ユーザ事例





メジャー リーグ ベースボールのインターネット部門:Major League Baseball Advanced Media



ベースボールを愛するファンたちは、野球場につめかけ、応援歌を書き、最後のアウトの瞬間までテレビにかじりつき、友人に電話をかけてベスト プレイの話で盛り上がります。彼らの情熱は尽きることがありません。


状況


さらなる興奮をファンに届けるために有望な新しい方法を常々模索していたメジャー リーグ ベースボールでは、インターネットの可能性に早くから注目していました。インターネット上で最も充実したメジャー リーグ ベースボール リソースを創出することを目的とする MLB Advanced Media(MLBAM)が 30 名の球団オーナーによる満場一致の賛成を受けて設立されたのは、2000 年の 6 月のことでした。MLBAM 幹部は、2008 年前半に実施した広範なテクノロジー レビューの一部として、ファンが求めているビデオ画質とインタラクティブ性を実現するには既存のライブ ストリーミング インフラストラクチャをアップグレードする必要があるという結論に至りました。しかも、ビジネスを成功させるために厳しい運用要件を満足する必要がありました。

ビジネス チャンスと課題


スポーツ業界にとって、Web 上でのライブ ゲーム コンテンツのストリーミングは膨大な市場機会を意味しています (Screen Digest によると、米国内のオンライン スポーツ ビデオによる収益は 2007 年に 7 億 6,200 万ドルであったものが 2012 年には 23 億ドルにまで増加すると予想されています)。とはいえ、一部のリーグでは、オンライン配信へのアプローチが試験的なものにすぎず、従来の TV 視聴率を低下させるのではないかという懸念からライブ コンテンツの量が制限されていることがしばしばあります。

しかし、MLBAM では、ファンのオンライン エクスペリエンスを向上すれば視聴率、評価、および収益が業界全体を通じて増加するに違いないという判断に基づき、他のリーグよりはるかに積極的な戦略を選びました。そして、この戦略が実際に実を結んでいます。MLBAM の最高責任者 Bob Bowman 氏は言います。「プラグとバッテリを備えたあらゆるデバイスに(ベースボールの試合を)配信するという戦略は、ビジネス パートナーに対して効き目があったようです。いや、もっと重要なこととして、これはファンの心をつかみました」。

MLBAM では、2005 年の春季キャンプ、レギュラー シーズンの公式戦、およびシーズン後の試合をあらゆるファンがデバイスのタイプの違いに関係なく閲覧できるように配信するという野心的な目標に向けた取り組みを進めました。MLBAM がこのビジョンを実現するには、専門知識を持ち備えたテクノロジー パートナーが必要でした。しかも、MLBAM がベースボール ファンの情熱に応えることを第一としているように、顧客の成功を第一と考えるテクノロジー パートナーを選ぶ必要がありました。かくして MLBAM がパートナーとして選んだのは、現在シスコの一部となっている Inlet Technologies でした。

MLBAM は、ストリーミング インフラストラクチャの刷新に当たって以下の 6 つの目標を掲げました。

1. 現在の標準画質となっている 16:9 のテレビ解像度に一致する 640x360 のストリームを配信することを含め、すべての試合生中継ストリームの品質を大幅に向上し、最終的には 1280x720 の高精細画質(HD)ストリームに拡張する。

2. 各試合について異なるビットレートで複数のストリームを提供する。視聴者がどのストリームを受信するかについては、現在のネットワーク条件に基づいて動的な調整を行い、エンドユーザ エクスペリエンスを最適化する。

3. MLBAM 内部の専用プロビジョニング ワークフロー内で、あらゆる新しいエンコーディング システムがスムーズに動作できるようにする。

4. 試合の記録中に、編集担当者が試合の画像を取り込んで、即時に公開できるようにする。

5. 各視聴者に複数のフィードを配信することに伴う技術的な複雑性の大部分を排除し、エンド ユーザが複数の試合を同時に視聴できるようにする。

6. 将来のテクノロジーとの互換性を確保でき、MLBAM が同じ導入済みハードウェアベース上で新しいテクノロジーを実装することを可能にする強力で信頼性の高いプラットフォームに投資する。

ソリューションと利点


MLBAM は、テレビ放送品質のビデオを生中継の会員制サービスである MLB.TV 向けに制作するための手段として Ciscoc Media Processor ストリーミング ソリューションを導入することを決定しました。MLBAM では、2009 年から Adobe Flash フォーマットで H.264 を使用してマルチプラットフォームのビデオを制作するようになりました。これにより、その 2 年前から配信していたわずか 700 キロビット/秒のストリームを大きく上回る、最大で 3.0 メガビット/秒という真の 720p HD ストリームが実現されました。これは、MLB.TV 加入者に提供できるビデオ画質と総合的なユーザ エクスペリエンスが劇的に強化されたことをも意味します。MLBAM では、Cisco Media Processor と並行して、グローバル インターネット インフラストラクチャを活用できるようにビデオ ストリームを標準 HTTP トラフィックに変換する Swarmcast Autobahn Live を使用しています。最高品質のユーザ エクスペリエンスを実現するために、Autobahn Live で複数の CDN を同時にブレンドし、MLBAM ライブ ビデオの品質、信頼性、およびスケールを向上しています。

MLBAM にとって Cisco Media Processor が競合製品より優れているのは、主に以下の点です。

  • 1 つのアプライアンスで複数のフォーマットをサポート。Cisco Media Processor では、単一のアプライアンスからの VC-1、Flash VP-6、および H.264 による同時ストリーミングをサポートしているため、MLBAM では特定のフォーマットの決定に時間を費やす必要がありませんでした。また、VC-1 から後に H.264 に移行したときも、ハードウェアを新たに購入することなく移行を完了しています。
  • HD のサポート。Cisco Media Processor プラットフォームの柔軟性により、MLBAM のアーキテクチャを完全にオーバーホールすることなく、HD ブロードキャストへの移行を容易に実現しています。
  • 前処理の強化。Cisco Media Processor には、Adaptive Complexity バランシング、スケーリング、トリミング、インターレース解除、逆テレシネ、アダプティブ イメージ フィルタリングなど、クラス最上級の出力を可能にする複数の前処理オプションが用意されています。
  • 複数のビットレートとアーカイブ。Cisco Media Processor では、ストリームごとに異なるビットレートでのストリーミングとアーカイブが可能です。これらのいずれかのストリームから、またはすべてのストリームから同時にアーカイブ ファイル資産を作成することもできます。

MLBAM では、Cisco Media Processor インフラストラクチャを採用したことにより、オンライン ビデオ ビジネスの成長が促進され、2008 年にはサイトのユニーク ユーザ数(Omniture の解析による数)が毎月平均 5,000 万件を超えるに至りました。MLBAM では、この新しいインフラストラクチャにより、毎日 90 本ものライブ ストリームを制作しており、2009 年には、400 キロビットから 3.0 メガビットまでのアダプティブ データ レートでベースボール生中継の総時間が 1 万時間を超えました。まさしくファンの熱い思いに応えているわけです。

TV 2.0


MLBAM が導入した新しい Cisco Media Processor インフラストラクチャは、インターネットがもたらす完全なインタラクティブ性の活用をも促進しており、追加のトランスコーディングを必要とせずにリアルタイムのハイライト シーンを作成することが可能になっています。試合中に重要なプレイがあった後、ライブ アーカイブから直接抽出したハイライト シーンを即時に表示できます。MLBAM では、ファンが複数の試合のビデオを同時に視聴できるようにするカスタム インターフェイスの実装に関しても、Cisco Media Processor を利用しています。ユーザが試合をクリックすると、画質の低下やバッファリングを伴うことなく、その試合が即時にフル スクリーンで表示されます。

Cisco Media Processor には、試合中にコマーシャルになると、広告に関するローカライズまたはナショナライズされた URL をビデオ プレーヤー上で挿入できるように、ストリーム内に広告マーカーを挿入する機能も搭載されています。MLBAM では、この機能をストリームの収益化に活用しています。この機能は、MLBAM の広告収益向上に貢献しています。

Cisco Media Processor インフラストラクチャは、MLBAM の厳しい信頼性要件も満たしています。「MLB.TV 購読サービスでは、ファンのひいきのチームの姿をシーズン中いつでもオンラインで視聴できることを約束しています。このため、MLBAM のビデオ ストリーミング インフラストラクチャは、年中無休の可用性を満たす必要があります」と、MLBAM のマルチメディアおよび配信部門担当上級副社長 Joe Inzerillo 氏は言います。「Cisco Media Processor は、きわめて堅牢です。管理インターフェイスを通じた保守も容易です」。

MLBAM では、Cisco Media Processor を導入して以来、オンライン視聴率が上がり、運用コストが削減されるという大きなメリットを実現しています。MLBAM の収益は毎年約 4 億 5,000 万ドルで、そのおよそ半分はファンがインターネット上で試合を視聴するために支払っている 1 シーズンあたり 110 ドルの料金、残りの半分は広告、チケットのオンライン販売、e コマース、およびスポンサーシップによるものだといいます。

MLBAM ソリューションの技術面


MLBAM では、ストリーミング設備の設置面積を減らしつつ、設備から生成されるストリームの量と質を向上するための方法を模索していました。このニーズにかなったのが、Cisco Media Processor でした。1U フォーム ファクタに 8 プロセッサ コアを搭載した Cisco Media Processor の設計は、MLBAM がこれらの機能をすべて利用しながら、運用に必要なリソースを以前の設備に比べて 50 パーセント以下まで削減することを可能にしました。Media Processor システムは保守も容易で、わずかな管理や監視が必要なだけです。

Cisco Media Processor では、柔軟なアーキテクチャにより、インフラストラクチャの大きな変更を伴うことなく、H.264、Flash、および 720p HD ストリーミングへの移行を容易に実現できるので、MLBAM が必要としていた画質の向上を実現できました。

Cisco Media Processor を MLBAM の ワークフローに統合するに当たっては、MLBAM でネイティブに使用されていた Java Message Service(JMS)メッセージング システムを活用しました。XML メッセージングは、ホスト管理やタスク監視からコマーシャルの挿入に至るまでの多様な用途に利用できます。これらの機能のそれぞれを、このシンプルでありながら充実したメッセージング プロトコル経由で制御および管理できます。

MLBAM の開発チームでは、Cisco Media Processor による試合前のエンコーディング開始を毎日の始業時にスケジュールするために、オペレータが使用する中央の Web ベース管理アプリケーションを Cisco Media Processor のスケジューリング機能と XML メッセージングの組み合わせにより構築しました。

さらに、MLBAM では、この同じメッセージング システムの利点を活かして、シンプルかつ効果的な、洗練された監視システムを作成しています。このシステムは、「停止」、「プロビジョニング済み」、「エンコーディング中」、「不明」の 4 つの状態を報告します。各エンコーダが照会され、その状態が監視アプリケーションに返されます。MLBAM では、この交換により、エンコーディング設備内の各システムのステータスを容易に識別できるようになっています。

MLBAM ではさらに、この同じメッセージング システムを利用して、スクリプトをプログラム ストリーム内に直接挿入しています。このスクリプト挿入メカニズムは、ビデオ デバイス環境を劇的に変革し、選手の詳細な成績データなどの追加機能およびコンテキストに応じたエクスペリエンスを MLBAM ファン ベースに提供しています。この機能では、試合中にコマーシャルになると、広告に関するローカライズまたはナショナライズされた URL をビデオ デバイス上で挿入できるように、ストリーム内に広告マーカーを挿入でき、MLBAM のストリームの収益化が促進されています。

シスコが MLBAM 向けに作成したもう 1 つのカスタム機能として、「ハイライト シーン抽出サービス」があります。これにより、ハイライト シーンとして取り上げるべき出来事が試合中に発生すると、編集担当者が即時に試合映像から特定のクリップを抽出することが可能になっています。この抽出サービスでは、タイム コードを使用して始点、終点、ファイル名、および宛先を選択し、試合映像のその部分をトリミングして、ユーザへの配信用に準備することができます。この機能により、球場でプレイがあった後すぐに試合のハイライト シーンをファンに視聴させることが可能になっています。

図 1 MLB.TV の素晴らしい映像、生中継中に表示される統合された成績データ、そして優れたユーザ操作性は、オンラインで観戦していることをファンに忘れさせ、TV 2.0 のパワーをまざまざと実感させます。

図 1 MLB.TV の素晴らしい映像、生中継中に表示される統合された成績データ、そして優れたユーザ操作性は、オンラインで観戦していることをファンに忘れさせ、TV 2.0 のパワーをまざまざと実感させます。


図 2 ファンが選択できる視聴モードも豊富に用意されています。MLB.TV デバイスの画面内では、映像の中に映像が表示されるピクチャー イン ピクチャー機能を選択すると、複数の試合やハイライト シーンを同時に視聴できます。

図 2 ファンが選択できる視聴モードも豊富に用意されています。MLB.TV デバイスの画面内では、映像の中に映像が表示されるピクチャー イン ピクチャー機能を選択すると、複数の試合やハイライト シーンを同時に視聴できます。


図 3 MLB.com 施設に導入された Cisco Media Processor

図 3 MLB.com 施設に導入された Cisco Media Processor