Multiprotocol Label Switching(MPLS)

MPLS AToM 技術概要


Cisco Any Transport over MPLS 技術的概要



[目次]
[課題]
[シスコ ソリューション]
[AToM のしくみ]
[回線ベース ネットワークでの MPLS の拡張方法]
[AToM による IP/MPLS ネットワークへの移行]
[AToM および QoS のサポート]
[機能および利点]
[AToM の準拠する規格および草案]
[AToM を IP/MPLS ネットワークの一部として使用する利点]

課題

近年市場では、メトロポリタンおよび長距離のイーサネット接続の需要が増加しています。調査会社Yankee グループの推定によると、2001 年の従来型(ATM とフレームリレー)伝送による VPN(バーチャル プライベート ネットワーク)サービスの市場は、2000 年の IP VPN サービスの 約3 倍の規模でした。しかし、IP(MPLS; Multiprotocol Label Switching 含む)部門が急速に成長しつつあり、2005 年までには従来のサービスを追い抜くと予想されています。

こうした市場成長とともに、既存インフラストラクチャを保護しつつ従来の各種ポイントツーポイント接続を提供する必要性も高まってきています。サービスプロバイダーは、既存のサービスモデルを変更せずに、統合された共通のインフラストラクチャで、レイヤ 2 およびレイヤ 3 のトラフィックを伝送できるソリューションを模索しています。この市場要求に対応するために開発されたのが、Cisco AToM(Any Transport over MPLS)です。Cisco AToM は、MPLS を導入して次のようなサービスを提供したいと希望するプロバイダーのニーズに対応したソリューションの 1 つです。それは、Cisco AToM とともにMPLS トラフィック エンジニアリングを使ったレイヤ 2 のアグリゲーション、仮想専用回線、および QoS(Quality of Service)などを提供するサービスです。

Cisco AToM は、従来のサービス(たとえば ATM、フレームリレー、シリアル/ポイントツーポイント(PPP)サービス)を運用するお客様に、また、メトロポリタン エリアのイーサネット接続を専門に扱うプロバイダーにも有用です。また、すでにMPLS を利用したレイヤ3 VPN を提供しているサービスプロバイダは、同一インフラを利用して新たなレイヤ2 VPN サービスの展開を実現することも可能です。

シスコ ソリューション

AToM(Any Transport over MPLS)は、IP/MPLS バックボーン上でレイヤ 2 パケットをトランスポートさせるためのシスコ ソリューションです。AToM は、シスコ ルータの幅広く利用可能な最先端 VPN テクノロジーで、統一(Unified)VPN のポートフォリオの一部として提供されています。シスコの AToM 機能を利用するサービスプロバイダーは、パケットベースの、単一の統合型ネットワーク インフラストラクチャとなる MPLS ネットワークを使って、既存のデータリンク層(レイヤ 2)ネットワークを使用するお客様の各サイト間の接続を可能にします。サービスプロバイダーは、ネットワーク環境を持つ個別のネットワークの代わりに、IP/MPLS バックボーンを使用することによって、従来の ATM とフレームリレーによる接続、およびイーサネット接続の両方を提供することができます。

AToM 製品セットは、複数のシスコ ルータ プラットフォームをまたがる、ATM、イーサネット、フレームリレー、PPP または HDLC ベースのネットワークなどのレイヤ 2 パケットを収容できます。

Cisco AToM テクノロジーがあれば、プロビジョニングや接続は非常に容易です。特定のロケーションのビルまたはキャンパス内でイーサネットを使用するお客様は、Ethernet over MPLS を提供するサービスプロバイダを経由して、遠隔地にある自社の各イーサネット ネットワークに接続することができます。Cisco AToM ベースのサービスを提供するサービスプロバイダーは、レイヤ 2 ネットワーク(ATM またはフレームリレー ネットワークなど)での新しいポイントツーポイント接続設定を容易に実現することができます。

Cisco AToM で構成されたポイントツーポイントの VC(仮想回線)では、レイヤ 2 接続の VPN としての特性は維持されます。お客様がネットワーク内のトラフィック ルーテイングを制御し、そのルーティング情報はお客様のルーティング機器に依存します。サービスプロバイダーのパケット ネットワーク機器は、お客様が必要とするポイントツーポイント接続や、エミュレート擬似ワイヤー(pseudo-wire)のみを提供します。

Cisco AToM は、MPLS ネットワーク コアを通過するすべてのタイプのトラフィックをカプセル化して透過的に伝送できるような、共通のフレームワークを実現します。サービスプロバイダーは 1 つの IP/MPLS ネットワーク インフラストラクチャとネットワーク管理環境を使用して、お客様に ATM、フレームリレー、イーサネット、PPP、および HDLC トラフィックとの接続性を提供するだけでなく、レイヤ 3 VPN のお客様の IP トラフィックの伝送も行います。さらに、サービスプロバイダーはシスコの誇る QoS 機能を利用して、異なるタイプのトラフィックにそれぞれ適切なレベルでサービスを保証することもできます。Cisco AToM はサービスプロバイダーの経費節約に役立ち、さらにプレミアムクラス サービスによる付加価値サービスの提供による収益増加も実現します。

AToM のしくみ

図 1 は、IP/MPLS バックボーンを使用して、レイヤ 2 パケットが VPN A を通ってサイト 1 からサイト 2 に移動する方法を示したものです。


図 1

図 1

レイヤ 2 パケットが、VPN A(サイト 1)の CE1(カスタマー エッジ 1)からサービスプロバイダーのネットワークを介して VPN A(サイト 2)の CE2 に移動するプロセスを、次に説明します。

1. CE1 はサービスプロバイダーのネットワーク上で、従来のレイヤ 2 VC(フレームリレー、データリンク接続識別子(DLCI 101)などの仮想回線)を通過して PE1(プロバイダー エッジ 1)に接続します。パケットはこの回線で CE1 から PE1 に移動します。

2. サービスプロバイダー ネットワーク内で、オペレータは PE1 から PE2 への LSP(ラベル スイッチド パス)を設定します。

3. AToM に関しては、オペレータは次のとおり設定してください。

  • (a) PE1 で、アタッチメント VC 101 とエミュレートされた VC1 間を相互接続し、PE2 である終点 PE を設定します。
  • (b) PE2 で、エミュレートされた VC1 とアタッチメント VC 201 間の相互接続し、PE1 である発信元 PE を設定します。
  • 注:P ルータには AToM 設定を行う必要はありません。

4. PE1 では、ルータの入口インターフェイスで次のイベントが発生します。

  • プロバイダー エッジ ルータの入力ラインカードの着信パケットからレイヤ 2 ヘッダーが削除される。
  • コントロールワードと VC ラベル [10] がパケットにプッシュされる。
  • 適切な側のインターフェイスが 1 つ選択される。
  • トンネル ラベルがプッシュされる。(通常のクラウド経由 MPLS ルーティングの場合)
コントロールワードおよび VC ラベルは、入出力プロバイダー エッジ ルータにのみ直接関係があります。MPLS バックボーン内のルータ(P ルータ)は、VC ラベルもしくは制御文字を使用しません。代わりに P ルータは、トンネル ラベル [50 & 90] を使用して、パケットを MPLS バックボーン上で移動します。P ルータは AToM トラフィックを他の種類のトラフィックと区別しないため、パケットは MPLS バックボーンにあるその他のパケットとまったく同様に処理されます。

5. パケットはサービスプロバイダーのネットワークから PE2 宛てに送信されます。

6. 出力ルータ PE2 で、次のようなイベントが発生します。

  • VC ラベル [10] が削除される。
  • コントロールワードが処理後、削除される。
  • ヘッダーが再構築される。
  • 適切なお客様側のインターフェイスから、パケットが送出される。
トンネル ラベルは最後から 2 番目のルータで削除されているので、ルータのネットワークに面した側にはトンネル ラベルは存在しません。

7. PE2 はフレームリレー(DLCI 102)仮想回線など、従来のレイヤ 2 VC によって CE2 に接続します。

回線ベース ネットワークでの MPLS の拡張方法

サービスプロバイダーの大部分は、コアにコネクションオリエンテッド ATM ネットワークを実装しています。ATM は、性能、帯域幅、およびトラフィック エンジニアリングを実行する能力を提供します。しかし、ATM ネットワークは、コアの中の VC 状態の情報に依存しているため、その拡張性は限られています。

それに比べて、MPLS AToM は拡張性が高く、コアの MPLS デバイスに VC 状態の情報を維持させる必要はありません。 これは、ラベル スタッキングによって実現されており、終点を同じくする複数の接続を単一接続として管理できます。サービス プロバイダーは MPLS を使用すれば、ネットワークにあるすべてのエッジ デバイス(プロバイダー エッジ)ルータだけを設定すればよいのです。

AToM による IP/MPLS ネットワークへの移行

サービスプロバイダーは、IP/MPLS ネットワークに移行した場合は、レイヤ 2 パケット伝送などの既存のサービスもサポートする必要があります。AToM を使用すれば、IP/MPLS バックボーン上でレイヤ 2 パケットを伝送できます。AToM は、さまざまなレイヤ 2 パケット(ATM、フレームワーク、イーサネット、PPP、HDLC など)を、MPLS バックボーン上で伝送するためのアーキテクチャ フレームワークです。端的に説明いたしますと、まず AToM はプロバイダー エッジ ルータでパケットをカプセル化して、それらをバックボーン上で伝送します。パケットは、バックボーンの向こう側のプロバイダー エッジ ルータに到達すると、カプセルから出されて終点に送信されます。

サービスプロバイダーのバックボーン ネットワークはお客様のネットワークとは分離しているため、AToM へのアップグレードはお客様に対して透過的に行われます。サービスプロバイダーはお客様の レイヤ 3 ルーティングには関与しません。サービスプロバイダーは、レイヤ 2 接続のみを提供します。

AToM および QoS のサポート

QoS は、パケット要求を異なるトラフィック クラスに区分けし、さまざまな基準(アプリケーション タイプ、ユーザ/アプリケーション ID、発信元/宛先 IP アドレス、その他変数など)に基づいてトラフィックを管理するために、適切なリソースを割り当てます。

パケットのビットはパケットの優先順位に換算されます。MPLS パケットに関しては、MPLS 実験ビット(別名 EXP ビット)を使って、MPLS パケットの QoS を指定することができます。IP パケットに関しては、IP Precedence/DSCP(Differentiated Services Code Point)ビットで IP パケットの QoS を指定できます。

IP パケットが次々とサイトを移動する場合は、IP Precedence フィールド(IP パケットのヘッダーにある DSCP フィールドの最初の 3 ビット)に QoS を指定します。パケットは IP Precedence のマーキングに基づいて、たとえば遅延やそのサービス クラスに許容される帯域幅(%)など、希望どおりに処理されます。サービスプロバイダーのネットワークが MPLS ネットワークである場合、ネットワークのエッジにおいて、IP Precedence ビットは MPLS EXP フィールドにコピーされます。

イーサネット フレームが次々にサイトを移動する場合、802.1P フィールド(イーサネット ヘッダーの 3 ビット)が QoS を指定します。フレームリレーの場合も同様に、廃棄適性(DE)ビットがフレームリレーのフレームの DE を指定します。ATM では、Cell Loss Priority(CLP)フィールドが、伝送中のセルの廃棄優先を指定します。このマーキングは、プロバイダー ネットワーク上での QoS の保存および移送のために、MPLS EXP フィールドに変換しておくことが可能です。

サービスプロバイダーが、MPLS パケットの QoS に、IP Precedence ビットまたはレイヤ 2 フレーム ビットとは異なる値での設定を希望する場合、お客様の IP Precedence フィールドまたはレイヤ 2 ヘッダーの値を上書きする代わりに、MPLS EXP フィールドを設定することができます。IP ヘッダーまたはレイヤ 2 フレームはお客様による使用が可能な項目として残され、パケットが MPLS ネットワークを移動する間も変更されません。

サービスプロバイダーは MPLS パケットをそのタイプ、入力インターフェイス、その他の要因に準じて分類することができます。分類するには IP Precedence/DSCP/Layer 2 などのフィールドには変更を加えず、MPLS EXP フィールドで各パケットを設定(マーキング)します。たとえば、サービスプロバイダーは PE1 が受信するパケットのレートを考慮してパケットを分類することもできるし、また考慮せずに分類することもできます。レートを考慮する場合、サービスプロバイダーはレート内パケットに、レート外パケットとは異なるマーキングをします。

このような仕組みにより、サービスプロバイダーは、お客様ごとに、同じ伝送タイプのサービスを異なるサービスグレードで提供することが可能です。

機能および利点

表 1:Cisco AToM の機能および利点
機能 利点
Cisco AToM:Ethernet over MPLS

サービスプロバイダーは、イーサネット向け Cisco AToM によって、お客様が地理的に離れたサイトで経済的にイーサネット VLAN(バーチャル LAN)を構築できる方法を提供します。異なる都市に点在する複数のサイトは、MPLS ネットワークを経由すれば、あたかも 1 つの共通のイーサネット ネットワークにいるかのように共同作業することができます。

Ethernet over MPLS は、VLAN を MPLS LSP にマッピングすることによって、ある発信元から終点 802.1Q VLAN 向けのイーサネット トラフィック(ユニキャスト、ブロードキャスト、マルチキャスト)を、コア MPLS ネットワーク上で伝送することができます。 Ethernet over MPLS は、LDP(ラベル配布プロトコル)を使用して、コア MPLS ネットワーク上で LSP を動的に設定/解除することで、動的なサービスをプロビジョニングしています。

Cisco AToM:ATM over MPLS

シスコは ATM 用の Cisco AToM によって、現在 MPLS で AAL5(ATM 層 5)をサポートしており、近い将来 MPLS 上のセルリレーをサポートする予定です。AAL5 パケット フォーマット適合の ATM トラフィックは、SONET(POS)リンクのパケット付き Cisco 12000、Cisco 7200、Cisco 7500 シリーズ ルータで構成される MPLS バックボーン ネットワーク上で伝送が可能です。AAL5 パケット フォーマット適合の ATM トラフィックは、POS リンク付き Cisco 12000 シリーズ ルータで構成される MPLS バックボーン ネットワーク上で、伝送が可能です。Cisco AToM があれば、サービスプロバイダーは、通常の ATM のプロビジョニングほどの手間をかけなくても、新しいサイトを迅速に追加することができます。

Cisco AToM:Frame Relay over MPLS

フレームリレー用 Cisco AToM があれば、お客様のフレームリレー トラフィックを MPLS パケットにカプセル化して、お客様の要求する終点に転送することができます。Cisco AToM があれば、サービスプロバイダーは、通常の フレームリレーのプロビジョニングほどの手間をかけなくても、新しいサイトを迅速に追加することができます。

Cisco AToM:ATM Cell Relay over MPLS

ATM セルリレー機能により、ATM セルは MPLS ネットワーク上を透過的に伝送されます。この仕組みによって、ATM 信号方式および OAM(Operations、Administration、Maintenance)セルをパケット ネットワーク上で伝送することができます。この機能を使用すれば、サービスプロバイダーはプロビジョニングに同じツールを引き続き使用して、既存フレームおよび ATM インストレーションを IP/MPLS ベースの高速パケットコアに集束することができます。

Cisco AToM:PPP over MPLS

Cisco PPP over MPLS は、お客様の PPP フレームを MPLS パケット コア上でカプセル化します。サービスプロバイダーはこの仕組みにより、任意のレイヤの伝送でポイントツーポイントの PPP リンクをエミュレートすることができます。サービスプロバイダーは、POS リンクで MPLS 上の PPP を使用して、「多重化した」サブインターフェイスを生成し、これを使ってその他プロバイダーと個々に通信します。

サービスプロバイダーが PPP over MPLS によって提供する透過的な PPP パススルーでは、カスタマーエッジのルータがエンドツーエンドの PPP セッションを通じてトラフィックを交換することが可能です。サービスプロバイダーは仮想専用回線ソリューションの提供が可能で、PPP サブインターフェイス機能を使って、単一の POS 接続で複数のプロバイダーと通信します。

Cisco AToM:Cisco HDLC over MPLS

Cisco HDLC over MPLS では、HDLC 接続は、パケット バックボーン上で、あるお客様のルータから別のお客様のルータへエミュレートされます。

このテクノロジーを使用すれば、PPP の場合と同様、パケット ネットワ-ク上で Cisco HDLC フレームの伝送が可能です。

AToM の準拠する規格および草案

AToM テクノロジーは、以下の IETF(インターネット技術特別調査委員会)の草案文書に基づいています。

AToM を IP/MPLS ネットワークの一部として使用する利点

AToM を IP/MPLS ネットワークで実装することには、次のような利点があります。

  • AToM 製品セットは、複数プラットフォーム上のイーサネット、フレームリレー、ATM、PPP および HLDC など、数多くのレイヤ 2 パケットを収容できます。この仕組みにより、サービスプロバイダーはバックボーン上を通過するすべてのタイプのトラフィックを伝送でき、あらゆるタイプのお客様に対応しています。
  • AToM へのアップグレードはお客様にとって透過的な方法で行われます。サービスプロバイダーのネットワークは、お客様のネットワークとは分離されているため、サービスプロバイダーはお客様へのサービスを中断することなく AToM にアップグレードすることができます。 お客様はこのとき、従来のレイヤ 2 バックボーンを使用していると考えます。
  • AToM はスケーラブルなソリューションです。MPLS の性質上、コア ルータが格納しなければならないフォワーディング情報の量は最小限に抑えられます。コア ルータは、VPN または VC(仮想回線)に関する情報は格納しません。プロバイダー エッジ ルータは、CE(カスタマー エッジ)が接続している AToM VC の情報のみを格納します。したがって、プロバイダー エッジ ルータがサービスを提供する VC/VPN の数は、そのサービスプロバイダーのコアネットワークに影響を与えません。
  • AToM のスケーラビリティのもう 1 つの利点は、無制限に VC を作成できるということです。IETF 草案「Transport of Layer 2 Frames over MPLS」に次のような陳述があります。「この手法では、無制限数のレイヤ 2「VC」を、1 つの「トンネル」で同時に伝送できます。したがって、ネットワーク バックボーンではかなりのスケール変更が可能です。」AToM はこの IETF 草案に準拠しているため、スケーラビリティ設計によるメリットがあります。
  • AToM を MPLS QoS およびトラフィック エンジニアリングと組み合わせた場合、そのサービスは VLL(仮想専用回線)として提供することが可能です。White Paper「Virtual Leased Line Services Using Cisco MPLS DiffServ-Aware Traffic Engineering」で、帯域幅を保証する専用回線サービスの提供に関する詳細を述べています。

更新日:2002 年 11 月 18 日