Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバ

Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバを利用したゲーム ワークロードの分散

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Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバを利用したゲーム ワークロードの分散



エグゼクティブ サマリー


大規模なスケールアウト アーキテクチャを採用したクラウド規模のアプリケーションでは、高密度のコンピューティング プラットフォームが求められます。また複数のドメイン構築に対しては、何千ものコンピューティング ノードのプロビジョニングを簡単に行えなくてはなりません。さらに、統一された管理ツール、高い電力効率、共有ネットワーク、基本的なローカル ストレージ リソース、そしてクラス最高水準のコスト パフォーマンスが求められます。大規模なマルチプレーヤー オンライン ゲーム(MMOG)、ハイパフォーマンス コンピューティング(HPC)、ビデオ トランスコーディングなど、クラウド規模の分散型アプリケーションでは、仮想化しないインフラストラクチャが求められ、適切なプロセッサ、メモリ、ローカル ストレージ リソースを備えた多数の物理サーバで構成する必要があります。

サーバ ベンダーは、こうした要件に応じるために、サーバを小型ユニットに縮小しようと試み、統合型のインフラストラクチャや管理は重視してきませんでした。その結果、サーバやカートリッジを小型化し、それぞれに専用のストレージ コントローラ、ネットワーク コントローラ、ブレード管理コントローラ、ハード ドライブが開発されました。これらのカートリッジは、共通の電力および冷却リソースを提供するシャーシに収納されています。このシャーシには、ネットワーキング リソースが集約される場合もあります。このコンセプトではクラウド規模のアプリケーションのコンピューティング要件に対応することはできますが、導入と運用、ライフサイクル管理の面で複雑性が増大します。

Cisco UCS® M シリーズ モジュラ サーバでは、異なる設計アプローチが取られています。統合型インフラストラクチャの基本に基づき、実績あるシスコの特定用途向け集積回路(ASIC)設計・技術を活用し、サーバ カートリッジとネットワーク コンポーネントやストレージ コンポーネントを分離し、シャーシ内のサーバに必要に応じて分配できる柔軟で構成可能なネットワーク、ストレージ リソースとして提供します。このモデルにおいて、サーバは CPU、メモリおよび CPU とシャーシ リソースを接続する標準の PCI Express(PCIe)だけで構成されたコンピューティング ノードとなります。シャーシ内で共有されるコンポーネントは、電源ユニット、管理、冷却ファン、ストレージ、およびネットワークになります。さらに、受賞歴のある Cisco UCS Manager により、Cisco UCS M シリーズ モジュラ シャーシには管理機能と拡張性が組み込まれており、シンプルで一貫性のあるデバイス管理を行えます。

このドキュメントでは、MMOG などのアプリケーションや分散型の Web/Java ワークロードを、電力、管理、冷却、ストレージ、ネットワーキング リソースを共有する非仮想化環境のコンピューティング サーバによって、いかに線形的に拡張できるかについて説明します。一般的に、MMOG や Web 分散型のワークロードでは、限定されつつも分散されたコンピューティング リソースを必要とするため、非仮想化環境、ベアメタル サーバによるサービスが適しています。このような要件のアプリケーションには、モジュラ サーバが適しています。このドキュメントでは、Cisco UCS M シリーズ モジュラ シャーシに接続された複数のカートリッジを対象に、アプリケーションのパフォーマンスを評価します。

対象読者


このガイドの対象読者としては、Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバの導入を検討中のお客様、セールス エンジニア、フィールド コンサルタント、プロフェッショナル サービス スタッフ、IT マネージャ、パートナー エンジニアリング スタッフなどが挙げられます。

オンライン ゲームなどのクラウド規模の分散型アプリケーション、ビデオ トランスコーディング、Web ワークロード用に非仮想化サーバ/ベアメタル サーバ ファームの導入を検討しているお客様をサポートする目的で作成されています。Cisco Unified Computing System?(Cisco UCS?)は革新的なデータセンター設計を可能にし、Cisco UCS M シリーズは、並列処理の要件を満たす、高密度、モジュール型、省電力のプラットフォームです。


ソリューションの概要


Cisco UCS M シリーズは、2 ラック ユニット(2RU)サイズの Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシを使用します。このシャーシには 8 つの Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジをサポートし、2RU フォーム ファクタで 16 のコンピューティング ノードに拡張できます(これ以外にも搭載するプロセッサ能力に合わせた M1414、M2814 などのカートリッジもあります)。モジュラ シャーシは、シスコ仮想インターフェイス カード(VIC)テクノロジーを使用した実証済みの革新的技術を基盤としています。Cisco UCS Manager とともに Cisco UCS ファブリック インターコネクトのペアで冗長化接続することで、業界をリードする Cisco UCS の管理機能により、使いやすさと拡張性を実現します。図 1 に、Cisco UCS M シリーズのアーキテクチャを示します。


図 1.	Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバ アーキテクチャ

図 1. Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバ アーキテクチャ


本書で取り上げるソリューションは、MMOG や分散型 e-コマースなどのクラウド規模のアプリケーションのパフォーマンスと拡張性を実現するものですが、その基盤として利用されているのが、Cisco UCS M シリーズ サーバのモジュラ コンピューティング機能です。クラウド規模のアプリケーションは複数のベアメタル サーバで同時に動作し、ワークロードの可用性はアプリケーション自体によって管理されます。これらのアプリケーションでは大量の並列処理が行われ、水平的な拡張が可能です。一般的にこのタイプのアプリケーションは、多数の小さなインスタンスに分けられる可能性があります。アプリケーション インスタンスは、基盤となるインフラストラクチャに柔軟に適応します。拡張性が非常に高いため、この導入モデルで必要とされるコンピューティング要素は最小限です。アプリケーション レイヤには復元力と可用性が組み込まれています。ハードウェア障害からの復旧は、アプリケーション アーキテクチャによって自動的に行われます。図 2 に、クラウド規模の導入モデルを示します。


図 2.	クラウド規模のアプリケーション

図 2. クラウド規模のアプリケーション


Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバ


UCS M シリーズ モジュラ サーバは、クラウドやオンライン ゲーム、多変数の計算処理など、高度に並列化されたワークロード向けに設計されています。

この新しい独自の設計では基盤になるコンポーネントを分離することにより、従来のサーバ群での複雑さを解消しています。従来はサーバの内部では、使用率の低い、あるいはプロビジョニングの過剰なローカル リソース(ハード ディスク ドライブ、ネットワーク I/O リソース、ベース ボード、ネットワーク コントローラなど)が存在していました。この新しい独自の設計では、そのようなリソースを集約し、多数のコンピュート ノードで共有できるようにしています。共有するコンポーネントとしては、電源ユニット、冷却ファン、ネットワーク I/O、ローカル ディスク ドライブ、システム管理リソースなどがあります。

Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバ プラットフォームでは、これらのコンポーネントが切り離されているので、各コンポーネント サブシステムのライフサイクル(最新技術の採用)を別々に取り扱うことができます。つまり、プロセッサやハード ディスク、ネットワーク I/O リソースを取り換える場合に、システム全体を新しくする必要はありません。

Cisco UCS M シリーズを使用すれば、コンピューティングとネットワーク I/O および共有ローカル ストレージの比率をきめ細かく調整して各サブシステムの規模を変更することによって、アプリケーションのパフォーマンスを最適化できます。この新しい設計では規模の微調整が可能であるため、過剰なプロビジョニングやリソースの無駄が生じることなく、最適なパフォーマンスと可用性を確保するのにちょうどよい数のコンピューティング ノードをアプリケーションで使用できるようになります。

このような革新的な設計に基づき Cisco UCS M シリーズは、並列処理の要件に適合した高密度、モジュール型、省電力のプラットフォームを提供します。Cisco UCS M シリーズの特長:

  • 消費電力あたりのパフォーマンスが向上
  • コンピューティング容量、ラック ユニット スペース使用の最適化

業界での受賞実績のある Cisco UCS Manager は、Cisco UCS M シリーズのデバイス管理をシンプルかつ一貫性をもって実行する管理機能が用意されています。Cisco UCS Manager は、要素管理が可能なモデル ベースの自動化ツールであり、オープン XML API を使用して、高度に他ツールと簡単に統合できます。

Cisco System Link Technology

Cisco UCS M シリーズ サーバの中心にあるのが、Cisco System Link Technology です。Cisco UCS M シリーズではこのテクノロジーを活用して、サーバ カートリッジとネットワーク コンポーネントやストレージ コンポーネントを分離し、シャーシ内のサーバに必要に応じて分配できる柔軟で設定可能なリソースとして提供します。System Link は Cisco VIC の基盤となる第 3 世代のテクノロジーであり、またシスコ ユニファイド コンピューティングを構成する Cisco Unified Fabric の基盤となる第 4 世代のテクノロジーでもあります。また、コンピューティング ノードがシャーシ内の共有 I/O リソースにアクセスするためのコンポーネントになります。System Link Technology によって、Small Computer System Interface(SCSI)ネットワーク インターフェイス カード(NIC)、または sNIC と呼ばれる、新しい PCIe 物理機能を構築できます。これはオペレーティング システムの仮想ストレージ コントローラとして、UCS 内の特定のサービス プロファイル(サーバの定義)にドライブ リソースをマッピングします。この革新的なテクノロジーは、Cisco UCS M シリーズ サーバ内の各コンピューティング ノードに、シャーシ内の物理ドライブと切り離された仮想ドライブをストレージ ドライブとして割り当てるメカニズムを実現します。この機能は、標準の PCIe アドレッシングを使用して実装されており、これにより各コンピューティング ノードは各自の sNIC をアドレッシングします。それによって、マルチルート I/O 仮想化の技術が必要なく、各ノードが同じ RAID コントローラを共有できます。したがって OS では、PCIe アドレッシング形式の変更に関する特別な知識を必要としません。

図 3 は、Cisco System Link Technology によるサーバの分離を示しています。


図 3.	System Link Technology

図 3. System Link Technology


Cisco UCS M4308 モジュラ サーバ シャーシ


Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシ(図 4)は、Cisco UCS ポートフォリオの機能を高密度の 2RU フォームファクタ シャーシに拡張したものであり、最大 8 個のフロントアクセス スロットに最大 8 個のシングルワイド カートリッジを搭載できます。

このシャーシには、コンピュート カートリッジだけでなく、特殊カートリッジも収容できます。シャーシの後部では、取り外し可能な内部 RAID コントローラに接続する 4 基の SSD 搭載をサポートします。ストレージ容量と接続性は、シスコの第 3 世代の VIC を使用して着脱可能なコンピューティング カートリッジに分散させます。ネットワーク I/O を受け持つ 2 つの 40 Gbps QSFP(Quad-Small Form-Factor Pluggable)ポートでは、すべてのコンピューティング カートリッジの I/O と管理トラフィックを 1 つの接続に集約し、ケーブルの統合と効率化を図っています。アップストリームの VNTag に対応するトップオブラック スイッチは、このソリューション全体で必要なコンポーネントであり、Cisco UCS 6200 シリーズ ファブリック インターコネクトで利用できます。

Cisco UCS M4308 シャーシは、物理ケーブルで Cisco UCS 6200 シリーズ ファブリック インターコネクトと接続します。ファブリック インターコネクトは、シャーシとその中に組み込んだコンピューティング カートリッジの管理と通信のためのバックボーンです。1 組のファブリック インターコネクトに最大 20 個の Cisco UCS M4308 シャーシとそれに搭載されたカートリッジを接続することができ、それらを 1 つのドメイン内で管理できます。ファブリック インターコネクトには、一元管理を実行するための Cisco UCS Manager が組み込まれています。


図 4.	Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシ

図 4. Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシ


Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジ


Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジ(図 5)は、Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシに対応する最初のカートリッジです。

Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジには、2 つの独立したコンピューティング ノードが搭載されています。各コンピューティング ノードには、シングル ソケットの Intel® Xeon® プロセッサ E3 シリーズの CPU が搭載されており、最大 32 GB のメモリを搭載できます。各コンピューティング ノードはシャーシ内の共有インフラストラクチャを通じて、Cisco UCS Manager に対して個別に管理接続が確立されています。Cisco UCS M142 は、CloudScale コンピューティングの高密度、省電力という目標を踏まえて、特定のアプリケーションに最適なパフォーマンスを実現できる省電力 CPU に対応しています。Cisco UCS M142 を利用した処理に適しているのは、オンライン コンテンツ配信、専用ホスト、財務モデリング、ビジネス分析などのアプリケーションです。


図 5.	Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジ

図 5. Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジ


MMOG ゲーム プレイ


オンライン ゲームは、インターネットにおけるエンターテインメント形式としてますます普及しています。全世界のオンライン市場の規模は、2016 年には 400 億ドルを超えると予想されています。大規模なマルチプレーヤー オンライン ゲーム(MMOG)は、何千ものプレーヤーが 1 つの仮想世界に同時に参加するという点で、他のオンライン ゲームとは一線を画しています。MMOG は通常、ユーザのログインに関わらずに稼働し続ける永続的なシミュレーションです。プレーヤーはこれらのゲームに登録することで、オンラインの永続的な仮想世界の中で、リッチで高度にインタラクティブなコンテンツを利用できます。MMOG は深いゲーム性とソーシャル インタラクションを提供しており、オンライン ゲーム タイプとして急速に普及しています。MMOG にとって重要なのは、優れたゲーム エクスペリエンスを提供することです。これは、プレーヤーにプレイし続けてもらうために不可欠であり、MMOG 事業者の収益に直接的な影響を及ぼします。シミュレーションのアップデートをタイムリーに提供することができなければ、エクスペリエンスは貧しいものになり、プレーヤーは離れていきます。

一般的に、MMOG は次の 2 つのタイプに分かれています。1 つは大規模なマルチプレーヤー オンライン ロールプレイング ゲーム(MMORPG)であり、もう 1 つは大規模なマルチプレーヤー オンライン ファーストパーソン シューティング(MMOFPS)ゲームです。MMOG には他にも、大規模なマルチプレーヤー オンライン リアルタイム戦略(MMORTS)ゲームなどのタイプがありますが、それらは MMORPG や MMOFPS ゲームのバリエーションであるとも言えます。

MMORPG はロールプレイング ビデオ ゲームと MMOG を組み合わせたもので、一般的に多数のプレーヤーが Web ブラウザ インターフェイスを使用し、永続的なネットワークを通じて仮想のインタラクションを行います。ロールプレイング ゲーム(RPG)と同様に、MMORPG ではプレーヤーは架空のキャラクターとして存在し、仮想世界の中で他のプレーヤーと交流します。通常これらのゲームでは約 1 〜 3 秒の応答時間が求められるため、CPU を多く消費します。ゲーム キャラクターは、プレーヤーがオフラインになったり、ゲームを止めたりしても、継続して存在します。

MMOFPS は Web ブラウザベースのゲームであり、膨大な数のプレーヤーがリアルタイムのシューティング環境の中で交流します。MMOFPS ゲームでは、協力型または対戦型のテンポの速いアクション ゲームをプレイできます。大人数による対戦や、チーム制の戦闘が可能です。MMORPG とは異なり、MMOFPS ゲームではプレーヤーの戦術よりもスキルが問われるため、プレーヤーのエイム力(命中させる技術)や戦術的思考の不足をゲーム内ボーナスで補うことはできません。MMOFPS ゲームでは応答時間が短いことが重要になるため、ゲーム インフラストラクチャのネットワークが低速であれば、プレーヤーは他のゲームに乗り換えてしまい、ゲーム プロバイダーには大きな損失が生じます。

MMOG アーキテクチャ

MMOG は多数の地域の何千ものユーザを同時にサポートします。MMOG のアーキテクチャは、運用が容易なプラットフォームを提供するとともに、特定のゲームでの新規ユーザの登録に応じて、柔軟に拡張できなければなりません。MMOG アーキテクチャには、次の 2 つの主要なタイプがあります。

  • クライアント/サーバ アーキテクチャ
  • ピアツーピア アーキテクチャ

ほとんどの MMOG では、クライアント/サーバ アーキテクチャが使用されています。各プレーヤーはプロキシ レイヤを通じてゲーム サーバに接続し、その後サーバがルールとプレーヤーの状態を処理します。ゲーム サーバは複数の地域に分散され、ローカライズ、地域別のゲーム ルームやゲーム イベントの管理に使用されます。ゲーム サーバとプロキシ サーバを分散することで、MMOG における大規模な同時実行が実現します。ゲーム サーバは、次のようなさまざまな手法で分散型アーキテクチャを管理します。

  • シャーディング:異なる物理サーバまたは仮想サーバで、ゲームの複数のコピーを実行します。これらのコピー(インスタンス)は、シャードと呼ばれます。シャード間のインタラクションがないという制限の下で、各シャードは少人数のユーザ グループをホストします。
  • クローニング:分散されたサーバ上で、ゲーム インスタンスの同期を維持しながらゲームのコピーを実行します。
  • ゾーニング:ゲーム世界を複数のリージョンに分割し、サーバのクラスタによって各リージョンを維持し、同期します。

図 6 に、一般的な MMOG アーキテクチャが複数の地域に展開する様子を示します。


図 6.	MMOG 分散型アーキテクチャ

図 6. MMOG 分散型アーキテクチャ


Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバが MMOG に最適な理由

何千ものプレーヤーとその他多数のゲーム エンティティを同時にサポートするために、MMOG オペレータは、膨大な数のコンピュータで構成された大規模な静的インフラストラクチャをインストールして運用する必要があります。このインフラストラクチャ上でゲーム処理を分散し、必要な QoS(Quality of Service)を提供することになります。たとえば最大級の MMORPG の運用インフラストラクチャでは、10,000 台を超えるサーバが使用されています。

MMOG で要求されるコンピューティング リソースは非常に流動的であり、またユーザ動向も予測できないことから、静的に割り当てられたリソースの大部分は使用されないため、リソース使用率が非常に低くなります。MMOG で要求されるリソースと QoS(Quality of Service)の他に、ゲーム サービス インフラストラクチャ プロバイダーには次のような課題があります。

  • コンピューティング電源要件が予測不可能であることと、それによるコンピューティング リソースのプロビジョニングの過不足
  • サーバまたは MMOG サーバ ファームごとに要求されるコンピューティング リソースが分散され、制限されていること
  • 特にファーストパーソン シューティング(FPS)ゲームでは MMOG に要求される、ネットワーク帯域幅と低遅延を生みやすい
  • 必要に応じてサーバ ファームを拡張することが困難
  • 運用コストと設備投資

MMOG インフラストラクチャに対する多大なリソースと低遅延という要件に加えて、仮想クラウドでは別の課題もあります。パブリック クラウド プラットフォームにおけるハイパーバイザ レイヤとマルチテナントという性質に加えて、過剰なサブスクリプションによる余計な管理コストにより、MMOG の応答時間とコンピューティング リソースは予測が困難になっています。MMOG の世界で、重要なのはユーザ エクスペリエンスです。ゲームに満足できなければ、エンドユーザは他のゲーム プロバイダーに乗り換えてしまいます。それが、多くのゲーム サービス プロバイダーで、プライベート クラウドまたはパブリック クラウドのベアメタル サービスに移行する理由の 1 つになっています。

Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバは、次のような方法でこのような課題を解決し、MMOG インフラストラクチャ サービス プロバイダーの要求に応えます。

  • Cisco UCS M シリーズ サーバは、大規模なゲーム サーバ ファームの導入にあたりポリシーベースの自動化に対応し、サーバを構成するリソースの使用方法も詳細に制御できます。この新しいアプローチは、Cisco UCS Manager GUI、XML API、コマンドライン インターフェイス(CLI)、Python、Microsoft Windows PowerShell スクリプトで導入できます。
  • 8 つのカートリッジで構成された単一の 2RU シャーシにより、合計 16 の物理サーバを構成できます。この構成により、ローカライズされたゲーム インスタンス用に分離された、専用のコンピューティング リソースのプロビジョニングが可能になります。
  • Cisco System Link Technology は、コンピューティング ノードからネットワーク I/O インターフェイスとストレージを分離します。I/O デバイス、QoS、ローカル ストレージ、およびストレージの冗長性特性(RAID レベルなど)のタイプと量を指定できるネットワーク I/O 構成は、Cisco UCS Manager サービス プロファイルと新しいストレージ プロファイルを通じて構成できます。
  • 従来のスケールアウト型サーバでは通常、デュアル ギガビット イーサネット インターフェイスが使用されます。シスコの新しいモデルでは、シャーシの 16 台のサーバ間で合計 80 Gbps のネットワーク帯域幅が共有され、サーバあたりの平均帯域幅は 5 Gbps になります。合計帯域幅が共有されるため、Cisco UCS M シリーズ サーバはディスクリート サーバとは異なり、帯域幅の急増に対応できます。
  • サービス プロバイダーは 1 つの Cisco UCS ドメインで最大 320 台のサーバを定義でき、また Cisco UCS Central ソフトウェアを利用すれば最大 10,000 台のサーバを定義できます。この機能により、運用コストと設備投資を抑えながら、リソース要求が急増した場合の拡張が容易になります。

管理が容易で、必要に応じて柔軟に拡張でき、分離されたベアメタル コンピューティング リソースを利用できる Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバは、MMOG インフラストラクチャ サービス プロバイダーの要件に応えます。


ソリューション アーキテクチャ


MMOG GamePlay ソリューション アーキテクチャ


コンピューティング インスタンスの分離と、ローカル ディスク、電源ユニット、冷却ファン、ネットワーク I/O リソースの共有が可能な Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバは、分散された MMOG を複数のデータセンターに大規模に展開するのに最適です。Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバの優れた機能を実証するために、複数の Cisco UCS M シリーズ カートリッジを使用した場合の、CPU、メモリ、ネットワーク使用率などの重要なシステム特性に関して、現実世界のゲーム ワークロードを利用してベンチマーキングを行いました。このテストでは、Planet PI4 がゲーム ワークロードとして Cisco UCS M シリーズ サーバで使用されました。

Planet PI4 は、マンハイム大学と TU Darmstadt が開発したピアツーピア(P2P)のシューティング ゲームです。これは、P2P オーバーレイ ネットワークによって接続された、完全実装のマルチプレーヤー用 3 人称 3D スペース シューティング ゲームです。シューティング ゲームでは遅延が非常に大きな問題になるため、MMOG には優れた拡張性が求められます。これら 2 つの重要な特徴から、Cisco UCS M シリーズ サーバのパフォーマンスを検証する上で、Planet P14 は有効な処理アプリケーションになります。

Planet PI4 のゲーム コアでは、GUI または実装されたボットが使用できるプレーヤー コントロール インターフェイスが提供されています。ボットを通じた同時ユーザのシミュレーションも、Cisco UCS M シリーズ サーバを使用したゲーム ワークロードの検証用に Planet PI4 を選択した重要な要素になっています。

Planet PI4 のワークロードでは、プレーヤーは小惑星の仮想フィールドを宇宙船で飛行し、シューティングで対戦します。このゲーム世界では、基地や修復ポイントなど、プレーヤーが得点として特定の場所で収集できるポイントが設けられています。このゲーム ソフトウェアはモジュラ アーキテクチャで構築されているため、必要に応じてゲーム オーバーレイの実装を簡単に交換できるようになっています。

図 7 に、Cisco UCS M シリーズ サーバでのゲーム処理の物理的な展開を示します。


図 7.	Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシでのゲーム処理の物理的な展開

図 7. Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシでのゲーム処理の物理的な展開


図 7 の展開では、次のような点がポイントになります。

  • 4 つの Cisco UCS M142 カートリッジが Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシに導入されています。
  • Cisco UCS M142 カートリッジに 2 つずつ、合計 8 つの物理サーバが使用されています。
  • 複数のゲーム インスタンスが 8 つのサーバでインスタンス化されています。
  • ボットは複数カートリッジ(そのうち 1 つのカートリッジには GUI クライアントを展開)でインスタンス化されます。
  • すべてのボットは P2P メッセージングを介して対話し、GUI ユーザをつなげます。

図 8 に、4 つの Cisco UCS M142 カートリッジを搭載し、Cisco UCS 6248UP 48 ポート ファブリック インターコネクトのペアに接続された、Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシの導入アーキテクチャを示します。


図 8.	 Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシのゲーム ワークロードの展開アーキテクチャ

図 8. Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシのゲーム ワークロードの展開アーキテクチャ


表 1 に、このドキュメントで示した構成で使用された、主要なハードウェアおよびソフトウェア コンポーネントを示します。

表 1. ハードウェアおよびソフトウェアの構成コンポーネント

コンポーネント 設定
Cisco UCS M シリーズ シャーシ Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシ X 1
コンピューティング カートリッジ Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジ X 4(各カートリッジに物理サーバ(Intel Xeon プロセッサ E3-1275L v3 X 1、32 GB の物理メモリ X 1)X 2 を搭載)
共有内部ストレージ 480 GB 2.5 インチ Enterprise Value 6 Gbps SAS SSD X 4(RAID 5 構成)
ファブリック インターコネクト Cisco UCS 6248UP 1RU ファブリック インターコネクト X 2
オペレーティング システム Ubuntu 12.04 を 8 台のサーバ(コンピューティング カートリッジ X 4)に導入
ゲーム処理 Planet PI4


パフォーマンス特性


Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバでは、単一の Cisco UCS M4308 シャーシに導入された 8 つの Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジで、電源ユニット、冷却ファン、ネットワーク I/O、およびローカル ディスク リソースが共有されます。したがって、システム性能を正確に評価するには、複数のコンピューティング カートリッジにアプリケーションを分散して展開した場合の、単一のシャーシのパフォーマンスと拡張性を把握する必要があります。

ここでは、MMOG ワークロード(Planet PI4)と分散型 Java ワークロードを展開した、Cisco UCS M シリーズ サーバのパフォーマンスと拡張性を評価します。

MMOG GamePlay のパフォーマンス


MMOG ゲーム ソリューションのテストベッドは、4 つの Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジを 1 つの Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシに搭載して展開されました。Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジにはそれぞれ 2 つの物理サーバがあり、各サーバには 1 つの Intel Xeon プロセッサ E3-1275L v3 と 32 GB の物理メモリが搭載されています。そして合計 8 つの物理サーバに Planer PI4 が展開されています。

シングル サーバの拡張性

Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジでホストされた 1 つの物理サーバに複数のユーザがインスタンス化された場合の拡張性を判定するために、シングル サーバの拡張性テスト シナリオを実行しました(図 9)。


図 9.	Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジの単一の物理サーバの拡張性

図 9. Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジの単一の物理サーバの拡張性


図 9 に示すように、Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジに搭載された単一の物理サーバにおけるゲーム ワークロードは、最大 7 ユーザまで拡張できます。各物理サーバは、1 つの Intel Xeon プロセッサ E3-1275L v3 と 32 GB の物理メモリで構成されています。

次のような結果が観察されました。

  • 単一の物理サーバは最大 7 ユーザまで拡張できる。
  • 単一の物理サーバ上の CPU の最大使用率は約 90 %。

サーバ全体の CPU の使用率は 12 % から約 90 % まで線形的に増大し、同時ユーザ数の合計が 1 から 7 に増加しました。

分散サーバの拡張性

このテスト シナリオでは、単一の Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシに 4 つの Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジを搭載した場合の、システムのパフォーマンスを測定します。4 つすべてのカートリッジで電源ユニット、冷却ファン、ネットワーク、およびディスク I/O リソースが共有されるため、Planet PI4 のゲーム ワークロードを複数の Cisco UCS M シリーズ カートリッジに展開した場合のシステムの拡張性を特定することがポイントです。

このシナリオでは、現実世界の MMOG ゲーム シナリオを模して、MMOG の複数の分散インスタンスが複数のサーバに展開されます。一般にゲームの各インスタンスは、複数のリージョンまたは同じリージョンでユーザ グループがプレイする、複数のゲーム セッションをホストします。


図 10.	分散サーバの拡張性

図 10. 分散サーバの拡張性


図 10 に、4 つの Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジに MMOG のゲーム ワークロード(Planet PI4)を展開した場合の、ユーザ拡張性を示します。また、単一の Cisco UCS M4308 シャーシ内の複数のカートリッジに Planet PI4 が分散された場合に、サーバ全体でどのようにネットワーク使用率が拡張されるかも示しています。

次のような結果が観察されました。

  • MMOG のゲーム ワークロードが 4 つのカートリッジ、つまり合計 8 つの物理サーバに分散されることで、ユーザ数が線形的に拡張されます。
  • MMOG ワークロードが単一の物理サーバから 8 つの物理サーバに分散されることで、同時ユーザの合計数が 7 ユーザから約 56 ユーザに拡張されます。
  • MMOG ワークロードが単一の物理サーバから 8 つの物理サーバに分散されることで、ネットワーク使用率は約 12 MBps から約 52 MBps に線形的に拡張されます。
  • 図 10 では、ネットワーク ディスク I/O が 1 台の Cisco UCS M4308 シャーシ内のカートリッジ間で共有されても、分散された MMOG ワークロードが線形的に拡張されることを示しています。このシナリオによれば、MMOG ワークロードを分散して展開する場合には、高密度のコンピューティング カートリッジを搭載した Cisco UCS M シリーズ サーバが最適であることがわかります。

分散型 Java ワークロードのパフォーマンス


これまでの説明で示したように、高密度のコンピューティング カートリッジを搭載し、Cisco System Link Technology を通じてネットワークとストレージを共有する Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバは、MMOG のゲーム ワークロードに最適です。Cisco UCS M シリーズ サーバのパフォーマンスをさらに検証するために、分散型 Java ワークロードを展開し、1 台の Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジから 4 つのコンピュート カートリッジにワークロードを拡張した場合の、システムの拡張性を測定しました。このワークロードは、世界規模のスーパーマーケット運営企業に基づくモデルを模しています。この企業の IT インフラストラクチャでは、POS 要求、オンライン購入、データマイニング操作が同時に処理されています。

図 11 に、Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバでの分散型 Java ワークロードの展開を示します。


図 11.	Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバにおける分散型 Java ワークロード

図 11. Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバにおける分散型 Java ワークロード


Java 処理は、単一の物理サーバから、4 つの Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジに導入された 8 つの物理サーバに拡張されました。各カートリッジには 2 つの物理サーバが搭載され、各サーバには 1 つの Intel Xeon プロセッサ E3-1275L v3 と 32 GB の物理メモリが搭載されています。

図 12 に、分散型 Java 処理の拡張性を示します。


図 12.	分散型 Java 処理の拡張性

図 12. 分散型 Java 処理の拡張性


図 12 に、単一の物理サーバから、4 つの Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジに導入された 8 つの物理サーバに拡張された場合の、Java 処理の線形的な拡張性を示します。冷却ファン、電源ユニット、ネットワーク、およびディスク I/O リソースを共有しても、Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバと分離されたサーバ アーキテクチャの性能には影響しません。さらにこのテストでは、運用コストと設備投資を抑えながらベアメタル サーバのファームに分散型アプリケーションを展開する場合に、Cisco UCS M シリーズ モジュラ プラットフォームが最適であることも示されました。


まとめ


このドキュメントでは、分散型の MMOG ゲーム ソリューションまたは Java ワークロードをベアメタル コンピューティング サーバに展開する上で、Cisco UCS M シリーズ モジュラ サーバが最適なソリューションであることを紹介してきました。MMOG ワークロードは、4 つの Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジに分散することで、線形的に拡張できます。同様に、テストによって分散型 Java 処理に対してもリニアな拡張性が示されました。

Cisco System Link Technology を導入した Cisco M シリーズ モジュラ プラットフォームは、単一の Cisco UCS M4308 モジュラ シャーシに接続した 8 つの Cisco UCS M142 コンピュート カートリッジで、ネットワーク、ディスク I/O、電源ユニット、冷却ファンなどのリソースを共有しています。オープン XML API と、Cisco UCS のポリシーベースのプロビジョニング、導入、および管理によって、クラウド規模のアプリケーションで各サブシステムが必要とする正確な量のリソースを提供できます。

Cisco UCS ポートフォリオに Cisco UCS M シリーズ プラットフォームが加わったことで、分散型のクラウド規模のアプリケーションを Cisco UCS M シリーズ サーバで実行し、高密度のコンピューティング ノードを受賞歴のある Cisco UCS Manager を通じて管理できるようになりました。またシスコのイノベーションの大きな成果である、高帯域幅で低遅延のユニファイド ファブリックに接続できます。


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