日当たり 12,000 時間分(24 時間/日×500 チャネル)となります。このコンテンツの 50 パーセントが重複コンテンツ、または長期保管のための権利が存在しないという理由で削除されたと仮定しても、依然として大量のコンテンツが加入者に届けられています。1 日当たり 6000 時間としても、2 週間で 84,000 時間のコンテンツが提供されているのです。アップストリームでコンテンツの複数バージョンが生成される場合(異なるインサート広告を持つフィードなど)、ストレージ要件は直線的に増大します。(記憶容量を保持するための基本要件として、複数のゾーン固有のコピーではなく、各ブロードキャスト チャネルの 1 つがストレージに保持されるものとして仮定しています 2。)

ビデオ インフラストラクチャがどのような技術で構築されているにしても、ストレージ要件は大幅に増大しています。それと同時に、通信事業者が増え続けるコンテンツを管理し、より効果的に配信できるようにする新しい技術も登場しています。ケーブル事業者向けの交換型デジタル ビデオや、固定通信事業者向けの IPTV といった新しい技術の興隆により、サービス プロバイダーは以前よりもずっと大量のコンテンツを提供できるようになりました。たとえば、通信事業者の多くは各人種や文化に特化したエスニック ティア プログラミングを提供しようとしており、こうした番組が大きな収益を生み出し、アップセリング ビデオ ユーザ向けの最も成功しやすい戦略の 1 つであることに気づいています。すべての既存(および将来)のエスニック ティア コンテンツのオンデマンドでの提供は、ストレージ要件の増大に拍車をかけることにもなりますが、こうしたサービスを料金を払って利用する加入者層にとっては、非常に魅力的なものであることは間違いありません。

ただし、このようなキャパシティを増大させる要因には、将来の Video 2.0 のパラダイムが含まれていないため、加入者が作成したビデオは従来のコンテンツと変わらないものであり、それ以上のものにはなり得ません。Video 2.0 のパラダイムは、すでに議論されている上述の要因をはるかに上回るストレージ要件の増大を招くことになると思われます。

従来のコンテンツ配信アーキテクチャ

ビデオ インフラストラクチャは一般に、コンテンツ ストレージ サブシステムとストリーミング サブシステムで構成されます。ストリーミング サブシステムは、加入者のデバイスと互換性のあるフォーマットを持つすべてのコンテンツのストリーミングを行います。ストリーミング システムには多くの種類があります。あるシステムでは、ローカル ストレージと、すべてのタイトルを保管するストレージが必要です。別のシステムの場合は、ディスクとランダム アクセス メモリ(RAM)ストレージを組み合わせたサーバで構成され、セグメント単位でコンテンツをキャッシュできるようになっています。

コンテンツ ストレージ サブシステムには、ライブ インジェスト型(タイムシフト型)ブロードキャスト コンテンツ(コンテンツ セグメント×解像度×時間当たりのフォーマット数のレートで増大)と前回取得したコンテンツの両方が含まれます。このコンテンツには複数の解像度やフォーマットを持つ映画や TV 向けの制作物、独立系のフィルムが含まれます。

従来のアーキテクチャでは、多くの事業者が、コンテンツを格納するための主要な基準としてコンテンツの人気度を利用してすべてのタイトルの保管を事前に分類しておくという方法を使って、ストリーミング エレメントのなかでストレージを管理してきました。このようなソリューションの多くは、数百~数千時間(標準規格のコンテンツの場合)のストレージが限界です。システムがこのストレージ容量の上限を超えない限り、ストリーミング エレメントのなかでコンテンツを利用することができます。ただし、システムが全タイトルの保管容量を超えると、加入者は「サービス拒否」状況(一般的に「サービスを利用できません」というエラー メッセージが表示されます)に直面します。これは事実上オペレータが「収益拒否」状況に陥ることを意味します。つまり、料金ベースのロングテール コンテンツを提供することで得ていた 20~30 パーセントの追加収益が失われてしまうのです。

動的コンテンツ配信アーキテクチャ

現在、さらに動的な形態のコンテンツ配信が実現されるようになってきました。このアプローチでは、加入者のニーズに基づいてストリーミング エレメントのなかで人気度の低いコンテンツを動的に置き換えたり、新たにリクエストされたコンテンツを遅延の短いストリーミングで取得できるようにしたりします。

図 1 はこのアーキテクチャの概念図を表しています。このモデルでは、コンテンツ ストレージ サーバのアレイがストリーミング サーバに接続されています。この図では、ギガビット イーサネットと 10 ギガビット イーサネットで相互に接続されていると想定しています。なお、コンテンツとストリーミング サブシステムのエレメントには特定のコンテンツ配信プロトコルが指定されていません。

図 1 階層型コンテンツ ストレージとストリーマ アレイ

図 1 階層型コンテンツ ストレージとストリーマ アレイ
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この動的なコンテンツ配信モデルでは、リクエストされたコンテンツの取得とストリーミングに関する方式として、3 つの異なる方式の中から 1 つを採用することができます。どの方式を採用するかはアーキテクチャとストリーマの能力に依存しますが、最初に紹介するアクセラレーテッド ホールタイトル フェッチとプログレッシブ フェッチは、リアルタイムビデオ配信の理想的なアプローチとなるには困難な限界があります。3 番目の方式はセグメンテッド キャッシュフィルと呼ばれるもので、他のアプローチで提起されている遅延その他の問題の多くを回避し、効率性に優れたスケーラブルな戦略を実現することができます。

方法 1:アクセラレーテッド ホールタイトル フェッチ

インジェスト中にストリーミングできないビデオ システムでは、インジェストの遅延とコンテンツの帯域幅との間でトレードオフが必要です。たとえば最悪の条件として、リクエストされた時点から 2 分以内にコンテンツの一部を再生できなければならないとすると、1 時間の映画はストリームの 30 倍の速度、つまり標準規格 MPEG-2-エンコード コンテンツでは 120 Mbps、標準規格 MPEG-4 では 60 Mbps の速度で取得しなければなりません。

すべてのコンテンツ タイトルをストリーミングする前にインジェストしなければならないシステムでは、インジェストはリンクをすぐにオーバランする傾向があります。たとえばこのようなシステムでは、ストレージ システムに接続したギガビット イーサネットを通じて 1 時間ものの映画を最大 8 本、2 分以内に取得することができます。全国、地域、あるいはローカル ネットワークでも、ロングテール向けのコンテンツに 8 本またはそれ以上の同時リクエストがある可能性は極めて高いと言えます。これはより規模の大きなネットワークで 10 ギガビット イーサネット リンクを通じて 80 本の映画を同時にリクエストする可能性があるのと同じです。高品位テレビのストリーミングはこのモデルではあまり現実的ではありません。

方法 2:プログレッシブ フェッチ

インジェスト中に同時にストリーミングを開始できるこれらのシステムの場合、コンテンツはあまり遅延を起こさずに少ない帯域幅で提供することができます。コンテンツをストリーム レートで取得すると仮定した場合、ストリーミングはストリーミング システムのインジェストで最小の遅延が経過した後に開始することができます。ただし、ストリーマがストリーミングを開始するにはコンテンツ ストレージ サーバ アレイの能力が不可欠です。この能力がなければジッタを発生させずにストリーム レートでコンテンツを提供し続けることはできません。コンテンツ サーバ アレイがジッタを発生させた場合、ストリーミング出力にギャップが現れることにもなります。一般に、ジッタの発生に対処するには、ストリーミング システムに追加の遅延を設定しておく必要があります。したがって、ストリーミング システムが 10 秒の遅延でコンテンツをインジェストできた場合、システムはさらに長い遅延を生じる可能性もあります。また、バッファ アンダーランの際にディスプレイをポーズすることは、リアルタイム ビデオ サービスでは望ましくないと考えられているため、さらに多くの遅延が発生してしまうことになります。

このシナリオの場合、システムはより長い遅延(おそらく 1~2 分)でタイトルを部分的にインジェストした後、再生を開始することができます。一般に、今日の PC ベースのストリーミング インプリメンテーションはこのアプローチを採用しており、最初に遅延が発生し、その後ストリーミングがスタートします。ただしこの方式では、ネットワークがストリーム レートを維持できず、ディスプレイがフリーズする可能性があります(通常、PC ベースのストリーミング アプリケーションでは、この状態になると「バッファのリフレッシュ」アイコンが表示されます)。事業者はこの問題の他にも、バーストモード ネットワーク、入力/出力(I/O)システム、ディスク サブシステムでこうしたソリューションを拡張するための問題に直面することがあります。

プログレッシブ フェッチ アプローチにともなう問題は以下のとおりです。

  • 増大する並行同時フェッチ オペレーションの数に合わせてコンテンツ配信サブシステムを拡張することが困難。
  • インジェスト機能のパフォーマンスとストリーミング エレメントの集約に限界がある。
  • トリック モード(早送り、巻き戻しなど)は通常リアルタイムで作成されるため、拡張性が制限される。


オペレータは、外部からコンテンツを引き出す頻度が極めて低い(せいぜい10 パーセント、おそらくは1 パーセント)シナリオにプログレッシブ フェッチ方式を採用することができます。ただしこれは、コンテンツ ストレージ サブシステムがこうしたコンテンツのストリーム レート送信を維持でき(共用スピンドルの過度な競合を回避し、効率的にプロトコルを実装)、遅延の変動を加入者が受け入れる場合に限ります。

方法 3:セグメンテッド キャッシュフィル

低遅延(300 ms 以下)と最小限の帯域幅使用を提供するその他のコンテンツ配信方式に、セグメンテッド キャッシュフィルがあります。このモデルでは、コンテンツの小さな区画であるセグメントが定義されます。一般には 1 セグメントは 64 キロバイトに設定されています。このモデルは、ストレージ、配布、ストリーミングといったシステムのすべての部分でセグメントを要求、送信します。

セグメンテッド キャッシュフィル アプローチの場合、キャッシングはセグメントのサポートにおいて補完的なメカニズムを提供します。このモデルでは、ストレージ アレイにのみコンテンツを保管するからです。キャッシュは一時的なストレージとして定義され、あらゆるタイプのリソース(ディスク、バス、メモリ)をシステムに保存してシステムの利便性を高めます。キャッシングは広く知られており、Web ページの保存などのサービスに広く導入されているテクニックです。コンテンツのセグメントがローカルのキャッシュ リソースにある場合は、ネットワーク I/O などのリソースを使って要求する必要はありません。キャッシュ管理テクニックはリソースの消費を大幅に低減し、とくにネットワーク I/O では顕著です。広い地域、または全国規模のストレージ構成では、同時に 2 人以上のユーザが一編のロングテール コンテンツへのアクセスを要求することも少なくありません。ロングテール コンテンツ配信もまた、キャッシングの利点を活かすことができます。

図 2 は、マルチティアのキャッシング ハイアラーキを表したものです。ティア 1 はネットワーク エッジへのストレージ クローゼットで、ここからコンテンツがリアルタイムで再生送信されます。このストレージがハードウェア(RAM)に占める割合はごくわずかです。システムが採用する動的コンテンツ人気アルゴリズムによって効率的なキャッシングが実現できるためです。ティア 2 は高速のローカル帯域幅によって接続された単一のシステムまたはピア システムの内部に設置できるローカル ストレージです。ティア 3 は、安価なネットワーキング リソースを用いて人気のあるコンテンツをローカルに保持、アクセスできるローカル コンテンツ ライブラリです。ティア 4 は半永久的なコンテンツのソースで全国またはスーパーのヘッドエンドなどどこにでも設置することができます。階層型キャッシングを使用することで、オペレータは、すべての利用可能なコンテンツ(ショートテール、ロングテールのどちらでも)を一本から提供できる、ローカル、地域、全国規模のビデオ ネットワークを構築することができます。

図 2 キャッシング ハイアラーキ

図 2 キャッシング ハイアラーキ
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キャッシングは、システムにおける高コストと低コストのコンポーネントを最適に組み合わせることのできる一般的な方法です。最も高価で最高の性能を持つストレージは RAM で、最も安価なストレージはディスク ドライブです。RAM ストレージの価格は SCSI インターフェイスの 10 倍、SATA ストレージの 100 倍になります。

セグメンテッド キャッシュフィル機能は、プログレッシブ フェッチ方式やホールタイトル アクセラレーテッド フェッチ方式におけるインジェスト機能よりもはるかに低いオーバーヘッドを実現します。キャッシュフィル アーキテクチャの場合、インジェスト機能はストレージ エレメントそのものによって達成されます。インジェスト機能のためにかかった費用(メタデータ、トリック ファイル、復元力)は、ポピュラー、ロングテールのいずれのコンテンツも将来的にすべて再生できることで償却されます。

オペレータは、セグメンテッド キャッシュフィル コンテンツ配信モデルを使用することにより、より低遅延の要件を満たすことができます。たとえば、ストリーミング エレメントがすべてのストリームの帯域幅ニーズを認識しているシステムを実装したり、セグメント I/O とコンテンツ エレメントを集約してすべてのストリームについてサービスを維持できるようにします。人気の高いコンテンツにはキャッシングの利点が活かされるため(キャッシュされた人気のあるコンテンツはネットワーク I/O を生成しない)、ロングテールコンテンツの動的な取得に必要なネットワーク帯域幅を十分に確保できるのもこのモデルの特長です。

セグメンテッド キャッシュフィル コンテンツ配信モデルでは、異なるコンテンツ タイトルをすばやく切り替えることも可能です。たとえば、対象を絞った広告シナリオ(スイッチド ブロードキャストまたはタイムシフテッド環境)を挿入したい場合、リアクションまで 7 秒かかる広告を、300 ms 以下のリアクション時間で処理できます。同じように、複数のコンテンツ タイトルのセグメント クラスターをミキシングし直す(テレビドラマ「Da Vinci's Inquest」のベストシーンを提供する場合など)といった斬新なサービスにおいても、全タイトル ユニットをきめ細かに管理せずに処理できるため、ストレージとネットワーク帯域幅の効率性が大幅に向上します。また、将来的には加入者がロングテール コンテンツのミキシングをコントロールするため(イントロや予告編のスキップなど)、ネットワーク I/O をはじめとするすべてのリソースの負荷も軽減されます。

より高度なビデオ アーキテクチャ:Cisco Content Delivery System

エンドツーエンドのリアルタイムビデオ サービス システムには、スケーラブルなコンテンツ ストレージ アレイの集合が必要不可欠であると考える事業者が増えています。ロングテール コンテンツや先進の Video 2.0 パーソナライゼーション サービスが提示する新たな要件のために、サービス プロバイダーは低遅延でのストリームのスタートアップや、遅延を許容しないリミキシングなどの斬新かつ高度なサービスをサポートできるコンテンツ アクセス方式を必要としています。サービス プロバイダーはまた、キャッシュ ストレージを搭載したストリーマがよりネットワークのエッジに近い場所に設置されている分散アーキテクチャは、従来の集中型ビデオ システムに比べ、はるかに優れたスケーラビリティと効率的な帯域幅の利点を提供できると実感するようになっています。

ビデオ システムを理想的なものにするには、キャッシュフィル セグメント分散方式の採用が必要です。この方式は、オンデマンドのコンテンツをタイトル ユニット全体よりも小さな単位でコンテンツを分散させ、リアルタイムビデオ サービスを地域や全国規模の構成に効率的に拡張することができます。セグメント グラニュアリティ キャッシングを採用することで、こうしたビデオ システムは大規模なビデオ サービスの転送で消費される帯域幅を低減することが可能です。また、集中型ストレージ アレイを使えば、すべての地域および全国で n×1000 時間~n×100,000 時間(n×1,000,000 時間以上)のコンテンツの成長によって投資を償却することができます。

Cisco Content Delivery System(CDS)は、このような戦略すべてを 1 つのプラットフォームに組み込むことで、加入者が求めるあらゆるコンテンツをブロードキャスト、タイムシフト、VoD モードで、必要なときに必要なだけ提供できるようにしました。Cisco CDS は、次世代のエンターテイメントや双方向メディア、パーソナライズされた広告サービスを加入者に配信する高度なネットワークベースのプラットフォームをオペレータに提供できるという点で、従来の VoD システムを超えた存在といえます。このプラットフォームは Cisco IP Next-Generation Network(IP NGN)サービス エクスチェンジ フレームワークに追加された最新の製品で、ビデオ インジェスト、ストレージ、配布、パーソナライゼーション、ストリーミング機能を、増え続けるさまざまな異種のデバイス間でオペレータがローカライズ、双方向、パーソナライズ型コンテンツの配信に使用できる 1 つのソリューションとして統合します。

大規模な集中型ビデオ サーバとして機能し、加入者やコンテンツ ライブラリの増大に合わせて拡張することが困難であった初期の VoD ソリューションとは異なり、Cisco CDS は単なるビデオ サーバとしてだけでなく、真のビデオ ネットワークとして機能します。IP ネットワーキングの機能と革新的なコンテンツ配信方式を完全装備することにより、Cisco CDS は加入者ビデオ サービス配信の新しいパラダイムに対応し、これまでにない費用対効果の高い、柔軟で将来対応性に優れたビデオ ソリューションを実現します。

サービス プロバイダーは戦略を見直してエクスペリエンス プロバイダーへの転身をはかり、アクセス デバイスに関係なくコンテンツを配信できる「接続された生活」を顧客に提供し、Video 2.0 によってビデオ コンテンツのユーザによる生産や配信を可能にするためには、将来的要件をサポートするために設計されたビデオ ソリューションが必要です。また、顧客が今すぐ求める双方向のパーソナライズされた高品質のビデオ エクスペリエンスを実現するツール群を提供するソリューションも不可欠です。これは、上質の顧客のエクスペリエンスの設定、保存、実現といったあらゆる側面を統合するより大規模な IP ビデオ フレームワークの一部でもあるのです。Cisco CDS はこのプラットフォームを提供します。Cisco IPTV ソリューションの中核的コンポーネントである Cisco CDS は、シスコの IP および VoD の経験と、ヘッドエンドおよび顧客の自宅に関しては Scientific Atlanta のビデオ リーダーシップをベースに、真の包括的なビデオ ソリューションを提供します。

Cisco CDS の詳しい情報については、下記ページをご参照ください。http://www.cisco.com/jp/product/hs/video/cdc

1Chris Anderson, http://www.thelongtail.com/the_long_tail/2005/08/index.htmlpopup_icon.
2「n ゾーンの複製されたチャネル」シナリオは、既存のストリーミング サーバで動的にコンテンツを接合することができないため、いくつかの初期の導入に見られます。